せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どもども、今日も上げられました。
それではどうぞ。


第二十三話 東に渡る燕一羽

 「俺は星龍。愛も情も許さない……、いざ勝負、川神百代!」

 

 はいはい、ワンパンワンパン。

 川神の変わらぬ朝だ。

 

 「見ているな! 高坂!」

 

 あ、なんか呼ばれて―ら。

 あの人だんだんこっちに絡むの多くなってないか?

 正直常日頃から相手してると身がもたん気がするんだよなー。

 

 「はいはい、お疲れでーす」

 

 とはいえ名指ししたうえで逃げ切れるはずもないので声をかけておく。

 

 「なんだー、気のない挨拶だな。朝から注目していた美少女に声をかけられたんだ。もっと嬉しそうにできんのか?」

 

 「直江! 君に決めた! 僕の壁になってくれ」

 

 見える範囲にいた、おそらく物理受けに振ったであろう男を身代りにするべく声をかける。

 俺!? などと驚いているが、これは君の管轄だ!

 しかし、個体値バグの相手はお気に召さなかったようでより絡んでくる。

 

 「おいおい、あれだけ執着してくれたのにそれはないだろー!」

 

 くそ! 直江に絡むより力加減考えなくていいからって味を占めてやがる!

 てかお姫様抱っことは!

 怪我してるし楽でいいかもしれない。

 

 「運ちゃん、川神学園までヨロシクー」

 

 「な! 恥ずかしがらないだと!!」

 

 今まで被害にあっていたであろう男は戦慄していた。

 

 「リンリンリリン、リリーン♪」

 

 と、あー来たよ。

 あの先輩苦手なんだよなー。

 

 「おお見ろモロ! 葉桜先輩だぞ清楚だなぁ!」

 

 「ほんとだ……、自転車から降りる仕草も絵になってるねぇ」

 

 僕にとっては不安を掻き立てる抽象画だよ。

 それでいて美しいから余計怖い。

 

 「モモちゃん、こんにちはー」

 

 「清楚ちゃんこんにちは! おっぱい揉んでいいかな」

 

 でた、流石です武神さん。

 てか、口説こうとするのはいいけど投げ捨てんなよ!

 仮にも怪我人だぞ!

 なんて、片手で着地から体を起こしてロンダート、もちろん着地は無事な方の足で。

 

 「「「おおー!!」」」

 

 あ、ちょっとした歓声を浴びてしまった。

 

 「すごい! 身軽なんだね!」

 

 「あ、どうも」

 

 そして注目してほしくなかった方からお褒めの言葉を頂いちゃったぜ。

 

 「ギギギ……、私の清楚ちゃんが……! 殺す!」

 

 「グググ……、俺様よりアピールしやがって! 殺す!」

 

 色欲強い獣二匹がこっちを見てるぜ。

 助けてまゆっちー、とまた目で助けを求めてみると今回は狼狽えずにこっちに来てくれた。

 

 「高坂さん、肩をお貸ししますね」

 

 あ、けど助け求めた理由は伝わってなかったみたい。

 まあ、いい感じにフェードアウトできたから良しとしよう。

 まゆっちはええ子や。

 てな感じで、葉桜先輩が自転車に乗って先に行くまで由紀江ちゃんと隅っこで会話をしておいた。

 てか、人工知能付き自転車って、九鬼って言えば何でも許されると思うな!

 

 「んー? 今の見た? かなりさりげなかったけど」

 

 「俺様は見えなかった……、パンツ何色だった?」

 

 「……ピンク」

 

 「そうじゃなく……え?」

 

 ぼそりというと一斉に僕に注目が集まった。

 うん、鍛え抜かれた観察眼ってやつだよね。注 使用法を間違えています

 

 「なななな、なんだと!? 私は気づかなかったぞ!!?」

 

 「おおおおお、おい! 真剣か!? 真剣なのか!?」

 

 さっき僕にすごい敵意を向けていた二人が打って変わって崇拝するかの目を向けてきた。

 うん、僕が言うのもなんだけど、引くわー。

 

 「おはよう、みんな」

 

 いいタイミングで義経ちゃんが通りかかってくれました。

 おかげで色魔二匹は新しい美少女の方へ注目してくれた。

 なんだろう、刀もってる子っていい子が多いな。

 和気藹々と会話してる中、なんか奇跡的に島津のアプローチがいい方向に向かったかと思った時、後方から敵意が向かってきた。

 

 「危ない! 義経!!」

 

 そう言いながら義経ちゃんをこっちに引っ張る。

 義経ちゃんを抱きすくめた瞬間

 

 「いっただきぃぃぃぃ!!!!」

 

 バイクが猛スピードで通り過ぎて行った。

  

 「あ、あああ、ありがとう、高坂君!?」

 

 抱きすくめられてテンパりながらもお礼を言う義経ちゃんマジ可愛い。

 なんて思っていると

 

 「いや、きっちり鞄とられてるぞー」

 

 呆れたように声をかけてくる武神。

 shit!! ひき逃げじゃなくてひったくりかよ!! 対応ミスった!!

 しかも由紀江ちゃんの斬撃はじくくらいの硬度があったようだ。

 

 「主の持ち物を盗むとは、許せないな」 

 

 次いで、弁慶の投げた小石もはじかれた。

 へー、なかなか。

 おー、ワン子ちゃんが追いかけてる早いなー。

 

 「高坂はなんかやんないのか―?」

 

 風間がこっちを期待した目で見てきたが。

 

 「いや、無理無理。怪我してなくてもこの距離は僕にはお手上げだよ」

 

 人選を間違えてるよね。

 てか、どうせ武神いるし荷物位なら緊張できんなー。

 

 「クラウディオ! ソドムの弓矢あるか?」

 

 あ、与一がなんかやるみたい。

 おー、でっかい弓だなぁ。

 何気に飛び道具も鬼門だよなー僕。

 

  「お前は生と死の境界線を彷徨うだろう……、奥義! 七大地獄への誘い(ワールド・ツアー)!」

 

 おおー、当たったー。

 スゲーな、ネーミング含めて。

 とりあえず直江を見つめておこう。

 おお、悶えてる悶えてる。

 

 「んでー、いつまで主を抱いてるつもり?」

 

 「あ、あうあう~~」

 

 あ、いけね、忘れてた。

 役得役得。

 

 

 

 

 学校でいくつか授業を受けた頃、なんか化け物っぽいのが学校に来たようだ。

 しかもこれ、ニューフェイスっぽいぞ。

 くっ! いったいこの川神に何が起きているというのだ!?

 まさか! 組織の介入か!?

 ……KAWAKAMIの平常運転な上に与一の真似はあんまり自分にやさしくないな……。

 これは、屋上かな?

 一応向かってみるかなー。

 と、その道のりで見かけない美少女と遭遇した。

 

 「お? どうしたの? お姉さんに何か用かな?」

 

 あ、この人強いね。

 初対面の僕に対してこれだけ警戒できるってこたぁ、見て取れる実力だけじゃなく観察力か事前情報の収集がばっちりってことだね。

 

 「いえいえ、なんか見かけないバケも……ゴホン! 強い気を感じたもので一応見ておこうと思いまして」

 

 「ありゃー、上手く隠してたつもりなんだけどなー。バレちった。てか、女の子にそれは失礼じゃない?」

 

 あ、ばっちり聞かれてたね。

 まあ、気配に関しては確かに大勢は気づいてないみたいね。

 

 「まあ、敵意もないんで気付いてるのは学園長とルー先生と九鬼の執事二人くらいじゃないですかね?」

 

 「うん、その中に名を連ねられるって相当だよね? そんな君のお名前を聞いてもいいかな? あ、私は松永 燕、今度この学校に転校してくる西の武士娘だよ」

 

 ふーん、転校生なんだ。

 それに確かにあんまり心臓にやさしくない面子の末席に入ってい待ってるみたいだ。

 てか、この学校の戦力はどう考えてもおかしい。

 

 「どうも、初めまして。高坂 虎綱と言います。趣味は特にないですね。一応柔術をかじっていますので機会があればぜひ手合わせを。ってとこですかね」

 

 「うん、トラ君だね。覚えたよー。手合わせは……、まあ、公式戦じゃなければいつかね」

 

 おお、いきなりあだ名か。

 まあ、いいんだけどね。

 

 「それじゃあ、お近づきのしるしにこれを。またねー、ナッ、トウ!」

 

 そう言って松永先輩に渡されたのはカップ納豆だった。

 ……ネバネバな松永先輩、うん有りだ。

 




以上ですありがとうございました。
さて、昨日の誤字がひどかった点について、見苦しい言い訳のコーナーです。
見て呆れても責任はとれません。

書き終わる寸前位にバイト先から連絡が入ってしまいまして一度も見直さずにあげてしまいました。テヘペロ
まあ、元々誤字に定評のある作者なのであんまり変わってないかもしれませんが。
 
これからもお見捨てられないようよろしくお願いいたします。

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