せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どうも、おまけ上げたけどなんか恥ずかしくて少し後悔……



第四十五話 最終決戦 其之二

 SIDE百代

 

 かなりの時間を移動に使ったが、車を降りるように促された場所は海岸だった。

 

 「……んで? ここでいいのか? まあ、海辺であれば少し気を付ければ津波も起こさずに済むかもしれんが……」

 

 「フ、まだ到着したわけではないさ。あれに乗るぞ」

 

 そう言って顔を向けた先にあったのは……。

 

 「あれは……ロケットか? まさか宇宙にでも行こうっていうのか?」

 

 「そう、宇宙こそ俺とお前が心置きなく全力で戦える場所だ」

 

 ほう……、宇宙で決戦か……。

 いや、アイツが聞いたら目を輝かせて羨ましがりそうだなあ。

 「宇宙怪獣大決戦だって!!?」とか言って……。

 うん、言いそうだ。

 なんかイラッときたから帰ったらお仕置きだな。

 大体アイツは時たまこんな美少女掴まえて化け物とか抜かすからな、全く。

 さて、まあ場所など大して気にしないのだが問題は……。

 

 「それはいいとして、宇宙まで行ったとして戻ってくるのに私は間に合うのか? 流石に行ったことがないから疑問なのだが」

 

 そう、私は、武神は武神として戦うべき戦場がもう一つあるのだ。

 答え如何によってはここでやるように持ちかけるのだが。

 

 「フフフ、本気で言っているようだな? なあに、もう一戦できるほどの余裕があるのであればそっちの方が早いかもしれんぞ? 何せ指定された座標に超高速で落ちていくだけだからな」

 

 ふーん、そう言うものなのか?

 まあ、それならいいさ。

 

 「そうか、それでは行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 SIDE大和

 

 お、突入班から連絡だね。

 遂に梁山泊の一般兵連中が動いたらしい。

 

 「こちら本部、敵、出動、警戒せよ」

 

 『ポイント1 川神学園一子了解したわ!』

 

 『ポイント2 クリス了解した!』

 

 『ポイント3 岳斗いつでも来いってんだ!』

 

 『ポイント4 虎子ALL RIGHT!』

 

 『こちら大友 了解だ!』

 

 「OK,無線も感度良好。しっかり守ってくれよ?」

 

 ふう、とりあえずあとは敵さんの情報を逐一チェックかな。

  

 『こちら偵察部、全部隊予定外の動きなし。なお、個人行動は女性二人とルーのみ、女性のうち一人は板垣が接触、おそらく史進と思われる。もう一人の楊志と思われる方は川神学園へ向かっている。また、鍋島館長が止めるはずだったルーについては失敗した模様。しかし対策として釈迦堂刑部を向かわせたため心配するなだそうだ。以降は変化があり次第連絡する』

 

 「了解」

 

 うん、流石九鬼従者部隊は仕事が早いね。

 偵察部隊としてプラス数人程度なら向こうもうだうだ言わないだろうしね。

 いやー、優秀な密偵は本当に助かる。

 

 「さーて、委員長! 怪我人の受け入れ準備は?」

 

 「はい! 準備完了してますよ!」

 

 うん、戦場でも癒し系だなあ。

 

 「卓! 妨害電波の対応は?」

 

 「流石にプロ相手にどうにかできるわけではないが……予備チャンネル及び察知はできるはずだ。指定した緊急用の有線も今のところつながる」

 

 よし、こういう時地味に頼りになるんだよなあこいつは……。

 

 「クッキー衛星映像は?」

 

 「はい、でにーろさんの協力で映像はいいとは言えませんが見られるようにしました。なお、予備1基を総理の協力で確保完了しました」

 

 うん、これである程度は見れるな。

 

 「よし、事前準備にはこんなところだろう。後方部隊のみんなもこっから気合い入れていこう!」

 

 「「「「おう!!」」」」

 

 ふう、まあ、今できることはこんなもんかね?

 ふむ、高坂と九鬼部隊の話だと向こうの戦局動させる札でフリーなのは楊志一とルー先生の二枚。

 ルー先生についてはもうこっちの手に負えないし対策があるらしいし、最悪これに関しては学長に怪我押して何とかしてもらうしかない。

 あと一枚か……。

 こっちが用意できた札は二枚、後は不確定要素さえ起きなければって所か。

 それにしても……。

 

 「ああ、この戦場が掌の上にあるような感覚、忘れてたな……。てか、最近タッグマッチとかなんで俺、戦場に立つようなことになってたんだろう? ……まあいいや、とりあえず楽しませてもらおうかね」

 

 

 

 

 

 

 SIDE竜兵

 

 見つけた!!

 

 「へへへへ! オイ! 女!」

 

 「ああん? なんだお前? 懸賞金もかかってない雑魚がわっちになんのようだよ?」

 

 ほう、なめ腐りやがって。

 それにしてもアイツいい情報くれやがったぜ。

 おかげでこうして待っているだけで難なく二人の敵に会えた。

 もう一点の方にはってる辰姉にも連絡入れたから時期に来るだろう。

 確か、大和がこれの指揮をしているらしいなあ。

 よし、終わったら二人に礼として天国を見せてやろうか……。

 おっと、まずはこのふざけた女にしっかり落とし前つけさせねぇとな。

 

 「ハン! お前の都合なんか関係ないんだよ。板垣一家に手を出したんだ。きっちりけじめつけてもらわねえとならないんだ。覚悟しろよ?」

 

 「あー、面倒くさいなあ。弱いんだからこそこそ隠れてろってんだ。……町の不良如きがわっちに勝てるとでも思ってんのか?」

 

 へ、流石は亜巳姉と天をやった奴だ。

 ビリビリきやがる。

 なるほど、俺じゃあ勝てねえわなぁ。

 だがなぁ

 

 「っは! それがどうしやがった!? こちとら無頼! 勝とうが負けようがやるべき喧嘩もやらずにいられるほど考えて生きてなんかいねえんだよ!!!」

 

 最近アイツ相手にも暴れてねえし、マロードもいも引きやがった。

 何も考えずに暴れられるってんなら願ったりだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 SIDE由紀江

 

 「はあああああああ!!」

 

 義経さんの斬撃を受ける、受ける、受ける、受ける。

 ……やはり強いです。

 

 「おおおおお!!」

 

 っく、威力は義経さんの方が高いですね。

 しかし義経さんは刀の消耗のことは頭にないのでしょうか?

 今は何とかなってますが、この先ずっとうまく受け続けられるとは限らないのに……。

 

 「ううう……、清楚のばかああああ!!」

 

 ……まあ、それも仕方がないかもしれませんね。

 相当思い悩んであそこに立っていたようなのに、自らの総大将、しかも親しい人にあんなことをされては……。

 心中お察しします……。

 私だって覚悟を決めて義経さんの前に立ったというのに高坂先輩は……。

 ホント空気読めよあの死にぞこない!

 ……ゴホン、いけませんよ松風、結局成功していたのですからそう言っては。

 松風も思念で話しかけてくるくらいご立腹のようですね。

 

 「あああああ!! なんで出てくるんだ! 義経は……よしつねは!!」

 

 うん、心底同意します。

 本当に出てくるなんて、と、言うより高坂さんまで驚いてこっちに助け求めていましたよ?

 本当になんなんでしょうかあの人は……。

 しかしまあ、冷静さ欠いてますね……。

 このままいれば義経さんを戦線から離脱させるという目的は達成できるんですが……。

 

 「っっっっせい!!」

 

 「!!?」

 

 ―――キィン

 

 今の私にできる限りの一閃。

 それを義経さんが綺麗に受け止めた濁りのない金属音が響く。

 先ほどまでの乱れた心では決してできない綺麗な受け方ですね。

 これならもう大丈夫でしょう。

 

 「落ち着きましたか?」

 

 「……ああ、だがよかったのか? これで義経にも勝機はできてしまったぞ?」

 

 ええ、そうでしょう。

 先ほどまでであれば私も大してできることはありませんでしたが、何も起こらずに戦い続けることはできた。

 ……しかし、それではいけない。

 

 「ええ、私は皆さんには少し申し訳ないですが、此処には一人の武人として立っているつもりです」

 

 「……そうか」

 

 ああ、ああ!

 これだ。

 今日私が求めていたのはこれなのですね。

 冷静になった義経さんからは先ほどまでの烈火の如き威圧感は感じない。

 しかし、切るような冷たい気迫がその身からあふれ出ている。

 ああ、よくて互角。

 同じ剣士として今までここまでの相手と巡り合えたことなどありませんでした。

 思えば故郷で剣の道を歩みながら、その力故か友人ができず、この才と環境が煩わしくさえ感じていました。

 諦め、孤独、今まで感じていたあの思いなど一息で吹き飛ばしてしまうような緊張感。

 

 「それじゃあ、改めて。……源義経、参る」

 

 うらやましかった。

 モモ先輩と戦った松永先輩が、見るに堪えない大けがをしたとはいえモモ先輩に打ち勝った高坂先輩が。

 私はモモ先輩と、武神と戦いたいなどと言う思いは今でもない。

 しかし、しかし、なんでしょうか。

 この同じ剣士として向き合って初めて得ることのできた高揚感は?

 自分の性格を嫌っている余地など一部すら許されぬ緊張感は!!

 ああ、

 

 「黛流、黛由紀江。お相手いたします」

 

 やはり私は武人であったということですね。




初、主人公蚊帳の外w

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