せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どもどもー。
メガネが壊れました。
呼びの奴度があってなくて見づらいです。
それではどうぞ―。



第三十五話 川原の討論

 さて、リハビリも順調だしそろそろ武神と戦ってもいい頃だろう。

 なにせ、図らずとも化け物たち相手に調整もできたんだ。

 これは非常に運がいいのではないだろうか?

 そうでも思っておかないと心が持ちません。

 新旧四天王からのリンチとか暴力執事と追いかけっことか普通トラウマものだよ。

 

 「それでトラー。いつになったら挑んでくるんだ? 明日か? 明後日か? 今からか?」

 

 ていうか武神の催促がすごい。

 川原で偶然会ったかと思ったらこれである。

 

 「よし、じゃあ、今からやりますか」

 

 いやまあ、当然受けて立つんだけどさ。

 

 「よし来た!!」

 

 闘気をみなぎらせる武神。

 ああ、やはり化け物を目の前にすると緊張感が違う。

 これ目の前にして心地よいとか感じるようになってしまった僕はもう駄目なのだろうかね。

 

 「行くぞトラ!」

 

 「来い!」

 

 やはり自分を曲げることはしないのか始まりはいつも通りの右ストレートで切って落とさ――

 

 

 

 

 

 

 「やめて! 川神院でしっかり準備してからにして!!」

 

 と言った瞬間に、第三者から静止の声がかかる。  

 

 「「ちっ!」」

 

 直江め、横槍入れやがって。

 いやまあ、場所選ばなかったのは悪いとは思うけどそう言うもんじゃん?

 決闘って?

 

 「町が壊れるわ!!」

 

 はい、ごめんなさい。

 この現代社会では流石になかったですよね。

 こんなところでビームもどきなんて大事ですものね。 

 

 

 

 

 「かーっ、モモ先輩に挑むとか命知らずだよな。タフガイな俺様でも真似できねーぜ」

 

 「いや、でもモモ先輩もこの前は追い詰められたって言ってたしもしかするんじゃない?」

 

 「そーだぜー。最強相手に何度でもチャレンジ! 燃えるじゃねーか!」

 

 そんな一幕の後、現在川原で風間ファミリーに絡まれています。

 今やるかどうかはともかくとして、モモ先輩からの催促に関してはどうせ怪我するんだしまだ夏休みの間にやっておいた方がいいよね。

 できるだけ休学したくないしな。

 て、言うかまず生き死にを気に掛けるレベルなんだよね。

 

 「えー、それでは両雄にインタビューしてみたいと思います。姉さん?」

 

 それにしてもこのノリである。

 

 「あー? 楽しみだぞ。この前は勝ったけど結局は自爆でゴリ押しだったからなー。今回はスマートに勝ってやりたいな」

 

 おおう、挑発的な目線ですね。

 別に逃げやしねーっての。

 て、言うか切り替え早いな武神。

 さっきまで飛びかかってくる一歩手前だったのにその相手の背中にのしかかっているとかどうなのよ?

 最近スキンシップ激しいけどどういうサービスなのだろうか?

 

 「自爆でゴリ押しって……。おいモロ。アニメでしか聞かないようなセリフが聞こえてきたんだがおかしいのは俺様なのか?」

 

 「いや、まあ、モモ先輩だし仕方がないとあきらめるしかないんじゃないかな?」

 

 「だよね? おかしいと思うよね? 僕も実際やられたけどひどいもんだよ? 近づいたらドッカーンって。松永先輩よくあれ耐えたよな」

 

 「「いや、お前が言うな」」

 

 解せぬ。

 

 「あうあうー。高坂君がめちゃくちゃだわ~」

 

 あ、一人トラウマスイッチ入っていらっしゃる。

 

 「大丈夫だよ一子ちゃん。ほら、僕は生きてるよー」

 

 「本当に? もうグチャグチャにならない?」

 

 「いや、それはわからない」

 

 「あわわわわ」

 

 あ、泣き入った。

 

 「おー、よしよしワン子。てかグチャグチャになるってのもそうだけど挑む前からそれを否定しないって……」

 

 「考えちゃダメだよ大和。私も昔何度か組手相手するたびに怪我増えてるのみてて実は少しトラウマ」

 

 一子ちゃんを慰める直江夫妻。

 確かに今考えると椎名には悪いことしたような気もしないではないな。

 

 「大和、もう仲人も決まったようなものだし籍入れちゃおうよ」

 

 「夫妻じゃないからね? ただでさえ燕先輩の件で最近アプローチ激しいんだからやめてくれ! お前妙に京煽るよな!」

 

 「いや、だってなんだかんだ友達の恋路は応援したいじゃん?」

 

 「ナイス! トラ!!」

 

 「クソ! 思ったよりまともな理由じゃないか! いや、ちょ? 京落ち着いて!?」

 

 よし! そこだ押し倒せ!

 

 「はあ、はあ、それじゃあ次、高坂選手の意気込みを……」

 

 ちっ、直江めしぶとく逃げおおせやがった。

 それで、まだ続けるのかこのノリ。

 結構根性あるね。

 

 「次こそ倒す」

 

 これ以外なんも言えないね。

 松永先輩じゃないけど情報晒してまともにやれる相手じゃないし。

 

 「おおう……、なんと言う簡潔な」

 

 「ハハハ! トラらしくていいじゃないか!」

 

 「ウム、武士らしく簡潔な決意ではないか! 流石は高坂、高潔な心構えだな」

 

 なんか違う気がするのが一人いますね。

むずかゆくなるような買い被りですこと。

 

 「おいおいクリス、こういうやつほど頭の中ではくだらないエロいことばっかりなんだぜ」

 

 「そうだぞー、こいつこう見えてかなりスケベだからなー。ほれほれ、美少女が抱きついてるぞー。どうだ? ん? どうなんだ?」

 

 「クソ! おいこら高坂! その位置代わりやがれ!」

 

 おい!

 色魔ども何言ってんだよ!

 正解だけどさ。

 正解だけどさ!

 そして島津よ、いくら血の涙を流そうと代わってたまるか。

 

 「何を言う! 高坂はこの前柔道について指導してくれた時もマルさんや自分をそういう目で見なかったぞ!」

 

 「それに私の父も非常に高潔な武人だと言っておりました」

 

 「パピーマジべた褒めだったんだぜ」

 

 いや、うん。

 指摘した二人もどうかと思うけどフォローされるのもちょっと心苦しいです。

 ぶっちゃけお二人ともいいからだしてまし……ゴホン。

 大成さんの信頼度の高さはどういうことだろうなー?

 

 「どうかなー? 今度の決闘も寝技でウハウハとか考えてるんじゃないのかー? なー、トラー?」

 

 「いや、あんた相手に寝技とか普通にこっちがやられるでしょ」

 

 筋力が違い過ぎて話にならねって。

 力技で抜けられるだけではなく壊される未来しか見えません。

 

 「こ、こいつ真顔で言いやがった! おい、モモ先輩の体見て何も感じねーのか!? 見ろよこの胸! くんずほぐれずしたくないのか?」

 

 「わからん……、こいつのスイッチが理解できない……。普通にセクハラまがいなことを言うかと思えばこれなのか? あとガクトは自重しろ」

 

 騒ぎ出す色魔二人。

 ざまー。

 島津は命投げ捨てていいならやってみるといいと思います。

 そんで、そらみろって感じのお二人はちょっと辛いかなー。

 そんなに大した人間じゃないんだってば。

 やめて! そんなに信頼のまなざしを向けないで!!

 こうなっては少しは男らしい(悪い意味で)ところを見せておくかと悩みだしたころ、少し複雑そうな一子ちゃんが目に入った。

 ……ああ、そうだよなー。

 目の前でこんな話されてたら君は複雑だよな。

 

 「ねえ、一子ちゃん」

 

 他の奴らが僕はエロいエロくないだの論争を繰り広げている間に話しかける。

 てか、直江と師岡が何気にヒートアップしてるな。

 お前ら自分の性癖暴露してるみたいなもんなのに気が付いていないのか?

 

 「今夜、二人で自身の十年間を見せあいっこしようか?」

 

 遊びに誘うようなかるさだなー、と思うと少しおかしくなる。

 

 「え? それって……」

 

 「うん、久しぶりにやろうか? 組手じゃなく仕合を」

 

 おそらくこれから武神に挑めばそう機会を作ることもできなくなるだろうしね。

 

 「うん!」

 

 非常にいい笑顔で返事をしてくれる一子ちゃん。

 マジ天使の笑顔だわ。

 ああ、僕たち二人はこういう形でつながっているんだ。

 だからこんな言い方だろうと一子ちゃんも本当に嬉しそうに受けてくれる。

 たまにはこういうより道もいいだろう。

 友人との語らいみたいなこの仕合に、武神との戦いとはまた違った高揚感が僕を包んでいた。

 

 

 

 それはそれとして、いつまで続くんだろうか?

 あっちの論争は。 




以上でした。
ありがとうございました。

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