せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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はい、エアストスパートです。


第四十一話 川神院強襲

 骨もうっすらとくっついて来て、補助具と細心の注意を払えば動けるようになってきた。

 なんか川神院が騒がしい。

 いや、気配で大体わかるけど、これ、道場破りか何かだな。

 うわー、門下生次々やられてるよ。

 これは修業きつくなるんだろうね。

 南無。

 

 「えー、ルー師範代と鉄心さんくらいしか無事な人残ってねーじゃん……」

 

 僕はここで寝ていて大丈夫なのだろうか?

 

 「うわ……、鉄心さん大はしゃぎってか? えげつねぇ」

 

 武神は梁山泊どうこう言ってなんかいないとか言ってたなー。

 これがそうなのかね?

 裏かかれてやがんよ……。

 まあ、もうほとんど終わってるし、一応見に行くか。

 色々お世話になってるしなー。

 うげ、いててて。

 

 

 

 

 

 

 「鉄心さんお疲れ様でーす」

 

 死屍累々、なんと恐ろしい爺様だろうか。

 

 「おお、高坂か。……来るんならもっと早く来てくれてもよかったんじゃないかのう?」

 

 「いや、怪我人ですし」

 

 「……ふう、すっかりおとなしくなったもんじゃ。少し前まで絶対突っ込んでおったじゃろうに」

 

 ふ、もう武神に勝ったからな!

 余計な怪我する必要はないのだ。

 

 「怪我人になんてことを……、て、まあおふざけはいいとしてまだ結構残ってるみたいですよ? てか、門でルー師範代が止められててヤバい」

 

 「む、そうじゃな。しかしあの力量を、三人、控えに一人では責められんわい。あー、どっかに一人二人何とかしてくれるものはおらんもんかのう……」

 

 ちらちらと眉を上下してこっちを見てくる武神。

 いや、僕川神流じゃないんですがねぇ。

 

 「はあ……、今の僕じゃあ倒せませんよ?」

 

 「わかっとるわい。じゃが、あの程度なら倒されもせんじゃろう?」

 

 いや、鈍ってるから死ぬかもしれん。

 まあ、戦場で寝てるよりはましか……。

 

 

 

 

 

 

 「どもー、押しかけ助っ人高坂虎綱ただいま参上ー、一人二人雑談につきあって~」

 

 「高坂君!? 怪我は大丈夫なのかイ!?」

 

 「いえ、できれば動きたくなかったです。って、マザコンさんじゃないですか。どもども」

 

 「ええ、母を大事にする僕ですよ。高坂さん」

 

 なに?

 これ九鬼?

 思い切ったことするなー。

 

 「ふむ、高坂君が来たとなると……、これは作戦時間がオーバーしそうですね」

 

 「おお、なら撤退してくれます? よかったー」

 

 ああ、すっげ―いやな気配してるから絶対にないだろうなー。

 

 「阿呆。ただ切り札を呼ぶだけだ」

 

 「あー、どもどもヒュームさん。……いや、ルー師範代流石にこれは無理だと思いません?」

 

 「ム、しかし、それでも折れるわけにはいかないヨ!!」

 

 うげ、まあこうなったら少しくらい付き合うか。

 流石に死にはしないだろう。

 

 「早まるなルー。俺の相手は川神百代と決まっている。それ以外に手を出す気はない」

 

 「え? じゃあ切り札ってなんすかー?」

 

 「ふ、まあじきにわかる」

 

 「へー、じゃあとりあえず一人位相手するよー。と言うことでルー師範代、さっさと倒して助けてください」

 

 「ム……、すまない。無理はしないでネ!」

 

 そう言って戦闘に戻るルー師範代。

 まあじゃあ僕もっと思ったが、なんか三人組はもう向かってくる気配がない。

 

 「……んげ、化け物級が来るじゃない。勘弁してくださいよ」

 

 「ほう、分かるか小僧。流石だ」

 

 「ぐああああああああ!」

 

 うわ、早!

 てか、バイクで轢き逃げ?

 ルー先生轢けるってどんだけだよ!?

 

 「……あー、僕どうしたらいいと思います?」

 

 そのまま川神院入って行っちゃったよ。

 ちょっと痛いの覚悟したと思ったら置いてけぼり……。

 泣ける。

 

 「ククク、まあもう今のお前ではどうしようもないだろう。見に行ったらどうだ?」

 

 はあ、何もしないで戻るのか。

 なんとなく寂しい……。

 

 「……って、うわー葉桜先輩やっぱ化け物かよ……」

 

 うー、移動だけでも痛いし時間かかるんだよなー。

 うげ、鉄心さんヤバいんじゃね?

 あの爺さんさっきはしゃぎ過ぎだよ。

 げ、おいてきたルー先生何かされてるよ。

 うわー僕なんなんだろうなー。

 そんじゃあ

 

 「あー、本当に何もして無くて情けないことになりそうだからさ、ちょっとばかり待とうかそこの人」

 

 後ろから呑気に歩いて来てる青い人だけは止めとこうか。

 

 「んー? 邪魔するの? 杖突の怪我人のくせに?」

 

 「あー、一応ね。ここで君まで素通りさせたら僕人として最低じゃん……」

 

 「あっそ」

 

 そう言いながら手に持っていた双剣を無造作に振るう。

 まあ、舐めてるし大したことないな。

 刃の腹に杖を当ててちょっとだけそらして回避。

 

 「!?」

 

 「いっつぅ!?」

 

 やべ!?

 舐めててくれててよかった。

 ビックリして追撃が来ない。

 こんなことで体固まらせるとか気が抜けすぎていた。

 

 「ふう……ふう……。あー、よし、覚悟完了。高坂虎綱、此処は通さない」

 

 「!? へー、なるほど君が武神倒した人か―。さっきまでの気が抜けた感じじゃあ分からなかったよ。梁山泊、青面獣、楊志。行くよ」

 

 とりあえず抜かせなきゃいいだけだ。

 うん、無視さえされなきゃ得意分野じゃないか。

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 あー、結論から言うと川神院落とされました。

 葉桜先輩パナイ。

 まあ、ぶっちゃけこっちの方が分かりやすい感じはしていいと思うけどね。

 

 「はあ……、はあ……。むー、時間切れかー。……逃げていい?」

 

 「んー?できれば大人しくしてほしいけどなー。ぶっちゃけ今の僕だと逃げに回られると追いつける気がしない」

 

 「ラッキー……。はあ……、君の技でもこの際いいと思ったけど結局使える技盗めなかったなー。……パンツも手に入らないし」

 

 いや、パンツって……。

 

 「あー、僕の技ってそんなに使えない?」

 

 「んー? すごいとは思うけどあんな限定的な攻撃に合わせる技なんて盗んだところで使い道ないよー。技っていうより経験の塊って感じかなー?」

 

 まあ、そうだろうな。

 型なんて盗むまでもないだろうし。

 

 「ま、いいやー。ばいばーい」

 

 そう言って去って行く楊志。

 よし、一応足止めはした。

 僕は役立たずではない。

 去っていく襲撃者たち。

 

 「まあ、これだけやらかしたんだ。すぐに人が来るだろーさね。」

 

 うん、できる限りの介抱しておこう。

 ……ごめんね、ルー師範代。

 

 

 ――――

 

 

 

 続々と集まってくる人。

 怪我人建物の中に運んでたりしたら寝ていろと怒られたでござる。

 そんなこんな一段落着いたあたりで話を聞かせろと呼び出された。

 

 「っていうことは皆の意見をまとめるとだね」

 

 松永先輩が仕切っていた。

 つまるところ、九鬼のクローンの親玉葉桜先輩こと項羽が梁山泊が強襲してきたらしい。

 項羽って覇王とか言われる人だよね?

 そりゃあおっかないわ。

 

 「フフ……疑問は尽きないだろうな赤子共」

 

 「ヒューム!?」

 

 「あ、ヒュームさんさっきぶりです」

 

 「ワオ。再度乗り込んでくるとはね」

 

 「勘違いするな。俺は特使だ。戦闘の意思はない」

 

 「え? 人選みすにもほどがあるでしょう」

 

 あ、やべ。

 

 「お仕置きしてほしいのか? 小僧」

 

 ブンブンブンブン。

 あ、首振りすぎても体が痛むよおい。

 

 「ふ、まあいい。もう少しすればマープルがテレビで演説をする。必ず見ろ」

 

 「ヒューム!」

 

 ん?

 この紋ちゃんの怒り様と、九鬼一族が人質に取られたらしいことから、今回の件は九鬼の総意ではないらしい。

 て、ことは……!?

 内部抗争!?

 そしてその筆頭ではないにしろその重要な位置にヒュームさんがいる?

 な、なんてことだ……、何てことだ!!

 九鬼に就職できると思ったら自分おしてくれている人が反乱おこしやがった!!

 くそう……くそう……!

 もう九鬼は信用できない。

 もし留年してそのあとどうしようもならなくなったらどうすればいいんだろう?

 ……武神倒したって書けば何とかなるだろうか?

 僕は例の放送が始まり小突かれるまで愕然としていた。

 

  




以上でした。

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