せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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うん、使わないつもりだったSIDE表記ですが、思った以上に面倒く……ゴホン、難しく時間がかかってしまった。


第四十六話 最終決戦 其之三

 SIDE 心

 

 今、此方は城の入り口で弁慶と対峙している。

 奴は此方を見つめて動こうともせん。

 ……て、言うかこやつ本当にやる気があるのだろうか?

 成り行きで、と、言うより此方の担当であったから残りはしたが他の連中のこと総スルーしおったぞ?

 もしかしたら普通に通れるのでは……。

 

 「そおい!」

 

 「にょわ!? あ、あああ、危ないではないか!!」

 

 脇を通り抜けようとしたら錫杖を振り回しおったぞ!?

 いや、ここを守るというのならそれで正しいのじゃが、なんで此方だけ?

 

 「おい! 弁慶よ! あ奴ら素通ししたくせになぜ此方だけ邪魔するのじゃ?」

 

 「んー? いや、一人くらい止めとけば面目立つかなーって」

 

 ほほう。

 まあ、此方を止めてるというのだから十分か。

 ふむふむ、まあ確かにそれなら確かに面目も立つ、か。

 

 「いやー、一人残ってくれて助かったよ。全員行ってたら流石に動かないとまずいからね。一人に足止めされて通してしまいました。ってね」

 

 「適当か!!」

 

 駄目じゃこやつ完全に駄目人間じゃ。

 ケラケラ笑いながら何の負い目も感じておらん。

 これだけ大ごとだというのにこの態度とは……、ある意味尊敬できるのう。

 

 「んー、まー、気が乗らないことだしね。……何より後ろに主がいるわけでもないし。立ち往生なんてしてやる気も起きないさね」

 

 なるほど、モチベーションが低いのにも理由があるということか。

 

 「いいのか? その主が戦っているのにお前がそんな調子で……」

 

 「あー、いいのいいの。あの子はまあ、従うこと選んだけど、私に命令したわけじゃないからね。ぶっちゃけここに立ってること自体忠義じゃなくて義理だからねー。とっと……」

 

 そう川神水を注ぎながらゆるーく言っておるが……。

 こんな時まで手放せんとは筋金入りじゃ。

 

 「ふむ、まあ、此方の役割を果たしてはおるが……。なんというか釈然とせんのう」

 

 「あ~、いいじゃんいいじゃん。らくーに行こうよ。こうやって向かい合っているだけが都合良いんだし。今から追いかけるなんて面倒くさいことしたくないし」

 

 ……ほう?

 ああ、そうか。

 あの余裕はそう言う考えからと言うことなのじゃな。

 

 「……つまり、此方と戦えば面倒くさいことをせねばならんと言うことか」

 

 「あれ? いや、別にそう言う挑発したつもりじゃあないんだけどなあ……」

 

 ふん、口でどう言おうともその揺るがぬ態度ではどうにもならん。

 確かに、弁慶を相手にすることになって少しは、僅かには、ほんの少しだけ、そこはかとなく尻ごんではおったが……。

 高貴なものとして、こうなっても動かぬのであれば示しがつかんではないか。

 

 「あー、本当に来るの? ほら、こっちに川神水とつまみもあるよ?」

 

 「ええい、うるさい! 此方は三大名家が一つ不死川じゃぞ! ここで引いては庶民にも劣る負け犬ではないか!!」

 

 元々、それなりに意気込んできているのじゃ。

 当事者にあんな態度を見せられて黙っていられるわけがないじゃろうが!

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 SIDE京

 

 

 睨み合い。

 大和以外の男に見下されるのはごめんだけど位置関係的に仕方がないネ。

 工場の上部と建物の下。

 これだけの距離がありながらここはもはやお互いの間合いの内。

 間合いで負けているとはいえ、自分の間合いでもあるここまで近づければ関係がない。

 あとはここで弓さえ離さなければお互い下手には動けない。

 

 「ククク、足止め完了。下手な動きを見せれば射るだけ」

 

 まあ、同じくこちらも下手な動きは見せられないけど。

 なるほど、トラも簡単に言ってくれると思ったものだけど、確かにこの状況になってみれば私ならできるというのは確かだね。

 我慢比べ我慢比べっと。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 

 

 

 

 

 SIDE石田

 

 「ふむ、何とも阿呆が上に居るものだ。あれの下につくような選択をしなくて正解だったな」

 

 「御意ですな」

 

 まあ、あんなことをしようと思う高坂も高坂ではあるが……。

 別にあいつの下についているわけではないから深くは考えなくていいだろう。

 さて、予定外にあいつと別行動になってしまったわけではあるが、こういう時は適当に動いていいといわれている。

 ならば

 

 「おい、俺と島は人質とやらの救出に向かう。どうやら九鬼の従者たちは次々に狩られてるようだからな」

 

 悔しいが松永やヨッシーに比べれば今の俺はまだ劣る。

 俺が主導したわけでないのだし裏方で活躍させてもらおう。

 

 「……へえ」

 

 「なんだ? 松永。その変なものを見る目は?」

 

 「あー、ごめん。石田君ってもっと前に出たがるタイプだと思ってたからさ」

 

 ふん、そんなものは当然

 

 「不本意に決まっているだろう。だが、力不足を知った上で突っ込む真似の方が俺の価値を落とす。それに、ここにいる人材は九鬼に不信感を抱いているだろうからな。俺の出世街道の糧になろう」

 

 なにより、ここには友人の助っ人として立っている。

 無様を晒すなどもってのほかではないか。

 

 「ほー」

 

 なんか温かい目で見られている。

 

 「なんだ? その目は……」

 

 「いやいや、男の子っていいなー。って思ってね」

 

 っく、見透かしたような態度が気に入らんな。

 能力はあるが性格があれか。

 

 「ふーん、まあいいか。頑張れ男の子!」

 

 ……寒気がした。

 本当に心を読んでいるのか?

 これはもっと鍛錬を積まなくては俺の出世街道に化け物が立ちはだかった時にまずいことになりそうだ。

 

 「フン、島よ、ついて来い。」

 

 「は!」

 

 まずはこちらの兵を狩りまくっている気の持ち主のところへ向かうか。

 

 

 

 

 

 

 「おやおや、ここにきて邪魔が入ったようですね」

 

 「……なるほど。それなりに精鋭な九鬼従者たちを狩れる人間だ。大体の予想は着くが名を聞いておこうか」

 

 いや、九鬼とはいえこんなことをホイホイできる奴がそういるはずもない。

 

 「これは申し訳ありません。遅れましたが、クラウディオと申します。そちらは天神館の石田様と島様とお見受けしますが、どうでしょう?」

 

 「ふん、流石は九鬼の万能執事と言うことか。こちらのこともお見通しと言うわけか。いや、俺のことを知っているのは当然かもしれんがな」

 

 ふむ、こうして対峙してみれば、なるほど、万能などと言われるのは伊達ではないな。

 戦闘もその内と言うわけだ。

 

 「ええ、貴方は私たちの協力者になっていただけると思って調査しておりましたので……。それもかなわなかったようですが」

 

 「ふん、俺はどこに居ようとも俺が進む道が出世につながる人の上に立つ人間だ。今回はこっちに力を貸す目的があったまでだ」

 

 「ほう、……なるほど。いい目的だと思いますよ」

 

 ……こいつもか。

 どいつもこいつも人の心を読んだみたいに。

 と、言うか島よ、生暖かい「成長しましたな」みたいな目で見るのはやめろ。

 

 「……まあいい。それで、お前は俺の道の前に立ちふさがるというのだな?」

 

 「ええ、残念ですが。こちらとしても邪魔をされるわけにはまいりませんので」

 

 ならば

 

 「島! 先に行け!」

 

 「な、お、御大将、それは!」

 

 「行けというのだ! お前がここに居て俺に忠を見せられるか!?」

 

 俺を置いていくというのに戸惑いを見せるのはわからなくないが、正直この老執事相手では……、我が忠臣では足手まといだ。

 

 「っく……、分かり申した、ご無事で! 御大将!」

 

 「ふむ、行かせるとでもお思いで?」

 

 老執事が腕を広げる。

 なるほど、糸か。

 あれに十分な攻撃力を持たせるとは、かなり応用が利きそうだ。

 なるほど、戦闘方法も万能と言ったところか。

 あれであれば島の行く手も阻めるだろう。

 しかし、

 

 「ああ、あれは俺の命で動いているのだ。行けるに決まっているだろう?」

 

 相性は悪くない。

 確かに素材も繰り主も一流ではあるが、この俺に斬れないほどではない。

 剣士同士の戦いに名乗りを上げられなかった分の鬱憤も込めて一閃してやる。

 

 「……ふむ、通してしまいましたか。まあ、あちらは部下に任せるとしましょうか」

 

 「ふん、俺の部下をあまり舐めるなよ? お前ならいざ知らず、そうそう止められはせんさ」

 

 油断がならないことにすでに俺の刀に絡みつこうとしている糸を一閃しながら言う。

 

 「ならば、あなたを倒してから追わせていただくことにしましょう」

 

 「できるかな? 万能執事、俺の出世街道に立ちふさがるに足るものか、心して試してやろう!」

 

 コイツが向かっては島でもヨッシ―でも厄介なことになる。

 何よりこうして対峙した以上は俺の相手だ。

 ここで討ち取れば俺の名にも箔が付くというものだ!




以上でしたー。
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