魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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連載1周年!

そしてお待たせしました。オリジナル部分を考えている間にお気に入り登録してくれる方が増えたり、評価を下さった方がいたりとこんな鈍足投稿作品を気に入ってくれてる人たちがいてくれて感謝です。



このところあちこちで梅雨入りして大雨が続きますね。そんな中で作者はティーパックの紅茶なりドリップコーヒー飲んだりしています。(さっさと続き書きやがれ)

さて今回からさやかを取り戻すための戦いが始まります。
ほとんど原作どおりかもしれませんがお楽しみいただけたら幸いです。ではどうぞ




―――OP『打ち砕ーくっ!』―――


第11話『死闘!人魚の魔女オクタヴィア』

 

~~魔女結界~~

 

 

 

「ロストエンジェル!」

 

剣城が自分たちに向かって飛んでくるいくつもの車輪をシュートで弾き返す。

 

「くっ!数が多すぎる!」

 

普通のシュートでは車輪一つ弾くのがやっとだが、化身シュートでは貫くように数多くの車輪を弾き壊すことが出来た。しかしその分体力の消費が激しい為、そう何発も撃てるものではない。

 

「さやかちゃん!聞こえてるんでしょ!正気に戻って!」

 

まどかもさやかの魔女に必死に呼びかけるが魔女は剣を振るって容赦なく生み出した車輪を飛ばし続ける。

 

「させるか!」

 

まどかに当たる直前で杏子が彼女を庇うように前に出ると両手を組んで壁のような結界を張って防ぐ。

 

「あ、ありがとう」

 

「礼はいらねえ。それより呼び続けろ!」

 

「う、うん!」

 

「でやっ!」

 

一方で天馬が車輪にシュートを放ち、弾き飛ばす。

 

ゴロロロ!

 

「!!!」

 

すると横から別の車輪が天馬に向かって転がってくる。

 

「危ない!」

 

すんでのところで神童がシュートを放ち、車輪を破壊する。

 

「あ、危なかった……ありがとうございます、神童先輩」

 

「気にするな……」

 

神童はさやかの魔女に体を向ける。

 

「さやかさん!本当は聞こえているんじゃないのか!俺の声も、まどかさんの声も!君は本当にこれでいいのか!?今の君のその姿は、君がなりたかったものじゃないはずだ!本当の自分を取り戻してくれ、さやかさん!」

 

神童は魔女の中に本当のさやかの心があると信じ、使い魔の奏でる悲しいオーケストラにも負けないほどの音量で叫び続ける。しかし魔女はそれに答える事無く、剣を振り下ろすたびに車輪を次々と生み出しては彼らに向かって放ち続ける。

 

「ふっ!」

 

ほむらがバズーカを放ち、自分に向かってくる複数の車輪を吹き飛ばす。バズーカを放った反動で少し後ろに下がった直後、別の方向から吹き飛ばした数を上回る数に車輪が飛んでくる。

 

カチッ

 

ほむらは迫ってくる車輪に怯むことなく腕に付けた盾を鳴らすと、次の瞬間には車輪から離れたところに移動し、それと同時に時間停止中の移動と同時に仕掛けておいた手榴弾で迫っていた車輪を爆破する。

 

(おかしい、美樹さやかの魔女はここまでの強さではなかったはず!)

 

ほむらは魔女の繰り出す車輪の数とそれを生み出すスピードの異常さに違和感を覚える。

 

「くそっ!キリがない!」

 

「このままじゃ……」

 

そんなほむらの考えも知らず、天馬たちは終わりのない連続攻撃を前に窮地に立たされていた。

 

 

 

 

 

 

 

~~一方・その頃~~

 

 

 

「いたか!?」

 

「いや、いなかったぜよ!」

 

「マミさんも信助も、一体どこに…」

 

河川敷に集まった葵、水鳥、茜、錦の四人は未だに姿を消したマミと彼女を探しに出かけた信助を探し続けていた。しかし、見滝原の土地勘が無い為、二人が行きそうな場所が思い当たらず捜索は難航していた。

 

「くそ……こうしている間にもまどかたちはさやかを助けようと頑張ってるはずなのによ……」

 

水鳥は今すぐにでもさやかの救出に向かいたいのに、マミ達が見つからない事が歯痒いように歯を強く食いしばる。

 

「そういや天馬と神童は?」

 

「そういえば、さっきから姿が見えないぜよ」

 

「私、さっき神サマたちが剣城くんと一緒に走って行ったところ見た」

 

「え?本当ですか?茜さん」

 

「うん。もしかしたらさやかちゃんを助けに行ったのかも…」

 

「とりあえず、今はそっちは任せるしかねーな。一刻も早く二人を見つけてあたしたちも合流しねーと…」

 

水鳥が遠くを見つめながらそう言うと葵は何故か不安げな顔を浮かべる。

 

「…?どうしたの、葵ちゃん?」

 

「私たち、本当にさやかさんを助けられるんでしょうか…」

 

「む?いきなり何を言うぜよ!」

 

「私たちや天馬たちの力を信じてないわけじゃありません。でも、絶望に飲み込まれたさやかさんを助けるには一体どうすればいいのかと思って……」

 

「う~ん。確かにな……具体的な方法はあたしたちも思いつかねーし…」

 

「何を言うか!ワシらが出来ることをやればいいんじゃ!」

 

「だからそのやり方が決まってないって話だろーが!」

 

「うっ……」

 

さやかを助ける具体的な手を考えていない錦は水鳥に反論できずに言葉を詰まらす。

 

「もし、私たちの力だけでさやかさんを助けられなかったら……」

 

葵の言葉とさやかを救う手だてが思いつかない事に四人はさやかを助けられなかった時の事を考えてしまう。この魔法少女の絶望の末路との戦いはこの世界に来るまでのサッカーを守るための戦いの時同様、絶対に負けられない戦いであった。さやかを救出できなかったら、それは二度と取り返しのつかない‘敗北’であり、もしそうなれば自分たちは二度と立ち直れない可能性もあった。そんな危険性のある戦いに勝てるかと四人の心に不安が募る。

 

「何か、方法は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、葵たちの指輪が淡い光を放つ。

 

「っ!?…何だ!?」

 

「指輪が……」

 

葵たちの指輪はそれぞれ青、緑、赤色の光を放っていると茜が持ち歩いているカメラが光の三原色を表すように白い光を放つ。四人が驚いていると四つの光はやがて小さくなっていき、ついには収まるとカメラは元のピンクの色、指輪はそれぞれ元の静かな輝きの色に戻った。

 

「今のは一体…それにどうして茜さんのカメラが?」

 

「わかんない……私のカメラ、どうしちゃったの?」

 

葵の呟きと共に光を放ったカメラに異常が無いか茜が調べる。と、ここで不審な点を見つけた。

 

「あれ、カメラに何か録画されてる……」

 

「そういや、あんたのカメラって動画も撮る事ができるんだっけ?」

 

「うん、でも何が……っ!?」

 

カメラに録画されていた動画を見て茜は信じられないように目を見開く。

 

「どうした?」

 

「皆、これ!」

 

茜は慌てながらその動画を葵達に見せる。

 

「なっ!?こ、こいつは…!」

 

三人もそれを見て驚愕する。それは自分たちが予想だにしていなかったものであった。

 

「どうして、この時の事が!?」

 

「わかんない。あの時確かに電源は切ってたはずたのに……」

 

撮っていたはずが無いある出来事が撮られていたことにカメラの持ち主である茜自身もわけがわからず困惑する。

 

「…!」

 

葵は何かを決意したようにキッと顔つきを変える。

 

「……茜さん!このカメラ、借ります!」

 

葵は半ば強引に茜からカメラを取り上げ、別の方向に走り出した。

 

「え…葵ちゃん!?」

 

「おい、どこに行くんだよ!?」

 

「これが、さやかさんを助ける最大のカギになるかもしれないんです!」

 

「え?」

 

「私たちは、私たちにしかできない事をやるんです!天馬たちを“勝利”に導くために!」

 

こちらに顔を向けながら断言する葵は顔を正面に戻して走り去っていた。そんな彼女に三人は少しの間呆然と立ち尽くしていたがすぐさま彼女の後を追った。その先にさやかの救出成功という‘勝利’を信じて。

 

 

 

 

~~魔女結界~~

 

 

 

「はあっ、はあっ……」

 

天馬たちが魔女と戦い始めてからもう数時間も経過していた。しかし、まどかや神童が呼び続けてもさやかが答えることは無く、全員の体力が失われていくばかりだった。

 

「さやかちゃ……げほっ…」

 

何度も叫び続けていたまどかも声が枯れ気味になって度々むせる様になっていた。

 

「佐倉杏子、あなた魔力は……」

 

「まだ魔女化するほどじゃねえが……さすがにキツくなって来たぜ…」

 

魔力を消費し続け、ほむらと杏子は苦しげな顔をする。

 

「くそ……俺たちの化身も限界に近い……」

 

「あと何回出せるかどうか……」

 

剣城と神童も大幅に体力を奪う化身を使い続け、息を荒くする。

 

「でも、諦めるわけにはいきません!俺たちの声がさやかさんに届くまでは!」

 

天馬は強気に言うが、彼の限界も近くなって顔から大量の汗を流していた。しかし、それでも彼らに立ちふさがるのは説得に集中するあまりほとんどダメージを受けてない魔女とその魔女が生み出す大量の車輪だった。

 

「天馬、剣城!こうなったら一気に蹴散らすぞ!」

 

「「はい!」」

 

神童の掛け声に天馬と剣城は相槌を打つ。

 

「奏者マエストロ!!!」

 

「剣聖ランスロット!!!」

 

「魔神ペガサスアーク!!!」

 

わずかに残った力を使って三人は化身を出現させる。そして神童が指揮をするかのように手を上げる。

 

「―――化身よ、一つになれ!!!」

 

神童のその合図と共に三体の化身を光に包まれ、それが一つになると眩しい光を放つ。その光にまどか達が一度目をつぶる。

 

「あ、あれはっ!?」

 

再び目を開けてその光を見たまどかの声を共にほむらと杏子もまどかの見る先を見ると驚愕する。そこには大きな翼を持った鳥をイメージした装飾を頭に着けた黄金色に輝く化身が現れていた。

 

 

 

「「「『()(てい)グリフォン』!!!」」」

 

 

 

天馬たちは身構えながら新たに出現させた化身の名を口にする。

 

「化身が……合体した!?」

 

ほむらたちは驚きと共に合体した化身の姿と放つ光に神々しさを覚え、思わずため息をつく。そして天馬が自身のマギカボールを高く蹴り上げる。

 

「「「うおおおおおっっ!!!」」」

 

そして三人が力を溜めると『グリフォン』は両手の握り拳を横に構え、左手の拳から鞘(さや)を抜くように右手の拳を横に引くとそこから炎の大剣を生み出し、両手で振り上げてからボールに向けて振り下ろすと同時に天馬、剣城、神童の三人もシュートを放つ。

 

「「「『ソード・オブ・ファイア』!!!」」」

 

「イグニッション!!!」

 

三人は同時にボールにシュートを放った直後に天馬が叫ぶと、ボールは巨大な炎を纏いながら流星の様に地上に向けて飛んでいき、それが車輪の集団の中心部に着弾すると大爆発を起こして車輪を一掃させた。

 

「すげぇ……なんて威力だ…」

 

杏子は合体化身のすさまじさに唖然とする。

 

「くっ!」

 

一方で天馬たちは合体化身を解除して化身を自分たちの身体に戻すと、膝を着く。化身を合体させて強烈な必殺技を放ったせいで体力を大幅に消費したようだった。

 

「まどかさん!」

 

杏子やほむらと同じようにグリフォンの凄さに呆然としていたまどかは天馬の呼びかけに気づき、ぐっと心を整え、勇気を言葉に込めてさやかの魔女に訴える。

 

「……さやかちゃん!もうやめて!こんな事、さやかちゃんだって嫌だったはずだよ!」

 

「そうだ!さやかさん、君はまどかさんを、大切な親友を傷つけたりなんかしたくないはずだ!」

 

神童も膝を着きながらも必死に呼びかける。

 

「俺は……いや、俺たちは知っている!いつも明るくて、正義感が強くて、自分以外の誰かを大切に想う事が出来る、本当の君の姿を!だから、君は自分の絶望と呪いを俺たちに振りまくなんて望んでないはずだ!思い出すんだ!魔法少女になった時の自分の気持ちを!」

 

「さやかちゃん!マミさんみたいな魔法少女になりたいんでしょ!正義の味方になりたいんでしょ!……ねえお願い!元のさやかちゃんに戻って!わたしの大好きだったさやかちゃんに戻って!」

 

その瞬間、魔女の周りで奏でていた使い魔たちの演奏が止まった。音が止んで辺りが静まり返った直後、魔女は上半身をねじれさせ、腕を奇妙な方向に曲げていた。それはもがき苦しんでいるようにも見えた。

 

「……!まさか…!?」

 

「さやかさん!?聞こえたんですか!?」

 

ほむらと天馬が一瞬魔女にまどか達の声が届いたと思った直後、まどかと神童はチャンスだと思い一気に呼びかける。

 

「さやかちゃん、さやかちゃん、ごめんね。友達なのに……さやかちゃんが苦しんでいる時に何もできなくて……でも、これからはわたしが支えてあげるから。さやかちゃんを絶対一人ぼっちにしないから!」

 

「そうだ!まどかさんだけじゃない!俺たちもいる!俺も、まどかさんも君を決して見捨てたりなんかしない!だから正気に戻るんだ!さやかさん!」

 

二人が必死に呼びかけると、魔女は一瞬動きを止めた。

 

「さやかちゃん?」

 

まどかが淡い期待を持って魔女に叫び返す。

 

 

その直後、自分たちに向かって何かが伸びてきた。

 

「え……」

 

ガキィン!!

 

二人が気が付くと、その伸びてきたものを杏子が槍で受け止めていた。それはねじ曲げながらギリギリまで伸ばした魔女の腕だった。

 

「聞き分けがねえにも程があるぜ!さやか!」

 

杏子は叫ぶと同時に渾身の力で魔女の剣を押し返す。後ろに押された魔女は一瞬よろめく。

 

「あ、ありが……っ!?」

 

神童が礼を言おうとしたその時、ぽたぽたと赤黒い液体が地面に垂れていた。

 

「……っ」

 

それは魔女の攻撃を防御したはずの杏子の肩から垂れていたものだった。どうやら魔女の一撃を完全に防ぎ切れたわけではなかったようだった。

 

「杏子ちゃん!血が……」

 

その時、魔女は攻撃を阻まれたことに怒るように剣を振り下ろすと先ほどとは比較にならないほどの数の車輪を生み出し、自分達に放ってくる。

 

「まどかさん!はあっ!」

 

天馬はシュートを放ってその軌道を変える。

 

「くっ…!」

 

「天馬くん!」

 

苦しげな顔で膝を着く天馬。合体化身の後で体力を大幅に消費した状態では破壊するのはやはり困難であった。それでも容赦なく車輪が暴風の様に一同に襲いかかる。

 

「くそっ!」

 

「くっ!」

 

杏子はまどかと天馬たちを庇うように車輪を捌いていくが、暴風を超えた車輪の嵐に徐々に押されて行く。

 

「(くっ……!これ以上はもう時間を止められない!なんなの!?この今までにない美樹さやかの魔女の強さは!)」

 

ほむらも時間停止と重火器でサポートするが、長時間による時間停止は魔力の消費が激しく、持っていたグリーフシードも戦いの中で魔女が生まれる限界ギリギリまで使用してしまった為、時間を止めるのに割く魔力は無かった。

 

「がっ!」

 

「ぐっ!」

 

そしてついに杏子とほむらに車輪が命中してしまう。

 

「杏子さん!ほむらさん!……はっ!」

 

力を振り絞って何とかシュートを放っていた天馬たちの前から車輪が転がってくる。

 

「くそっ!」

 

バシィ!

 

「!」

 

三人はそれぞれのマギカボールを車輪に向けて放つが、勢いを殺し切れなかった。

 

「うああっ!」

 

「ぐああ!」

 

「ぐうう!」

 

シュートで勢いは落ちていたものの、三人は車輪に吹っ飛ばされてしまい、地面に転がされる。そこに追い打ちをかけるように数多くの車輪が彼らに向かってくる。

 

「天馬くん!神童くん!剣城くん!」

 

まどかが叫ぶと同時に彼らを守るように杏子が立ちふさがるが、全てを捌き切れずいくつかの車輪が彼女の腕や足に命中し、その度に彼女の身体から血を流させていた。

 

「きょ、杏子さん……」

 

「こんなもん、屁でもねえよ……まどか、あんたもあたしを心配するより、呼び続けろ……」

 

地の底から響くような低い声で杏子はまどかに囁くと車輪が当たらないようにまどかたちの前に魔法の壁を作り出しながら魔女に向かって歩み寄る。

 

「さ、さやかちゃん!もうやめて!わたしたちに気づいて!」

 

まどかは喉を枯らしていくのも構わず必死にさやかの魔女に叫び続ける。しかしそれに対して逆に怒るように、否定するように車輪の嵐はよりいっそう激しさを増して杏子の体を打ちつかせる。

 

「杏子!」

 

「あはは、いつぞやのお返しかい…?……そういやあたしたち……最初は殺し合う仲だったよな…?」

 

ほむらがその痛々しい姿に(たま)らず彼女の名前を叫んだ直後、杏子は身体を血で赤黒く染め上げながら思わずゾッとするような笑みを浮かべる。

 

「なあ、さやか……お前怒ってんだろ…?何もかも、許せないんだろ…?」

 

杏子はその身と槍で車輪を受けとめながら、荒れ狂う魔女に向かって優しく語りかけていた。

 

「わかるよ……だからさ、好きなだけ暴れなよ。付き合ってやるからさ……それで気が済んだら、目ェ覚ましなよ……な?」

 

さやかの怒りと悲しみをただ黙って受け止めるかのように語りかける杏子。しかしついに彼女は飛んできた車輪に吹き飛ばされ、まどかたちの前に張っていた壁も消滅してしまう。

 

「杏子さん!」

 

「杏子ちゃん!」

 

まどかは急いで杏子に駆け寄るが、そこにぬうっと魔女の腕がまどかに向かって伸びてくる。

 

「まどかさん!」

 

「まどか!」

 

天馬がとっさにシュートを放って魔女の腕を弾くと同時に慌てて駆け寄ったほむらが飛び込みながらまどかを抱きしめると自分が下になるように体の向きを変えて地面に滑り込む。

 

「さやか!あんた……信じてるって言ってたじゃないか!この力は、人を救うことができるって!いくらでも素晴らしい物に出来るって……言ってたじゃねぇかよ!」

 

杏子は槍を構えながら魔女に向かって突撃する。彼女の槍が魔女の胸に突き刺さる。

 

ザシュ!

 

「!!!」

 

それと同時に杏子の腹を魔女が横なぎに切りつけた。

 

「杏子さんッ!」

 

杏子の腹から鮮血がほとばしり、剣城が叫ぶ中で地に落ちていく杏子は静かに呟いた。

 

「……お前は、あたしがなりたかったあたしなんだぞ……」

 

さやかに向けて渇望していた想いを告げると、

 

「頼むよ、神様……こんな人生だったんだ……せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させてよ……」

 

泣いているかのような声で静かに神に祈る。そのまま羽をもがれた天使のように落下していく。

 

「ぐっ!!」

 

地面に激突する寸前で剣城が先ほどほむらがまどかにやったように杏子を受け止める。

 

「杏子さん!しっかり!」

 

剣城は杏子の身体を落とさないように起き上がると片膝を着いて彼女の頭と体を抱える。

 

「バカヤロウ……そんな受け止め方して……兄貴みたいになったらどうするんだよ…」

 

「そんなこと言ってる場合じゃありません!血が……」

 

「早く止血しないと……」

 

天馬たちが駆け寄る中、その荒い息づかいとボロボロの身体から既にこの場にいる全員の体力が限界を超えてしまっていることに気づく杏子。このまま戦い続けては、全滅は間違いなく免れなかったことを悟ってしまう。

 

「………」

 

その事を悟った杏子は何故かフッと笑った。

 

「その必要はねえよ」

 

「杏子、さん…?」

 

全員の注目を浴びる中、杏子はゆっくりと立ち上がり静かに前に歩み出す。

 

 

 

 

 

「わりぃな…」

 

「え?」

 

天馬たちが怪訝な表情で杏子を見ていると、彼女は突如立ち止まってこちらに振り向く。

 

「ふっ!」

 

次の瞬間、彼女は自分と天馬たちの間に魔法の壁を生み出し、分断させる。

 

「!?杏子ちゃん!?」

 

まどかが驚いていると杏子は再び背中を向けて呟いた。

 

「……行け」

 

「え?」

 

「杏子さん?」

 

杏子のこの行動と言葉の意味に全員が理解できず、困惑する。そして彼女が次に言い放ったのは衝撃の言葉だった。

 

「あたしの残りの魔力を全部使って、この魔女を倒す」

 

「「「!?」」」

 

「な、何言ってるの杏子ちゃん!?そんなことしたら……」

 

まどかが驚きの声を上げるが、杏子は安心させるように答えた。

 

「心配すんな、あたしまで魔女化する気はないよ。……ただ、さやかの側にいてやるだけさ……」

 

「「「!?」」」

 

その言葉に天馬たちは察してしまう。これから彼女が何をしようとしているのかを。

 

「杏子さん、まさか…!?」

 

「君はさやかさんと心中するつもりか!?」

 

剣城と神童が信じられないように問うと、杏子はにやけながら横目を彼らに向ける。

 

「……あんたらは元の世界で待ってる奴らがいるんだろ?だったらこんな所で死ぬべきじゃない………でも、今のさやかは一人ぼっちなんだ……誰の言葉も届かないような深海に沈んじまったみたいに……あたしはさやかを孤独のままにしておくことはできないよ…」

 

そう言うと杏子は今までに無いくらいの巨大な槍を作り出し、その先端に乗り込むと槍は魔女に合わせるような高さまで上がっていき、その切っ先を魔女に向ける。そして髪をポニーテールに結んでいたリボンをほどいて天に向かって投げると、深海の中を照らすかのような煌めく綺麗な真紅の長髪をなびかせる。

 

「天馬、ほむら。まどかを頼む。これからはさやかの代わりに支えてやってくれ」

 

「杏子さん…!」

 

「杏子……!」

 

「まどか、神童。わりぃな……お前らの望む結末に出来なくて……」

 

「そんな……」

 

「杏子さん……」

 

杏子は穏やかな表情のまま、天馬とほむらにはさやかの代行を、まどかと神童には謝罪の言葉を贈った。それは一同には諦めた証のような遺言に聞こえてしまった。

 

 

 

「剣城……」

 

「!」

 

そして最後は一番自分を気にかけてくれた相棒に告げる。

 

「昨日、あたしの想いが間違ってないって言ってくれた時…………嬉しかった」

 

杏子の脳裏に剣城と出会ってからの事が甦る。教会で出会った時の事。万引きしようとした自分を止めてその商品を買ってくれた事、自分が気まぐれでお菓子を分けた時の事、自らの過去を明かして自分を励ましてくれた時の事。そんな剣城との思い出が杏子の頭の中で走馬灯のように駆けめぐっていた。彼女にとってそれは家族と共に失った『誰かとの大切な時間』になっていたのだった。

 

「短い間だったが、あんたと過ごした日々は―――――悪くなかった」

 

「杏子さん…!」

 

「でも、ゴメン。あたしはやっぱりさやかがほっとけないや……」

 

まっすぐに魔女を見据える杏子。

 

「ただひとつだけ守りたいモノを、最後まで守り通せればいい……ハハ、なんでかなぁ。あたしだって今までずっとそうしてきたはずだったのに……」

 

杏子は自嘲するように、それでいて思い出したように静かに微笑む。

 

「……行きな。こいつは、あたしが引き受ける」

 

そう言うと杏子は祈るかのように両手を組む。

 

「心配するなよ、さやか……あんただけ置き去りにしやしないって……」

 

そして杏子は天使が微笑むかのような優しい笑みを浮かべて目を閉じる。

 

「いいよ、さやか。一緒にいてやるよ。一人ぼっちは寂しいもんな…」

 

「「「!!!」」」

 

杏子は穏やかな笑みを浮かべたまま、魔力を全て解放してさやかと心中するために自らの胸元に付けたソウルジェムに手を伸ばす。

 

「杏子さん……!」

 

「杏子ちゃん!!」

 

「杏子さーーーんっ!!!」

 

剣城とまどかと天馬の叫びが響き渡り、彼らの心に絶望が襲いかかろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さやかっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その時、一人の叫び声が響いた。その声に杏子も動きを止め、後ろに振り返る。

 

「えっ!」

 

天馬たちも後に続くように振り返ると、ここにいるはずの無い人物がそこにいた。

 

「なっ…!」

 

その人物の登場に神童は言葉を失い、杏子と天馬も目を見開いていた。

 

「お前は…!」

 

「ど……どうしてあなたが!?」

 

 

 




――ED『and, I'm home』(歌:佐倉杏子&美樹さやか)――


次回予告

天馬
「絶体絶命の俺達の前に思いもよらぬ人物が!その追い風が俺達のさらなる力を呼び覚まし、今、人魚姫の運命を変える!!」

次回!
『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第12話『人魚姫の涙!』」




というわけで絶望との本番、前半戦でした。
最後に出てきたのは誰か、わかりますよね?

ここからは原作のルートから外れた戦いです。
次回、少年達の革命という名の反撃が始まります。

感想お待ちしております。



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