せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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こんにちはー。
一話にまとめようと思って書いてた水上体育祭編ですが途中まで書いていてちょいいつもに比べて長くなりそうだったんで途中で切ることにしました。


第二十六話 水上体育祭前編

川神院にていつも通りの組手をしていると、僕以外にも外部参加者が来たようだ。

 

 「およ? トラ君じゃないか。君も川神院の門下生だったの?」

 

 「あー、違うぞ。あいつもお前と同じ外部参加者だ。もっとも年季が違い過ぎて下手な門弟より長いけどな。てかトラ君ってそんなに仲良かったのか?」

 

 松永先輩登場。

 体操服でここにいるってなんか場違いな気がするなー。

 

 「どうも。外部参加者と言っても組手の相手をお願いしているだけですけどね」

 

 「おい、高坂―。お前も燕寝取ろうってのかー? 弟といいお前と言い生意気だぞー」

 

 「へー、ていうか今やってたのそうだよね? よくもまあ片足不自由なのにあんなことできるねー」

 

 品定めする目をしているなー。

 

 「どうも、松永先輩もどうですか?」

 

 「うーん、怪我人相手っていうのもなぁ。ホントーに軽くだったらいいかな?」

 

 「おい! 無視するな! いつの間に仲良くなったんだよー?」

 

 おう、意外と必死だな武神さんよ。

 

 「いや、二回会ったくらいですよ?」

 

 「うん、私が下見に来た日とこの前の日曜日の二回だね」

 

 「むー、なんか息合ってて疎外感だぞ。よし! 私もトラって呼ぶぞ!!」

 

 いや、そんなのどうでもいいんですが。 

 それに息が合ってるというよりは探り合いの協定みたいのが無意識に働くだけで……。

 あ、なんかアイコンタクトされた。

 

 「やだな~、モモちゃん。そのあだ名は私とトラ君だ・け・の呼び名だよ?」

 

 「な!?」

 

 「いや、普通に他にも呼んでる人いるから」

 

 椎名とか小雪とか辰子さんとか、機会は少ないが生徒会長なんかもそう呼んでるし。

 

 「えー? ノリ悪いなー。せっかくアイコンタクトもしたのに無視はひどくない?」

 

 「いや、からかうのはいいけどなんとなく変な地雷踏みそうな気がして」

 

 「つ ば め~~?」

 

 ほら

 

 「およ? ちょっと想像以上かな?」

 

 冷や汗を流しながら言う松永先輩。

 

 「いや、その子意外と寂しがり屋みたいだから、その手のからかいするときは細心の注意がいるみたいなんですよ」

 

 「そう言うのはもっと早く知りたかったな……」

 

 「お前ら……好き勝手言ってくれるな?」

 

 あ、やべ。

 飛び火してきたよ。

 うがー!!と吠える武神を、鉄心さんが止めに入るまで二人で迎撃することとなってしまった。

 じゃれ合いとはいえ百人組手より疲れるってどんだけだよ?

 

 

 

 ――――

 

 

 週末、義経たちの決闘相手の選抜を終えた後のことだった。

 

 「おい! 聞いてるのか? 弟が燕に寝取られそうなんだ!!」

 

 武神が管をまきに来た。

 なんでも直江が随分と松永先輩に懐いているようでご不満のようだ。

 いや、僕にどうしろと?

 

 「――ていうか寝取られ寝取られって、その土台となる事実ないんだから言われてもしょうがないだろ」

 

 「なんだとー!?」

 

 あ、口に出てた。

 まずいなー、愚痴って一度全部吐き出させる前に口出すとボルテージ上がって長引くんだよな。

 

 「いいか!! 手塩にかけて育てた弟を燕とはいえぽっと出のお姉さんにとられたんだぞ――」

 

 あー、いつまで続くんだろう?

 しかもなんかよくわからんけど町の一か所に強い気が7つくらい集まってるけど大丈夫か?

 武神愚痴に夢中で気付いてないけど。

 

 「――そりゃな、燕はいいやつだけどな? それでもあんなに簡単にホイホイと着いていくようには――」

 

 いやー、寝取られって言葉が両性に使えるとは流石武神さんですよねー。

 

 「――あんな風に年上に餌付けされるとは――」

 

 あー、直江にメールしとこー。

 現状軽く書いて―と、

 

 ぶん投げられるのとこれ何とかするのどっちがいいか選べ

 

 っと、そーしん☆

 

 「――そもそもあいつとは一生舎弟だという契約を――」

 

 と、返信が来た。

 

 『ごめん、無理。本当にごめん。

  今度なんか埋め合わせするから耐えてくれ。

  ps今日俺たちの集まりあるから夜までには終わると思うから頑張ってくれ』

 

 よし、今度は手加減せずにおごらせよう。

 

 

 結局本当に暗くなるまで愚痴を言って去って行った武神であった。

 

 

 

 ――――

 

 

 そんなこんなで、武神がいつもよりまとわりつくことが多くなった次の週。

 

 「水上体育祭のはじまりだぜーーーー!!」

 

 おそらく島津の声だろう。

 似たような雄叫びがそこら中から聞こえている通り今日は川神学園名物のスク水まつ……ゴホン、水上体育祭である。

 膨らみかけではなく膨らんだ結果のスク水ってとってもエロいよね。

 うちのクラスなんかはどう見てもイメクラなメイドが…… キンッ!

 おおう……、苦無が飛んできやがったぜ。

 いやー、出番の少ない暗器類が役に立った。

 来ると思ったから防ぐ準備していました。

 

 「あれ? 高坂は出ないのか? まあ、怪我はしてるがお前なら出ると思ってたんだが」

 

 「おわ!? 海坊主!?」

 

 「いや! 確かに禿だけどさ!! って、禿みとめちまったじゃねーか!!」

 

 とりあえずはお約束を一つっと。

 

 「うん、義経は安心したぞ。高坂君はすぐに無理をするからな」

 

 「とは言っても私たちの挑戦者の相手は続けているみたいだけどね~」

 

 「いや、お遊びで怪我悪化させるわけにはいかないじゃん?」

 

 当然だ。

 

 「……何だろうな、これがなんかの大会前とかだったらスポコンっぽくてかっこいいんだが……」

 

 「アハハ~、トラが言うとね~」

 

 「ええ、普段片足で武芸者の相手しているのを見ているだけに」

 

 「正気とは思えぬな」

 

 おお、みんなして酷い。

 家のクラスってこんなに仲良かったっけ? 

 て、位結束してやがるぜ。

 

 「失礼だなー、でも一応参加するよ? 午前の部の釣り大会。競技見学しながら糸でも垂らしとくさ」

 

 「あ~、いいね。私もそれ出ようかな」

 

 あ、弁慶が釣れた。

 と言うわけで、午前中はまったりと釣でもしていればいいさね~。

 

 

 

 と、思っていたが。

 

 「うおおお!! フィッシュ! フィィィィッシュ!!!」

 

 非常に騒がしい男もこの競技に参加していた。

 

 「おお! 高坂に弁慶じゃねえか。英雄が相手とは燃えてきたぜ!」

 

 「……まあ、僕たちはゆったりやってようぜ」

 

 「……そうだね。できればいいけどね」

 

 予想通り、僕たちが釣ったり風間が釣れたりするたびに騒がれてあんまりゆったりできませんでしたとさ。

 

   

 

 そうしてお昼時。

 ていうか、風間釣り上手すぎ。

 全く歯が立たんかったわ!

 それでもがんばって二位につけてやった。3時間で20匹はかなり調子がいいと思ったんだけどなぁ。

 

 「英雄様! 新鮮な食材をお持ちしました」

 

 相変わらず九鬼さんは騒がしいぜ。

 そして新鮮さなら負けはしないはずだ!

 釣った魚を捌きながら少し対抗意識を燃やしてみた。

 

 「高坂虎綱。こっちは終わりましたよ」

 

 「おお、流石軍人。サバイバル慣れしてるね」

 

 マルギッテも手伝ってくれている。

 ……軍用ナイフで。

 いや、まあいいんだけど、なんだかねえ。

 

 「んじゃ、塩ふって焼こうか」

 

 「ええ、焼けるまでの間、私の分の昼食も分けてあげましょう」

 

 そう言って卵の一つを差し出してきた。

 まあ、貰っておくか。

 

 「ありがとー、てか二つしかないのにいいの?」 

 

 「釣った魚を分けてもらったのです。気にしなくていい。今日のはいつもより豪華だ。心して食べなさい」

 

 「にょほほ、なんじゃ、高坂よ、結構な量ではないか。仕方がない。此方もお呼ばれしてやろ―――にょわあああ!!!」

 

 二人して殻を割ったころに心が匂いにつられてやってきた。

 と、思ったら涙目で叫びだした。

 

 「な、な、な、なんじゃ! そのグロい卵は!!」

 

 「おお、珍しいね。バロットじゃん。あれ? バロットってアヒルの卵限定だったかな?」

 

 「孵化直前の状態です。普通の卵より栄養価が高い優れものだ」

 

 二人して齧る。

 あ、これかなり直前だな、かなり歯ごたえが強い。

 

 「ふむ、高坂に渡した奴の方が成長していたようですね。食べにくくないですか?」

 

 「あー、ちょっと骨が硬いけど大丈夫だよ」

 

 「そうですか。お、この小ぶりなのは焼けたようですが」

 

 「和やかに話すのではないのじゃぁぁぁぁ!!!!!」

 

 とっても騒がしい心であった。

 

 




以上です。
前半で強い人が集まってるっていったのは某梅屋です。
原作知っている人ならわかる集結イベですね。

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