せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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Sルートにするにあたってこのお話がまず出来上がったという武神VS燕です。


第三十話 若獅子タッグマッチトーナメント後編

 うえ、残ってるチームって化け物どもも結構いるなー。

 棄権してよかったような戦いたかったような……。

 まあ、次の相手が一子ちゃんのとこか,我が級友の女子二人だから流石につぶしてまでってのは可哀想だったしなー。

 何せ相方が主催者でありどっちかっていうと優勝賞品になってる武神側の人間だし。

 二回戦が義経、弁慶、松永先輩あたりの組であれば危険はするにしても戦いたかったかなー。

 まあ、あのマントも返したことだし呑気に観戦でもするか。

 

 「おー、力任せに与一を投げつけた!! あれは痛いだろうなー」

 

 「いや、痛いで済む問題じゃないだろう……」

 

 ん? あー、弁慶たちが勝ったんだ。

 解説の二人、以外と良い組み合わせだなー。

 常識外れをそのまま解説する武神と、それを多少は一般人向けにする石田。

 楽しめるなー。

 

 「あー、そうだ。トラ! まだいるだろー? ちょっと頼みたいことがあるから実況席まで来てくれー」

 

 ん? 試合の合間に呼び出しくらった。

 なんだろうね?

 

 「どしたの? モモ先輩?」

 

 「おー、来たか」

 

 「久しぶりだな。息災そうで何よりだ。交流戦の借りを返す機会はだめになったがまあいいだろう」

 

 「おー、おひさー」

 

 なんかすっげーそうは聞こえないけど石田も歓迎してくれているようだ。

 心なしか表情もやわらかい。

 

 「あー、それでだな、お前にエキシビジョンマッチの解説頼みたいんだよ。他のマスタークラスには会場の保護に回ってもらいたいしな」

 

 ああ、なるほど。

 マスタークラス同士の戦い実況できそうで、そう言った方向だと戦力外だからな。

 うん、妥当な人選だね。

 

 「いいよー。やっとく」

 

 「頼んだぞ」

 

 そして、そのまま二人のそばで試合観戦。 

 試合は、弁慶と辰子さんのデス・ミッショネルズと松永先輩と直江の知性チームだ。

 直江狙いが定石だと思うけどあの二人とは結構親しいみたいで松永先輩一人狙いになってる。

 あー、結構きつそうだけど一人倒せば勝のルールだから絶体絶命ってほどではないか?

 って!!?

 あ、あれは!!?

 

 「キンニ〇バスター!? キンニ〇バスターじゃないか!! あの技をまさか現実で拝めるとは!! 辰子さーん!! かっこいいー!!」

 

 おっと、ついマイクを奪って叫んでしまった。

 あ、辰子さんがこっち見て笑ってくれた。

 

 「おい、マイク……、てかさっきもやってただろ?」

 

 「真剣で? 九鬼の方行ってて見てなかった」

 

 「まあ、気持ちはわかる。この出世街道を歩む俺でさえ先ほどは興奮してしまったからな」

 

 だよな?

 男ならこの気持ちわかるよな?

 ブレーンバスターが一応あるけどやっぱりあの跳躍からして別もんだな。

 って!!?

 

 「今度はリ〇ンジバスターだと!!!? なんだこの試合は!? 超人プロレスなのか!?」

 

 「おお! まさか忠実にあの返し技を使うとは!! 素晴らしい! 西から来たかいがあったというものだ!」

 

 興奮する俺と石田。

 

 「決まった! 勝者知性チーム!!」

 

 そのままあの伝説のやり取りが決まった。

 

 「おおー!! 松永せんぱーい!! ハ〇ケーンミキサーも見せて!!」

 

 「いや、ちょっと待て高坂よ。この展開をやるのは本来200万パワーズ(島津・長宗我部)がやった方が美しかったのではないか? と言うよりなんでミッショネルズにキン〇マンが……」

 

 「あー……、まあ、その様子なら解説は大丈夫……か?」

 

 しばらくの間石田と盛り上がっていた。

 因みに次の試合はバランスのいい椎名と義経の源氏愚連隊と知性チームだったが、直江への攻撃を迷う椎名のサポートがなくなった義経を松永先輩が倒した。

 うん、さっきの試合が楽しすぎて普通に見るだけだったな。

 

 そして、優勝した知性チームのインタビュー中、松永先輩が直江にキスをした。

 おー、やるねー。

 

 「お、オイ!!」

 

 お、隣の武神が動揺してる。

 ん? 松永先輩がこっちチラ見してほくそ笑んだのか?

 誰も気づいてないけど、なるほど悪女だ。

  

 

 そして始まるエキシビジョン。

 おお、試合前から武神に勝てるとか言っちゃってるよ松永先輩。

 まあ、どうなるのかね。

 

 「えー、解説変わってミステリータッグ技の二号こと高坂虎綱と」

 

 「引き続き石田でお送りする。さて、高坂よ、松永は何やら準備と称して何かしているようだが……」

 

 「装着!」

 

 松永先輩の声とともに光があふれた。

 そして光がやんだ後には……

 

 

 

 何やらピッチりとした戦闘服に様変わりした松永先輩がいた。

 

 「おお! バッフ〇ーマンの次は変身ヒーロー!? 松永先輩よ! あなたはどれだけ男の子の夢をかなえてくれるんだ!!」

 

 「うむ、まあ、今回はフルフェイスではないのがちょっと残念だな」

 

 あ、確かに。

 それでもやっぱり会場が湧いている。

 やっぱりいくつになっても変身ものって目にすると興奮するよね。

 

 「それでは! はじめ!!」

 

 あ、始まった。

 

 「そーーーら!!」

 

 「あー、最初はモモ先輩の一撃ですね。あれで一体幾人の挑戦者を葬ってきたのか」

 

 「うむ、確かにすさまじいな。しかし、勝てるといったのは伊達じゃないのか松永もしっかり受けている。む? 松永の手甲は武器らしいな。スタンガンか?」

 

 石田の言う通り電気を出したようだ。

 

 「そうみたいだね。でもあの武神相手にあんなの効果あるのかね?」

 

 「おお! あれが噂に聞く瞬間回復か。あれは脅威だな」

 

 「でも、勝てると言い切ったからには対策があるのかね?」

 

 「おお、武神は30回くらいが限度だと言っているぞ」

 

 「あー、回復するものの程度にもよるけどそんなもんかね? 僕の時はちまちまとしたのも回復してたからもうちょっと使ってたけど」

 

 「ほう。……って!? ちょっと待て? その口ぶりからするとお前破ったのか!?」

 

 「あー、結局最後は自力で劣ってたから負けちゃったけどね」

 

 「……通りでこの俺が不覚を取るわけだ」

 

 いや、あれはそんな段階じゃなかったけどね。

 て、言うか松永先輩それが切り札なのかな?

 だとしたら期待外れだな。

 

 「おお! 松永は持久戦に備えてか的確によけながら反撃を見舞っているな」

 

 「まー、あのチート相手じゃそれくらいしか方法ないでしょ。一撃必殺持ってる人なら別だけどね」

 

 うん、スペック違うから迫力が違うけど僕の時の焼き増しだな。

 てか、武神荒れてるなー。

 研究のために友情を偽った?

 ぶっちゃけ僕もそう変わらないだろうに。

 まあ、依頼どうこう話してたからビジネス的なの感じて不機嫌なのかな?

 

 「おお!? 自爆技? これは流石武神と言うことか」

 

 「うわー、でもあれまともに受けて松永先輩耐えたよ。僕はあれ必死に受け流して満身創痍だったのに……」

 

 「……お前もまた規格外だな。普通死なないか? あれ?」

 

 だから必死だったてば。

 

 「て、なんか松永も回復したぞ?」

 

 「あー、なるほど、あの手甲は気の操作の補助的な役割あるみたいですね」

 

 「なるほど、そうやって一つ一つのため時間を短くしているわけか」

 

 ああ、気に入らないなー。

 使えるもの使うってのは正しいけど……、武神倒すというなら自身の限りを只管に尽くせよ!

 

 「む、どうした? 少し気迫が漏れているぞ?」

 

 「いや、なんでもないよ。でもあの程度の回復量じゃあ持久戦に勝ち目は見いだせないと思うよ。あ、出ました先ほど言っていた気と言うものの最も分かりやすい形、武神の川神波です」

 

 「ふむ、流石にけた違いだな、だが松永も受け流したな。そして、また目にとらえるのも大変な攻防に戻ったな」

 

 「な!? 回復しない?」

 

 ん? 武神の回復が止まった?

 

 「どういうことだ? まだ到底三十回も回復したようには見えんが」

 

 「あー、ちょっと待って。フムフム、松永先輩が言うにはあの電気纏った攻撃で回復機能をマヒさせたらしい」

 

 「な!? そんなことが可能なのか!?」

 

 「いや、知らなかったけど実際起こってるしそう言うことらしい」

 

 

 

 

 「勝たせてもらうよ!!」

 

 そう宣言した松永先輩に上空から何やら仰々しい兵器が装着される。 

 そして先ほどの川神波のようなエネルギーが貯められる。

 

 

 「な!? なんだあれは? ものすごいエネルギーだ!! 回復できずにあれでは武神も絶体絶命か!?」 

 

 「すげー!! カッコイイ!!! ……でも、あの程度で勝利宣言とは……」

 

 「ハハハ!!! なるほど瞬間回復を破ったのは見事!! だがその程度で勝利宣言とは……」

 

 「(武神も)私も舐められたものだ!(だね)」

 

 「星殺しいいいいいいいいい!!!!!」

 

 二つの強力なエネルギーがぶつかり合う。

 しかし、それは拮抗することもなく片方に飲み込まれていった。

 そして、立っていたのは――――

 

 

 「ハハハ!! 瞬間回復などもう一度破られた技だ! 動揺して直撃していればまずかったかもしれないがそれだけだな!!」

 

 武神こと川神百代だった。

 

 「……それでこそ」

 

 マイクが拾わないように口元で呟き、心の中はやはりかと言う思いで満たされていた。

 

 「な!!? 気を封じられていたのではないのか!?」

 

 驚いている石田。

 

 「いや、体内の回復機能をマヒさせただけだと言っていたじゃないか。松永先輩の敗因は、瞬間回復が武神の真骨頂だと思ってしまったことだよ。確かに呆れるくらいチートではあるけどね。あれ無くても十分強烈なんだよ。もうちょっと自分を鍛えて瞬間回復封じたうえで変わらずちまちまやれれば勝っていたかもしれないね」

 

 あとは、なまじ武神についていけるという自負があったせいでそこに目がいかなかったんだろう。

 僕なんて瀕死の武神の一撃でも死ぬ自信があるから絶対に力のぶつかり合いなど選ばない。

 まあ、何はともあれ。

 

 「勝者! 川神百代!!」

 

 「お疲れ! モモ先輩!!」

 

 「おう!」

 

 僕の目標とするべき彼女はやはり彼女らしくあったと言うことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




以上でした。
ありがとうございました。

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