せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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 どうも、お久しぶりです。
 忙しいなぁと思っていたらいつの間にか2か月近くたっていました。
 申し訳ないです。


第二十話 古くも新しい風

総合で2勝1敗と言うことで見事に勝利を得た川神学園。

 しかし、あれだけやってもやはり学校行事に変わりないようで、終わった後も結構フレンドリーだった。

 

 「この俺が本気になる前に仕留めたのはよい判断だったな。しかし次は貴様を圧倒して見せよう」

 

 うん、実際強いんだろうにあふれ出る小物臭、残念だ。

 

 「うん、楽しみにしてるヨ」

 

 こうまで上から目線だと反応に困る。

 まあ、実際僕もあの場までそこまでとは思わなかったから底上げ技ではあるが、ある種の穏行として一流じゃないだろうか?

 

 「……ゴホ」

 

 

 あっちの隠しているであろう彼には完全に避けられてしまってるし……。

 隠すんならもっとうまくやってよね、僕なんて頑張っても強そうなオーラが出てくれないのに。

 

 「おい、急に涙ぐんでどうした? 伊予かん食べるか?」

 

 上裸の男に慰められた。

 こいつ、変態なのにいいやつだ。

 

 と、ちょっとした騒ぎが続く中、目的の人の気配を探しているとモモ先輩とかち合った。

 

 「おおー、高坂か。どーした?」

 

 「どーも。いや、同じ方向向かってるならわかるでしょう?」

 

 あいさつもそこそこに、お互い視線でけん制し合う。

 

 「おいおい、此処は年齢順だろう。まあ、2戦目の時間はないかもしれないがな」

 

 「いやいや、ここは形式にのっとて弱い方からでは? この前負けちゃったわけですし」

 

 やはり譲る気はないようだ。

 

 「おま! 結構気にしてたくせに平気で負けたこと言い出すのか!?」

 

 「そりゃあもう、弱者としては使えるものは全部出しきらないといけないもので」

 

 口元を釣り上げて返事してやる。

 

 「ほう、だが残念だな。譲らんぞ!」

 

 「いいんですか? 仕合となると川神院の腰は早々軽くならないでしょうに」

 

 「っく! し、しかしだなぁ……」

 

 おお、こっちは効いたようだ。

 

 「ふっふっふ……、それではお先に!!」

 

 モモ先輩が少し怯んだ隙に先に行かせてもらおうとする。

 が、

 

 「諦めろと言ったじゃろうに……、喝っっっ!!!!」

 

 鼓膜にダイレクトアタックをくらってしまった。

 

 「おおう……じじいめ、先回りしてやがったか」

 

 「いや、わし学長、こいつ館長、一緒にいておかしくないじゃろうに……」

 

 「ガハハハハ!! 師よ元気のよい子たちじゃないか。惜しい、教え子の付き添いでなければ大暴れしていたものを……」

 

 「おお! 乗り気じゃないか! なあ~じじい、いいだろ~?」

 

 「ダメじゃ、お主らレベルがやるとどんだけ被害が出ると思っておる! 今回は我慢せんか!!」

 

 「ちぇ~」

 

 うん、ここまでずっと耳抑えて転がっていたが、引き下がった武神はこっちにちょっかい掛けてきやがった。

 いや、うん、一般人にしてるほど手加減してないせいで当たると結構きついレベルのちょっかいなんだが……。

 

 「ふぉふぉふぉ、決闘の1件以来仲が良いようで何よりじゃ」

 

 「ガハハハ!やはり元気があっていいじゃねぇか!」

 

 うん、止める気はないようだねこの二人は。

 特に鉄心さんは結構簡単に引いてくれた孫にご満悦のようだ。

 まあ、じゃれる気程度だしこっちもそう気にしてないんだけどね。

 

 「て!! ちょい待て!!! 流石にその光ってる手はやめといて!!」

 

 ああ、いい鍛錬になりそうだ畜生が!!!!

 

 

 

―――――

 

 

 翌朝、朝のニュースは各局一つの話題でもちきりになっていた。

 

 「武士道プランねぇ……」

 

 偉人のクローンだとかなんとか、正直どうでもいい。

 が、川神学園ではそのあおりをもろに受けそうである。

 まあ、結構強いのが川神に入ってきているようではあるがこの近辺で言えばもう今さらである。

 むしろ、対して隠さずこの程度なら……、まぁ、機会があれば仕合ってもらおうかなってもんだ。

 

 

 そんなこんな登校中には空駆ける武神など、やっぱりその程度でどうこうなる川神じゃないと再確認させられた。

 ……黒か。

 多くの人間の死角だと思い油断したな武神!!

 

 「おお! お前は高坂ではないか!」

 

 変態橋はその名に負けず今日は上裸の変態がいた。

 

 「えーと、長宗我部だよね? なんでこんなところに?」

 

 「うむ、東西交流戦で負けてしまったからな、その汚名を雪ぐために武神を倒しに来たのだ!!」

 

 おおう……、命知らずすぎるぜぃ。

 ん? ちょっと待てよ、まさか……。

 

 「あー、モモ先輩ならさっき飛んでたからもうすぐ来るから頑張ってね」

 

 「おう! お前も武神が斃れる瞬間を見ていくがいい!!」

 

 うん、本当に頑張ってほしい。

 何せもしかしたらヌルヌルの武神が現実のものになるかもしれないのだから!!!

 

   

 

 

 うん、やっぱり無理だったか。

 指弾くらい何とかしろよ!!

 

 「おい、むっつり。そんなに悔しそうにするなよな~」

 

 うん、後ろとられたね。

 まあ、気配消してたわけじゃないから気付かれて当然か。

 

 「いや、男なら期待するでしょ」

 

 「おお……、真顔でとは、うん、むっつりではないな」

 

 まあ、機会がなければがっついたりしてないからむっつりだと思われたのかな?

 

 「僕は結構オープンな方でしょう? 現に先輩のスキンシップ楽しんでるし」

 

 てか、この人ライン跨ぐと結構くっついてくる人なのね。

 

 「ほう、弟よりも素直だなぁ。まあ、あれだけ熱くぶつかり合ったんだ、この程度じゃあ照れないか」

 

 「はい、あれはお互い足腰立たなくなりましたね」

 

 周りが殺気立つがもちろん決闘のことです。

 

 「本当に動じないなぁ。可愛げがないぞー!」

 

 「まあ、先輩くらいの美少女ならいつでも大歓迎ですし」

 

 からかいたくて仕様がない駄々っ子をあやしながら学校に向かうことになった。

 途中、聖域の中の布地の色を指摘したら真っ赤になって殴られました。

 

 

 

 

 学校についたら、何やら臨時全校集会が行われるようだ。

 まあ、あれだけ騒がれていれば当然か。

 

 「それでは、葉桜 清楚、あいさつせい」

 

 なんでも6人いるらしい転校生の最初の一人が呼ばれた。

 

 ―――オオ!!!

 

 周りが非常に湧いている。

 確かにそうなってもおかしくないくらいの美少女である。

 が、

 

 「…………うぇ……」

 

 「どうかしましたか? 顔色が悪いようですが」

 

 心配してくれた葵に手を振ることで答える。

 なんだあれは? 

 整合性が採れていなくて気持ちが悪い。 

 いや、武神とかはこれで何にも感じないのか?

 あれ、威圧感やら積み重ね、武の匂いが全くしないのに化け物級だぞ?

 自己紹介を聞いている限りでは自覚すらしていない。

 ああ、アンバランスすぎて気分が悪くなる。

 

 

 途中コントじみた遣り取りも含めた自己紹介の間で何とか直視できる程度までは慣れたが、やはりあまりいい気分じゃないな。

 

 「……美人なんだけどなぁ」

 

 うん、見た目は間違いなくぴか一だ。

 

 「ああ、お前もそう思うか」

 

 と、独り言に返事があった。

 

 「やっぱり育ちすぎだよなぁ……、あと10年早く会いたかったぜ。高坂もそう思うだr、うおおお!!?」

 

 「一緒にするなロリコン」

 

 っと、気分が悪くなってて自制が利かなくなっていた。

 でもこれは投げ飛ばしてしまっても仕方がないと思うんだ。

 小雪もけりで追撃してるし。

 

 そんなコントをしている間に次は2年S組に入ってくるという3人が紹介されるみたいだ。

 

 「武蔵坊 弁慶、源 義経、両方女性じゃ」

 

 学長の紹介と共に姿を現す二人にまたも生徒一同、特に男子が湧いた。

 うん、眼福ではあるが、隣にいる葉桜先輩にまだ慣れないせいでテンションが上がらねぇ。

 ていうか、葉桜先輩が一番おっかないだろう。

 なんだあの人は、魔王かなんかか?

 これもう日本の偉人だったら信長とかそのあたりじゃね?

 

 「那須 与一! でませい!」

 

 どうしても、葉桜先輩のことが頭から離れないでいると3人目が来なくて周りがざわついている。

 そんな中、弁慶の飲sy……ゴホン! 飲川神水、川神水! 川神水!! 大事なことなので3回言います。

 が話題に上がり周囲が対抗意識を燃やしている。

 

 「あれ? 3人Sに入ってくるんだよね? 俺1か月分くらい居なかったから強制Sオチとかないよね?」

 

 「南無……」

 

 「あははー、トラのことは忘れないよ~」

 

 「な…んだ……と?」

 

 唐突に気が付いてしまった事実。

 そして準とユキの反応に両膝を着いてしまう。

 

 「こらこら二人とも。大丈夫ですよ高坂君。あなたの欠席は怪我と言う考慮に値するものですから単純に成績順でのものになるはずです」

 

 「本当か!? ああー焦ったー」

 

 まあ、別に落ちたら落ちたなのだが、なんとなく悔しいじゃん?

 と、不安を払拭していると何やら演奏が聞こえてきた。

 と言うか、この気配って……。   

 おんなじ顔の執事が橋を作っていく光景すらどうでもよくなるほど禍々し……ゴホン! 力強い気を感じる。 

  

 「我、顕現である」

 

 そう言って現れたのは九鬼 紋白、九鬼兄弟の末っ子である。

 この人がここにいるってことは間違いないなぁ……。

 隣ではしゃぐロリコンすらどうでもよくなってしまう。

 ああ、僕今遠い目をしてるんだろうなぁ。

 あの後ろに立ってる執事は間違いないよなぁ……。

 あ、こっち見て口元釣り上げやがった! なんて嫌な笑いだ!

 うお! 殺気が飛んできた!

 

 「新しく1年S組に入ることになりました、ヒューム・ヘルシングです。皆さんよろしく」

 

 ああ、あの爺、よろしくの時明らかにこっち睨んだよ……。

 注意の向け方が武神と半々じゃねえか。

 そこは武神だけ見とけよ!!

 ほら、武神もなんか挑発的なことを言ってあの爺の注目を一身に背負えよ!!

 そんな願いもむなしく、最後までせいぜい値踏みする程度の二人だった。

 

 

 

 




以上でした。
見捨てずに待っていてくれた方本当にありがとうございます。

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