これは彼の名が広まるきっかけとなったある食戟の一幕である
遠月学園。
食の頂を目指すといっても過言ではない一流への登竜門。
卒業生は一桁に届くかどうかと言われるほどの難関ではあるがそれでも生徒たちは皆、その方針に苦戦しつつも楽しく切磋琢磨していた。
そう、いたのだ。
学園の実権を前総帥、薙切仙左衛門から奪い取った薙切 薊は料理に対し「美食」と「餌」と区別するような選民思想により学園を支配。
自身の主義に従わぬものは徹底的に壊滅させていった。
当然、それに歯向かわぬ者がいないはずがない。
当初は八百長などもあったものの現政権に取り潰しを命じられたゼミや研究会は学園の伝統ともいえる料理による決闘、「食戟」にて薊の作り出した
しかし、元々学園の中でトップ10、通称十傑の半数に加え、薊自身が選んだ十傑予備軍ともいえる尖兵達に団体は次々と敗北。
彼らが「残党狩り」と呼ぶように全滅するかと思いきや、1年の実力者、黒木場リョウによってなんとか一勝を勝ち取った。
彼の主の薙切アリスや友人(?)の幸平創真や田所恵、タクミ・アルディーニは喜び、薊一派はその敗北にあるものは悔しがりあるものは恐れあるものは口をつぐんだ。
そうした一種の浮かれた空気の中、司会者はごほん、と喉をならし進行をつづけた。
「え、えー、波乱はありましたがそれでは本日最後の食戟となります!」
「あれ? さっきの黒木場ので最後じゃなかったのか?」
もうすっかり今の勝負が今日のメインだったと言わんばかりの空気だったため誰もが「まだあんのか?」という顔だったが司会者としても仕方ないようにすすめる。
当然だろう。次の挑戦者は黒木場のように1年でも有名な実力者ではなく2年に進級していながらも大して実績もない男なのだから。
「次の対戦はセントラル、梁井 メア VS 家庭の味研究会所属、
現れた男はどこかぱっとしない、地味な男だった。
別に変ではない。奇抜な格好をしているわけでもない。よく悪くもない普通の男だった。
当然、その男、鳩羽を見て大半の人間は「誰だ?」と言った反応だったが一部の者は異なった。
「って、鳩羽先輩じゃん」
「ほ、ほんとだ! 鳩羽先輩だ!」
「ん? 知り合いか幸平創真?」
驚きの声を上げたのは幸平と田所にタクミが疑問を投げかける。
「知り合いも何もうちの寮の先輩だぞ」
「う、うん。普段は一色先輩のサポートとかで目立たないというか一色先輩のせいで目立たないというか」
彼らの脳内に爽やかに笑う裸エプロンだったり褌だったりと大変目立つ男の陰に佇みながら相棒の脱ぎ捨てた服を拾う男の姿が浮かぶ。
なんとなくそれ以上は聞かない方がよさそうだと思ったタクミは別の疑問を口にすることにした。
「それで、料理の腕はどうなんだ?」
「あー、料理の腕か」
「ええっとお」
言いよどむ二人を見るともしや不味いのか?とタクミが思うのも無理はない。
「ううん、全然不味くないよ! たまに賄いも作ってくれるけど普通においしいし」
「ああ問題ないよな。けど」
一度そこで言葉を区切った幸平と田所は顔を見合わせ
「「ただおいしいだけなんだよね(な)」」
後輩からそんな評価を受けているとは知らず本人、鳩羽は対戦相手の梁井メアと向かい合っていた。
「ああもう最悪。この空気の中また食戟しなきゃいけないなんて」
「いやそれ俺関係ないと思うんだけど?」
不満げなメアに対し鳩羽は困ったように笑うしかない。
メアとしては先ほどの楠と黒木場の試合により楠が惨敗、それを見た薊が笑みを浮かべていながらも納得していないことは分かっていた。
そんな状況で自分が食戟をしなければならないなどなんの罰ゲームだ、と。
「……まあいいわ。考えようによっちゃあここであんたをぼこぼこにすれば少しはマシになるでしょうし」
「やだなあ、まだ勝負も結果もわからない内に勝ったようなこと言うのはやめた方がいいよ? さっきの楠みたいに恥かくよ?」
「うっさい! 連ちゃん馬鹿にすんなっての! 大体選抜戦で上位3位までに入る黒木場はまだ実力者だからわかるわ。でも鳩羽なんかに負けるはずないでしょ? アンタ自分がなんて呼ばれてるか知ってるわけ?」
「うーん、第七席の懐刀とか、あるいは『彗星』コンビ?」
「んなわけないでしょ。自意識過剰もほどほどにしなさいよ」
とぼけた鳩羽に対しメアは辛辣に返した。
そう、鳩羽星の評価は大したものがない。
極星寮の同期にして親友たる元第七席、一色慧曰く「僕と彼は熱い友情によって結ばれた親友さ! 名前からして『彗星』コンビと呼んでもいいんだよ?」などと言っているが誰もそうは呼ばない。
呼ばれている通称は『第七席の金魚の糞』
いつも一色のそばにいてサポートだのなんだの雑務はやるが本人はたいした料理も作らない。実際に作った料理を食べたことがある教師陣も「まあ不味くはない。ただ単においしいレベルだな」という合格ぎりぎりで通ってきたような男だ。
一色がいなければ進級もできなかったんじゃないかとすら言われている鳩羽に薊直々に選ばれた自分が負けるはずがない。そうメアが過信しても無理はないだろう。
これ以上は何を言っても無駄かな、ととでも言うように肩をすくめた鳩羽は司会者に目配せをして先に進めてもらうよう促した。
「え、えー、では。今回のお題は家庭の味研究会からの指定により『カレーライス』となります!」
おお、と会場からどよめきが上がる。
カレーは今年の一年の選抜予選に使われたお題。
そこで既に1年が様々な傑作を生み出した後で2年の料理が一体どれほどのものなのか。
一種の比較ともとれるそのお題に会場は盛り上がった。
早速調理に取り掛かるメアと鳩羽。
メアの調理は成程、言うだけあって見事なものだった。
包丁さばき、具材の選別、スパイスに対しても何らかの工夫をしているのが見て取れる。
彼女が何かをするたびに会場からは感嘆の声が上がった。
対する鳩羽はいたって取り立てて特徴もなくいたって普通だった。
普通の具材を用意し、普通に具材を切って、普通に料理をしていた。
先ほどの楠と黒木場の勝負とは比べ物にならないこの格差に最早どちらが有利なのかなど誰が見ても明らかだった。
それは会場の観客も、審査員達も、後輩の幸平達も、セントラルのメンバーも誰もが思った。
「あらあら、せっかくリョウ君が叔父様に一泡吹かせてくれたのにあの先輩のせいでまた息を吹き返しちゃうじゃないのよ、もう」
ただ一人
「あら? えりな? さっきから黙ってあの鳩羽って人を見てるけどどうしたの?」
従姉妹のアリスの問いにも答えず彼が出た瞬間からひたすら一挙一動を見逃すまいと凝視する薙切えりなを除いて。
「出来たわ! 悪いけど先はもらうわね!」
審査員に出されたのは半熟卵にチーズをふんだんにまぶした焼きカレーだった。
ぐつぐつ、とグラタンのように音を立てているカレーから漂う香ばしいにおいに審査員達の喉も思わず鳴る。
そして実食
「むふぉお! 焦げのついたカレーのしみ込んだライスとチーズが絡み合い何とも言えぬわ!」
「しかもチーズ、これはただのチーズではありませんね。いくつものチーズを見事に調和させている!」
「それだけじゃありませんよ! この卵、これはもしかして!?」
一口一口食べるごとにその料理が如何に素晴らしい物か、見事な工夫をされているかを語る審査員達。
自分の料理が正当に評価されたことにメアとしても確かな手ごたえを感じ取った。
審査員達がメアの料理に総評をつけ満足していたところに続いて鳩羽が料理を運んできた。
「どうぞ、騙されたと思って食べてみてください」
しかし、出された料理に注目した時、一瞬、時が止まったかのように感じられた。
「な、なんじゃこれは?」
その料理が審査員達の前に置かれたとき、会場のあちこちから困惑の声が上がった。
それは出された料理が見たこともないような奇抜なカレーだった
からではない。その逆だ。
誰もが見たことのある、子供にカレーライスの絵を描いてみなさい、と言えば出来上がるようなそんな何の変哲もない普通のカレーだったからだ。
「……ま、まあ料理は見た目ではないからのう」
「そ、そうですね。肝心なのは中身、味ですから」
そういって早速鳩羽のカレーを食すも特に
もぐ、もぐと数度租借し
「……普通じゃな」
「……普通のカレーですな」
「……普通においしいカレーとしかいいようがないですね」
とそれだけで評価が終わってしまった。
やっぱりかあ、と極星寮の面々、セントラルに納得していない者たちは気落ちしセントラル側の者たちは勝ちを確信し喜び合った。
違うのは、薙切えりなといつの間にか彼女のそばに寄っていた一色慧だけ。
「ねえ、どうしたのよえりな? あの男がどうかしたの?」
「……私は以前、彼の料理を食べたことがあるの。一色先輩の料理発表があってその時に偶然ね」
「へえ? それでどうだったの? 彼の料理は?」
「……普通だったわ。何の変哲もなくおいしかった、それだけ」
「なあんだ、つまんない。じゃあやっぱり叔父様側の勝ちになっちゃうのね」
ため息をついた後でアリスは先ほどのえりなの発言に違和感を感じた。
何か変だ、何かがおかしい。そう思いもう一度彼女が言ったことを思い返してみると一つ思い当たった。
「……えりなが
「あはは! やっぱりアンタじゃそんなもんよね! よくそれで何で食戟なんか挑もうと思ったわね。 なに? もしかして一色のそばにいて自分も料理上手いとか勘違いしちゃったぁ?」
楠が負けたときのお通夜のような気分はどこへやら。完全に勝ちを確信したメアは再び他人を見下すような態度に戻っていった。
「っていうか、アンタこれからどうすんのぉ? 頼りの一色はもう十傑じゃないのよ? これからはセントラルの金魚の糞になる? 正直あんたみたいな普通の料理しか作れないやつとかセントラルの理念からすれば一番いらないんだけどねえ!」
ここぞとばかりに小馬鹿にした言動をとるメアに対して鳩羽は、ふう。とため息をつきつつ指を2本立てて告げた。
「色々言いたいことはあるけどあえて二つ。まず俺が食戟を挑んだのは慧が第七席じゃなくなったから。普通の料理しか作れない俺と違って凄い料理を作れるアイツを自分の理念に合わないという理由で切り捨てる薊政権が気に食わない」
立てていた指の一本を折って彼は告げる。
「二つ目はさっきもいったけど」
「それでは食戟、決着です! 審査員の方、答えをどうぞ!」
鳩羽が言い終わる前に司会者の進行によって勝敗が下される。
誰もが結果はセントラルの圧勝だと思った。
一矢報いた後で再び薊側に士気が傾くことになると思った。
だから誰もが目を疑った
「……へ?」
ぽつり、とメアの口から呆けた声がこぼれる。
勝敗を指し示す液晶版
そこにはこう書かれていた。
Central 0
家庭の味研究会 3
「勝負がつかないうちに勝ち誇ると後で恥をかくからやめた方がいい、ってもう遅いか」
歓声など上がらなかった。
何かの誤表示か? と言われたほうがまだ納得できた。
しばしの沈黙の後にざわつく会場は勿論、審査員達すらも首をひねっているのだからなおさらだ。
「ちょ、ちょっとどういうことよ!」
メアが審査員席に駆け込んでいく。
当然だろう、先ほどまでの反応でこの結果に納得がいくものなどいるはずがない。
「い、いやわしらもなんでかのう? とは思っとるんじゃが」
「はあ!? じゃあなに? 押し間違えとかそういうこと!?」
「いや、そうではなくてのう」
「ええ、確かにあなたの料理は素晴らしかった。それに対し鳩羽星の料理は特にいうこともない普通の料理でした」
「点数をつけるとしたらあなたの方がよほど上だとは思ったのですが、ただ、どちらの料理がおいしかったかというと」
「「「鳩羽星の料理の方がおいしかった」」」
一字違わず同じことを言う審査員三人の言っていることがメアには理解できなかった。
何を言ってるんだ? 明らかに自分の方が高評価を得ているのに鳩羽の方がおいしかった?
そんなふざけた話があってたまるか!!
混乱から徐々に現実を受け入れていったメアはふつふつと湧き上がる憤りを抑えることができなかった。
「ちょっと、鳩羽! あんたのカレーまだあるんでしょ! よこしなさい!」
「うんいいよ。梁井のと食べ比べてごらん」
きっ、と睨むように鳩羽に噛み付けば、察しがついていたのか既によそっていた鳩羽のカレーを半ばひったくるようにして取る。
見た目を注視してみたものの特に変わったところはない。食べてはみたものの特にいうことはない、特に問題がないただ単においしいカレーだ。
今度は自分のカレーを食べてみる。
自信のあったチーズの工夫や卵もうまくからみ非常によく出来ていた。
「やっぱり! 食べ比べてみたけどあんたの全然普通じゃない! これなら当然
憤っていたメアの表情が段々と色が抜け落ちたように無表情になる。
今自分が何を言ったのか、なぜそんなことを言ったのか、それを自覚していった彼女には先ほどまでの怒りはない。
あるのは困惑と混乱と、そして―――理解できないという恐怖。
「お、おい。メア? お前何言ってんだ?」
様子がおかしい、と見守っていた楠が声をかけるが当の本人のメアはまるで幽霊を見たかのような青い顔で震えながら楠に向き直る。
「れ、連ちゃん、変なの、おかしいの、アタシの料理と鳩羽の料理、それぞれ単独で評価したらあたしの方がいいはずなのに、どっちがおいしかったか?って思った瞬間、鳩羽の方の料理の方がおいしいって思えるの! 鳩羽のカレーの方が何度考えてもおいしいの!!」
「おいおいどうなってんだ?」
半ば泣き叫ぶようなメアの言葉に訝しんでいたのは幸平たちも同じだった。
「じゃじゃーん。気になると思ってまた取ってきちゃいました!」
「うわ!?」
いつの間にかメアと鳩羽のカレーをくすねてきたアリスがえりなや一色を連れて訪れていた。
幸平たちはなぜえりなや一色がいるのか疑問に思いつつもまずは気になるカレーの方を、と味見をしてみる。
「……ほんとだ。確かに梁井先輩の料理はよく出来てるし選抜予選の時に出てたら本選進出間違いないってくらいおいしいけど」
「ああ、それに対して彼の料理はなんの変哲もない普通の料理だ。しかし」
「すげえな、ホントにどっちがおいしいか、って言われたら鳩羽先輩の方が旨い」
皆が驚きと困惑で騒いでいる中、すっと一歩前に出たえりなが一口鳩羽のカレーを口に運ぶ。
目を瞑りながら数度租借した後にゆっくりと目を開けたえりなただ一言
「……やっぱり」
とつぶやいた。
「やっぱりって、何がだ薙切?」
「……この料理は隠し味が使われているわ」
「隠し味!? それだけでこんなに差がつくんですか?」
「ええ、調理にも秘密があるんじゃないかと彼が作る手順を見ていたけれどいたって普通だったわ。私の目がおかしくなければ後は隠し味だけよ」
「ふーん、で、何が使われてるんだ?」
「……」
「えりな?」
幸平の問いに黙り込んだえりなの様子がおかしい、とアリスが尋ねるがえりなは反応しない。
応えは彼女の後ろから返ってきた。
「わからない、そうだろ? 薙切くん?」
「……ええ」
どこか嬉しそうに尋ねた一色に悔しそうにしながらも肯定するえりな。
そのえりなの言葉にその場にいた全員が疑問を持つ。
「分からない? 何言ってるのよえりな? 『神の舌』を持つあなたが料理を食べてわからないだなんてあるはずないでしょ?」
『神の舌』
薙切えりなの代名詞とも言える人類最高峰の味覚。
10種類の塩を味見だけで見分けられる、一口食べれば火入れの時間や食材の質すら分かる、いうならば絶対味覚。
その彼女をして食べた料理に使われている隠し味が『分からない』などというセリフが吐かれるとはまず考えられないのだ。
しかしただ一人、一色だけはそれを分かっていたかのようににこにこと笑っている。
「別におかしくはないさ。彼の料理はそういうものだからね。本人も『才能のない俺が出来る唯一誇れる工夫』というくらい彼の隠し味に対する技術は異常なのさ。むしろ隠し味だと分かる薙切くんの味覚こそやはり『神の舌』だと言わざるを得ないかな」
今まで日の目を見なかった親友への注目がうれしいのか一色は饒舌に語り出した。
「そう、彼は隠し味を見事に使いこなす。あまりにも異常すぎて彼の料理を食べただけではそのすごさが分からない。彼の料理が真価を発揮するのは他者の料理と食べ比べたとき。正に食戟のためにあるような料理人、それが彼、鳩羽星さ!」
「んな大げさにいうな慧。ただ単に俺が料理に出来る小細工はこれしかなかった、ってだけだっての」
声がして皆が振り返ればそこには先ほどのやり取りが聞こえていたのか少し照れている鳩羽星がいた。
「おお、鳩羽先輩すごかったんだな! てっきり負けちまうかと思ったわ」
「そ、創真くん失礼だよ! あ、おめでとうございます鳩羽先輩!」
「ありがとうね。というか皆なんでここに? 俺誰にも言ってなかったんだけどもしかして応援に来てくれたの?」
「はは、当然じゃないか! 極星寮の仲間の応援にくるのは当たり前だろう?」
実際はただの偶然なのだが堂々と嘘をつく一色の言葉に「そっかあ、ありがとなあ」と嬉しそうにしている鳩羽を見て一同は黙っていることに決めた。
真実が正しいとは限らない瞬間である。
そんな心温まる団欒をよそにえりなは鳩羽に一歩詰め寄った。
「それで、鳩羽星、信じられない事ですがあなたがこの私ですら分からないほどの隠し味のスペシャリストだということはわかりました。ですが何故今までその腕を公表してこなかったのかしら?」
「おや、これはえりな様。確か以前お会いしたのは慧の試食会の時でしたよね? そう言えば今はうちの寮に間借りしてるとか。大丈夫ですかあそこで? うちの子たち失礼なことしてません?」
「え、ええ、皆よくしてくれています。って話をそらさないで質問に答えなさい!」
照れ隠しのように問いただすえりなに鳩羽としては苦笑いをするしかなかった。
「いや、俺は俺の料理が単体だと本当に普通の評価しか得ないことは知ってましたし、かといって食戟に参加すれば確実に俺が勝つでしょうけどそれじゃ波乱を生むでしょ?
えりな様みたいに種が分かれば正当な評価受けられるでしょうけど普通の人相手じゃ八百長疑われそうなんで目立たないよう慧のサポートに努めてたんです。
……まあ、さっき言ったように自分の認めた美食しか料理じゃないとか言ってる神様気取りを潰すためなら食戟するのも吝かではないですが」
「で、でもそれなら鳩羽先輩がどんな隠し味を使ってるか教えてたらもっとちゃんと評価されてたんじゃ?」
一瞬、怖い表情になった鳩羽にビビりながらも田所がふと浮かんだ疑問を投げかける。
田所の発言にきょとんとした鳩羽だったが「馬鹿だなあ田所は」と少し含むような妖しげな笑みを浮かべてこう答えた。
「隠し味は秘密にしておかなきゃ隠し味にならないでしょ?」
この日より、遠月学園に一人の料理人が台頭し始める。
彼が作った料理は普通としか言いようがないのにも関わらず食戟にて並みいる敵を悉く倒していった。
そんな彼にいつの間にか異名がついた。
食べ比べた瞬間に評価がころっと変わる。噂では『神の舌』すらも騙すほど。
故に彼はこう呼ばれた
『神すら騙す
名前の由来:トリックスター⇒鳥 九 星⇒鳩羽 星
料理をできない筆者が必死に料理漫画のSSを描きたいと考えた結果がこれ
作中の焼きカレーは単に筆者の好みですがお勧めです