せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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だんだん日付前に挙げられなくなってきてる……


第十八話 東西激突 前篇

 遂に学校に復帰したと思った矢先に待っていたのは、東西交流戦と言う一大イベントであった。

 なんでも西の天神館が修学旅行がてらに決闘を申し込んできたらしい。

 全学年同時にくるって、向こうは毎年修学旅行があるのか?

 うらやましい。

 以前にクリスとの決闘を披露していた僕は、当然の如く代表に選ばれていたようだ。

 

 「うわぁ、あれはひどい……、大将囲まれてぼこぼこじゃん」

 

 そのイベントの第一戦である、一年生の部、うちの学校の大将がわざわざ突っ込んで行って凹されているのを、高所から身をろしながらぼやいてしまう。

 

 「いや、あの黛さんが頑張ってるんだから時間稼げばいいのに……」

 

 「まったくだ。自分の力量を見極められていない。まあ、自業自得だな」

 

 後ろからかかった声に振り向けば、武神がいた。

 

 「おや、モモ先輩あんまり楽しそうじゃないですね。せっかくの戦う機会なのに」

 

 「ああ、強そうなの居ないしな。弱い者いじめになりそうで気が進まん」

 

 おお、微妙にであるが精神修行の効果があるんではないか?

 まだまだ強い人との戦いは別のようだが。

 

 「まあ、確かに化け物は……一人、かな? しかも2年生だから戦えませんね。残念」

 

 その点僕はいい修行になりそうだ。

 

 「ん? そんなに強いやついるか? ……わからんなぁ。まあ、楽しみに見ておくか」

 

 うん、僕の弱者としてのセンサーは優秀な部類らしい。

 

 「まあ、それよりも向こうの館長?だったけかな。あの人、ぜひ終わった後にご教授願いたいですね」

 

 「おお! お前もそう思うか! 確かにあの人はいいなぁ。戦ってくれないかなぁ……」

 

 あの人は強い。

 きっと戦えば得るものは多いだろう。

 そんなことを二人して夢想していると、

 

 「阿呆、向こうも仕事じゃ。今回は諦めなさい」

 

 また後ろから声をかけられる。

 今度は鉄心さんだった。

 気が付いてはいたけど、化け物が後ろから近づいてくるのはあまり心臓にやさしくないな。

 

 「……そうですか。残念ですね」

 

 「えー? ケチだなぁじじい」

 

 二人して文句を言う。

 それにしても武神、諦めがいいな。

 なにがこの人をここまで変えたのだろう?

 

 「ほれ、一応行事とはいえ夜じゃ。学生はとっとと帰らんか」

 

 教師らしいことを言って帰宅を促す鉄心さんたちと別れて第一夜目の終了だ。

 

 

 ――――

 

 

 今目の前では第二夜目、三年生の部の戦いが始まろうとしている。

 

 『天 神 合 体!』

 

 のだが、何のつもりだろう、あれ?

 相手全員が合体して一つの塊になっていた。

 いや、確かに多少強くなってるしカッコイイけどさ。

 効率悪すぎるだろう。

 カッコイイけど。

 避けるの難しくなっただけじゃね?

 カッコイイけど。

 そもそも一人一人の耐久上がったわけじゃないからジリ貧じゃん。

 カッコイイけど。

 

 「星殺し!!!」

 

 一条の光が合体した生徒を貫いた。

 

 「おおう……、一撃で瓦解とか……」

 

 せっかくのロマンが台無しであった。

 格好よかったのに。

 せめて合体が姿じゃなくて一撃の技であったら通用していたかもしれないのに……。

 提案者はロマンをよく理解しているようだ。

 素敵である。

 てか、あれで手加減してるって、

 冗談だと思うだろう? 僕、あれを何発も受けたんだぜ?

 

 「終わった終わった」

 

 そう言ってこちらに向かってくる武神。

 その掌がこっち向いてるの怖いんだけど。

 

 「お疲れ様です」

 

 「おうー、あんまり疲れてないけどなー」

 

 そりゃそうだ。

 一発くらいで疲れてくれるんなら、あの時僕が負けているはずがない。

 

 「それにしても、向こうさんはかっこよ……ゴホン、何がしたかったんでしょうね?」

 

 「おい、なんか言いかけたな? まあいい、多分デカかったら強い―、とかそんな考えだったんじゃないか?」

 

 いや、きっと合体は勝ちフラグ、と言う考えだろう。

 まあ、口には出さないけど。

 

 「そんなもんですかねー」

 

 「と、言うかお前、見えてたけどすごくキラキラした目をしてたぞ?」

 

 不覚、見られてしまっていたようだ。

 

 「っと、そうだ。弟から作戦会議だからお前を連れてくるように頼まれていたんだ。来い」

 

 はい?

 まあ、行くけどなんで僕も会議に参加するんだろう?

 作戦なんて中心人物たちとそれが得意な奴で立てるもんだろう。

 

 てなわけで引きずられながら会議会場につく。

 と言ってもただ人が集まっているだけだが。

 

 「来た来た。ありがとね姉さん」

 

 思ったよりも人数が少ないな。

 九鬼主従、直江、葵だった。

 

 「え、とこのメンバーだとなんで僕が呼ばれたかわからないんだけど?」

 

 「ああ、一年の戦いを見て、流石にいがみ合ったままじゃ勝てなさそうだからね。一番問題なS組とF組の橋渡しと、どうせ大将は九鬼だろうから大まかな作戦を話し合っておこうかと思ってね」

 

 「フハハハ!! 大将、確かに引き受けたぞ! 明日は見事皆をまとめてやろう!! 作戦立案についてはわが友トーマに任せる。あずみ! 後は任せるぞ! ではな! 我は多忙故ここで中座するが、しっかりはげめよ!」

 

 「了解しました! 英雄様!!」 

 

 「はい、任されましたよ」

 

 そう言って去っていく英雄。

 てか、僕が呼ばれた理由の説明全然されてないよね?

 

 「じゃあ、用事も済んだみたいだから僕はこの辺で……」

 

 「ちょっと待とうか」

 

 そう言ってちらりと武神を見る直江。

 なんかのアイコンタクトだろう、次の瞬間には武神にのしかかられていた。

 

 「おいおい、まだ来たばっかりだろう? どこ行くつもりだ?」

 

 「いや、僕いる必要なくね? と思ったんですが。てか、先輩もなんでいるの?」

 

 「いや、一応最高戦力にもいてほしくて。俺も最初はそこのメイドさんいるしいいと思ったんだけど、姉さんが二年の最高戦力なら高坂だって言って、それに九鬼主従が賛同したからさ」

 

 おおう、先輩の件については無視か。

 んで、クリスの一件しか知らない直江はやはりどこか納得しきっていない口調である。

 悪かったな、派手じゃなくて。

 

 そんなこんなで、彼我戦力の確認と作戦案が話し合われることとなった。

 

 「西方十勇士、これが厄介だ」

 

 「そうですね、一人一人の情報も完璧とはいきませんし」

 

 なんか、情報制度がどうこうとか話してる。

 

 「なあなあ、あずみさん? 情報だったら九鬼がこうぱぱーっと!」

 

 「阿呆か、こんな学校行事にわざわざ介入してたまるか。あんまり抜けたこと言ってんじゃねーよ」

 

 うわ、酷い。

 

 「ああ、やっぱそうなんだ」

 

 「っけ、これだから馬鹿は困るぜ」

 

 む、このメイド猫かぶりやめたと思ったらあんまりじゃないだろうか?

 ここは少し脅しておこう。

 

 「あんまり舐めたことばっか言ってると、揚羽さんとヒュームさんに頼み込んであずみさんの上司になっちゃいますよ?」

 

 「っげ!! お前それ!? 微妙にシャレになってねーンだよ!!」

 

 お、やっぱり危機感湧いたようだ。

 実務はともかくとして、九鬼一族の護衛も仕事とあれば意外とあり得なくはないのだ。

 

 「あのー、お二人さん? こっちに参加してもらえませんかね?」

 

 あ、頭脳派二人に白い目で見られてる。

 仕方がないだろう、こっちは戦術面、しかもごく一面的なものに人生かけてきたんだ。

 理解はできてもそうそう戦略にまで目が向いてたまるか。

 

 「あー、じゃあ、提案」

 

 そう言ってみると、言っといて期待していなかったのか少しびっくりした様子で先を促すように見てくる。

 

 「僕、敵の密集地帯通る、敵の大将倒す」

 

 いった瞬間、場の空気が凍った。

 因みにいまだに背中に張り付いている武神は大笑いしていた。

 ……胸が当たって気持ちいです。

 

 「……いや、何だろう姉さんと同レベルなのか……」

 

 あ、武神がはがれて直江にお仕置きしてる。

 しかも失礼だな。

 

 「いや、一緒にしないでよ。高度な話には入れないけど一応考えた上の話だよ」

 

 お、武神が戻ってきてしまった。

 さっきと違って軽く絞まってる。

 

 「考え、ですか?」

 

 お、さすが頭脳派二人、切り替えが早い。

 呆れてたはずがもう聞く体制ができてる。

 

 「うん、ぶっちゃけ二年では僕くらいしか勝てなさそうなのが一人いる。それ引き寄せるためにも目立たないとまずいかなぁって思ったんだよ」

 

 と、伝えると直江は武神の方に目で確認していた。

 

 「ん? ああ、昨日もそんなこと言ってたなー。わたしは気付かなかったが、こいつの察知能力の精度なら私より上だからそうなんじゃないかー?」

 

 「な!? 姉さんより上!!?」

 

 おーおー、驚いているねー。

 いくら武神とはいえすべてがトップってわけじゃないんだよー。

 そんな感じで危機意識が芽生えたのか僕の意見は採用されたようだ。

 

 うん、上手いことたくさんの相手と戦えるようで何よりである。

  




以上です。
何気に駆け引きはできる高坂君、見事激戦区ゲットでした。

それではまた次回。

この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

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