せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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ドモです、ちょいと書く時間が取れなかったんで遅くなりました。
それではどうぞ。


第三十一話 相談事の多い日前篇

 「勝ったぞー」

 

 解説席に武神が戻ってきた。

 

 「おめでとーございます。てか、松永先輩生きてる?」

 

 「ああ、あれ受けて無事な人類がいるとは思えんぞ……」

 

 「いや、お前の横にいるぞー。まあ、あれは受けてるって言葉が適当かはわからんが」

 

 うわー、もう石田が僕に向ける視線が武神に向ける視線と変わらなくなってきた。

 一緒にするな!!

 

 「あー、でも最後のあれにぶつけて勝たなきゃいけなかったからちょっと力入れ過ぎたかもな。でもまあ、表彰式までには目は覚めるんじゃないか?」

 

 「因みに僕なら多分永遠に起きれないね。だからその目止めてくれない?」

 

 「時に川神百代、あれは具体的にどのような威力なのだ?」

 

 「んー?星殺しの名の通り隕石位ならいけると思うぞ? 質量にもよるが」

 

 「ほう、つまり隕石程度ならなんとかできると? 化け物だろう!!」

 

  化け物だと!?

 

 「失礼な! 質量あると無理だよ! 潰されるわ!」

 

 「あー、確かに貧弱ではないが筋力は物足りないからなー」

 

 けらけらと笑う武神。

 

 「……論点が違うというわけではないが、なんと言うか次元が違うな。俺もかなりのものだと自負していたがまだまだか……」

 

 悟りを開いたような顔をしている石田。

 っく、違うんだ石田、化け物っていうのは自力で空飛んだり走ってる車切り裂いたりするやつのことを言うんだ。

 

 「……うっぅうん」

 

 あ、松永先輩目が覚めたよ。

 本当にこんな早く復活とか、ああいうのを化け物っていうべきだよな、うん。

 

 「……ぁあ、負けちゃったか」

 

 そう一言ぼやいた後、

 

 「負けてしまいましたが、この大会で優勝できたこと嬉しく思います! これからも納豆のように粘り強く頑張っていきます! みなさんも松永納豆をよろしくお願いします!」

 

 普段通り笑顔で宣伝していた。

 

 「…………」

 

 「ん? どうした? 川神百代」

 

 あー、やっぱり心揺さぶる出来事だったみたいだし、心のどこかにひっかかってるんだろうなー。

 青春ってやつですかねー。

 

 「なあ、トラ、あとでちょっと時間獲れるか?」

 

 「ん? いいですよー。この後九鬼でちょっと用事済ませた後だから時間かかりそうなら夕方過ぎでいいですか?」

 

 「ああ、ありがとう」

 

 「ふむ、そうだ高坂よ、丁度十勇士がこちらにそろっているんだこの後少し戦っていかんか?」

 

 おお、いいお誘い。

 

 「おー、いいね。この後すぐでいいかい?」

 

 「おい! 私の用事は後回しで戦いの誘いはすぐかよ!」

 

 「いや、むしろこれは俺たちの相手なら時間がかからないといわれているのか?」

 

 二人が突っかかってきた。

 さあ、どっちでしょう?

 

 

 ―――――

 

 結局、十勇士は9タテにさせてもらった。

 何気に大友ちゃんが危なかったよ。

 いやー、火薬に制限なかったりしたら危ないね、全方位攻撃は力逃がす余裕ないから大変だ。

 大村は相変わらず戦おうとしなかったなー。

 石田はあれだ、スペックに体ついてってないなー。

 制限解放技の弱点だろうね。

 そんなこんな、今回協力してた九鬼に顔を出しに来た。

 

 「来たか小僧」

 

 「ご苦労であったな高坂よ!」

 

 いつも通りな二人に

 

 「……おお、高坂か」

 

 元気のない紋ちゃん

 

 「やほー、トラ君」

 

 「んー? 皆知り合い?」

 

 知らないおじさんと松永先輩がいた。

 あー、こっちも立ち直れてないわけね。

 

 「どもー、松永先輩の横にいる人はどちら様で?」

 

 「あー、これ家のオトン」

 

 「どもー、松永 久信って言いまーす。発明家みたいなことやってるんでヨロシク」

 

 「初めまして、高坂 虎綱です。それでお二人ともどうしてここに?」

 

 「いやー、九鬼の依頼に失敗しちゃったからね」

 

 「それでも腕は認められて何とかスポンサー続けてもらえるみたいで一安心してたところさ」

 

 ああ、そう言えばそんなことも言ってたなー。

 

 「でも、公式戦無敗は崩れちゃったな……。今までせっかく順調に名を売ってたのに」

 

 ふーん。

 

 「まあ、それはともかく、お前の協力もあってこの大会もつつがなく終わらせられた。礼を言うぞ。話はとおしてあるからいつも通り従者部隊の訓練場に顔を出すといい」

 

 「どうもです。それじゃあ失礼して」

 

 「待て、小僧。終わったら俺のところに来い。話がある」

 

 今日は話もちかけられること多いなー。

 

 「あ、揚羽さん。私もちょっと訓練にお邪魔してもいいですか?」

 

 「む? ああ、別にかまわんが」

 

 あー、なんかこっちも似たような雰囲気?

 僕に相談事って向いてないと思うんだけどなー。

 

 

 

 移動中、案の定松永先輩から声をかけられた。

 

 「ねえ? トラ君は私のことどう思う? どこを間違えちゃってたのかな?」

 

 「いや、なんで僕に?」

 

 うん、そんな重そうなこと聞かされるほど仲良かったっけ?

 

 「もー、女の子の話は優しく聞いてよね」

 

 む? これがフラグと言うやつか?

 ……受け流すか投げるかしかできないからどうしようもないよね。

 

 「いやまあ、いいですけど何について聞いてるんですかね?」

 

 負けた原因? 人間関係?

 後者ならいくら美少女のぶっといフラグでも投げ捨てておることしかできそうにねー。

 

 「んー? 私もよくわかってないんだけどね。モモちゃんとの戦い含めて全部の感想聞きたいかな」

 

 感想ねー。

 

 「甘い」

 

 「うわーそーぞーいじょーにばっさりだねー」

 

 ジト目で見られた。

 

 「うん。そう言う風にバッサリ切ってくれるからこそトラ君に話してるのかもね。詳しく話してくれる?」

 

 「あー、武神甘く見過ぎでしょ? 瞬間回復どうにかすれば勝てるって思ってたのがまず敗因ですね」

 

 「アハハ―、思い知ったよ」

 

 苦笑いの先輩。

 

 「あとはまあ、戦いが中途半端ですね。せっかく武神とやりあえる力もってるんだからそれ頼ればいいのに、要に兵器使うってのはいただけないでしょ」

 

 「うーん、でもあれなしだとやっぱりあそこまで戦えなかったよ?」

 

 「使うこと自体はいいと思いますよ? けどあれ使ってどのくらい戦いました?」

 

 「んー、試運転と慣熟含めて半年程度かな?」

 

 やっぱりか。

 

 「いや、その程度のものが今まで磨き続けてたものよりも格上な相手に通用するわけないでしょう? 実際最後のビーム?もすごかったけど反撃許すタイミングで使っちゃあ武神相手じゃ持ち腐れもいいところでしょう」

 

 「むー、そうなっちゃったね……」

 

 「器用なのはいいと思いますけど使いどころ見極められていない武器なら無い方がましですよ?」

 

 あれじゃあ玩具に引きずられているだけだ。

 やるんなら自分の一部にしてからじゃないと。

 そうすればそれ含めて自分の力だと胸張れるのに。

 

 「……何も言わないんだね?」

 

 ん?

 

 「研究のためにモモちゃんや大和君に近づいたこと……。せめられると思ってたんだけどな」

 

 ん?

 

 「いや、なんで?」

 

 「え?」

 

 目を見開く松永先輩。

 

 「いや、武人なら―とか、卑怯ーとか外道ーとか……、思わないの……?」

 

 「いや、勝つためでしょ? それよりも公式戦無敗とかこだわって視野萎めてる方が気に障ったかな?」

 

 「あれ?」

 

 なんか心底不思議そうだ。

 

 「いや、そう言う研究なら僕もたっぷりしてますよ? あんまり予想外なことされるとお陀仏だし」

 

 「で、でも、あれだよ? 大和君とか騙した形になってるし……」

 

 「知らんがな。人間関係まで及んだら僕の管轄外ですよ? まあ、死力尽くすっていうんならいいんじゃないですかね? 実害あったわけでもなし、友達におごって~って媚びるのと大して変わらないんじゃないですか?」

 

 そもそも少し気を持たせるくらい誰でもやってるだろうに。

 悪いやっちゃなーくらいには思っても別にねえ?

 

 「……っぷ、ハハハハハハ!」

 

 ん? 

 なんかおかしなことあったかな?

 

 「いや、そんな風に言われるとは思ってなくてさ。ねえ? 二人とも許してくれるかな?」

 

 「今後次第じゃないですか? いつまでたっても無理なら縁がなかっただけかと」

 

 「アハハ、何の解決にもなってないね。うん、でも少し元気でたかな」

 

 そりゃ当事者じゃないのに解決なんてできるかよ。

 

 「それは何より」

 

 「うん、ありがとう。それじゃあ、甘いと言われないように頑張っていきましょうか! ナ、トッウ!!」

 

 あれ?

 結構力になれた?

 もしかして僕ってそこそこコミュ力あるのかな?

 

 「あ、それはないと思うよ?」

 

 心を読んで傷つけられただと?

 打ちのめされた僕を見て松永先輩は大笑いしていた。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 九鬼の従者たちとの組手が終わり、約束通りにヒュームさんのところに行くと、

 

 

 「小僧、お前が武神を倒せ」

 

 話が始まってすぐそう言われた。

 いやまあ、そのつもりだけどさ。

 




以上でした。
続編についてのご意見ありがとうございます。
まだ時間があるので本決めする気はありませんがたまに活動報告の方で何か言うかもしれないのでご意見待っています。


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