耳の聞こえない彼女と目の腐った彼   作:プリエス

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お久しぶりです。
長らくお待たせしてしまいました。
言い訳をするなら、スランプとリアル事情が込み合い投稿する暇がなかったことです。
これからは、ゆっくりと調子を戻していきたいと思います。


家族。

『俺と友達になりませんか?』

 

唯一、俺が覚えてる手話を西宮に向けてする。

 

「ッ!!……ぅ…あ……」

 

彼女はノートで口元を隠し、視線を右へ左へと忙しなく変えていく。

 

「……!!」

 

そして彼女は、勢いよく頭を下げるとマンションなどが立ち並ぶ団地の方へ走り去っていった。

 

「あ……これ…忘れて」

 

西宮が座ってた場所には通学カバンが置かれていた。

俺がよく知る学校のカバンが。

そう、『総武高校』の通学カバンが。

 

「………」

 

そのカバンをどうするべきか考えてると、団地の方から西宮が走ってきていた。

 

「……はぁ……はぁ……!!」

 

西宮はカバンをひったくるように、抱えまた頭を下げて走り去っていった。

 

「何だったんだ?」

 

ーーー??side

 

「……!!」

 

バンッ、と勢いよく玄関のドアが開けられる。

 

「あっ、姉ちゃん、どうしたんだよそんなに顔赤くして」

 

そこには『総武高校』のカバンを抱えゼェゼェと息を吐く姉ちゃんが立っていた。

姉ちゃんは何度も深呼吸をして、落ち着いたのか手話を使って今日あった事を話してくれた。

 

「へぇー……姉ちゃん、昔『片思い』してた人に会ったんだ、それで?」

 

「ぁ……あぅ……!!」

 

「えっ!しかもそいつも総武高なの!?」

 

「…!!」

 

姉ちゃんは首が取れるのではないかと思えるくらいに首を降る。

 

「そっか……なら俺も応援するよ」

 

今度こそ姉ちゃんを守るんだ。

その為には、そいつが姉ちゃんにとっていい奴なのか見極めないと。

そう考えながら、カメラのシャッターを切る。

 

「……姉ちゃんは私が守るんだ」

 

ーーーー

ーーー

ーー

ー

 

「ただいま……」

 

玄関の扉を開けると、小町が腕を組みながらこちらを睨み付けてきた。

 

「ゴミぃちゃん、小町は怒ってます」

 

「あっそ……」

 

正直、もう疲れたから早く寝たい。

そのせいか、小町にも冷たく当たってしまう。

 

「ゴミぃちゃん……この手紙……何?」

 

小町の方に視線を向けると、俺が書いた手紙を小町は突き出してきた。

 

「何って……手紙だが」

 

「だから、この内容はなんなの!」

 

気づけば、俺は小町に押し倒されていた。

小町は手紙を握った手で何度も、俺の胸を叩いてくる。

 

「小町やお母さんがどれだけ心配したと思ってるの!」

 

その姿は、何処と無く西宮に似ている気がした。

 

「悪かった」

 

「もう……こんな事しない?」

 

「しない」

 

「絶対に?」

 

「絶対にだ」

 

小町の頭を乱暴に撫で回す。

すると小町も目に涙を貯めながらも笑っていた。

 

「ならゆるします、小町はお兄ちゃんの妹だから」

 

小町はそう言って俺の上から降りる。

 

「それと、お兄ちゃん……雪乃さんたちと何かあった?」

 

「いや……まぁ……あった」

 

「そっか……困った時は何時でも小町に相談してね……小町はお兄ちゃんの味方だから」

 

小町はそう言ってリビングに駆け足で入っていった。

 

「…っぐっ……あぁ……ありがと……」

 

涙が溢れそうになるのを堪えながら、小町の背に向けて礼を言う。

何故だか分からないが、涙が溢れてくる。

 

「…八幡……」

 

声がする方に目を向けると、おふくろと親父が立っていた。

 

「……おふくろ…それに親父も…」

 

「八幡……あんたこれ……」

 

そう言うとお袋は、俺がせめてもの恩返しのつもりで置いていった金の入った封筒を見せてきた。

 

「こんなの残されたって……こんなので……」

 

そう言いながらお袋は泣き崩れた。

思わず、お袋の方へ近づこうとすると俺の目の前に親父が立ちはだかる。

 

「八幡……」

 

「……親父……」

 

俺よりも背がでかい親父に見下ろされる。

責めるような、悲しんでるような親父の目が怖くて思わず目をそらす。

 

「少し痛むぞ」

 

「えっ?……ッ!?」

 

殴られた。

しかもグーで。

初めてだったかもしれない。

 

「子供が死んで悲しまない親はいない……だから、こんなことはもうするな」

 

「…ッ……は……い」

 

「それと……よく帰ってきたな」

 

そう言うと親父は俺の頭を撫でだした。

そうか。

今まで小町ばかり愛されてると思ってた。

けど違ったんだ。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

「男なら泣くな」

 

そう言いながらも親父は頭を撫でるのをやめてはくれなかった。

いつもなら、嫌と感じるかもしれないそれを、俺はどうしようもなく嬉しいと思ってた。

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