せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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はい、高坂君の試練が始まりました。
どのような結果になるのか?
お楽しみに。


第七話 有限地獄連続仕合 一日目前篇

さて、今日は約束通り川神院に朝から赴いている。

 モモ先輩と鉄心さん、それについていった一部の門下生以外が懸命に稽古をしている。

 聞いた話では、風間が検証で当てた旅行が予定に入ったために合宿ではなくなったそうだが、一応一日自然の中で瞑想させるらしい。

 いてもまだ戦う気がないから出かけること自体がなくならずに好都合だ。

 そんな中いつも通りに組手を繰り返し、一子ちゃんの番が回ってきた。

 

 

 「よろしくお願いします!」

 

 「よろしくお願いします」

 

 当然武器の制限などはないため、一子ちゃんは薙刀装備だ。

 しかも監督者がいるため刃引きなんぞはしていない真剣と向かい合うことになる。

 まあ、あんな範囲の狭い刃に当たってやる気などないのだが。

 

 「はっ! っほ! せぇぇい!!」

 

 何度も組手しているだけあって、小刻みな攻撃を繰り返してく一子ちゃん、クリスと比べて武器を使うということに対しては格段にうまく、僕の流れに乗せられないように頑張っている。

 そりゃあれだけいっぱい投げられていればそうなるよね。

 こういう組手をお願いしているだけあって、ここでの組手は指導ともいえるような形でじっくりやっている。

 そういう意味では一子ちゃんは上手くなった。

 薙刀と言う武器の特性、回転で刃部分と柄の部分をうまく使うことによって、攻守のバランスは悪くない。

 現状流れは一子ちゃんにあるといっていいだろう。

 

 「っし!!」

 

 「! っく!」

 

 まあ、そうであるのならばいくらでもやり様はある。

 回転の間を縫って首元に向かい貫手を放つ。

 が、いかんせん僕程度の仕掛けたものだ、よけられてしまう。

 でも、そんなの想定していない方がおかしい、せっかく首元なんて言う絶好の位置まで手を伸ばすのを許されているのだから、ただそのまま戻すはずもなく。

 

 「ほいっと」

 

 「キャン!」

 

 襟をつかみ、避ける、と言う動きで既に十分すぎる崩しが成っているのであるからして、あとは地面にくみ臥すだけだった。

 

 「そこまで!」

 

 終了の合図がかかったためすぐに解放する。

 

 「ありがとうございました」

 

 「うぅ、ありがとうございました」

 

 やはり攻勢を一手で覆されたのだから悔しいのか少し涙目の一子ちゃん。

 

 「ほら、泣かないの。この前より考えてあったから少し掴みに行きづらかったし、成長しているよ」

 

 「うん、でもやっぱり一回で簡単に負けちゃうんだから悔しいの」

 

 いや、それはできる限りそうしてるしそもそも、

 

 「そこで自信なくされても困るよ。だいたいそういう戦い方をする武術なんだから、僕の柔術ってやつはさ」

 

 そりゃ、まともな一撃もらわない様に制圧するためのものなのだからやすやすと抜けられては困る。

 それができるのは関節のない生物か、化け物連中くらいであろう。

 

 「そっか、うん! それでも今度こそ攻撃を当てて勝って見せるわ!」

 

 「その意気だよ。実際僕から動くような展開になってきたからね、もう少しだよ」

 

 まあ、僕の場合攻撃を当てられるようになってからが本番のようなものなのだが。

 

 「よーしそれじゃあ、アタシは稽古に戻るわね!」

 

 そういって稽古をしている門下生たちの方に戻っていく一子ちゃんを見送り、気を引き締める。

 そう、ここからが本番であるのだ。

 ルー先生をはじめ、師範代候補生との組手が待っている。

 

 

 

 

 

 

 「ありがとうございました」

 

 とはいえ、候補生に負けているようでは化け物たちに挑もうとは思わないけどね。

 触れられてからが本番と言う言葉通り瞬殺である。

 何せ先ほどまでと違い紙装甲の僕にとってはこのレベルの攻撃にも結構必死なのだから指導がどうこうとか言ってられない。

 んで、メインディッシュであるルー先生のわけだが、ついに始まる化け物連戦。

 この四日間で何戦できるかはわからないが、白星が多ければ武神に挑戦しようと思っているのだ。

 その記念すべき一戦目だ。

 

 「ルー先生、今日は仕合のつもりで挑みますのでよろしくお願いします」

 

 「ウン、よろしくネ」

 

 ま、どっちにしろ僕が格下なのに違いはないのだから手加減なんてできない。

 それでも、

 

 「それでは、双方よろしいか? ……では、始め!!」

 

 性能の差が絶対の基準じゃないということを証明してやる!!

 

 「ハイーー!」

 

 もちろん先手はルー先生だ。

 このレベルの相手に自分から攻めるなんて自殺行為もいいところ。

 桁の違う速さで襲ってくる手刀であるが、こんな様子見にやられてやるわけには行けない。

 わざとまだ勢いの感じられる領域でかすらせて、その勢いを自分の体に乗せて足刀を顔に向けて撃つ。

 その際軸にした左足が熱くなる勢いだ、半端ない。

 そんな蹴りもルー先生にとっては児戯なのだろう、空いた方の左手で受け止めるが、それは悪手!

 

 「ヌワ!?」

 

 「っセイ!!」

 

 軸足に貯めた勢いに抵抗せずに左足をルー先生を挟み込むように足元を払う。

 僕の力だけでは足りないだろうが、そこはルー先生の力がこもった勢いなのだ、あとは相手の体を重心で見、正確な位置に於いてやれば幾らでも投げられる。

 

 「取った!」

 

 そのまま僕も宙に浮いてしまうが、受け止められた左手を足で固めて自分の手で固めれば、変則飛び関節の出来上がり。

 

   ――ゴキンッ!

 

 「グッ!!」

 

 通常であればそのまま押さえつけて制するのであるが、相手は壁を越えた化け物、容赦なく外させてもらう。

 ある程度のレベルになれば、あらゆる衝撃に強くなるなんて世界ではあるが、関節はそこまで顕著ではないのだ。

 それに、修業や経験で着脱自在なんて言うのはよく聞くし、物語では痛くもないなどと言うのはあるが、あれは嘘だ。

 慣れれば耐えることは可能だし、動かせる程度にはめなおすこともできるだろうが、痛いものは痛い。

 さらに、自分で外させてしまえばそれこそ丁寧にやられれば影響は少ないが、僕の意思で外したのだ、それは激痛であろう。

 さらに、

 

 「っく、やるネ」

 

 入れようとするルー先生であるが、

 

 「甘い!」

 

 わざわざそんな隙を許す必要などないのだ。

 せっかくはずして死角となっている左半身に貫手を放つ、が、流石は師範代、受けたり、普段は推奨されるギリギリの見切りと言った手ではなく、この場の最善手の飛び退くという選択をした。

 僕が動きで追いつけないのだからそれで正解だ。

 

 「やるネ、今ので分かったヨ、接近戦では分が悪イ。ワタシの切り札でさえ破られるかもしれないネ」

 

 ――ゴキッ! ビキッ!

 

 非常に苦い顔をしながら腕を入れるルー先生。

 慣れてるとはいえ、ああも過剰にねじってはずしてやればそりゃあ入れる時でさえ激痛だ。

 それで普通にしゃべってるのだから恐ろしい。

 

 「ありがとうございます。それでもこうも簡単に距離を取られちゃうんだから難儀なものです。」

 

 苦笑しながら返す。

 

 「それじゃあこんなのはどうかナ? ストリウム光弾!」

 

 来たか! これが化け物たちと戦う最大の壁だ!

 

 

 

 気、と言うものがある。

 それは自分の力を底上げしたり、回復力をあげたりと非常に便利な内功と呼ばれる比較的鍛えやすいものと、今放たれた外功と言うそれ自体に影響を持たせたものがある。

 どちらにせよある程度までは誰でも鍛えれるものであるが、それを昇華させるには元の才能である絶対量が必要不可欠だ。

 僕も鍛えることのできる限りは鍛えているが、いかんせんここでも物を言うのは才能だ。

 未だに使用に値するほどの外功など身に着けられていない。

 なにが言いたいかと言うと、この後の展開は打って変わって一方的であった。

 近づききれず倒れ臥してしまう。

 

 「そこまで!! 勝者、ルー・イー!!!」

 

 「ありがと……う、ございまし……た」

 

 「ウン、いい戦いだったヨ」

 

 こうして、二十発・・・に及ぶ豊富な気の攻撃を受け続け、第一戦目は黒星に終わるのだった。




お読みいただきありがとうございます。
一戦目敗北です。
接近戦では健闘しながらも遠距離の、しかも高い技量の攻撃に敗れました。
ここで言っておくと、高坂くんは敗北を絶対に許せないわけではなく、百代と戦った時が印象的過ぎて百代限定で敵愾心を持っているだけです。

ここで引き続き質問をしておきたいと思います。
この作品はアンチに当たるのか?
原作愛はあるので嫌いなわけでもありませんが、高坂君の志向的にやりすぎかとも少し思うので意見を聞かせていただけると嬉しいです。


この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

ご意見ご感想お待ちしております。

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