魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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お久しぶりです。そして投稿と共に遅れましたがあけましておめでとうございます。そしてこんな駄文に評価をしてくれる方が現れました。カービィさん、ケチャップの伝道師さん、ありがとうございます。

そして皆様お待たせしました。
なお、今回はいつもより短くまとめられたため、パート分け無しでお送りします。
タイトル通り本格的な絶望の始まりを告げる第7話、どうぞ。


――OP『コネクト』――



第7話『衝撃!ソウルジェムの真実』

 

 

 

~~ゲームセンター~~

 

 

 

「ほっ、はっ、てやっ!どうだ!」

 

佐倉杏子が軽快なステップを踏んでいた。ここは杏子がよく立ち寄るゲームセンターで、今日はハイスコア更新を狙っていた。

 

「佐倉杏子」

 

そこへほむらが現れた。

 

「あ?なんだまたあんたかよ?」

 

杏子は器用にもゲームの音楽に合わせてステップを踏みながら答える。

 

「あなたにこの街を任せたい」

 

「……本気か?」

 

「ええ、本気よ」

 

「どういうつもりだよ?何か裏があるんじゃないのか?」

 

「裏というよりは交換条件としてあなたに協力してほしい事があるの」

 

「協力?」

 

「…もう少ししたら、この街に“ワルプルギスの夜”が来るわ」

 

「!」

 

予想外の台詞に一瞬だけステップが鈍った杏子。

 

「………確かなのか?」

 

「ええ。私の目的はワルプルギスを倒すこと。それにはあなたや巴マミたちの力が必要なの」

 

「マミやあの生意気な新入りと一緒にお手々繋いで倒せって言うのか?」

 

「ええ。それが終わればこの街をあなたの縄張りにしてもいい。巴マミたちには私が話をつけておくわ。それまで巴マミや美樹さやかには手を出さないで」

 

「……いいだろう。あんたが何を考えてるか知らないが悪くない話だね」

 

「協力に感謝するわ。それまでに準備を整えておいて」

 

そう言うとほむらは黒い長髪をなびかせながら踵を返して去って行った。杏子は疑心の目で彼女の背中を見送る。彼女がプレイしていたダンスゲームはハイスコア更新のファンファーレを鳴らしていた。

 

 

 

 

 

杏子との会談を終え、一人出口へ向かうほむら。その途中で足を止める。

 

「それにしても…雷門にも馴れ合いを好まない人が居たのね」

 

独り言のように言ったその言葉は隣で昔ながらの格ゲーをプレイしている剣城に向けられた。

 

「…彼女のことがほおっておけないだけだ」

 

「松風天馬といい、異世界から来たサッカープレイヤーというのは変わった人が多いのね」

 

「確かにあいつの影響かもしれないな。だが、あんたも魔法少女の中では変わっているみたいだがな」

 

「……?」

 

「俺はまだこの世界に来て出会った魔法少女は四人しかいない。だがあんたからは明らかに他の魔法少女たちとは違う雰囲気を漂わせている」

 

「…どういう意味?」

 

「俺はあんたのような人を知っている。その人は大切なものを守る為にそれ以外のものを全てかなぐり捨てて一人戦い続けていた。そしていざという時までその真意を絶対に明かさなかった」

 

剣城の脳内で一瞬だけその人物の後ろ姿が映った。それは10年前、今の自分と同じチームの同じ背番号を着けた自分と兄が憧れた人物だった。その背中はとても広く、心の内に秘められた熱い想いを体現したかのような情熱的な大きな背中だった。

 

「………」

 

「今のあんたはその時のあの人と同じ眼をしている。あんた…何か隠しているんじゃないのか?」

 

数秒間ほむらは黙る。しかし無表情を崩すことはなくただ一言。

 

「……あなたには関係ない話よ」

 

そう言って出口に向かうほむら。剣城は杏子とは違い振り向く事無くゲーム画面に顔を向け続ける。しかし杏子と同じくその視線はほむらの後ろ姿に向いていた。

 

 

 

~~翌日、河川敷~~

 

 

翌日の放課後、天馬たち雷門は魔女との戦いに備えて特訓に励んでいた。マネージャーたちも頑張って彼らを応援したり、ドリンクを用意したりとサポートをしていた。しかしやはりそこに剣城の姿はなかった。

 

「はあっ!」

 

バシッ

 

「ナイスキャッチだ!信助!」

 

「うん……」

 

「どうしたの信助?浮かない顔して」

 

「ねえ天馬。どうして剣城はあんな人と一緒にいるのかな?」

 

信介は剣城がせっかく合流できたのに彼が杏子についてしまった事が気がかりになっていた。

 

「う~ん。まあ、あいつはきっと何か考えがあるんだよ。今は剣城を信じようよ」

 

「…うん。そうだね!」

 

「頑張ってるわね」

 

ここでマミが河川敷の上から声を掛けた。

 

「マミさん!学校は終わったんですか?」

 

「ええ。この後魔女探しをするつもりよ」

 

「私たちも練習が終わったら手伝いに行きますよ」

 

「ありがとう空野さん。でも無茶はしないでね。あなたたちも魔法少女になれたら一緒に戦えたんだろうけど……」

 

「はい。でもキュゥべえによると私たちには魔法少女の素質はないって…」

 

「私、魔法少女になってみたかった……」

 

葵たちはこの世界で天馬たちと合流後、キュゥべえと会った。やはり彼女たちも魔法少女の素質は無かったらしく、彼女たちの指輪の事もわからなかった。茜は魔法少女の事を聞いてから憧れていたらしく、キュゥべえになれないと本人(?)も残念そうに告げられ、ガッカリしていた。

 

「まあ、あたしは別にあんな変なコスプレ着なくて良かったけどな」

 

「へ、変なコスプレ………」(ズーン)

 

「え?あ…わりぃ!悪気があって言ったわけじゃ……」

 

正義の魔法少女としての衣装をコスプレ呼ばわりされて両手と両膝を地面に着けて落ち込むマミと必死に弁明する水鳥。そんな二人に天馬たちも「あはは……」と苦笑いする。

 

「………」

 

しかしそんな中でも神童は一言も喋らず深刻な顔をしていた。

 

「?…どうしたんですか、神童先輩?」

 

「いや、なんでもない…」

 

(病院で感じた胸騒ぎがまだ俺の中で疼いている……)

 

神童は自分の胸騒ぎの原因は佐倉杏子が現れ、最初の内は彼女の所為かと思っていた。しかし彼女が出現してからはその胸騒ぎは収まるどころかより荒波の様に激しくなっていた。

 

(何か、嫌な予感がする…)

 

 

 

~~見滝原総合病院~~

 

 

「やっほー恭介元気!?」

 

いつもと変わらず病室を覗き込みながら元気に挨拶するさやか。

 

「あれ?」

 

しかし病室のベッドの毛布やシーツは綺麗に折りたたまれ恭介の荷物が無くなっていた。文字通り、もぬけのカラになっていた。

 

「これは……」

 

その時、偶然通りかかった看護婦が話しかけてきた。

 

「あら、さやかちゃん。上条君なら今朝退院したわよ」

 

「え?」

 

「足の方も松葉杖があれば歩けるほどに回復したからご両親が迎えに来て帰ったのよ。バイオリンの練習がしたいって張り切っていたわよ」

 

「………」

 

 

 

 

~~上条家前~~

 

 

「恭介……退院したことぐらい知らせてくれても良かったのに…」

 

さやかは上条家の前に来ていた。丁度練習中だったのかバイオリンの音色が響いている。退院した事を知らせなかった恭介にさやかは不満と寂しさを募らせる。

 

「………」

 

中に入って退院を祝うなり知らせなかった不満をぶつけることも出来たがせっかく治った腕で望みが絶たれていたバイオリンの練習に精を出している恭介の邪魔はしたくないという思いもあり、さやかは踏み込むことが出来なかった。

 

「よう」

 

「!」

 

突然後ろから話しかけられ振り向くとそこにはチョコ菓子をくわえた杏子がいた。

 

「お前…ッ!」

 

さやかは警戒を強める。

 

「キュゥべえから聞いたぜ。あんた、ここのボウヤの為に契約したんだってなあ」

 

「…だったらなんだっていうのよ」

 

「たくっ…せっかくの願いをくだらないことに使いやがって……」

 

「くだらない…?あんたみたいな馬鹿に何が…!」

 

「馬鹿はそっちだ馬鹿。元々魔法少女の力は他人の為に使うものじゃねーんだよ。みーんな自分の為に使うためにあるのさ。マミのヤツはそんなことも教えなかったか?まあ、正義の味方ごっこなんてやって死にかけるなら当然か」

 

「…っ!あたしのことはともかく、マミさんを馬鹿にするのは許さない!」

 

マミに憧れ彼女を目標にしているさやかにとって彼女だけでなく、その生き様を侮辱することは我慢できなかった。しかし杏子は全く詫びることなくフッと鼻で笑いながら話を続ける。

 

「まあ、それはそれとして……惚れた男をモノにしたいんならいい方法があるぜ」

 

「?」

 

首を傾げるさやか。杏子は邪な笑みを浮かべながら言った。

 

「あんたの手でもう一度あのボウヤを潰してやればいいのさ。今度は左手だけでなく両手両足もズタボロにしてやるのさ」

 

「!?」

 

杏子のとんでもない提案にさやかは目を見開く。

 

「あんたなしでは生きられないようにしてやるのさ。そしてもう一度あんたが世話をしてやるんだよ。そうすりゃ身も心もみーんなあんたのものだ」

 

「お、お前……ッ!」

 

怒りを露わにして声を震わすさやか。

 

「なんなら代わりにあたしがやってやろうか?同じ魔法少女のよしみでやってやるよ」

 

「ッ!」

 

その一言でさやかは完全にブチ切れる。

 

「…あたしは認めない……あんたみたいな魔法少女なんて、絶対認めない!!」

 

「フッ…そうこなくっちゃな」

 

杏子はその一言を待っていたかのようににやける。

 

「ここじゃ人目に付きやすい。場所を移そうぜ」

 

「………わかった」

 

さやかは拳を強く握り、決して穏やかではない表情のまま黙って杏子の後をついて行く。

 

「………」

 

そんな二人を彼女達からは死角となっている壁に寄りかかりながら見ていた人物がいた。さやかと杏子が共に歩き出したと同時に彼は直ぐにある場所に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

~~一方・河川敷~~

 

 

「よし、今日はこのくらいにして魔女探しに行こう」

 

「はい!神童先輩!」

 

「………」

 

一通り練習を終え、魔女探しに向かおうとする一同。しかし何故かマミだけは浮かない顔をしていた。

 

「…?どうしたんですか、マミさん」

 

葵の呼びかけにハッとなるマミ。しかしすぐに目をそらしてしまう。

 

「……杏子さんの事ですか?」

 

「…!」

 

天馬に図星を突かれ体を震わすマミ。

 

「やっぱり、気になるんですか?」

 

「ええ…」

 

マミは昨日杏子と再会してから彼女の事を心配していた。今は剣城と一緒とはいえ、何か良くない事をやっているのではないかと。そんな不安げな表情を浮かべるマミに信助は尋ねる。

 

「そういえば、マミさんの弟子だったって言ってましたよね」

 

「良かったら話してもらえませんか、その時のことを……」

 

天馬も頼み込む。

 

「……そうね。あなたたちには話しておいた方がいいかもしれないわ」

 

マミは少しだけ躊躇しそうになりつつも話すことにした。

 

「私と佐倉さんが出会ったのは彼女が魔法少女になりたての頃だった……彼女は元々隣町の風見野の子なんだけど、初めて戦った魔女を追いかけてこの見滝原にやって来たの。その時、魔女にやられそうになったところを私が助けたの」

 

「それが切っ掛けでマミさんに弟子入りを……」

 

信助の言葉にマミは頷く。

 

「当時の私はようやく魔女との戦いに慣れてきたところだったんだけど、一緒に戦ってくれる魔法少女がいなくていつも一人ぼっちだった。そんな時に佐倉さんに弟子にしてほしいって言われて戸惑いはあったけど、先輩として頑張んなきゃって気持ちと同時に一緒に戦ってくれる仲間ができて張り切っていたわ」

 

マミは目を閉じると彼女の脳内で当時の思い出がよみがえっていた。

 

「あの頃は本当に楽しかった……佐倉さんは私との特訓でみるみる上達して、うまく連携を取り合って魔女にとらわれた人々を助けたり、彼女のご家族との食事に誘われたり、彼女の技にカッコイイ名前を付けてあげたりと色んな思い出ができたわ」

 

「何か今、違うもん混ざってなかったか?」

 

水鳥のツッコミをよそにマミの話は続く。

 

「嬉しかった。私にもようやく心からわかり合える仲間が出来たんだと。そう…信助くんを皮切りにあなたたちや鹿目さんたちと出会った時の様に」

 

ここでマミは目を開け、信助を見る。信助は怪訝そうな表情でマミを見返す。

 

「信助くん。私の過去を話した時に、手を差し伸べてくれたでしょう。あの時のあなたが当時の佐倉さんに見えたの…」

 

「僕が……杏子さんに?」

 

「ええ。あの時のあなたの笑顔が昔の佐倉さんそっくりに見えたわ。まるで彼女が帰って来たみたいに」

 

マミは憂い募らせるように空を見上げ遠い目をしながら呟く。

 

「…今思えば、あなたとの出会いは佐倉さんとの出会いに似ていた。危ないところを私が助けて、それからは私の側にいてくれた……それは私にとって、とても心が安らぐことだったわ」

 

マミは家族を亡くしてからはずっと誰にも知られず、腹を割って話し合える仲間もいなかった。たった一人で戦い続けていた彼女にとって自分に懐いていつも一緒にいてくれた杏子と信助は共に戦う仲間というだけなく、かわいい妹や弟のような存在になっていた。

 

「話を戻すけど美樹さんの様に彼女も私と一緒に人々を救うために頑張ると張り切っていたの。魔法少女であることにも誇らしく思っていたわ。あの時までは……」

 

「あの時?一体、杏子さんに何があったんですか?」

 

「ええ、それは…」

 

「みんな!」

 

マミが話しだそうとしたとき、ある人物が現れた。

 

 

 

~~~陸橋~~~

 

 

「ここなら邪魔は入らねえ。さっさとケリつけようじゃねえか」

 

杏子は変身し、さやかに槍を向ける。

 

「………」

 

さやかも自分のソウルジェムを取り出そうとポケットに手を突っ込む。そこへ思わぬ乱入者。

 

「さやかちゃん!」

 

「まどか!?なんでここに!?」

 

「キュゥべえが教えてくれたの!さやかちゃん、やっぱりダメだよ!魔法少女同士で決闘だなんて!」

 

キュゥべえを肩に乗せながら必死に止めようとするまどか。それに対して杏子はチッと舌打ちする。

 

「またウザい仲間が現れやがったか」

 

「じゃあ、あなたの仲間はどうなのかしら」

 

杏子の後ろから突然ほむらが現れた。一同は驚きつつもまどかだけはわずかに希望を持った。

 

「ほむらちゃん!?」

 

彼女ならこの争いを止めてくれると…。

 

「佐倉杏子、彼女には手を出さないでと言ったはずよ」

 

「あんたのやり方じゃ手緩すぎるんだよ。どの道向こうはやる気みたいだぜ」

 

杏子がさやかを見つめるとさやかも杏子に向けてキッと視線を尖らせる。まどかはほむらでも止められないことに望みを絶たれる。

 

「やめなさい!美樹さん、佐倉さん!」

 

しかし、突然聞き覚えのある声がした。さやかとまどかが振り向くとマミや雷門一同がやってきていた。

 

「み、みんな!」

 

「っ!」

 

杏子はキッとほむらを睨む。

 

「私じゃないわ」

 

「何?」

 

すると雷門一同の後ろから一人の人物が前に出る。

 

「……杏子さん」

 

それは当然のごとく剣城京介だった。

 

「お前が呼んだのか…」

 

杏子は鋭く剣城を睨む。

 

「……言ったよな、今度邪魔したらただじゃすまさないってな」

 

「確かにそう言われました。でも、俺はそれに従うつもりもありませんし、こんな事を見過ごすつもりもありません」

 

「てめぇ…」

 

「佐倉さん、私も彼と同意見よ」

 

マミも剣城の隣に立つ。

 

「魔法少女同士が戦うなんて私としても好ましくないわ。今すぐにやめなさい」

 

「そうですよ!さやかさん、こんなことして意味なんてないじゃないですか!」

 

天馬もさやかを止めようとする。

 

「意味ならあるね。魔法少女としてどっちが馬鹿か決めるという意味が。わかったら余計な口出しするんじゃねーよ」

 

「なっ…!」

 

杏子はさやかの代わりに侮蔑と嘲笑を交えながら答える。

 

「天馬、悪いけど今のだけはこいつの言うとおりだよ……」

 

「さやかさん!?」

 

「…みんなは手を出さないで、こいつとはあたしが決着をつける…!」

 

「そうこなくっちゃな………そうだ、こいつを食い終わるまであんたに攻撃するのを待ってやるよ」

 

杏子はチョコ菓子を取り出して、口にくわえて余裕を見せる。

 

「舐めんじゃ、ないわよ………」

 

挑発に乗せられ、顔を紅潮させたさやかはソウルジェムを掲げ、変身しようとする。

 

(―――さやかちゃん)

 

気が付くとまどかの体は勝手に動いていた。彼女たちの決闘を止める為に暴挙に出た。

 

「さやかちゃん、ゴメン!」

 

まどかは一瞬の隙をついてさやかのソウルジェムを奪い、橋の下に投げ捨てる。ジェムは橋の下を通っていたトラックの荷台の上に落ちる。

 

「!まずい…!」

 

その直後、ほむらは一瞬で姿を消す。

 

「まどか!あんたなんてこと……」

 

さやかが怒鳴ろうとした直後、彼女は突然糸の切れた人形のように倒れこんだ。

 

「さやかちゃん!?」

 

「美樹さん!?」

 

一同は臨戦態勢を解きつつ慌ててさやかに駆け寄る。一同が倒れたさやかの顔を見ると、その瞳から光は消えており、生気が感じられなかった。

 

「さやかさん、どうし……っ!?」

 

最も近くに駆け寄った葵はさやかとは対照的に信じられない事が起きたように目を見開く。

 

「どうしたの!?葵!」

 

「さやかさん……息してない……」

 

「えっ…!?」

 

葵の衝撃の発言に一同は絶句する。

 

「今のは不味かったよ、まどか。よりにもよって友達を放り投げるなんてどうかしてるよ」

 

「え…?」

 

一人だけ口を開いたキュゥべえの言葉が理解できず、呆けた声を出すまどか。

 

「と、友達を放り投げる……!?」

 

天馬も困惑しながらオウム返しをする。そして杏子がさやかの顔を覗き込み様子をうかがう。そしてさやかの状態を理解すると目を見開く。

 

「どういうことだ、オイ……こいつ、死んでるじゃねーか!?」

 

杏子はその衝撃をぶちまけるようにキュゥべえに怒鳴った。

 

「……さやかちゃん、ねぇ、さやかちゃん……起きて、ねぇ」

 

「さやかさん…!」

 

まどかは何度もさやかを揺さぶり、神童も肩を叩くがさやかの瞳に生気は戻らず、その首もまるで壊れた人形のようにまどかの揺さぶりにそってただ揺れ動くだけで、一同はこの異常事態に動揺するばかりだった。―――ただ一人を除いて。

 

「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのはせいぜい100メートル圏内が限度だからね」

 

のどかに言うキュゥべえに一同は注目する。全員のその目は驚愕に満ち溢れていた。

 

「100メートル…?何を、言ってるの……キュゥべえ?」

 

衝撃を受けている全員の疑問をマミが声を震わせながら恐る恐る聞く。

 

「普段は当然肌身離さず持ち歩いんているんだから、こういう事故は滅多にある事じゃないんだけど…」

 

「そういう事を聞いているんじゃない!さやかさんに何が起きたと聞いているんだ!」

 

神童が場違いなキュゥべえの返答に怒鳴りつける。

 

「キュゥべえ!お願いだから助けてよ!さやかちゃんを死なせないで!」

 

まどかはただそう泣き叫ぶばかりだった。しかしキュゥべえはいつもと変わらず淡々と言った。

 

「まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって。さやかはさっき、君が投げ捨てちゃったじゃないか」

 

キュゥべえの言葉に一同は更に衝撃を受け、まどかに至っては呆然としながらその場に座り込む。

 

「どういうことだよキュゥべえ!さっきから身体をコントロールとか、さやかさんが抜け殻とか何の事を言ってるの!?」

 

天馬の叫びにもキュゥべえは変わらず闇夜に赤い瞳を輝かせながら答えた。

 

「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで魔女と戦ってくれなんて…僕にはとてもお願いできないよ。さやかたち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは外付けのハードウェアでしかないんだ」

 

「外付けのハードウェア、だと………」

 

剣城も動揺を露わにしつつ呟く。

 

「彼女たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで安全な姿が与えられるんだ」

 

「た、魂って………!」

 

信助の言葉を皮切りに、キュゥべえの説明に一同は一瞬で先ほどの出来事と今の状況をキュゥべえの説明と照らし合わせ、恐ろしい答えを頭に浮かばせる。

 

「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね―――」

 

キュゥべえはその恐ろしい答えを冷たく言い放つ。

 

「彼女たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変える事なのさ」

 

その言葉に一同は凍りつく。

 

「魂を…抜き取る、だって……!?」

 

天馬と共に雷門一同もまどかも杏子もマミも、全員が目を開いてその瞳を震わしていた。

 

「そうすることで魔法少女は常人が命を落とすような大けがを負っても、ソウルジェムが無事なら何度でも身体を直せるということさ」

 

ここで杏子がキュゥべえの小さな頭を潰れると思うほど強く掴みあげ、自分の頭の上の高さまで掲げる。その表情は怒りに満ち溢れていた。

 

「ふざけんじゃねえ!それじゃあたしたちゾンビにされたようなもんじゃねぇか!!」

 

「魔女との戦いにおいてそう簡単に死なないようにしたまでだよ。こういうのを君たちの言葉ではむしろ感謝すべきだというのかな」

 

「悪魔との契約みたいな事されて何が感謝だ!」

 

水鳥も全く詫びる様子の無いキュゥべえの身体をしぼり切れると思うほど強く握りしめて怒鳴りつける。

 

「…君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると決まって同じ反応をする。訳がわからないよ。どうして人間はそんなに魂の在り処にこだわるんだい?それに君たち雷門は魔法少女ではないのにどうして自分たちには関係ない事に怒るんだい?」

 

杏子たちの怒りが理解できないキュゥべえの微笑みが一同には悪魔の邪悪な笑みに見えた。

 

「ひどいよ……こんなの、あんまりだよ……」

 

まどかは消えてしまいそうなくらいか細い声で呟く。彼女はさやかの命であるソウルジェムを高速道路に投げ捨てたことを詫びるようにさやかを髪に顔をうずめてただ泣きじゃくるばかりだった。

 

「…さやかちゃあん……ごめんなさい……ご、ごめ……」

 

「まどかさん……」

 

一同がまどかに同情するように悲しい顔をしたその時だった。

 

「はあっ、はあっ…」

 

ほむらが突如息を切らせ、その白い肌を若干火照らせながら現れた。

 

「ほ、ほむらちゃん!?」

 

ほむらの再登場にまどかも泣くのも忘れて涙目で顔を向ける。

 

「こ、これを彼女の手に……」

 

その手にはさやかの青いソウルジェムが握られていた。しかしその輝きはかなり弱くなっており、彼女が手を広げるとまどかは慌てて手に取り、さやかの手に握らせる。

 

「………ん…」

 

数秒後、ソウルジェムが輝きを取り戻しさやかの身体がピクッと動きだしたと思うと、やがてその肌に生気が宿り、彼女の閉ざされていた目が開いた。

 

「さやかちゃん!」

 

「まどか…?」

 

「良かった……良かったよう……」

 

まどかは再び泣きじゃくりながらさやかを強く抱きしめる。

 

「まどか…?どうしたの?そんなに泣きまくって…?」

 

さやかの一命が取り留められたことに一同はとりあえず安堵しつつ溜め息をつく。

 

「みんなもどうしたの?てか、あたし一体どうなっていたの?」

 

「「「ッ!」」」

 

さやかの疑問が彼らを残酷な現実へと引き戻した。

 

「一体……何があったっていうの……?」

 

さやかのその疑問に即座に答えられる人物は誰一人いなかった。

 

「クッ…!」

 

そんな中、神童だけは身体を強く震わす。神童は病院で虫の知らせを感じていたのにもかかわらずその正体に気づけなかったことを悔やんでいた。

 

「くそっ、あの時の嫌な予感は……これだったのか…!」

 

神童は血がにじみそうなくらい強く拳を握っていた…。

 

 

 

 

 




――ED『Magia』――

次回予告

天馬
「魔法少女のとんでもない秘密を知った俺達!落ち込んでいく魔法少女達に俺達が出来ることは……。

次回!

『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第8話『悲劇の人魚姫』!」




というわけで絶望に触れた7話でした。
果たしてこの魔法少女の真実に天馬たちはどう向き合うのか。

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