命の危険がない平和を求める! 作:逃走経路
初めの空はとても恐怖があるものでして、手を握ってもらってるとはいえそれだけでは心配になるのが人間。俺、知ってるよ。こういう時は下を向いたらダメなんだって。
まあ、空を飛ぶとだいぶ心地いい。空を飛べる世界なら俺もいつかそれを飛べるようになりたいな。人間なら誰も一度は憧れるから、飛べると分かったらなおさら飛びたいよね。
「今度、空飛ぶ練習してみる?」
「え? 出来るんですか?」
「もちろん」
空を飛べると言うことは行動範囲が馬鹿みたいに広くなるから、こりゃあやる気も出てくるってもんだ。けど働くほうが優先だろうし、スキマ時間に教えてくれるのかな。だとしても絶対空を飛ぶのをマスターしてやるぜ。
「うんうん、やる気満々な顔だね。その方が教え甲斐がありそうだよ」
「空を飛べると聞いたらやる気も出ますよ。寝る間を惜しんでとまではいきませんが、飛べるまで頑張り続けますよ」
「やっぱり君の時代じゃあ、空を自由に飛べなかったんだね」
「そうですね、どうにか乗り物を使って空を飛んで何処かへ行くっていうのが基本でしたから」
そう考えれば鉄の塊が人を乗せてガソリンという燃料で飛ぶっていうのも凄いんだな。見たところ空港のような場所が見当たらないから飛行機のようなものはないのかね。
「乗り物を使って空へ飛んで行く……ロケットみたいなものかい?」
「ロケットとはまた違いますね。なんと言えばいいのか、飛行機という乗り物で、石油なんかしてガソリンというものに変化させてそれを燃料にして飛ぶ……だと思います。でも石油をなんかしたガソリンは名前は思い出せませんけど、特殊な鉛を使ってたはずです。詳しいことは専門家じゃないのでわからないですけど」
「それだけでも知識にはなる。いつ使うのかわからないものでも、ふとした拍子に必要になったりするんだ。だから勉強はちゃんとするものだし、運動もそれなりにしておくべきなんだ」
「なんか深いですね」
「まあね」
言われてみれば確かに親や教師が言ってる言葉に似てるなぁ。確か、「いつ使うかわからないものでも覚える必要はある、逆に取ればいつか使うかもしれないからな」だったかな。その後に生徒(俺も含め)が文句を垂れたものだが、俺の言った飛行機の知識だって使わないと思ってたけど使ったし。半端な知識だったけど。
「そう言えばだいぶ喋るようになったね。何か私に気でも使ってたのかい?」
「いや、そういうわけではないんですが」
「ならさならさ、私に敬語を使わないで話してよ。その方が楽でしょ? 面白そうだし」
「いいんですか?」
「もちのろんさ! もし敬語使ったら罰ゲームね」
「さあ、普通に話そうか!」
それとなく悪戯を考えてる子供的な雰囲気を纏った声色だったけど、きっと何か被害があるわけでもなさそうだ。何かあってもきっと大丈夫。何か決定的なミスをしたような気もするが、なんとかなるさ。
「へぇ、やっぱりそうなるんだ」
「ん? 何かあったか?」
「いや、なんでもない」
むむ、気になる。何か意味ありげなことを言った後に何でもないって言うのは、何でもなくないと言うこと。でも教えてくれないのなら無理に聞く必要はなさそうだし、下手に探りすぎると痛い目にもあいそうだし。好奇心は猫を殺すとはよく言ったものさ。
「あ、約束して欲しいことが一つあるんだけどいい?」
「内容にもよると思う」
「どんなことがあってももう君は働くことになるから逃げないでね?逃げたら本気で捕まえに行くから」
「お、おう」
なんかとても大変な場所に就職してしまったのかもしれん。ま、まあ、過労死するほど働かされる事はないだろうし心配ないでしょ。
にしても空を飛ぶ時間が長いな。初めて飛ぶ俺の為にゆっくり行ってくれてるのはありがたいが、だんだん握ってる手の方の肩が痛くなり始めてきたぞ。
「なあ、もうそろそろで着くか? このままだと肩が限界突破して外れてしまうかも」
「あ、ごめんね。後もう直ぐで着くから、もうちょっとだけ我慢して。速度も上げるから」
「いや、空を飛ばしてもらってるから俺の方が非がある、ごめん」
本来なら文句を言える立場でもないんだが、申し訳ないな。謝るのも大切だけど謝りすぎるのは相手も気分もあまり良くならないって聞くから、謝るのは終わらせて着いたらしっかりとお礼をしておくべきだね、うん。
「着いたよ。ここが君の職場になるのかな」
「ここ、ですか」
俺の目に入ってきたのは驚きのものだった。それは想像絶するもので、思わずまた敬語になるほどであった。服やゴミが散らかっているのだ。それもただ散らかっているのではなく、ゴミが分けられて散らかっているが故に、最早ある意味芸術とも言えるんではないかと。
「それにして少しは片付けようとは思わなかったの?」
「自慢して言う事じゃないとは思っているんだけど、片付けようと思ってたらこんなになってないよね」
「この服とか畳んであるのに……服?」
はて、俺はそこに誰かはあると認識してるが身体の特徴どころか服を着てる、顔を見たと言う記憶がないな。人なのか別の何かという判別すらできない。いや、まるで許されてないかのような。
「あ、ごめん。隠しを切ってなかった」
「隠し? あ、え、ん? ……ん!?」
だんだん認識というか俺と一緒にいた奴についての情報が目から入ってきたんだが、子供のような見た目なのに何か凄い身分なのだとわかる服を着ている。それだけならまだちょっとした反応で終わった。だが、背中に光輪があった。服についてるものとかじゃなくて普通に浮いてる。
「あ、びっくりした? 実は言うと、私は神様だったんだ」
「な、ナニィィィィィィ!?」
「ああぁ、イイね、この反応。こういうのを見てみたかったんだ」
な、何という事でしょう。俺と一緒にいた子はどうやら神様だったらしい。この俺は許可をもらってるとはいえ簡単にタメ口を使い、この手に触れ、文句を言った。もう俺死ぬんじゃないかな。
「ふふ、さっき敬語使った罰ゲームとしてこれからも敬語禁止ね」
「早くも俺の人生は終了だな。さらば神様、また会う日まで」
「きっちり敬語を使ってないところに好感持てるね。適応力高いとか言われない?」
「いや、諦めが早いだけ。変に駄々こねて敬語を使ったら罰ゲームをダシに弄ばれるかもしれん」
「あら、ばれちゃった」
苦渋の決断だが、神様に対して敬語は使わないでいくしかない。下手したらこれ以上に酷い暴露があるかもしれないが、今のやる事はここの清掃だな。
「清掃始めるから必要なものはちゃんと必要って言ってね」
「オッケー」
清掃を始めた俺は何が捨てて良くて何が捨てて悪いかを聞きながらゴミをまとめていく。良かった点をいえば無駄に散らかってるわけじゃないから、余計に時間はかからずに済んだという事だろうか。変な虫等が沸いてないのは流石神というのか、それとも見えぬところでこっそり殺すもしくは流していたかもしれないが、いなかったのは本当に良かった。
「ゴミはこれからここに捨ててね。こっちが燃えるゴミ、こっちが燃えないゴミ。もっと詳しい分別は俺がやるからこの2つにちゃんと捨てて」
「おお、綺麗になった。人が訪ねてくるからほんとにちょうど良かったよ。君を拾ったのは」
「寝ていた俺を見つけてくれたのは神様なのか?」
「いや、見回りの憲兵。その後で私が面白そうだから拾った」
「結果オーライだけど面白そうだから拾われたのか俺」
確かに危ないとわかっててあんな所で寝たりするような奴は、神の視点からすれば面白いのかな。てっきり俺は神様が拾ってくれてたもんだと思ってたからなぁ。今度俺を見つけてくれた人のところに行って、お礼を言いに行かないとな。命の恩人第1号なわけだし。第2号は神様。
「それでどんな人が来るんだ?」
「八意××」
「え、八意さん?」
「そうだよ、その時に色々わかると思うよ。私のことも君のことも」
なぜ八意××さんが来るのか。来る理由としては友達だとか、話し合いがあるだとかのばす。そう考えればこの神様はだいぶ偉い方なら可能性が非常に高い。ま、まさかあの時言ってたツクヨミ様がこの神様なわけないよね。
「まだ30分くらいあるね。その間に部屋とかを詳しく案内するよ。この部屋以外はちゃんと綺麗だから」
「あ、うん」
この後部屋を案内されて台所、風呂場などの詳しい使い方を教えてもらい、自分が使う部屋なども案内された。
そんなこんなをしていれば時間はちょうどよくなるもので、案内が終わって一息ついた所でその八意氏がやってきた。
「あ、きた」
「神様だとそういうのもわかるのか」
「お邪魔するわね」
中々凛々しい声をしてる。これは美女を期待できるのではないでしょうか。しかしのところ、やはり俺は邪魔ではないだろうか。ここにいてもいいとは言われたが。
「よく来たね、ゆっくりしていってね」
ああ、凄い美女じゃないか。2次元にいる可愛い子をそのままリアルに移動させたらこうなるんではないでしょうか。俺の時代にいたら確実に一躍有名人だね。
「ええ、早速で悪いけどこの男は誰かしら?」
「彼は私の新しい友達。今日拾ったから小間使いにしてみた」
「どうも、宮薙鏡戸です。宜しくお願いします。今日からここの神様に拾われてここで働く者です」
「私は八意××。あ、××って言えるかしら? 無理だったら永琳でもいいけど」
「ええっと、一応××とは発音出来ますけど永琳とどっちが良かったりしますか?」
「そうね、基本どちらでも構わないわ。発音しやすい方でいいわ」
「なら、永琳さんと呼ばさせていただきます」
「ええ、わかったわ」
永琳さんには悪いけど××っていう名前は無理矢理発音してるみたいで、だいぶ口が辛いんだよね。だから申し訳ないです。
「そう言えば今日拾われたって言われたけどこの神についてどこまで知ってるの?」
「ただ、神様であることを」
あ、永琳さんが神様を掴んで俺から離れていく。何があったんだろう。言わなきゃいけないことを言ってなかったとかじゃないよね。俺が死ぬとかないよね。いや、言っといて何だがそれはないな。
あ、帰って来た。なんか永琳さんが疲れた顔をしてる。俺のことか神様のことかわからないが何かあったんだな。
「あなたも災難ね」
「え?」
永琳さんは俺の肩に手を置いてそう言う。これは俺に何か被害が来る感じで、神様が何かを言ってない可能性が高いかもしれない。まあ、就職というか小間使いにしてすぐ俺が死ぬようなことをさせるわけがないから何とかなるか。
そしてこの後、2人と1柱で会話を楽しんでいた。ここについて詳しいこと、俺の世界のこと。様々な話をして盛り上がっていた。