せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どうも、やっと決着編みたいな感じで締めに入れました。


第四十八話 最終決戦 其之五

 SIDE 大和

 

 『ポイント4 BGIN FIGHTING!』

 

 「了解、健闘を祈る」

 

 『ポイント3 こっちも敵が来たぜ。なんか青髪の女は迂回して川神学園に向かうらしい』

 

 「OK,ワン子、そっちに梁山泊が向かう。最低足止め頼む。ああ、遠慮なくたおしていいぞ!」

 

 『ポイント1 了解したわ! 皆の仇はとるんだから!』

 

 「ポイント2、戦闘継続中だ。戦力には余裕があるが他に回すか?』

 

 「あー、ちょっと待って、えーっと、偵察部、要注意人物の動向は?」

 

 『こちら偵察部、ポイント3に長宗我部、ポイント2に宇喜多が向かっている。先も報告した通り楊志は川神学園、史進は現在板垣と交戦中、ルーは……申し訳ないがロストしている』

 

 「了解、クリス、そっちに厄介な十勇士が向かっている。戦力は分配せずにそのままで」

 

 『了解した』

 

 ふう、これで全部のポイントが接敵したかな?

 

 『こちら大友だ、とりあえずはぐれはそれなりに狩っているが、まだか?』

 

 「あー、もうちょっと待って。札を切るならひっくり返される余地の少ない瞬間がいいからね」

 

 『了解』

 

 それにしても……

 

 「どうした? 軍師、不満そうだが。戦況には問題ないいんだろう?」

 

 通信器具やらの調整に待機している卓に聞かれたが……

 

 「いや、せっかくこっちに地の利があるってのに碌な罠も仕掛けられなかったからね。ほら? 防衛戦での罠で一網打尽とかって憧れるだろう?」

 

 うん、流石に戦闘後に影響出すような罠なんてできないしそもそも時間と人員が足りなさすぎだ。

 せいぜい悪戯レベルの罠しか用意できなかったってのはなあ……。

 

 「……参謀様が余裕そうで何よりだ。だが、十勇士と梁山泊とやらが出てきたんだろう? いいのか、気を抜いていて」

 

 まあ、確かにここからが本番だよね。

 けどなぁ……

 

 「いや、正直あとはこっちの札切るタイミングだけなんだよね……。ぶっちゃけ手におえない状況となると川神院の師範代さんとかそれレベルが動くってことくらいでさ。それやられるともう鉄心さんとかに鞭うつしかないし……。第三勢力なんて出てきたらそれこそ九鬼動かす口実になって俺の手から離れちゃうだろうしねー」

 

 自分の手の内超えればもう手におえない獣が飛び出してくれるんだ。

 気楽なものだ。

 

 「なるほどな……、そうなっていない今はお前の手のひらの上ってことか」

 

 にやりと笑いかけてくる。

 コイツ結構悪人笑いだよな……。

 参謀役がすごく似合っている。

 

 「買いかぶりすぎだよ。この余裕は……」

 

 『こちらポイント2、十勇士、宇喜多と接敵!』

 

 『こちらポイント1、梁山泊の人が目視で来たわ』

 

 「……っと、これで要注意人物は貼り付けになったわけだ」

 

 さてこれで、各々の奮闘で戦局が決まるわけだが

 

 「大友さん、ここらで動こう。そうだな……ポイント4、2、3、1で回ってくれ」

 

 『了解、黄泉返り部隊、行くぞ!!』

 

 うん、札を切るにはいいタイミングだろう。

 

 「……で、スグル、この余裕はね」

 

 『ポイント1、制圧完了NE!「オラオラオラ! 舐めるんじゃねーぞ!」「フン……手ごたえのない豚だねぇ」「逃げるな! 狩ってやりましょう」……STOP!』

 

 うわあ、戦場はひどいなぁ……。

 

 「あちら以上の戦力を用意できたからなんだよね、これが」

 

 『こちら黄泉返り部隊、ポイント4制圧……こいつら本当に怪我人なのか大友は疑問だ』

 

 「了解、それじゃあ次のポイントよろしく。うん、俺も志願者聞きに行ったときビックリしたよ」

 

 昨日の夜、被害者たちのところ回ったが……、うん最近やられた人たちは参加できなかったのが多いけど約一月に渡って奴らは狩っているんだ。

 それで戦力外と見るにはちょっとこの川神は特殊だったみたいだ。

 て、言うか暴れさせろっていう人が多すぎて逆に困ったね。

 

 「……この制圧速度、なるほど、こんなの用意しているんなら余裕にもなるわな……」

 

 ああ、スグルも呆れてるな。

 ま、あちらが標的にする猛者たちだ、そりゃあ規格外だろうね。

 

 「そう言うことさ。下手な策よりも相手より戦力を用意しておくのが一番だってことだね」

 

 『鍋島だ。釈迦堂がルーの奴の目を覚まさせたぞ。ったく、この俺がここまで鈍ってやがるとはなぁ……』

 

 「了解です。……ふう、これは本当にもうやることなくなってきちゃったや」

 

 まあ、後は突入組の成功とイレギュラーがないことを祈っときますかね。

 

 

 

 

 

 

 SIDE 一子

 

 

 

 

 校門前、ほかならぬ自分の引いた防衛ラインを挟んで梁山泊の楊志と対峙している。

 

 「おらおら!!」

 

 「ちょ!? こいつら本当に学生か!?」

 

 周りでは言霊部と言う怪しい部活の部長、京極先輩の一言でなんだかすごく強化されているわね。

 アタシもあの応援だけで力がみなぎっているからあの先輩は底が見えないと思うわ……。

 

 「んー、君、やるの? 多分格が違うと思うけど……」

 

 ああ、三人でとはいえ、あのルー師範代を無事で抑え込んだと聞いているし、実際にそうなんだと思う、けど、

 

 「やってみなきゃ……」

 

 「分かるよ、ホラ!」

 

 鋭い蹴り、でも反応できないわけではないわね。

 武器を合わせていなして

 

 「ほぅら、バーストハリケーン!」

 

 追って出された技には対応できなかった。

 

 「ねー、格が違うよ」

 

 ああ、そうでしょうね。

 師範代に時間をかけて教わっていてもアタシはまだ気を使う技はできない。

 でも、

 

 「猿真似で誇ってるんじゃないわよ!!」

 

 違う、アタシが立てる程度の練度で格など語られてたまるか!!

 

 「へえ……、それ耐えたくらいで大口叩いちゃうんだ?」

 

 そう言って双剣を手にして向かってくる。

 

 「この吹毛剣の前には無力……!?」

 

 言うだけある剛撃、だけどアタシはそれと真逆の極致に居る人とこの十年幾度も戦っている。

 この程度流せないような鍛え方はしていないわ!

 

 「……へえ、今ので武器壊せると思ったんだけどなあ……」

 

 「言ったでしょ? やってみないとわからないって!!」

 

 「へえ? ま、でもいつまで続くかな!!」

 

 流れるような連撃、ああ、この人は本当に強い。

 けれど、

 

 「は、っほ、とりゃあ!!」

 

 力だけで打ち破れない壁、それに何度も打ち込んできたアタシだから、打ち崩せなくても守り切れる!

 

 「……っく、あー、その武器の特性は本当に厄介だねぇ」

 

 そう、当然だ。

 

 「この武器はアタシの一部、そう言えるくらいに振り続けてきたのよ! 他人の技を振り回すのにご執着なあんたなんかに負けてたまるものですか!」

 

 悔しいけれど、相手の方が格上、それでもそんなのは慣れている!

 任せられたのは防衛、意地でもこの線だけは跨がせない!!

 

 「フフ、まあでも、手が出せないんじゃ勝てないよ!!……え?」

 

 ――ズドン!!

 

 「Hasen Jagt!!」

 

 「ヒャッハーー、オイ亜巳姉、アイツ面白いくらいトンだぜ!!」

 

 「はあ、天、まだ全快じゃないんだから興奮剤は控えろって言っただろう」

 

 「黄泉返り部隊! 助太刀するぞ!」

 

 また連撃が来ると言思ったらあたりに爆音が響き渡る。

 次々に吹き飛ばされていく一般兵に楊志の注意がそれる。

 

 「敵と向かい合ってるのによそ見するんじゃないわよ!」

 

 渾身の突き、今まで只管磨いてきた一撃をお見舞いしてやる!

 

 「!! っと、ざーんねん。才能が違うんだよねー。ちょっと位よそ見して求められちゃうんだよね、これが」

 

 双剣をクロスしてピンポイントで突きを止められた。

 意表をついての一撃を完全に見切って受けられてしまう。

 ……ああ、分かっていたわ。

 アタシの一撃なんて所詮はこんなもの。

 けど、

 

 「あああああああああ!!! 川神流! 大輪花火!!」

 

 そんなの身近で目標を見ていればいやと言うほど思い知らされている。

 止められたなら、そのまま振りぬいてやる!!!

 

 「んえ!? っく、ああああああ!!」

 

 初めて必死になった楊志、飛び跳ねながらの切り上げに体を宙に浮かせられた。

 

 「っく、この程度で!?」

 

 そして、それだけで防ぎ切ったと思ったら大間違いよ!

 薙刀の真価は円運動!

 渾身の切り上げは相手のガードを持ち上げている。

 切り上げた勢いで半周した柄を楊志の顎に叩き込んでやる!

 

 「くあ!? ……こんのッ!?」

 

 ああ、アタシの力ではまだ相手を落とせていないのね。

 けれども、こちらだけに意識を向けてちゃいけないわよ?

 意識から消えている振りおろしは、先ほどの円を逆にするだけでできるんだからね。

 

 「ああああああああああ!!!」

 

 浮かんでいる体を想いっきり叩きつける。

 

 「……くぁ、…………」

 

 それで流石にもう立ち上がることはなかった。

 

 「フン、格がどうこう言うんなら、アタシの攻撃程度で意識を失ってるんじゃないわよ! いくら格上の技を盗めても、自分のものにしなきゃ怖くもなんともないわ!!」

 

 ――――おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

 

 ああ、学校のみんなの声が心地いい。

 うん、アタシなら大丈夫。

 こうやって自分より強い相手だって倒せるって知ってているんだから!

 

  




以上でしたー。

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