せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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うん、なんとなくつまりそうだから前撮りで書いていたら一話書き終えてしまった


第四十三話 作戦会議

 呼ばれた空き教室に入ると皆が何やら出勤表らしきものを見ていた。

 

 「え? なに? この状況なんなの?」

 

 どうやら梁山泊連中の出勤表らしい。

 うん、なんだろう、なんとなくいたたまれない気分になった。

 しかもそのほとんどはもう鉄心さんが倒しているらしい。

 いや、元武神もパナイ。

 

 「そんで、今までの話を聞いて策はあるか? 軍師」

 

 風間の言葉で皆の視線が直江に向く。

 

 直江の策は、まず、梁山泊と一般兵対策に有志を募り、川神学園、繁華街、住宅地、多馬大橋を起点の拠点防衛。

 これが守りらしい。

 

 「逆に攻め手だが、我が直接乗り込もうと思う」

 

 攻め手に関しては、九鬼のことと言うことで紋ちゃんがカギとなって乗り込むらしい。

 そして葉桜先輩のことになると一斉に松永先輩に視線が集まった。

 まあそうだよなー。

 あれ倒すなるとそうなるわ。

 まあ、どうせ今戦力外視されてるだろうし?

 

 「義経さんの相手は、私が志願していいですか?」

 

 そして義経の相手は同じ刀使いの由紀江ちゃんが志願した。

 この時代で剣戟とか胸熱だよな。

 

 「じゃあ、弁慶と与一は俺が止めます」

 

 そうして次に直江が弁慶と与一を止めるとか言い出した

 しかも直接城に行くらしい。

 うわぁ……。

 そしてあれよあれよと所属が決まっていく。

 

 「それで、こんな感じで行きたいと思うんだけど。……ていうかさっきから高坂が何にもしゃべらないけど、戦えなくても戦力比較の意見を聞きたかったんだけども?」

 

 ん?

 ああ、僕にも発言権ってあったんだ。

 完全に戦力外だと思ってたよ。

 

 「んー、じゃあ言うけど。大筋はいいと思うんだけど直江が城に乗り込むって本気?」

 

 「ん? ああ、そうしないとあの二人は止められないだろう?」

 

 いや、東西戦でのこと覚えてないのかな?

 

 「いや、正直足手まといだと思うよ? まあ、百歩譲って紋ちゃんは仕方がないとして」

 

 「ああ、それなら大丈夫さ、一応これでもずっと姉さんの相手していたんだぜ? 回避力には自信がある」

 

 言葉通り自信にあふれた顔の直江。

 はあ……。

 全然わかってない。

 

 「大村。当てずに6割くらいで」

 

 「……了解した」

 

 そう言うと僕の近くにいた大村がいとも簡単に直江に踏み込み、すれすれで拳を止める。

 周りの連中は軒並み反応できないか、その身を動かすことができる頃にはもう終わっていた。

 いや、反応しちゃいそうな松永先輩なんかは僕が目で抑えてたんだけどさ。

 

 「……な!?」

 

 「うん、これが明日行こうって話している連中の最低速度かな? 不意にっていうのはあるけど、……見えた?」

 

 無言で首を振る直江。

 そうだよな、別に俺の方がモモ先輩と仲がいい、とか言われる分には何とも思わないんだが……。

 

 「まあ、こう言うことだよ。……長く一緒にいたとしても、挑みもしてないのに武神を語るなよ? ただでさえ奴らは武神をなめてやがってイライラしてるんだからさ……」

 

 「……い、いや、でも弁慶と与一を止めるにはさ」

 

 まあ、確かにちょい今のままじゃあ心もとないか。

 

 「まあ、それはわかるけどさ、と、言うわけでちょっとだけ配置換え提案」

 

 「……聞こう」

 

 水差したのとやったことから空気悪くしたせいで紋ちゃんの声もちょっと硬い。

 

 「与一については椎名に抑えてもらおう」

 

 「ほう、だそうだが? 椎名よ」

 

 「んー、できなくはないと思うけど……、町の援護と弁慶は?」

 

 「弁慶については元から何とかできる奴が突入部隊に居るから心配してないよ。な? 心」

 

 「……ん? にょわ!? こ、此方か?」

 

 うん、自分に振られるとは思っていなかったのか反応が少し遅かったな。

 うん、愛すべき馬鹿である。

 

 「そうだよ? できるよね?」

 

 「オイオイ、それは流石に……」

 

 「あれだけ負けてばっかりなのに無理じゃねーか?」

 

 直江と島津の否定的な意見聞いて怖気着く心。

 あーあー、それじゃあ駄目だろう。

 

 「できるでしょ?」

 

 強いんだから力頼りなあのタイプならばなんとかなるだろう。

 そんな風に確信を持って見つめる。

 

 「…………ん、と、当然じゃろう! あの程度であれば此方に掛かれば何の問題にもならんのじゃ!!」

 

 「まあ、とりあえず戦う時は調子に乗っちゃダメだよ? まあ、しっかりと戦えれば全く心配はしてないさ」

 

 「うむ、此方に任せるがよい!」

 

 まあ、やる気がないらしいし心なら大丈夫だろう。

 

 「いや、ちょっとまって、軍師として言わせてもらえばその人選には不満しか……」

 

 「……ん、大和」

 

 それでも信用しきれないのか直江が声を上げるが、それは椎名にさえぎられる。

 

 「この人選が戦局に問題出るっていうなら止めないけど、大丈夫かどうかが不安なだけなら私たちよりトラの方が目が確か」

 

 「……む、分かった。それで、優秀な狙撃主一人はどうするんだ? これも結構きついんだが……」

 

 「うん、その穴は直江が埋めてよ」

 

 「おい! ここにきて人任せかよ!?」

 

 いや、そうでなく。

 

 「そりゃあそうでしょ。本来いるべき場所においたんだからそれくらいやってよ? 軍師さん」

 

 「……あ」

 

 気が付いたようだ。

 まあ、総大将と言いつつクリスに実動隊と総指揮やらせようとしてるのがおかしいと思うんだ。

 寝返り交渉も長期戦ならともかく決戦中に軍師名乗る人間が前線に出て直接やることじゃあないだろうに。

 

 「ハハハハハ……、うん、頭冷えたよ。そうだな、対策できてるならそっちの方がいいな。……本当に不死川は大丈夫なんだよね?」

 

 「まだいうかこ奴!!」

 

 切れる心。

 

 「まあ、もしゲームの軍師みたいにいるだけで将同士の戦いにも補正掛かるならぜひ行くべきだと思うけどね」

 

 「あー、そりゃあ無理だ。うん、そうだな、確かに俺はこっちの方が得意だよ。クリス、俺が参謀をやる。よろしくな」

 

 うわぁ、すげえ悪い顔になりやがったコイツ。

 絶対碌でもないことたくさん考え付いてやがる……。

 迫力段違いで怖いよこの子。

 

 「悪人顔の大和も素敵!」

 

 「よし、椎名、明日無事に乗り越えたら島津寮で直江をファックしてもいいぞ」

 

 「是非!!」

 

 「オイ馬鹿ふざけんな」

 

 あ、一応反応したけどおざなりだ。

 うん、これホント怖いわ。

 まあ、これで大体いいが、こっからはある種私情だ。

 

 「んで、葉桜先輩の相手はまずは僕にやらせてほしいんだよね」

 

 「「「「は?」」」」

 

 おおう、やっぱりそんな反応か。

 ですよねー。

 

 「おい、それは流石にどうかと思うぞ? 軍師として」

 

 「ああ、怪我した状態でそれは……流石に」

 

 軍師と大将両方から駄目出し。

 いや、利点もあるのよ?

 いや、寧ろ僕の無事さえ勘定に入れなければ利点しかないんじゃね?

 

 「いや、でも紋ちゃんの護衛に壁越えがいない状態での突撃ってどうかと思うよ? 大体とはいえ決め打ちするんなら一人くらい五体満足な壁越えの腰とくべきでしょう。その方が突破もスムーズそうだし」

 

 そう、どんな風になるか詳しくわからないなら最大戦力は大将のもとにおいておくべきだろう。

 特に大将自ら攻めるなら特に。

 

 「む、しかし、大丈夫なのか?」

 

 やはり怪我人動かすのは気が進まないらしい。

 まあ、武人連中は僕の様子から分かっているのか消極的賛成って感じだな。

 

 「ああ、大丈夫とか大丈夫じゃないとかじゃないんだよ。これは、少なくとも僕の武人としての最後の意地だ。奴らは武神をなめてやがるんだよ? そしてその最高戦力は武神が倒すと言った。なら、あれを目指した僕は、そのくらいは実現させてやるさ」

 

 そう、これは極論僕のわがままだ。

 だからこそ吠えんとして、最悪失敗しても本来の役目の松永先輩は手漉きにしてあるんだ。

 ああ、きっとあいつは、武神は戻ってきてあの覇王もぶったおす。

 それならそれまでの時間位粘ってやるさ。

 幸い倒さなくていいなら僕の得意分野だ。

 武神に勝ち、落ち着いていた戦る気がふつふつと体中から湧いてくる。

 それに押されてか息をのむ音が重なって聞こえてきた。

 

 「ククク! これが武神を倒した男の覇気か。なるほど、前とは比べ物にならないな。言っておくが、俺たち三人はこいつに協力をしているんだ。ここでこいつの案を飲まなくても俺たちがあの項羽とかいうやつとの対面までは作り上げる」

 

 ああ、ありがたい。

 本当にこいつらは僕に協力してくれるようだ。

 もし、ここで却下されて全部が元の配置に戻ったとしても、石田、島、大村、そして竜兵と辰子さん、たどり着くだけなら問題にならない協力者がいる。

 さて、どうなることだろう。

 

 「……わかった。しかしその代わりしっかりとこっちと足並みを合わせてもらうぞ?」

 

 「うん、それはもちろん。個人的にはモモ先輩が戻ってくるまでちょっとおしゃべりに付き合ってほしいだけだからね」

 

 願わくば化け物に相対するなんてのはこれで最後になってほしいものである。

 これでヒュームさんに負けやがったらどうしてくれようか……。




以上でしたー

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