魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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祝!通算UA8000突破!
こんな駄文を読んでくださり、評価も与えてくださった皆様にいつも感謝です。

さて今回はさやかを助けるためにあちこちに別れて話し合います。

それではどうぞ。


――OP『ルミナス』――


第10話『それぞれの決意』 Aパート

 

 

~~深夜・線路~~

 

 

 

「に、錦先輩!?」

 

さやかが絶望して魔女になってしまったことに嘆いていた一同。そんな彼らの前に、空中に浮かぶ光が突然現れ、そこから雷門のメンバーの一人である錦竜馬が落ちてきた。

 

「おお、天馬!みんな!無事じゃったか!」

 

空中から放り出された錦も土佐弁を喋りながら彼らとの再会を喜ぶ。

 

「つうか錦……早くどいたほうがいいぞ…」

 

「へ?」

 

水鳥に苦い顔で注意された錦は自分の下を見てみる。ここで思い出そう。彼は空中に出現した光から現れた。そしてその光はマミの頭上に現れた。つまり、今どうなっているかというと……

 

 

 

「きゅぅ……」

 

マミが空中から放り出された錦の下敷きになっているのであった。

 

 

 

「ぬおおぉ!?なんて事じゃあ!これは一体何があったんじゃあ!?」

 

「オメーが下敷きにしたんだろが!」

 

「ぬおお!すまんきに!あんた大丈夫か!?」

 

水鳥にツッコまれながら錦は慌ててマミの上から降りて呼びかける。しかしマミはうつ伏せで倒れており、目をくるくる回して気絶していた。

 

「彼女は気を失っているだけだから大丈夫よ。いえ、むしろ助かったわ……」

 

ほむらは今までにない新たなイレギュラーの登場に困惑しながらもいつもの調子で錦に呼びかけた。

 

「そ、そうなんか?ちゅか、おまん誰じゃ?ここは一体どこなんじゃ?」

 

辺りを見渡す錦。そんな彼の姿が一同に現状を再確認させる。

 

「……?どうしたんじゃ、おまんら?そんな暗い顔で」

 

錦は突然天馬たちの表情が変わったことに首を傾げる。

 

「……錦先輩、信じてもらえないかもしれませんけど、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ…ぬぬ……」

 

天馬からこの世界と今の自分たちの事を聞いた錦は両手で拳を作り、体を震わせていた。

 

「錦先輩……」

 

一同は錦のその姿にさやかの悲劇を聞いて自分たちと同じように悲しんでいるように見えた。そう思った一同はそれぞれ涙を流したり、歯を食いしばったりと再びさやかの死を悲しんでいた。

 

「ぬおーーーーーーっ!!!ワシャア、そのキュゥべえっちゅうんが許さんきにーーーー!!!」

 

「「「!?」」」

 

しかし、その予想とは裏腹に錦は顔を上げてキュゥべえに対する怒りを込めて叫んだ。

 

「か弱い娘たちをたぶらかし、その心を弄んで死なせるとは………人の魂を……心を何だと思うとるんじゃ!」

 

自身の拳に目を戻した錦はキュゥべえの非道なやり方に鼻息を荒くする。

 

「錦先輩……」

 

怒りに燃える錦に天馬たちは感慨深くなり、まどか、ほむら、杏子の三人は今まで出会ったことの無いこのハイテンションの男に唖然としていた。

 

「よっしゃ!ワシャ決めたぞ!」

 

「え?決めたって……?」

 

「決まっとろう!そのさやかっちゅう娘を助けるんじゃ!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

錦の突然の宣言にほむら以外の全員が驚く。

 

「不可能よ。魔女化した魔法少女を元に戻す方法なんてないのよ」

 

ほむらは冷静さを保ちつつ錦に反論する。

 

「んなもん、やってみなきゃわからんじゃろうが!」

 

しかし錦はあっけらかんと返す。

 

「無理よ……絶対出来るわけないわ…」

 

「なんじゃ、やる前から諦めてどうするんじゃ!?」

 

ムリだと言い張るほむらに錦も強気で言いかえす。

 

「……出来るわけ、ないのよ…」

 

「…?」

 

ほむらは体を震わせて顔をそらす。その姿は何故かとても辛そうだった。

 

「………」

 

一方で天馬たち雷門も全員が落ち込んで俯いてしまっていた。

 

「なんじゃおまんら!まさかおまんらまで無理だと言うつもりか!?」

 

その様子に気づいた錦は仁王立ちで天馬達に叱咤する。

 

「そうじゃありませんけど、でも……」

 

天馬は力なく返す。彼らは不安だったのだ。確かにさやかを助けたい思いはある。しかし自分たちにそれができるかどうか、失敗したら二度と立ち直れないんじゃないかと挫けそうになっていた。

 

「か~っ!何を沈んどるんじゃき!」

 

そんな仲間たちの姿に錦は呆れかえる。

 

「こんな所でビビってどうするんじゃ!そんなんで……

 

 

 

 

―――円堂(えんどう)監督を助け出せると思うとるんか!?」

 

 

 

「「「!!!」」」

 

錦のその言葉が雷門全員の心を叩いた。

 

 

 

「円堂監督………!」

 

『円堂監督』。その言葉が天馬の心に響き渡った。

 

 

 

 

 

円堂(まもる)

それは11年前、廃部になっていた雷門中サッカー部を復活させ、翌年の中学サッカー全国大会『フットボールフロンティア』で雷門を、そして世界大会『フットボールフロンティアインターナショナル(通称FFI)』で日本代表チーム『イナズマジャパン』をキャプテンとして優勝に導いた伝説の雷門イレブンである。それから10年、天馬率いる雷門中サッカー部の監督に就任したが、未来の敵から天馬たちを庇い、今は『クロノ・ストーン』という石にされて捕まっているのである。

 

「円堂監督……」

 

円堂は雷門に入ったばかりの自分にサッカーの楽しさや大事さ、色んなことを教え、支配されていたサッカーを取り戻すための革命の立役者にもなってくれた。天馬を初めとする雷門のメンバーなら誰でも尊敬する人物であった。その時、天馬は考えた。円堂ならこんな時どうするのかと。円堂は自分たちにいくつもの名言を与えてくれた。天馬はその心に響く名言の一つを思い出していた。

 

 

 

『諦めない奴だけに掴めるものがある!』

 

 

 

「諦めない奴だけに掴めるもの……!」

 

天馬は静かに目を閉じ、これまでの事を思い出す。ホーリーロードでの戦いの時、点差を着けられても何故最後は逆転勝利を収めることが出来たのか。何故見事優勝し、本当のサッカーを取り戻せたか。そしてこの世界においてもマミが殺されそうになって自分たちの命も危険にさらされた時、何故全員で生き延びることが出来たのか。それらにはある共通点があった。

 

「諦めない……心!」

 

決して諦めない心。それがあったからこそ今の自分たちがいる。それは天馬の、そして雷門の信念でもあった。天馬は顔を上げて自分のジャージの上からユニフォームのイナズマを象ったシンボルマークの部分をぎゅっと握る。

 

「そうだ……円堂監督なら、こんな所で諦めない!」

 

「天馬…!」

 

「こんな所で諦めたら、サッカーだって守れないし………ここでさやかさんを見捨てたら、きっと円堂監督だって助けられない!」

 

天馬は再び強い思いをたぎらせ、決意の瞳を露わにする。

 

「錦先輩!俺、やります!さやかさんを助けます!」

 

「天馬君……!」

 

「無理よ、松風天馬……いくらあなたでも…」

 

まどかは拳を握って気持ちを高ぶらせる天馬に希望を持つが、ほむらは変わらずそっぽを向いて諦め気味な顔をする。

 

「ほむらさん!俺、言いましたよね!さやかさんを絶対見捨てないって!あの言葉、嘘じゃありませんし、俺自身も嘘にしたくないんです!」

 

「!」

 

天馬のゆるぎない決意にハッと顔を上げるほむら。

 

「俺もだ、天馬!俺も……さやかさんを助けたい!」

 

「神童先輩!」

 

「俺も気持ちは同じだ」

 

「僕だって!」

 

「剣城、信助!」

 

天馬の決意に触発され、神童を初めとして次々と立ち上がる仲間たち。

 

「みんな…!」

 

「そうこなっくちゃな!」

 

「うん…!」

 

マネージャーたちも同じように気合を入れた。

 

「よっしゃ!これこそ雷門じゃな!みんな良い顔に戻ったきに!」

 

「―――面白れぇじゃねえか」

 

「お?」

 

錦がいつもの雷門の雰囲気に戻ったことに喜んでいると杏子が呟く。

 

「さやかを助けてぇのはあたしも同じだ。付き合ってやるよ」

 

杏子はチョコ菓子を口にくわえながらにやける。

 

「杏子さん…!」

 

「へっ………どうやらあんたたちと一緒にいるうちに、そのバカが伝染っちまったみてーだ……」

 

杏子は目を閉じて天馬たちの姿に感慨深くなるように八重歯を突きだして微笑む。

 

「まどかさんは?」

 

天馬がまどかにさやかの救出に参加するか問う。

 

「わたし……一緒に戦う事もできなくて、戦う勇気もなくて、何も役にも立てないかもしれない……でも」

 

まどかは不安げな表情を浮かべながらも、

 

「さやかちゃんを助けたい…!さやかちゃんと……仲直りしたい…!」

 

さやかを助けたいという意志をはっきり伝える。その姿に天馬たちは安堵の表情を浮かべる。

 

「ほむらさんは?」

 

「……あなたたちの事よ。どうせ止めたって聞かないでしょう?まどかが行くと言うなら私も行くわ」

 

天馬の問いにほむらは半ば呆れるように答えた。

 

「あとはマミさんですけど……」

 

しかし、肝心のマミは錦の側で気絶していた。

 

「あちゃ~、これじゃ聞けないきに」

 

「ってオメーのせいだろが!」

 

頭を掻きながら再び水鳥にツッコまれる錦。

 

「ま、何はともあれ、ひとまず決まりじゃ!この錦竜馬が参上したからには大船に乗った気でいるぜよ!ガッハッハッハッハ!」

 

そう言って錦は腰に両手を当てて自信満々に笑い出す。

 

「全く……また一段と変な奴が現れたもんだぜ……豪快っつーか、前向きなバカっつーか……」

 

杏子は誰もが気落ちするこの状況下で何故そんなバカ笑いが出来るのかと呆れる様に溜息をついた。

 

「とにかくみんな。一度帰って休んだ方がいい」

 

ここで神童が気持ちを切り替えるように提案する。

 

「そうだな。さやかの身体はあたしが預かっておく」

 

杏子は神童に預けていたさやかの身体を再び抱き上げる。

 

「杏子さん。俺も手伝います」

 

「わかった」

 

剣城が名乗り出ると杏子も了承したように頷く。

 

「その前に佐倉杏子。グリーフシードを3つくらい渡してくれるかしら?」

 

「はあ!?なんでだよ!?」

 

「巴マミは目覚めたら魔女化の真実に再びショックを受けるはず。ここで彼女まで魔女化されたらたまらないでしょう?ホントは私が出したいところだけど、あいにく今はグリーフシードが手元に無いのよ」

 

「ちっ!わかったよ」

 

杏子は片手でさやかの身体を支えながら器用に片手でポケットからグリーフシードを取り出し、しぶしぶほむらに手渡す。

 

「西園信助」

 

そしてほむらは杏子から受け取った三個のグリーフシードをそのまま信助に手渡す。

 

「いざ彼女が絶望しそうな時にはこれで彼女のソウルジェムを浄化しなさい」

 

「分かりました!杏子さんもありがとうございます!」

 

「ああ」

 

マミを心配していた信助は責任をもって預かると言うように力強く答え、提供した杏子にも忘れずに感謝の言葉を贈る。

 

「錦。お前の所為で気絶しちまったんだから、マミはお前が責任もって運べよ」

 

「わかってるぜよ。よっと!」

 

錦は水鳥に言われるまでも無いように気絶してるマミを背負う。

 

「さやかちゃん……」

 

そんな中でまどかは決意したものの、やはりさやかを助けられるか不安らしく、杏子に抱えられている魂の抜けたさやかを哀しげな目で見つめていた。

 

「………」

 

天馬はそんなまどかを見兼ねて放っておけなくなる。

 

「神童先輩。まどかさんを家まで送ってもいいですか?心配なんです……」

 

「……わかった。気を付けて帰ってくるんだぞ」

 

「はい!」

 

さやかの長い捜索を終え、今度は彼女を救う準備のために一同はようやく帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

~~帰宅路~~

 

 

 

「にしても、まさかおまんらがこんな大変な事に関わっとるとはのう」

 

人々がいなくなった帰宅路で錦がマミを背負いながら神童、信助、葵、水鳥、茜と共にマミの家に向かっていた。

 

「錦先輩。さっきはありがとうございました」

 

信助が錦に先ほどの喝に礼を言う。

 

「な~に、気にする必要はないぜよ。立ち直れたのはおまんら自身の意志じゃ」

 

錦は鼻を高くすることも無く返す。

 

「さやかさん…!」

 

一方で神童はさやかを助けるという確固たる決意をその瞳に込めていた。

 

「神童、随分気合いが入っとるのう。おまん、そのさやかに惚れとるんか?」

 

「そんなんじゃない……ただ、想い人の為に尽くそうとした彼女に幸せになってもらいたいだけなんだ……」

 

「ほほう。さては戦国時代の豆腐屋の娘の事を思い出してたんじゃな?」

 

「に、錦!」

 

お勝の事を突かれた神童は、茶化されるのを拒むように声を上げる。

 

「で、錦。さやかを助けるって言ってたけど、どうやって元に戻すつもりだ?なんか作戦でもあんのか?」

 

水鳥は腕を組みながら怪訝な表情で錦に尋ねる。

 

「んなもん、無いぜよ!」

 

きっぱりと言ったその答えに錦以外の全員が思わずこけそうになった。

 

「って、考えなしであんなこと言ったのかよ!?」

 

「錦先輩らしいですけど……」

 

葵は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「じゃが、それでもやるしかなかろう?そのさやかも、このマミっちゅう人も今のおまんらにとっては大事な仲間なんじゃろ?」

 

錦は自分が背負っているマミに視線を向けながら信助たちに確認させる。

 

「確かにその通りですけど……」

 

「なら、何も悩む必要もないじゃき!さっき決意した時のおまんらの顔はワシがホーリーロードの最中に帰って来た時と同じだったぜよ!大事なものを守る為に戦うっちゅう侍のような顔にな!」

 

「錦……」

 

神童は思い出していた。まだ自分たちのサッカーが支配されていた頃、自分たちは皆どこか気抜けしていた顔でサッカーをやっていた。しかし、天馬が入部して革命を起こしてからは覚悟を決めた良い表情になったと留学から帰ってきた錦にそう言われたのだった。

 

「師匠が言っとったぜよ!雷門は悩んだり苦しんどる仲間に手を伸ばして共に助け合って、強くなって、勝利を掴んでいくとな!そんな円堂監督や師匠たちの時代から続く雷門(らいもん)(だましい)を引き継いだはずじゃろ!」

 

「雷門魂……」

 

「今回の戦いはワシらの力とその雷門魂を持ってさやかを助けることがキュゥべえに対する勝利じゃ!この世界に来るまでやっとった時空最強イレブン探しの時もそうじゃ、ワシらがどこへ行こうと、常に熱い心と魂を持って全力でぶつかるだけ!そうじゃろう?」

 

「!」

 

ニカッと一同に笑みを見せる錦に神童たちは自分達の信念を再確認する。仲間が苦しんでる時にこそ、彼らの信念はより強固となり、希望を掴んでいく。それはただ苦しんでいる仲間を助け合うだけでなく大きな敵に立ち向かう力にもなる事を彼らはこれまでのいくつもの戦いから何度も実感していたのであった。

 

「そうですよね……僕たちが熱い気持ちをさやかさんにぶつければ、きっと届きますよね!マミさんも、どんなに落ち込んでたって僕たちが元気づけて見せます!」

 

信助は吹っ切れたようにその小さな拳をぎゅっと握りしめた。

 

「よっしゃ!その意気じゃ、信助!」

 

錦は決意を固めた信助に喜ぶように微笑んだ。

 

「神サマは……」

 

「心配ないみたいだぜ。見ろよあの顔」

 

一方で茜が神童を気に掛け、それに水鳥が答えると、二人は神童の顔を見る。

 

「さやかさん…!」

 

神童もまた一切の迷いが無いような真剣な表情で改めて決意を固めていた。

 

(さやかさん……君は必ず助けてみせる…!俺は君を見捨てたりしない……!君を上条の元に連れて行くまでは……)

 

「神サマ…!」

 

「良い顔つきになったぜ。まさに戦う男の顔って奴だな」

 

「これが……雷門ですよね!」

 

葵もにこやかな表情でそう言った。

 

「よっしゃみんな!必ずさやかを助けてキュゥべえをギャフンと言わせるぜよ!」

 

「「「おーーー!」」」

 

こうして雷門は錦のおかげで自分たちの理念を再確認し、さやかを必ず助けると自分たちの雷門魂に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてものう……」

 

「なんだ?」

 

「このマミっちゅう人は乳がでかいのう。おぶっとると乳が背中に当たって……」

 

「って何考えてんだこのドスケベ!///」

 

「あいだっ!」

 

最後の最後で場違いな発言をした錦は水鳥から拳骨をもらう。そんな夫婦漫才のようなものを見せられた神童たちは顔を赤くしつつ頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

~~その頃~~

 

 

 

「天馬くん、ごめんね。わたしの為に……」

 

「いいんですよ。これは俺の勝手ですから」

 

一方で天馬は一人落ち込んでいたまどかを心配し、彼女を家まで送り届ける為に同行していた。深夜に共にならんで歩く二人の中学生の姿は傍から見たら危ない事に巻き込まれているか非行に走っているように見られそうだが、まどかを気に掛ける天馬の姿はそんなことを感じさせず、むしろ頼もしささえ感じさせるものがあった。

 

「ほむらちゃん、魔女の事も知ってたんだよね……」

 

「そうみたいですね。でもそれもソウルジェムの時と同じ理由で黙っていたと思うんです……」

 

「うん……きっと、わたしもそうだと思うの」

 

ソウルジェムの最後の秘密。普通に考えればそれを知っていながら話そうとしなかったのは好ましくない事だが、二度目なだけあって二人も彼女が話そうとしなかったのは十分に理解できていたのであった。

 

「そういえば、住宅街で会った時のほむらさん……なんだかいつもと様子が違ってましたよね……」

 

天馬が思い返すように話し出す。普段自分達に見せているほむらの姿は感情を読ませず、ただ淡とクールに言い放つ常に冷静な少女だった。しかし住宅街での彼女はまどかを心から心配しているように嘆き苦しみ、涙まで流していた。そんな彼女が見せた弱い部分が今でもなお二人の脳裏に焼き付いていた。

 

「その時のほむらちゃん、なんだか夢に出てきたときにみたいに必死だったの…」

 

「夢?」

 

「うん……」

 

天馬が言葉を繰り返すとまどかは眼を閉じて思い出すように語り出す。

 

「荒れ果てたこの見滝原で、ほむらちゃんは大きな何かと戦っていて、そんな中でわたしはただ見ているだけで何もできなかったの。そんな中でキュゥべえがわたしに声をかけて、わたしならこの状況を変えられるって言ったの」

 

まどかがそこまで語ったところで耳を貸していた天馬はもしやと思いその先の言葉を予想する。

 

「ほむらちゃんはそれを必死に止めようとしていたの……そしてキュゥべえがわたしにこう言ったところで目が覚めたの………僕と契約して魔法少女になってよって」

 

続く言葉の予想が当たり、眉を細める天馬。話を聞く限りその夢を見たまどかの前にほむらやキュゥべえが現れた事に天馬もさすがに出来すぎていると思えた。

 

「なんだか……ただの夢とは思えませんね…」

 

「そしてその夢は見たのは、ほむらちゃんがわたしのクラスに転入して、夕方に天馬くんと出会った日の朝だったの」

 

「ほむらさんと、俺が…?」

 

天馬は驚くように自分に指差す。

 

「うん……天馬くんと出会ったあのショッピングモールで使い魔に襲われて、夢と同じ魔法少女の姿のほむらちゃんが現れたときはとても偶然とは思えなかったの」

 

「だとしたら、ほむらさんがまどかさんのクラスに転入したのも何か理由があるかもしれませんね…」

 

魔女を生み出そうとしたキュゥべえ。その仕組みを知っていながら黙っていたほむら。キュゥべえが隠していた秘密は既に解き明かされたが、ほむらはまだ自分たちに全てを語ってはいない。人を疑うことが乏しい二人だが、まだ自分たちに何かを隠していることに不安感を抱き、二人は黙り込んでしまう。

 

「………」

 

そんな重い空気に耐えきれなくなったまどかは空気を変えるために話を変えることにした。

 

「ねえ、天馬くん……さっきの『円堂監督』ってもしかして…」

 

「…はい。俺たち雷門の監督です」

 

それから天馬は歩きながらまどかに自分たちの世界では『円堂守伝説』と呼ばれている円堂の数々の偉業を語った。フットボールフロンティアの事、エイリア学園と呼ばれる集団との戦い、FFIの事、それらの中でサッカーを通じてライバルたちと競い合ってわかり合い、暗躍していた悪党とも戦い、仲間と共に苦難を乗り越えて成長し、希望と栄光を掴んでいったのだと。

 

「……すごい人だったんだね。円堂監督って……」

 

まどかは天馬たちが尊敬する監督の偉大さを知り、驚くと同時に感心していた。

 

「はい!円堂監督は俺たち雷門の憧れの人なんです!」

 

「憧れの人……か、」

 

天馬も彼に対する憧れと尊敬から、円堂の事を自分の事を自慢するように語っていた。自分がすごいと思った天馬がここまで語るほどの人物がどんな人物なのかとまどかも少しだけ会ってみたくなった。

 

「でも、その円堂監督って人は今……」

 

「はい…今は姿を変えられて囚われているんです。俺たちがこの世界に来る前にやっていた戦いは、サッカーを守るためだけでなく、円堂監督を取り戻すための戦いでもあるんです」

 

天馬はぎゅっと拳を握りしめる。

 

「俺、思うんです。円堂監督なら、きっとこんな所で諦めないって!円堂監督なら、さやかさんを絶対見捨てず、何がなんでも助けようとするって。それにきっと、ここでさやかさんを助けられないなら、きっと円堂監督だって助けられない。だから決めたんです!さやかさんは絶対俺たちが助けるって!何よりさやかさんは俺たちの仲間だから!」

 

「天馬くん……」

 

天馬のその決意にまどかは思わず言葉をこぼす。まどかは最初、天馬の事を自分と同じただの中学生だと思っていた。しかし魔女と勇敢に戦い、落ち込んでいる仲間を元気づける彼の強さとやさしさに触れ、いつの間にかまどかにとって天馬は心から信頼できる存在になっていたのだった。

 

「あれ?まどか!?」

 

そこへ声をかける人物がいた。二人は反射的にその声の方に向く。振り向いた先にいたのは薄い紫色のショートヘアのキャリアウーマン。

 

「マ、ママ…!」

 

それはまどかの母、鹿目(かなめ)詢子(じゅんこ)だった。

 

「まどかさんの、お母さん…?」

 

「ママ、今帰り?」

 

まどかはこんな時間に出歩いてるところを母に見られてしまい、動揺しながら誤魔化すように尋ねる。

 

「ああ。今日は残業だったんでね。それよりまどか、あんたこそこんな時間で何をしてんだ!」

 

「あう……ごめんなさい…」

 

誤魔化し切れず叱られてしまったまどかは縮こまる。

 

「あ、あの……」

 

「ん?あんたは?」

 

「あっ、俺、松風天馬といいます!」

 

「天馬……ああ!あんたがまどかや知久が言っていた天馬くんか!」

 

詢子は思い出したように天馬を指さす。

 

「はい。今はまどかさんを家まで送り届けていたとこなんです」

 

「そっか。あたしは鹿目詢子。見てのとおり、まどかの母親。わざわざすまないね。うちの娘を…」

 

「いえ、これは俺が自分でやっていることですから」

 

天馬は遠慮がちに答えた。

 

「全く…まどか、あんたって子はこんな時間まで人様に迷惑をかけて…」

 

「うう……」

 

詢子に責められ、ますます返す言葉を失うまどか。

 

「あ、あの…まどかさんは……」

 

弁明しようとする天馬に詢子は鼻で溜息を着きながら微笑む。

 

「言わなくてもわかってるよ。どうせさやかちゃんを探してたんだろ」

 

「!……ママ、どうしてそれを?」

 

「会社にいるときに知久が連絡をくれたんだよ。さやかちゃんのママから電話で聞いた後、まどかがカバンを家に置いて飛び出したってね」

 

詢子はここで両手を腰に当てて真剣な顔でまどかと向き合う。

 

「けど、まどか。さやかちゃんを心配する気持ちはわかるけど、あんたまで危ない目にあったらどうすんだ」

 

「……ごめんなさい」

 

詢子は心配交じりの目でキッと睨みつけるとまどかは申し訳なさそうに謝った。すると詢子は両手を腰から放した。

 

「ッ!」

 

詢子は娘に体罰をするような人物ではない。しかし今回はおしおきされると思い、まどかは無意識に体をビクッ、と震わせながら眼をつぶる。

 

スッ

 

「!」

 

しかしそれは杞憂に終わった。

 

「ムチャするんじゃないよ………あんたはあたしのたった一人の娘なんだから……」

 

詢子は地面に両膝を着け、心配交じりの声色でまどかを優しく抱きしめていたからだった。

 

「ママ……」

 

母の深い愛情に包まれたまどかは体中の力が抜けて詢子と同じくその場で膝を着いた。友達を大事に想う少女。その少女を心配する母親。

 

「………」

 

誰かを大事に思いつつも、不安に押しつぶされそうな母娘の姿を見て、天馬は拳を強く握りしめた。

 

「まどかさん!」

 

天馬の呼びかけにまどかと詢子はハッ、と我に返って天馬に振り向く。

 

「さやかさんの事は……俺たちがなんとかします!……絶対、なんとかしてみせます!!!」

 

「「!」」

 

天馬は自分の手のひらを胸に当て、彼女たちの不安を吹き飛ばすようにためらいなく叫んだ。その時に天馬の眼は強い決意と想いで満ち溢れており、まるで宝石のように輝いていた。そんな彼の姿に二人の母娘は唖然として言葉を失う。

 

「天馬くん……」

 

天馬はまどかに『今の誓いは必ず守る』と言うようにうん、と笑顔で頷く。

 

「それじゃ、まどかさん、おばさん!おやすみなさい!」

 

そう言うと天馬は二人に一礼をして踵を返して走り去っていった。

 

「天馬くん……」

 

まどかが先ほどの衝撃を残しつつ天馬を見送る。

 

「なるほどねぇ……」

 

そんな中、詢子は緊張が和らいだように微笑む。

 

「あんたや知久が気に入るわけだ……あたしもあの子が気に入ったよ」

 

詢子は大きくため息をつくと安心しきったようにそう呟いた。

 

「ママ?」

 

「なんとかする、か……まどかとそう変わらない歳だってのに、なんでかな……あたしゃ、あの子の事を信じてもいいって思っちまったよ」

 

「……どうして?」

 

まどかは、詢子が初めて会ったばかりの天馬の事を何故そこまで買うのかと気になる。すると詢子は一度眼を伏せてフッ、と笑うと走り去っていく天馬の後ろ姿を見据えて答えた。

 

 

 

「良い()をしていたからさ」

 

 




というわけで前半でした。

後半はほむらの独白を描き、剣城と杏子の絆を深める予定です。
こんな拙い物語でも楽しめたら幸いです。

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