魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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祝!通算UA10000突破!

こんな駄文をこんなにもたくさん読んでもらえて感謝感激です!

そしてお待たせしました!
一番の見せどころだと思ったので文章考えていたらこんなにかかってしまいました。申し訳ないです。

天馬達の革命は人魚姫を救えるか?ご都合主義かもしれませんが楽しんでいただけたら幸いです

ではどうぞ。



――OP『天までとどけっ!』――


第12話『人魚姫の涙!』 Aパート

 

 

~~魔女結界~~

 

 

 

「君は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上条、くん……?」

 

 

 

 

杏子がさやかと心中しようとしたその時、一人の少年が現れる。それはさやかの幼馴染であり彼女の願いの原点、上条恭介だった。恭介は昨日まで使っていた松葉杖を持っておらず、息を乱していた。その様子を見る限り彼は松葉杖も持たずにここまで走って来たようであった。

 

「神童くん……鹿目さん……」

 

一同は驚いていた。魔女の結界に一般人が取り込まれる場合、人間が偶然迷い込んで困惑か恐怖する事がほとんどである。しかし、彼は目の前の魔女の事を確かに『さやか』と呼んだ。それはつまり、この結界がさやかのものだとわかっており、自らの意志でここまでやって来たという事を表していた。

 

「どうしてここに……」

 

「上条くん!」

 

天馬が驚愕していると恭介の後ろから見滝原の制服を着た緑色の髪の少女が現れる。

 

「ひ、仁美ちゃん!?」

 

「まどかさん…」

 

走って来たのはさやかの親友であり恋敵の志筑仁美だった。恭介に続いて思いもよらぬタイミングで現れた親友の姿にまどかは戸惑う。

 

「あなたたち、どうやって……」

 

「おーい、待つぜよ!」

 

ほむらも驚きと共に困惑していると、今度は錦がマネージャーたちと共に走ってきていた。

 

「錦先輩!葵たちも!」

 

「あなたたちが連れてきたのね…」

 

「全く、結界の入り口を開けたらいきなり走り出しおって……」

 

「とても昨日まで松葉杖ついていた奴とは思えねーよ」

 

「ゴメン、一刻も早くさやかを助けたくて……」

 

水鳥はまだ完治していないはずの足で自分達より早く結界の最深部にたどり着いた恭介の脚力に驚嘆すると恭介は一人で勝手に突っ走った事を申し訳なさそうに謝罪した。

 

「上条くん」

 

仁美の呼びかけに気が付いた恭介はすぐさま彼女と共に真剣な眼差しで前を見る。その視線の先には魔女化したさやかの姿があり二人はその魔女に驚くことも恐怖することも無く、ただ物悲しく、それでいて緊迫した表情で魔女を見つめていた。

 

「あれが、さやかなのか…」

 

「さやかさん…!」

 

「上条…!?まさか、君たちは……」

 

「ああ……全て知ってしまったんだ。魔法少女の事も、君たちの正体も、そして………さやかが魔女になってしまったことも……」

 

恭介は包み隠すことも無く神童に話す。

 

「お前ら……」

 

巨大な槍の先端に乗っていた杏子が恭介たちに気を取られていたその時、目の前の魔女が剣を大きく振り上げていた。

 

「っ!危ない杏子さん!」

 

「え!?」

 

剣城が叫んだ直後、魔女は槍ごと杏子を叩き切ろうとするかのように大剣を振り下ろす。

 

「ッ!」

 

間一髪剣城の呼びかけに気づいた杏子が反射的に後ろに下がると大剣は先ほどまで杏子が佇んでいた槍の先端に当たり槍を大きく揺らす。

 

「うわぁ!」

 

杏子は打ちつかれた槍から空中に投げ出され、自分と仲間達を分断していた赤い壁が槍と共に消滅する。

 

「杏子さん!」

 

空中に投げ出された杏子を地上で剣城がお姫様抱っこをするような構えで受け止める。受け止めた衝撃で尻もちを着きそうになるのも耐えきり、そのままの体勢で両膝を着いて杏子の足を地面に着かせる。

 

「お前……またそんな受け止め方しやがって……」

 

再び身体に負担を掛ける受け止め方をした剣城に杏子は弱々しく声色で呆れる。

 

「あなたに比べたら大したことじゃありませんよ……杏子さんこそ、なんてムチャな事を…」

 

「たくよ……さやかを一人にしたくねえだけなのに…とんだ邪魔が入りやがったぜ……」

 

杏子は思い通りにならない展開を皮肉に思いながら参るように笑みを浮かべた。

 

「上条!」

 

杏子の無事を目視した水鳥の呼びかけに恭介は相槌代わりにコクンと頷いて一度目を閉じる。そして呼吸を整えて一気に目を開けると自分よりはるかに巨大なさやかの魔女を見上げた。

 

「さやか……聞こえるかい?僕の声が」

 

「――!」

 

魔女はその声に反応したように動きを止める。

 

「僕は聞いたんだ……君の事を……君が何を願って魔法少女になったのかも。君は、戦いの運命を受け入れてまで僕の腕を治してくれたんだね…」

 

優しく語りかける恭介にさやかの魔女は手に持った剣を地に着けて動こうとしなかった。その姿はまるで彼の言葉に耳を傾けているようだった。

 

「なのに……僕はその事も知らず、ただ腕が治った事を喜んでいるだけだった。君の事をほっといてしまった……代償として、君がこんなにも苦しんでいたというのに…」

 

恭介は申し訳なさそうに頭を下に向ける。何も知らなかったとはいえ、自分がいつも苦しんでいるときはいつも支えてくれていたさやかを放置してしまい、それが原因で彼女を苦しませてしまった事を詫びるかのように。

 

「思えば君はいつも僕の側にいてくれたよね……僕が喜んでいるときも、泣いているときも、一緒に笑って、悲しんでくれたよね。まるで自分の事のように」

 

恭介は目を閉じて思い出す。

 

(――恭介!)

 

その瞼の裏にはさやかの明るい笑顔が浮かんでいた。

 

「君はずっと僕の側に居続けてくれた……でも、だからこそ気づけなかったんだ。君の僕への想いも、僕の君に対する想いも……君が側にいることが当たり前になっていて、君が僕の側に近すぎて気づけなかった。………でも気づいたんだ」

 

ここで恭介は顔を上げて魔女を見据える。

 

 

 

「僕はさやかが好きだということを」

 

 

 

恭介は真剣な表情で想いを打ち明けた。

 

「上条…」

 

神童が恭介の告白に思わず声を漏らす。

 

「そして、その事に気づかせてくれたのは神童くん……そして空野さんなんだ」

 

「葵が……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~回想~~

 

 

 

 

―――僕は昨日の放課後、志筑さんに呼ばれたんだ。大事な話があると言って。そこで驚くことがあった。

 

 

 

「私、上条くんが好きです」

 

―――志筑さんに告白された。まさか志筑さんに告白されるとは思ってなかったからその時は現実だとは思えなかったよ。

 

「私と……恋人として付き合ってもらえませんか…?」

 

―――でも同時に、何故か神童くんの言葉が頭をよぎったんだ。

 

『自分を支えようとしてくれる人を蔑ろにしてはいけない』

 

―――その言葉が浮かんだと同時に、ある一人の女の子の顔が浮かんだんだ。それはいつも僕のそばにいてくれていた女の子だった。いつも僕に明るい笑顔を見せてくれる彼女だった。

でも……その時の彼女の顔は、何故かとても悲しそうに泣いていて……拒んでしまったらすぐに消えてしまいそうなくらい、儚かった。その時の志筑さんの気持ちは嬉しかったけど、泣いている彼女の顔が頭から離れることが出来ず、告白を真正面から受け止める事が出来なかった。その時思ったんだ。こんな中途半端な気持ちで志筑さんに返事を返していいのかと。結局その日は返事を待たせることになって、その後はたわいもない雑談で終わった。

 

 

 

 

~~数時間前・公園~~

 

 

 

 

 

「上条くん、昨日の返事をお聞かせください。」

 

―――告白から翌日、最近続いている事件の対策による午前だけの授業を終えた僕は公園で志筑さんに待たせていた告白の返事を求められた。でも情けない事に僕は彼女にどう返事を返せばいいかとまだ悩んでいたんだ。半端な気持ちで志筑さんの告白を受け入れても志筑さんに失礼だし、頭に浮かんだ彼女も裏切ってしまうかもしれない。かといって告白を拒否したら志筑さんを傷つけてしまい、これまでの関係が変わってしまうかもしれない。どうすれば最善なのか分からず、僕は松葉杖の傍ら、ベンチに座ったまま固まっていたんだ。

 

「上条くん……」

 

「志筑さん、僕は…」

 

 

 

「上条恭介さんですね?」

 

 

 

―――その時、突如呼ばれた僕が顔を上げて横を見ると、一人の女の子がいた。それは一瞬頭に浮かんだ彼女かと思ったけどそこにいたのは彼女よりも背が小さく、彼女と同じ青い髪のショートカットの女の子だった。

 

「あなたは……空野さん?」

 

「君は……」

 

「こんにちは、仁美さん。そして初めまして上条さん。空野葵と言います。神童先輩の所属するチームのマネージャーをしています」

 

葵は一礼をしながら自己紹介をする。

 

「神童くんの?」

 

「上条さん、あなたにお訊きしたいことがあります」

 

葵は真剣な表情で恭介に尋ねる。

 

「訊きたい、こと?」

 

葵は恭介と仁美に注目されながら、少し溜めるように一度唇を締めてから恭介に尋ねる。

 

「あなたは……さやかさんが好きですか!?」

 

「!」

 

「さやかさんを……一番大切な女の子として、自分を支えてくれる女の子として、さやかさんの事が好きですか!?」

 

「!!!」

 

―――その時の空野さんの言葉に僕の頭に思いきり殴られたような感覚が走った。それはウジウジしていた僕の心をハンマーで打ちつかせて殻を壊したかのような衝撃で、一気に心が晴れ晴れとしたんだ。同時に自分の本当の想いに気づいたんだ。僕が誰を愛しているのかを……。そして決めたんだ。先の事が怖くて逃げていた自分を捨て、どんな事になろうとも今の自分の気持ちから逃げずに前に進み、その想いを貫き通そうと……だから……

 

 

 

「志筑さん、ゴメン……」

 

「!」

 

―――志筑さんが傷つくのを承知で打ち明けた。

 

「空野さん……君の言うとおりだ。ずっと迷っていたけど、今はっきりさせる……」

 

 

 

―――そして僕は一度溜めてから志筑さんに告げた。

 

 

 

「僕が……僕が好きなのは、さやかなんだ!」

 

 

 

―――僕のさやかに対するあふれる想いは抑えることが出来なかった。

 

「いつも僕を……どんな時でも僕を支えてくれたさやかの事が好きなんだ!」

 

―――僕はここで立ち上がって志筑さんと真正面から向き合った。

 

「だからゴメン志筑さん。君の告白は受けられない」

 

恭介は申し訳なさそうに大きく頭を下げる。一方で仁美は何故か一切動揺せず、頭を下げる彼の姿を数秒間黙って見続けた後、静かに目を閉じた。

 

「―――わかっていましたわ」

 

「………え?」

 

落ち着いた様子で語る仁美に恭介は反射的に顔を上げる。

 

「わかっていました。上条君くんがさやかさんを選ぶことを。だって昨日の私の告白の後、あなたはさやかさんの事ばかり話していたんですもの」

 

「え!?そ、そうだったかい!?」

 

「やっぱり無意識でしたのね。もっとも、返事を待たされた時から予感はしていました。でも、告白された相手に別の女の子の話をするなんて、上条くんは意外とデリカシーありませんのね」

 

「うっ……」

 

告白を断られた腹いせのように酷評され、返す言葉も失う恭介。その様子に安心しきったのか見守っていた葵も後ろでクスクスと笑っていた。

 

「でもいいんです。この想いをあなたに打ち明けられただけで私は満足です。どんな結果になろうとも私たちの関係が悪化するわけでもありませんし」

 

「…!」

 

その言葉を聞いた恭介は自分の心配は杞憂だったと気づく。自分は告白の返事をした後、自分と仁美そしてさやかとの関係が今までと変わってしまうのではないかと恐れていた。しかし、そんなことはない。関係が自分がどちらと愛しようと、受け入れなかった方はこれまでどおり友人でいられる事に心から安堵した。

 

「志筑さん!」

 

だからこそ、それをはっきりさせるために彼は言った。

 

「これからも…よろしく頼むよ!……良い‘友達’として……」

 

「……ええ、もちろんですわ…」

 

仁美もその言葉を待っていたかのように優しくそう返した。

 

「でも、その様子だと……さやかさんは告白できなかったようですね?」

 

「え?」

 

「ふふふ。何でもありません。これからわかる事ですから」

 

恭介には仁美の言葉がよく聞こえなかったが、仁美はイタズラな笑みを浮かべて誤魔化した。

 

「さあ、上条くん。先生はさやかさんは今日も風邪で休んでると言っていました。さやかさんの家に行きましょう。あなたのその想いが冷めないうちに」

 

「ああ!」

 

恭介がさやかを愛しており、仁美との関係も悪化することも無いとわかり、葵は安心しきったように笑顔を浮かべる。そして即座に気持ちを切り替えるように真剣な顔つきに変えて恭介を見た。

 

「上条さん、あなたの気持ちはよくわかりました。それなら……お願いがあります!」

 

「お願い…?」

 

「さやかさんを助けてください!」

 

「「!?」」

 

 

 

 

それからの話は恭介と仁美には衝撃的だった。魔法少女と魔女の事、さやかの願いの事、ソウルジェムの事、葵や神童たちが異世界人である事、そして何よりショックだったのは………さやかが魔女になってしまった事だった。

 

「そ、そんな……さやかが僕の為に……その果てには魔女になってしまったなんて……」

 

「信じてくれるんですね」

 

「当たり前だよ。この流れでそんな嘘をついているとは思えない。何より、この動いている腕がその証拠だからね」

 

恭介は動かなくなったはずの左手を見て、動くようになった日のさやかの言葉を思い出していた。

 

『奇跡も魔法も、あるんだよ』

 

(君が、僕の腕を治してくれたんだね……)

 

「葵!」

 

その時、水鳥達が葵の後ろから急ぎ走りで現れた。

 

「瀬戸さんたち…」

 

「仁美!?……葵、まさか全部話しちまったのか!?」

 

「はい。必要なことだと思ったので」

 

「君たちも異世界から来たのかい?」

 

「まあ、そんなところだ…」

 

「事情がわかったのなら一緒にワシらと来るぜよ!」

 

「ああそのつもりだよ。でも、本当に僕にさやかを助けることが…?」

 

「大丈夫です!上条さんの言葉ならきっとさやかさんに届きます!上条さんなら……必ずさやかさんを助けられると信じてます!」

 

「空野さん……君は、どうしてそこまで僕がさやかを救えると信じられるんだい?」

 

さやかを助ける決意は固めたものの、恭介は不安だった。自分はまどかと同じ魔法少女でもサッカープレイヤーでもないただの一般人。戦う力を持たない自分が魔女になったさやかを救えるとは到底信じられなかった。

 

「これを見てください」

 

その疑念と不安を取り払うため、茜から借りたカメラの画面を見せる葵。恭介と仁美に怪訝な表情で見られながら一通り操作を終えるとある映像が映し出された。

 

 

 

 

『…今日、仁美に言われたの―――恭介が好きだって』

 

「これは…!」

 

それはなんと影の魔女と戦う直前、さやかがまどかや葵達に自分の現状を嘆いていた時の映像だった。何故録画した覚えのないこの動画がカメラにあったかはわからないが、万が一恭介が自分の話を信じなかった時の保険になり、彼がさやかを助けに向かわせるための切り札となると考えた葵は茜からこのカメラを借り恭介に見せようと考えていたのだった。

 

『それで明日……恭介に告白するって言われたの……今日一日だけあたしに時間をあげるって言われたけど……告白なんて、できるわけないよ…』

 

(さやか……!)

 

『いくら皆があたしを人間だって言っても…あたしはソウルジェムを失くしたらおしまいなんだよ?こんな小さな指輪を失くしたらただの死体になっちゃうんだよ…』

 

(そんな事ない!君は…君は間違いなく人間だ、さやか!)

 

その場にいたら間違いなく言っていたであろう自分の本心を映像の彼女に心で伝える恭介。しかし、映像にいくら語ってもその想いは届くはずが無く、何故この時側にいてやれなかったのだと歯を食いしばって悔やむ。

 

「上条くん…」

 

仁美はそんな恭介と苦しんでいる映像のさやかに胸を痛めていた。

 

(私があんな事を言わなければ…)

 

『あたし、仁美に宣言された時……後悔しそうになっちゃった』

 

「え?」

 

しかし休むことなく更なる真実による後悔が彼女を襲う。

 

『あの時仁美を助けなければって……ほんの一瞬だけ、思っちゃった……こんなあたし、正義の味方失格だよ………』

 

(私を……?まさか…!?)

 

ここで仁美は自分に起きたある出来事の真実に気づいてしまう。そして映像はまどかに泣きついているさやかの姿を映し出す。恭介と仁美は視線で穴が開くのでないかというほど映像をじっと見続ける。

 

『仁美に恭介を取られちゃうよ………』

 

「さやかさん…!」

 

「さやか…!」

 

『あたし……なんにも出来ない……だってあたし、死んでるんだもん……ゾンビだもん……こんな体で抱きしめてなんて言えない……キスしてなんて言えないよぉ……』

 

二人が泣き続けるさやかとまどかに驚愕している内に映像は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「さやかが……こんなことを…」

 

動画を見終わり、自分たちの想い人と親友がこれほど苦しんでいた現実に二人は呆然とする。そして数秒後、その現実をようやく受け入れられた恭介がそう呟いた。

 

「わかりましたね、上条さん。あなたとさやかさんは想い合ってるんです!さやかさんを助けられる一番の可能性を持ってるのはあなたなんです!」

 

「僕が、さやかを…」

 

恭介は心の中で改めて自問自答する。確かに自分はただの人間だ。だが、それが魂をささげてまで自分の腕を治した想い人を助けることをためらう理由になるのかと。

 

(さやか……!)

 

大事なのは何が出来るかじゃない。何をしたいのかだと。先ほど関係の悪化に対する恐れを振り払ったように自分の思うがままに進むべきではないかと思った。そう考えた恭介の心は決まった。

 

「…わかった。さやかは自分を犠牲にしてまで僕を救ってくれた。だから今度は僕がさやかを救う番だ!」

 

「上条さん!」

 

「連れてってくれ!僕をさやかの元に!」

 

「よっしゃ!任せるぜよ!ワシのマギカボールがあれば見つけられるぜよ!」

 

「ぐずぐずしてらんねぇ!行くぞ!」

 

さやかを助けるために意気揚揚と士気を高める恭介。

 

「さあ、志筑さん!君も一緒に……」

 

「私は……行けません…」

 

「え?」

 

「仁美さん!?」

 

仁美は今にも泣きそうな震える声で言った。

 

「だって……さやかさんを魔女にしたのは、私ですよね……」

 

「「「!?」」」

 

仁美のとんでもない宣言に五人は驚愕する。

 

「な、何を言ってるんだ!?志筑さん!」

 

「だってそうじゃありませんか!あの映像でさやかさんが言ってたでしょう!私に上条君を取られてしまうと…」

 

「そんな…仁美さんの所為じゃありませんよ!仁美さんがさやかさんに宣言したのは、たまたまタイミングが悪かっただけで…」

 

「それだけじゃありません……あの工場で私が集団催眠にかかったのは魔女の仕業で……それを助けてくれたのはさやかさんですよね…?」

 

「そ、それは……」

 

「やはり…さやかさんは魔女に囚われた私を助けてくれたのに…私はその恩を仇で返してしまった……」

 

仁美は俯いてその目から大粒の涙を流していた。

 

「さやかさんは上条くんに告白できなくて、あんなにも思いつめていたのに……私はなんてことを……自分が情けなさすぎて仕方ありません…!」

 

仁美は自分を責めながら考えていた。もし自分が魔法少女だったら間違いなく魔女になっていたのではないかと。大切な親友を魔女に変えた自分がこんなにも絶望しているというのに、親友と同じ魔女にならず、のうのうと生きている。そんな自分が害虫にも劣ると心の中で自虐していた。

 

「私がさやかさんを追いつめて絶望させてしまった……私がさやかさんを魔女にしたも同然です!!」

 

自責の念に飲まれた仁美は顔を両手で覆い、その場で膝から泣き崩れる。

 

「ごめんなさい……さやかさん…!ごめん…な、さ……う、うう…」

 

偶然が重なり、言葉にならないほどの悲劇を生み出してしまった事に仁美はただひたすら懺悔するように泣き続ける。そんな彼女を一同はただ悲しげな顔で見ているだけだった。彼らはどんな言葉を掛ければ自分を責め続ける彼女を慰められるか分からなかったのだった。

 

「………」

 

ただ一人、しかめっ面で仁美を見ている者を除いて。

 

「そう……ですわ」

 

仁美は突如泣きやみ、ハッと顔を上げて呟いた。

 

「志筑さん?」

 

「…そうですわ……キュゥべえ、そのキュゥべえというのはどこにいるのですか?」

 

「「「!?」」」

 

泣きやんだ仁美の言葉に一同はまさかと思った直後、

 

「私が魔法少女になればいいんです!」

 

予想していた言葉が彼女の口から発せられる。そこから立ち上がった仁美は神からのお告げで希望を見出したようにパアッと笑顔になる。

 

「私がさやかさんを元に戻すように願えば……さやかさんを助けられます!」

 

しかしその笑顔はどこか壊れた笑顔で、見出した目的を果たそうと狂いがちになっていた。そして仁美はそのまま自分の贖罪になるとさらなる絶望という名の希望を口にする。

 

「そしてその代わりにわたしが魔法少女になって……魔女になるまで戦い続ければ…」

 

 

 

パァン!

 

 

 

乾いた音が公園に響いた。仁美は声を上げる間もなく公園に敷き詰められたタイルに倒れこむ。

 

「……っ!」

 

彼女に平手打ちをしたのは水鳥だった。仁美は叩かれて赤くなった頬を押さえながら水鳥を見上げる。彼女の苛立った表情でこちらを見降ろしていた。

 

「せ、瀬戸さん…?」

 

「馬鹿な事言ってんじゃねえ!」

 

水鳥は咎めるように怒鳴りつける。

 

「で、でもこうでもしないとさやかさんは…」

 

仁美は必死に弁明しようとする。しかし水鳥の迫力に負けてその声に力は無かった。

 

「今、まどかとあたしたちの仲間がさやかを助けようと必死に頑張ってんだ!あいつらの想いを無視する気かよ!」

 

訴えかける水鳥に仁美は圧倒されて顔を背けてしまう。

 

「で、でも…万が一元に戻せなかったら……」

 

「ウチの男共をなめんじゃねぇ」

 

水鳥の低い声に仁美は顔を上げる。その時見た水鳥の目は仲間たちへの信頼に満ちており、その確固たる目に黙り込んでしまう。

 

「それに……さやかが助かっても、代わりにあんたが魔女になるなんて、あたしたちは誰も望んじゃいねえんだよ!それこそさやかもだ!」

 

「!」

 

「あんたの知ってるさやかは、自分が助かるのと引き換えにあんたに自分と同じ運命を背負わせて喜ぶような奴だったのかよ!」

 

「そ、それは…」

 

「違うだろ!あたしたちはまだわずかな時間しか過ごしちゃいねえが、あいつはそんな奴じゃねえ!他人の幸せを素直に考えられる良い奴だってことは分かんだよ!そんなさやかに、魔法少女になる事で償えるわけがねえだろが!」

 

すると今度は仁美の胸倉を掴み上げる。

 

「本当にすまねえと思ってんなら……さやかの事を今でも親友(ダチ)だと思ってんなら!あたしたちで元に戻したさやかに面と向かって謝りやがれ!」

 

水鳥がそう叫んだ直後、周りの音が静止する。それに合わすように水鳥に圧倒されていた仁美の心は静けさを取り戻していった。

 

「………」

 

「さやかちゃんは上条くんが喜ぶとわかってて、魔法少女になった」

 

沈黙の中、突如喋り出したのは茜だった。仁美と水鳥に注目していた一同が見るといつもののほほんとした顔ではなく真剣な表情の彼女がそこにいた。

 

「でも友達が悲しむのがわかっててやろうとするなんて…そんなの友達じゃない」

 

「茜さん……」

 

仁美は茜の言葉に呆然としていたが冷静になった思考でその言葉の意味を先ほどの水鳥の言葉を交えて自分の中でまとめ上げる。そしてその答えを導き出したのか先ほどの狂った笑顔とは違い、フッとすっきりしたような笑みを浮かべる。その様子に気が付いた水鳥はそって手を離した。

 

「そう、ですわね……私ったら何をやっていたのでしょうか」

 

「志筑さん…?」

 

「皆さんの言うとおりです。ようやくわかりました。私がさやかさんの為に出来る事を…」

 

仁美はすっきりした顔で一同と目を合わす。

 

「それは、皆さんと一緒にさやかさんを助ける事です!」

 

「仁美さん!」

 

ぱあっと笑顔になった葵に仁美はコクンと頷いた。

 

「行きましょう!さやかさんを助けに!」

 

「ああ!行こう!…ってわあ!」

 

「おっと!」

 

仁美の事で自分の足の事を忘れていた恭介は松葉杖も無しに走り出そうとし転びそうになるところを錦が受け止める。

 

「大丈夫ぜよ!?」

 

「あ、ああ…はは、自分の足の事忘れてたよ。でも急がないと…」

 

「倒れそうになったらワシが支える!だから安心して行くぜよ!」

 

「ありがとう、錦くん」

 

恭介は錦に助けられながら急ぎ足で歩きだした。大切な想い人を助けるために。そんな彼らを少女たちは微笑ましく見ていた。

 

「皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 

仁美は葵達と改めて向き合って詫びをする。

 

「いいんですよ。私こそ仁美さんに話すべきではなかったのに……」

 

葵は内心しまったと思っていた。さやかを助ける事に躍起になるあまり、真実を知った仁美が絶望することを失念していた。恭介に助けを求めにいったつもりがたまたまそこに仁美が居合わせたせいで彼女にも真実を知られ、彼女を落ち込ませたことに少なからず罪悪感を感じていた。

 

「いいえ。あなたは何も悪くありません。むしろあなたがそうしてくれなかったら、私は一生何も知らずにのうのうと生きていたはずでしたから」

 

「仁美さん……」

 

「瀬戸さん、山菜さん、先ほどのお説教、効きましたわ。危うくさやかさんをもう一度傷つけるところでした。ありがとうございます。こんな私の為に迷惑をかけてしまって…」

 

水鳥と茜にも申し訳なさそうに頭を下げる。他人である自分にここまで説教してくれたことに自分が恥ずかしく思いつつも彼女達に感謝していたのだった。しかしそんな仁美の思いと感謝とは裏腹に水鳥は少し笑いながら言った。

 

「へっ、何をかしこまってんだよ」

 

「え?」

 

「私たち、もう友達」

 

「これから一緒に頑張りましょう!仁美さん!」

 

茜と葵も続くように微笑んだ。

 

「!……そうですね。急ぎましょう!水鳥さん、茜さん、葵さん!」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

「そんな事が…」

 

「だからさやか!僕は君を助けるためにここに来た!思い出してくれ、さやか!」

 

恭介の言葉に反応したのか、魔女はもがき苦しんでいた。

 

「さやか!」

 

「―――!!!」

 

しかし、魔女はそれを拒絶するかのように剣を振りかざし車輪を放つ。

 

「危ないぜよ!」

 

錦がマギカボールを踏みつけるとそれに呼応するかのようにボールが光り出す。すると錦の格好が雷門のジャージから背番号14番のユニフォームに変化する。

 

「ムンッ!」

 

錦が身体を左から前に捻り、右足を後ろに下げて身構えると、紅葉が舞い散りボールが跳ね上がる。そして錦が右足を後ろに大きく振り上げると足先から刀の形をした黄色のオーラが伸びていく。

 

「『伝来(でんらい)宝刀(ほうとう)』!」

 

そのままボールを蹴るとボールはオーラを纏って猛スピードで地面を裂きながら伸びていき、車輪を弾き飛ばした。

 

「そんな…上条くんの言葉でもさやかちゃんには届かないの?」

 

まどかはさやかに恭介の声が届かず、希望を失ったように涙を流す。

 

「畜生……こんなことなら、やっぱりあたしが道連れにした方が良かったのかもな……」

 

「杏子さん…!」

 

「………」

 

諦めかけているまどかと杏子の姿を見たほむらは考えた。

 

(もしかしたらとは思ったけど……やはり彼らや上条恭介でも彼女を救うことは出来なかった……今回も、彼女は私の手で…)

 

さやかを元に戻す可能性を失い、ここで全滅するくらいなら彼女を倒すべきではないかと。それはさやかの命を見捨てる事を意味していた。

 

「まだです!」

 

「!」

 

しかしそんなほむらの思惑に感づいたように天馬が声を上げる。

 

「さっき上条さんが呼びかけた時、さやかさんは反応してくれた!俺たちの声だって、きっと届くはずです!」

 

「天馬くん…」

 

「松風天馬……あなた…」

 

「諦めない…!さやかさんに俺たちの声が届くまで、何度でも呼び続ける!さやかさんの絶望を……俺たちが吹き飛ばすんだ!」

 

さやかを助けるまで絶対に諦めない。そんな思いを全開にして彼は立ち尽くしていた。

 

 

 

 




という訳で原作では絶対関わる事のない二人を巻き込みました。
実際仁美は真実を知ったらこんな風に自分を責めるんじゃないですかね。
正に偶然を装った悪魔の仕業と言ったところでしょうか、
悪魔といってもどっかのド貧乳じゃなくて…

バン!

ぐふっ(パタ…)

なお、今回長丁場になる事が予想されます。Cパートまで書くほど長くなると思います。

感想お待ちしております。お楽しみはこれからだ!(誰のマネだ)

やっぱ小説って難しいな…
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