魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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お待たせしました。今回も結構難産でした。
中々文章がまとまらなかったです。やっぱり、パッと文章が出てきたり語彙がもっと増やせたらなと思いました。

なお、今回はどこでパート分け出来ればいいか分からなかったので(おい!)分けませんでした。こんなダメ作者ですいません。

さて、小さな守護神は暴走するお姉さんを止められるでしょうか。
それではどうぞ。


―――OP『コネクト』―――


第13話『凶気を受け止めろ!マミVS信助!』

 

 

~~~夕方・公園~~~

 

 

 

 

何故こうなってしまったのかと天馬達は顔を歪める。さきほどまで、さやかの救出に成功した自分達は希望に包まれていたはずだった。ところが、朝から姿をくらませていたマミが突然現れ天馬達を拘束して共に心中しようと銃を向けた。二度目の絶体絶命のピンチにマミを探していた信助が助けに入る。だが、それでも全く考えを変えようとしないマミに信助は決闘を申し込む。あまりにも無謀ともいえる信助に一同はただ見ていることしか出来なかった。

 

「マミさん」

 

信助が突如ポケットから何かを取り出しマミに向けて投げる。マミが無表情でそれを受け止めて確認すると、怪訝な目で信助を睨む。

 

「……なんのつもりかしら?」

 

マミが受け止めたもの、それは信助が杏子から分けてもらった三つのグリーフシードの内の一つだった。何故、敵に塩を送るような真似をしたのか天馬達とマミには理解できなかった。

 

「マミさんは魔女化の事で絶望してソウルジェムに穢れが溜まってるはずです」

 

「確かに……それなら遠慮なく使わせてもらうわ。もし皆を殺す前に私が魔女化してしまったら、何人か逃がしてしまうかもしれないから」

 

マミはそう言うと、髪飾りとなっているソウルジェムに当てて穢れを浄化する。

 

「私と対等な立場で戦い合いたいと言うの?それとも私の望みを叶える手伝いでもしてくれるの?」

 

マミは今までとは想像つかないほど冷酷な声で信助に問う。

 

「どちらでもありません。ただ、マミさんに魔女になってほしくない。それだけです」

 

「………」

 

信助が真剣な表情で答えると気に入らないようにわずかに眉を動かす。やがて彼女のソウルジェムが元の黄色の輝きを取り戻すとマミはグリーフシードを横に投げ捨てる。

 

「マミさん、戦う前に天馬達に被害が及ばないようにしてください。皆を殺すのは、僕を倒してからでも遅くないでしょう?」

 

「そうね……あなたのその度胸とグリーフシードに免じて、特別に作ってあげるわ………あなたの処刑場を」

 

マミは片手を上に上げると地面から黄色いリボンが伸びていき、自分達と天馬達を遮断する。天馬達が驚いているとリボンは信助とマミの周りを囲い、まるで非合法の地下闘技場にあるような広いドーム状の檻へと姿を変えた。

 

「この中なら外に影響を及ぼさないし、人払いの魔法もかけているから、無関係の人間が来ることも無いわ。さあ……始めましょうか!」

 

マミは改めて殺意の目を信助に放ちながら複数のマスケット銃をスカートから地面に着きたてる。信助も体を身構え、臨戦態勢に入る。

 

「信助……」

 

天馬は不安になりながら信助を見守ることしか出来なかった。

 

「ティーロ!」

 

マミはマスケット銃を構えて魔力弾を放つ。

 

「っ!」

 

信助は右に飛び込みながら転がる事で躱す。

 

「ティロ・ドッピエッタ!」

 

すかさずマミも魔力弾を二発撃ち放つ。一方で信介も着弾する前に左に避ける。

 

「ティロ・ボレー!」

 

今度は四発放つがそれもジャンプすることによって回避する。

 

「すばしっこいわね。それなら……レガーレ・ヴァスタリア!」

 

「!」

 

地面に着地した信助の足元からリボンが現れる。信助はギリギリでそれに気が付き、前転して逃れる。

 

「そこ!」

 

その瞬間を逃さず、体勢を崩した信助に撃ちこむ。しかしそれに気づいた信助は四肢を地面を押し、その反動で後ろに飛んで躱す。小さな身体の信助だからこそできる芸当だった。

 

「いい反応ね。その小さな体のおかげかしら?」

 

「反応が速くなきゃ、キーパーは務まりませんよ!」

 

「そんなキーパーが避けてばっかでいいのかしらね」

 

「……っ!」

 

皮肉るマミの冷酷な姿に信助は顔を歪める。

 

「パロット・ラ・マギカ・エドゥインフィニータ!」

 

マミは大量のマスケット銃を空中に展開し一斉射撃する。

 

「うおおおぉぉっ!」

 

信助も力を溜めて化身を繰り出す。

 

「護星神タイタニアス!でやあっ!」

 

信助は試合でシュートを止めるように両手の平を突きだし、タイタニアスも同じように掌で壁を作って弾幕を防ぐ。

 

「ぐうう……!」

 

魔力弾はかなりの数で徐々に後ろに押されていく信助。しかし足に力を込めて踏みとどまり、なんとか防ぎきる。

 

「ふう…」

 

信助は一息吐いては化身を自身の身体に戻す。本来、化身というのは出してるだけで体力を奪い、消耗すれば出すことが出来なくなる。マミもマスケット銃を放つことが出来るが魔力の限界という制限がある。しかし一度に複数の銃を生成しそこから同時攻撃や連続攻撃が放つことが出来る。一方で化身は発動や必殺技などのアクションを起こす時に体に力を溜める必要が有り、直ぐに次の動作に移れないという弱点が有る為、どうしても機動力では劣ってしまう。したがって信助は化身は連続攻撃や大技を放つ時しか使わないという策を取ったのだった。

 

「なるほど……何の策も無しに私に挑んだという訳じゃないのね…」

 

「当然です……相手がマミさん、あなたですからね…」

 

信助の行動から自分の攻撃に合わせて化身を使い分ける策を見抜いたマミに対し、信助は呼吸を整えながら返事を返す。

 

「なら……化身を出す間もなく撃ち続けるだけよ!」

 

マミは両腕を広げ、マスケット銃を自分の周囲に展開し、ガトリングガンのように少しずつ回転させては正面に回った銃で発砲する。それに対し信助は即座に壁際を走り出し、マミも接近されないよう自ら移動しながら信助を狙う。魔力弾は信助が走った跡を追いかけるように放たれ、二人はドームの縁を一周するまで追いかけっこを続ける。

 

「そこよ!」

 

マミはそこから信助の走るスピードを計算し、一周したところで信助が走りこむところに向けて魔力弾を放つ。

 

「!危ないっ!」

 

それに気づいた信助は急ブレーキをかけてバク転で躱す。

 

「っ!!」

 

マミはイラついたように周囲に展開していた銃を全て正面に向けて撃ち続ける。信助はそれを右に左に躱し、時にはバックステップやジャンプで避け続ける。

 

「ちょこまかと……それなら!」

 

魔力弾を信介の周囲の地面に撃ちこむ。するとそこから土煙が昇り、辺りを包み込む。

 

「目くらまし!?」

 

「そこ!」

 

マミは土煙の外からその中心に向けて信助を狙撃する。マミの影に気が付いた信助は即座にそこから離れる。

 

「くっ!この中にいたんじゃ狙い撃ちされるだけだ!」

 

信助は土煙の中からの脱出を試み、一気に駆け出した。

 

ピシッ!

 

「!?」

 

数歩進んだところで突如左足が動かなくなる。とっさに後ろを向くと地面から伸びたリボンが信助の左足首に巻き付いていた。

 

「しまった!」

 

土煙は目くらましではなく着弾した弾丸から伸ばしたリボンを隠すためのカモフラージュだった。マミのリボンは弾丸から出すことも出来る。この戦術はまどか達の魔法少女体験コースでも披露したはずなのにその事を忘れていた信助は不覚を取ったと悔やむ。そこから必死に抜けだそうと左足を引くが、そうしているうちに右足も拘束されてしまう。

 

「チェックメイトよ」

 

マミの冷徹な声に真正面を見ると土煙が払われる。

 

「!!!」

 

信助に戦慄が走った。信助の目の前でいくつものマスケット銃がマミの冷たい視線と共に銃口をこちらに向けていた。

 

「(まずい!!)ご、護星神…!」

 

「パロット・ラ・マギカ・エドゥインフィニータ!!」

 

信助に化身を出す間も与えず横殴りの雨のような弾幕が無慈悲に降り注ぐ。

 

「うわああああぁぁっ!!!」

 

「信助ーーっ!!」

 

土煙と信助の叫び声が辺りを包み込むと同時に天馬の悲痛な叫びがドームに響く。やがて土煙が晴れていき、信助がいた辺りを凝視する。

 

「―――!」

 

そこには信助がうつぶせで倒れていた。信助は体中がボロボロになっており、まるで捨てられた人形の様で動く気配が無かった。

 

「そ、そんな…!?」

 

「信助…信助っ!?ねえ、起きてよ!信助ぇ!!」

 

まどかは倒れている信助を見てショックを受ける。一方で天馬も必死に呼びかけるが、空虚にも信助は指一本動かさなかった。その状況から全員の頭によぎってしまう。信助の死という最悪の事態を。

 

「終わったわね……これで邪魔者はいなくなったわ。次は……あなた達よ」

 

「っ!」

 

マミは殺意と共に片手で銃を天馬達に向ける。

 

 

 

 

「まだ……だ……」

 

 

 

 

「!」

 

死んだと思われた信助の声にマミは思わず振り向く。すると信助はふらつきながらゆっくりと立ち上がり、両足で地面を踏みしめる。

 

「信助!」

 

「まだ立ち上がれるとはね……それもマギカボールがあなたの身体を強化してるおかげかしら」

 

「はあ……はあ…」

 

「私相手に良くここまで戦ったとほめておきたいけど、これ以上苦しめるのは私にとっても快くないわ……とどめを刺してあげる」

 

再び瀕死の信助に銃を向ける冷徹なマミ。

 

「………」

 

信助は何故かそこから全く動こうとせず、ただマミに鋭い視線を向けていた。

 

「でもその前に一つだけ聞いてもいいかしら?信助君、あなた……どうしてマギカボールを使わないの?」

 

マミは怪訝な目で信助の側でぽつんと落ちているマギカボールを見る。それは一同も同じ疑問だった。雷門は全員この世界ではマギカボールを使って戦っていた。それは信助も例外ではなく、攻撃を防ぐだけでなく自らもシュートを放って戦っていた。なのに何故今回は一度もマギカボールを使おうとしないのか。

 

「………ボールは、友達を傷つけるものじゃない……今のマミさんに、マギカボールをぶつけても意味なんて無い…」

 

「そんな事で私に勝てると思ってるの?このままじゃ死ぬわよ?」

 

「死ぬはずがありませんよ………手加減してるマミさんの攻撃なんかで…」

 

「!?手加減、ですって…?」

 

信助の言葉にマミはわずかに動揺した。

 

「そうですよ…マミさんこそ、どうしてティロ・フィナーレを撃たなかったんですか?」

 

「!」

 

「本気で僕を殺そうとしてたなら……僕の動きを封じた時、マミさんなら確実に仕留める為に最大の技であるティロ・フィナーレを撃つはずです。なのに、放ったのはパロット・ラ・マギカ・エドゥインフィニータ。しかも、放つ銃の数がいつもより少なかった…」

 

「そういえば……」

 

誰よりもマミを知る杏子も気づく。一瞬の事だったので信助が言うまで気づかなかったが、実は先ほどマミが放ったマスケット銃の数はいつもの半分くらいしかなかったのだった。

 

「そもそも本当に皆を殺そうと思っているなら、僕の要望を受け入れるなんてしないはずなんです。なのにあなたは僕からの決闘を受けるという明らかに回りくどい事を承諾した。加えて僕を殺さないように手加減した事……」

 

殺すにはこれ以上無い位の絶好のチャンスだったというのに、マミは何故それを躊躇したのか。信助はその心の内を見抜いたかのように語りかけた。

 

「マミさん、本当はこんな事したくないんじゃないですか…?」

 

「!」

 

「僕にはわかる……今のマミさんは、考える間もなく一人だけ魔法少女になって生き延びたけど、いずれ自分が魔女になってしまう事が怖いんです」

 

マミの持つ銃がその心の内を表すように震え始める。

 

「それだけじゃない……友達だと思っていたキュゥべえにまで裏切られて、今まで人々を守る為に倒してきた魔女の正体を知って、それまでマミさんを支えてきたものが全部ウソだった事が悲しくて、その苦しみから逃れたかったんです!」

 

真意を突かれるたびにマミの手の震えが激しくなる。

 

「辛かったんですよね……苦しかったんですよね……そんな苦しみから逃れるためにだからこんな手段に出てしまったんですよね……現実を受け止めたくなかったから!魔女になりたくなかったから!誰かに自分の苦しみを受け止めてほしかったから!」

 

「―――っ!!」

 

マミの震えが身体全体に広がる。当の本人は辛そうに歯を食いしばって顔を伏せる。

 

 

「マミさん……」

 

まどかが動揺するマミの姿を見て思わず名を呼ぶ。やがてマミは一気に顔を上げる。

 

 

 

 

「―――そうよ!私は魔女になんかなりたくない!皆を殺したくなんかない!でも、私や佐倉さん達が街の人々や皆を殺す魔女になってしまうことが怖いの!私や一緒に戦った魔法少女が最期には魔女になって殺し合わなければならない日が来るのが怖いの!」

 

信助に本心を突かれたマミは遂に気持ちが爆発してその場で叫びだす。

 

「でも、魔法少女になった以上、その運命から逃れられない…!魔法少女になって、正義の味方になったつもりが、結局は自分を破滅させることだった!誰かのために頑張っても、孤独な自分を何度も奮い立たせても!誰かが側に居ても!最期には全て魔女化に……絶望に飲み込まれるだけだった!」

 

「!」

 

マミの慟哭にさやかは身を震わす。さやかにとって今のマミは魔女化する前の絶望していた自分そのものだった。希望を失って自暴自棄になっていた自分と重なるマミの姿にさやかは改めて自分の愚かさを思い知る。

 

「認めたくなかった……認めてしまったら、きっと耐えきれない……自分一人だけ助かって、魔法少女になってまで生き延びた事が、最期には全部消えて…何の意味も無くなるなんて…!色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、わけがわからなくなって……もう、こうするしか方法が思いつかなかった…!」

 

そこまで叫ぶとマミは再び顔を下に向け、ポタポタと涙を地面に落とす。それは彼女の中に渦巻く悲しみと苦しみが混ざり合ってあふれた彼女の心を表しているようだった。

 

「………」

 

そんな彼女の姿に一同は哀しげな表情を浮かべる。そんな中で信助が言った。

 

「マミさん、一人で抱え込まないでください。前に天馬が言ったじゃないですか。マミさんが魔法少女になったからこそ、僕たちは出会えて友達になれたって!」

 

「それが何…?…その事だって、いずれ魔女化に……」

 

「飲み込まれると言うなら……僕達が絶対マミさん達を魔女になんかさせない!」

 

「無理よ!逃れられない運命なのよ!絶望の運命を背負わず、いずれこの世界から去るあなたに何がわかるのよ!!」

 

マミは激情に任せて信助の思いを否定するように首を振る。

 

「―――わかります!!」

 

「!?」

 

「マミさんは自分だけじゃなく、他の皆が魔女になる事が嫌なんですよね!それは僕達にとっても同じなんです!!」

 

「…!」

 

自分の行動の裏を突かれたマミは目を見開く。

 

「僕達の仲間があんな怪物になって死んじゃうなんて……そんなの僕だって嫌です!!マミさん達が魔女化することは僕達にとっても絶望なんです!!」

 

「信助…!」

 

自分達の心を代弁する信助の姿に天馬の心が震える。

 

「だからこれは魔法少女だけの問題じゃない!事情を知ってしまった僕達も見過ごす事なんて出来ないんです!だから僕達も、マミさん達の魔女化に……絶望なんかに負けたくない!」

 

信助は再び両手の平をマミに向けてキッと面構えを整える。

 

「だからマミさんを魔女にさせないために、僕がその絶望を受け止める!マミさんが希望を取り戻すまで!」

 

「信助!?」

 

「あなた、最初からそのつもりで!?」

 

天馬とほむらが信助の言葉に驚く。そう、信助は最初からマミを攻撃するつもりなどなかった。彼は苦しんでいる彼女の気持ちを吐き出させ、その小さな体でそれを全て受け止める覚悟だったのだ。

 

「そんな言葉、所詮は口だけよ!何を言おうと結局は魔女化で全て無に還るだけ!そんな口をもう二度と叩けないように、終わりにしてあげる!!」

 

マミは感情のまま、今までで最大の魔力を込め、大砲を作り出す。それは今まで見たことが無い位巨大な大砲で、彼女の中に渦巻く絶望を体現したかのようであった。

 

「まずい!あんな大きさで放ったら、わたし達もただじゃすまないわ!」

 

「「「ええ!?」」」

 

ほむらは大砲の大きさから被害の規模を計算し、このままでは信助どころかリボンで拘束されている自分達も吹き飛ぶ危険性があると導きだす。その答えの宣言に一同は驚きの声を上げる。

 

「―――止めてみせる!」

 

しかし、それでも信助は地面を片足で強く踏みこんだ。自身の覚悟を表すように。決して逃げないと言うように。

 

「キーパーである僕の役目……それはゴールを……いや、皆の希望を守る事なんだ!どんな絶望が相手でも、守り抜いてみせるんだっ!!」

 

 

 

 

―――キィィィィンッ!!

 

 

 

 

その時、信助の側で転がるマギカボールが強い光が放つ。

 

「この光はまさか!?」

 

その光に天馬はある予感がよぎり声を上げる。

 

「本当に何とかできると言うなら!これを止めて見なさい!!

 

 

 

―――ティロ・フィナーレッ!!!」

 

マミは叫ぶと同時に目の前に立ちふさがるもの全てを消し去らんと信助に向けて大砲を放つ。

 

「信助!」

 

今までで最大の魔力弾が信助に真っ直ぐに襲いかかろうとしていた。

 

「うおおおおおぉぉ!!」

 

しかし、信助は怯むことなく体に力を込める。

 

「護星神タイタニアス!」

 

自身の心の強さと覚悟の証を現出するように化身を出現させる。

 

「絶対止めてみせる!マミさんの苦しみは僕が受け止める!

 

 

 

 

―――アームドッ!!!」

 

 

 

信助は両手を合わせて気合いを入れてから飛び上がると、タイタニアスがオーラに変わり、弾けるように分裂する。

 

「うおああああっ!!!」

 

弾けたオーラは渦巻くように信助の身体を包みこむ。するとオーラはタイタニアスを彷彿させるような青い鎧に変化し、小さなゴールキーパーを屈強な戦士の姿に変える。

 

「なっ…!?そ、その姿は!?」

 

「化身アームド!」

 

信助の化身アームドにマミとほむらが驚く間にティロ・フィナーレの弾丸は信助の目前まで迫っていた。

 

「でやああぁぁっ!」

 

地面に着地した信助は両手を突出し、自分の何倍もの大きさを持つ魔力弾を轟音を立てながら両手の平で受け止める。

 

「ぐ、うううぅぅ!!」

 

巨大な魔力弾の圧力に押されそうになる。

 

「「「信助(くん)!!!」」」

 

マミとほむら以外の全員の声が重なる。

 

「(負けない!絶望から皆を……守ってみせるッ!!)

 

 

 

―――うおおおおおおぉぉぉっ!!」

 

信助は渾身の力を込めて踏ん張り続ける。巨大な魔力弾は徐々にその勢いが弱まり、やがて信助に押し負けた事を示すようにバン!と風船のように弾けて消滅した。

 

「そ、そんな…!?」

 

「ティロ・フィナーレを……」

 

「受け止めやがった…!」

 

マミの大砲がそれまでの勢いと共に消え、マミと共にさやかと杏子が目を見開く。

 

「マミさん!」

 

一同が驚愕してる間に信助がそのままマミに向かって走り出す。

 

「こ、来ないで!ティロ・ドッピエッタ!」

 

呆然としている中で気づいたマミが二発の魔力弾を放つ。二つの魔力弾は螺旋を描くように飛んでいき、二つ合わせるとドリルのような軌道を描いていた。しかし信助は勢いを止めずに走り続け、魔力弾と衝突する直前に飛びあがり、右手の拳を引く。

 

「『ぶっとびパンチ』!!」

 

そのまま拳を突出し、パンチングで弾丸を二つ共捕らえると、魔力弾は天空に軌道を変え、リボンのドームを突き破って空の彼方に消えた。

 

「!!」

 

防がれた事にマミが驚くと信助は一度地面に着地してから再びマミに向けて大きくジャンプする。

 

「マミさーーーんっ!!」

 

信助はマミの両肩を掴んでそのままの勢いで地面に押し倒す。そしてすぐさまポケットからグリーフシードを取り出しマミのソウルジェムを浄化する。マミのソウルジェムが輝きを取り戻すとグリーフシードを投げ捨てて再びマミの両肩を掴む。

 

「マミさん、もうやめましょう!マミさんだって、本当はこんな事したくないんでしょう!?」

 

「…!」

 

信助は必死に訴え掛ける。マミは自分の最大の技が破られたことがショックで体の力が抜けてしまい、信助の迫力に負けて起き上がる事が出来なかった。

 

「魔女になる可能性があるから自分も皆も殺すなんて、そんな命を粗末にするやり方なんてマミさんが一番嫌なはずです!」

 

「!!」

 

信助に言われた瞬間、マミは事故で両親を失い、自分は願いで命を救った事を思い出す。本来一度失った命は二度と戻ってこない。それ故に誰かが死ぬことで心を病んでしまう者がいるように、命を失う事は言葉にならないほどの悲しみをいくつも生みだしてしまうこともある。その事はマミ自身が一番忌み嫌っていたはずであった。

 

「………私だって、私だって魔女になんかなりたくない!!皆を殺したくなんかない!ずっとキュゥべえしかそばにいなかった私にとって……皆がいる時の時間は、かけがえのない大切なものになってた…これからも皆と楽しく生きたい!!でもそれだって絶望の運命に飲み込まれるのよ…!」

 

しかし頭でどんなに理解しようとも、自分達の末路が絶望でしかない事実がマミの心を縛り付け、信助の言葉を否定してしまう。それまで自分を支えてきたものが全て崩れ落ちてしまった彼女の心はゴールに向かう凶悪なシュートのように闇に飲み込まれるばかりだった。

 

 

 

 

 

「―――だからって……逃げるんですか?」

 

 

 

 

 

「え?」

 

「いずれ絶望に飲み込まれるからって、その絶望の運命と戦おうともせずに皆で死のうなんて……そんなの諦めて逃げてるのと同じですよ!」

 

「!?」

 

信助の思いもよらぬ発言にマミの心が静止する。

 

「絶望の運命と、戦う…?」

 

「そうです!さやかさんを魔法少女に戻せたなら、きっと魔法少女を普通の人間に戻す方法だってあるはずです!それを探す事こそ、マミさんの望みを叶える事じゃないですか!いずれ絶望に飲み込まれると言うなら、その絶望と戦うんです!それがマミさんが本当にやるべき事じゃないんですか!?」

 

「!」

 

信助の言葉が再びマミの心に突き刺さる。魔法少女を普通の少女に戻す方法は未だに見つかってない。だがさやかを魔女から魔法少女に戻せた以上、人間に戻れる方法がないとは言い切れなくなった。その方法を探すことは決して無駄では無いのではないかとマミも考える。

 

「でも……魔女になる前に人間に戻る方法なんて、見つけられるかどうか……」

 

しかし精神面が弱いマミはその方法を見つけるまで魔女化に耐える自信を持つことが出来なかった。

 

「―――確かに無理でしょうね、マミさん一人なら。だから僕達がいるんですよ」

 

「……え?」

 

信助は先ほどまでと違い、優しげで落ち着いた声色で語り出す。

 

「僕は皆と一緒に時空最強イレブンを集める旅をしていた時、ある人に出会ったんです。その人はこの街の人々を魔女から守っていたマミさんのように、苦しんでいる多くの人達を手遅れになる前に救おうとした素晴らしい人でした。でも同時に僕達は恐ろしく強い敵と遭遇したんです。僕の力が全く通用しなくて、怖くなって諦めそうになりました。でもその時、その人が僕に言ったんです。民が笑顔に暮らせる国を造りたい。それを成し遂げるのは自分一人では無理だけど、仲間がいるから頑張れる!どんなピンチでも、仲間と共に守りたいものがあるから決して諦めないと!」

 

「守りたいもの…!」

 

「水が無ければ生きられない魚の様に、人々の笑顔が無ければ自分は自分じゃなくなるとその人に言われた時、僕は思い出したんです。僕達はサッカーを……守りたいものがあるから皆で頑張っているんだと!僕達がこれまでどんな困難に出くわしても、その度に皆で力を合わせて切り抜けてきた!だからこの世界でも、魔女に殺されそうになったマミさん達を守れたし、天馬達もさやかさんを元に戻せた!」

 

「――!」

 

信助の言葉でマミは思い出す。自分があのお菓子の魔女に殺されそうになったとき、彼らは苦戦しながらも決して諦めず、決して臆せず魔女に立ち向かった。その結果自分の命と心を救い、自分は誰かを守るための勇気を学んだはずだった。

 

「困難に立ち向かう事をやめてしまったら大切なものが消えちゃうんです!サッカーやマミさん達を失ったら、僕は僕じゃなくなっちゃうんです!そんなの嫌です!だから僕は何が何でも諦めないんです!」

 

いつの間にか信助の心にも熱が入り、自分の心中をマミにぶちまけていた。

 

「僕達だって、もっとマミさん達と一緒にお茶会したり、一緒にご飯を食べたり、一緒に笑い合いたい!絶望がそれを押しつぶそうとするなら、僕はその絶望を乗り越えて見せる!決して一人ではなく、皆と一緒に!マミさん、あなたにはソウルジェムを失っても取り戻してくれる人が居る!絶望の運命に一緒に立ち向かえる仲間が居る!どんなに苦しんでも、必死に支えようとしてくれる人達が居る!前にも言いましたけど改めて言います………あなたは一人じゃない!!」

 

「一人じゃ、ない…」

 

「今なら見えるはずです。あなたに何かあったら悲しむ人達の姿が」

 

信助は真剣な眼差しのまま顔を左に向け、マミも続くように顔を向けるとそこには数多くの仲間たちがこちらを心配そうな目で見ていた。

 

「マミさん……」

 

まどかが小さく呟く。彼らは自分が縛り付け、殺そうとしたにも関わらずまるで本当の家族のように心配してくれていた。その優しくも不安げな眼差しがマミの心に深く浸透していった。

 

「みんな……」

 

「わかりますよね、マミさんはもう一人じゃない。あなたを大切だと想ってる人たちがこんなにいるんです。マミさんが願いで助けたその命は、もうあなただけの命じゃない。僕達にとっても大切な命なんです。そしてそれは僕達一人一人の命にも当てはまる事。だからマミさんも僕達も簡単に死んじゃいけない。マミさんは幸せに生きなきゃならないんです。死んでしまったご両親の分まで…」

 

「お父さんと、お母さんの分まで…」

 

マミは考える余地が無かったとはいえ、両親の命を救わず自分の命だけを助けてしまった事を悔やんでいた。だが今となっては別の魔法少女の願いでもない限り蘇らせることは出来ない。ならば今こうして生きている自分は何かを成し遂げなければならない。だからこそマミは街の人々を守る正義の魔法少女として振る舞っていたのだった。

 

「僕達にとってマミさんは本当に大切な友達なんです。人間とか魔法少女とか、そんなの関係ない。大切な友達であるマミさんを魔女にしたくない、死なせたくないと思うのはそんなにいけない事なんですか?」

 

「それは……」

 

信助の言葉にマミは反論できなかった。マミにとっても信助たちは孤独だった自分に安らぎを与えてくれる確かな存在だったのだから。

 

「僕たちはマミさん達を魔女にしたくない。マミさんも自分やほむらさん達を魔女にしたくない。皆でもっと楽しい日々を送りたい!僕たちの思いは同じなんです!だから一緒に探しましょう!絶対魔女にならない方法を!魔法少女が普通の女の子に戻れる方法を!僕たちで力を合わせて、絶望の運命と戦うんです!大切な人たちと、“生きる”時間を守る為に!」

 

「……!!」

 

信助の言葉にマミの心と瞳が震える。

 

「マミさんが挫けて立てなくなったら、その時は僕たちが手を伸ばして立たせてあげます。そして一緒に運命と戦ってあげます。僕等が力を合わせればどんな絶望だって乗り越えられるんです。僕たちは絶望なんかに負けません!絶望に打ち勝つその時まで!だから、一緒に頑張りましょう……僕達はマミさんを一人で悲しませたりしませんから……」

 

信助はニッコリと笑顔でそう言った。

 

「………」

 

自分を覆いかぶさるように見下ろす信助にマミは心の内を吐き出すようにゆっくりと息を吐き出す。そして自分の両肩を掴む信助に向けてゆらりと両手を伸ばした。

 

「「「――!」」」

 

一同に戦慄が走った。今の信助とマミの距離はほぼゼロ。この距離ならばどんな方法だろうと確実に信助を殺すことが出来る。今のこの状態ならば、魔法少女の握力で信助の首を絞めて絞殺することも可能だった。

 

「信助!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ ギュッ

 

 

 

「「「!」」」

 

しかし一同の戦慄は杞憂に終わった。

 

「……ひっく……ぐすっ…」

 

「!」

 

マミの手は信助の背中にまわり、抱えるように彼を抱き寄せたからだった。

 

「ごめん、な…さい…」

 

マミは泣いていた。信助を大事そうに抱えながら謝罪の言葉をこぼしていた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!」

 

「うん。マミさんは……ただ自分の苦しみを誰かに受け止めてほしかったんですよね……自分を止めて欲しかったんですよね…」

 

「……うん…!」

 

信助の優しげな問いかけにマミは泣きながら答えた。マミの流すその涙は、氷が溶けた後の水のように絶望によって凍り付いていた彼女の心が仲間達との絆によって本来の温かさを取り戻して流れた希望の雫だった。

 

「ごめんなさい、ごめん…なさい……ありがとう…信助君……」

 

「マミさん…」

 

信助は安心しきったように安らかに目を閉じた。それと同時にマミの変身と信助の化身アームドが解け、天馬達を拘束していたリボンも消滅し、解放された一同は安堵しながら優しく抱きしめあう二人を見守っていた。

 

「信助……カッコ良かったよ…」

 

「あ~あ。マミの奴、あんなに大泣きしやがって」

 

「まるで、本当の姉弟みたいですね…」

 

安心しきった天馬、杏子、葵がそれぞれ感想をこぼした。

 

「う……」

 

その時、ダメージが効いてきたのか信助が小さく唸り声を上げながらマミにもたれかかる。

 

「……信助君?信助君っ!?」

 

「っ!?―――信助っ!!」

 

一同は慌てて駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……うーん…」

 

「信助君!気が付いたのね!」

 

瞼を開けるとそこにはパアッと笑顔になったマミの顔があった。後頭部の柔らかい感触から自分は公園のベンチでマミに膝枕されていることが分かった。

 

「僕は、一体…」

 

「マミさんを止めた後、気絶しちゃったんだよ。マミさんとさやかさんが魔法で怪我を治してくれたけど、目を覚まさなくて心配したよ」

 

安堵した天馬が説明する。

 

「そうだったんだ……でもみんな無事で良かった…」

 

「それは俺達の台詞だよ。マミさんと信助の方こそどうなるかと思ったんだから」

 

「うん。でも、もう大丈夫だよ!」

 

そう言うと、信助はゆっくりと頭を起こしてベンチから足をぶら下げる。そして隣に座っているマミと顔を合わせると、

 

「えへへ」

 

「フフフ」

 

二人は仲のいい姉弟のようにお互い笑顔を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、本当にごめんなさい!私、どうかしてたわ…」

 

それから数分後、マミはさやかと全く同じように皆に頭を大きく下げていた。

 

「いいんですよ、マミさん。元々、マミさんがああなっちゃったのは勝手に絶望したあたしが魔女になっちゃったせいですし……」

 

「全くだぜ、カッコつけたがりの魔法少女ってのは、なんでめんどくせー奴ばっかなんだろな」

 

「なっ!?なんだとー!」

 

「あー!二人共ケンカはダメですよ!」

 

「「「あははは!」」」

 

弁明するさやかと呆れる杏子がケンカし、それを止めようとする信助に一同は愉快に笑い出した。マミもこうして全員で笑いあえることに心から喜び、安らぎを感じていた。

 

「さやかちゃんもマミさん達も……本当に無事で、よかっ……た…」

 

「!?まどかさん!」

 

まどかが安心しきった声で言った直後、突然後ろに倒れこむ。天馬が反射的に動き出した直後、ほむらが両腕で受け止める。そしてすぐに顔を覗き込むと、

 

「すう……すう…」

 

まどかは安らかな寝息を立てていた。

 

「………眠ってるわ。きっと気疲れしたのね」

 

「よかった…まどかさんまでどうかしたのかってびっくりしちゃいましたよ」

 

「ま、気持ちはわかるけどな」

 

「ずっとさやかさん達の事を心配してましたからね」

 

天馬が溜息を着きながら胸を撫で下ろし、水鳥と葵が言葉をつなげる。

 

「ありがとう、鹿目さん……私たちの為に……美樹さん、私たちもまだまだね」

 

「そうっすね……これからはまどかを安心させられる魔法少女にならなきゃ…」

 

自分達を気にかけてくれたまどかに感謝しながらも、自分達の弱さと愚行を改めて反省するマミとさやかであった。

 

「そういえば僕がマミさんを見つけたのはみんながさやかさんを助け出した後でしたけど、マミさんはそれまで一体どこに行ってたんですか?」

 

信助が尋ねるとマミは暗い顔をしながら目を閉じた。

 

「私はね……朝起きてすぐ…お父さんとお母さんのお墓に行ってたの…」

 

「マミさんの、両親の…」

 

「ええ…最期にお父さんたちに謝っておきたいと思ったの…せっかく生き残ったのに、何も意味も無かったことにしてごめんなさいって…」

 

マミはその時の事を思い出すようにポツポツと語る。事故から唯一生き残った自分が自ら命を絶とうとしたことはマミにとっても両親を裏切る行為だとわかっていた。それ故に無意識の内に両親の墓前に謝罪に出向いてしまったのだった。

 

「それからは色んな事を思い出しながら町をふらついていたわ。キュゥべえと共に過ごした事、佐倉さんと一緒に魔女退治をしていた時の事、あなた達と出会ってからの事、でもそれらは全て無に還ると思っていたけど……」

 

マミは目を開けて全員と目を合わせる。

 

「無に還るかどうかは私のこれからの生き方次第だってよくわかったわ。ううん、絶対に無に還しちゃいけないの」

 

マミは一同を安心させるようにいつもの優しげな笑顔を見せた。

 

「そうですか……じゃあ今度、マミさんのご両親のお墓参りに行ってもいいですか?今のマミさんは一人じゃないって伝えたいんです」

 

「あ、それは良いね!」

 

「どうせなら皆で行くぜよ!」

 

信助が遠慮がちに尋ねると、天馬や錦も賛同する。

 

「ええ、私も紹介したいの。お父さんとお母さんに……私の大切な友達を!」

 

マミも笑顔で了承した。たくさんの仲間たちの笑顔に囲まれながらマミは彼らを見渡す。

 

(私の役目……それは、私を支えてくれるこの子たちを守る事………一方的じゃなく、お互い支え合いながら生きていく。……お父さん、お母さん。私、生きるわ。だって私には……守りたい大切な人たちがこんなにもたくさんいるんだもの…)

 

マミは決意を新たに、自分が誇れるような生き方をすると亡き両親に固く誓ったのであった。

 

「とにかく、みんな無事だったんだ。終わり良ければ全て……」

 

 

 

「―――やれやれ、あのままマミが魔女になってくれれば良かったけどね」

 

 

 

「「「!?」」」

 

一件落着したと思った神童が言葉を続けようとした直後、突如聞こえてきた声に振り向くとそこにはマミのジェムの浄化に使ったグリーフシードを背中から体内に入れて処分するあの白い悪魔がいた。

 

「キュ、キュゥべえ!?」

 

「おっ、コイツがキュゥべえか!こんな無害そうな格好でよくもやってくれたのう!」

 

他の雷門のメンバー同様キュゥべえの姿が見えている錦は怒声を上げるが、天馬は困惑していた。自分の記憶が間違っていなければキュゥべえは昨晩、自分の目の前でほむらに射殺されたはずだった。

 

「あ、あれ?目の錯覚かな……何か白いものがぼやけて見えるような……」

 

「わ、私もですわ……これは一体」

 

恭介と仁美がキュゥべえのいる方に向けて目をこする。

 

「恭介、仁美!?まさか……」

 

「これは予想外だ。どうやら僕の姿がぼやけて見えるみたいだね。魔法少女と魔女に関わっただけならこうはならない。おそらくそれらと僕を認識し関わりを持った異世界人と深く触れ合った事で僕の姿が認識できるようになってきたんだろう。せっかくだから見えるようにしてあげるよ」

 

キュゥべえが身体に力を込め、魔法少女を誕生させる時のものに似た光を放つと恭介と仁美の目にはっきりとキュゥべえの姿が見え始めた。

 

「――!こ、これは…!?」

 

「これが、キュゥべえ…!」

 

恭介と仁美は全ての元凶であるキュゥべえの姿をはっきりと視認し目を丸くする。

 

「ふむ、志筑仁美。今の影響で君の因果律が高くなったようだ」

 

「…え?」

 

「因果律?」

 

仁美は突然キュゥべえに関心を持たれ、天馬達は『因果律』という言葉に疑問を持つ。

 

「でもまだ魔法少女になれるほどではないみたいだね。僕としては新たな魔法少女を誕生させたかったのに残念だよ」

 

「っ!?」

 

「てめえ!この期に及んでまだそんなことを!」

 

「仁美を魔法少女になんか絶対させないよ!」

 

自分を魔法少女にしようとしたキュゥべえの言動に困惑する仁美を庇うように杏子とさやかが前に出る。

 

「でもどうして!?君はほむらさんに銃で撃たれて死んだはずじゃ…」

 

「何だって!?確かなのか!?」

 

「は、はい…」

 

神童が驚きながら天馬に確認する。

 

「じゃあ…今、目の前にいるコイツは…」

 

剣城が自分達の目の前に立って動いているキュゥべえを目で指す。死んだはずの者がどうして目の前にいるのか天馬達には皆目見当つかなかった。

 

「西園信助。まだグリーフシードが残ってたはず。私と佐倉杏子のジェムを浄化してくれる?」

 

「何?」

 

「え?あ、はい」

 

ほむらから頼まれ、信助はポケットから最後のグリーフシードを取り出して杏子とほむらのジェムの穢れを全て取り除く。これでこの場に居る全ての魔法少女のジェムは浄化されたことになる。

 

「そのグリーフシードはもう限界みたいだね。僕が処分してあげるから投げてよ」

 

「………」

 

信助はしかめっ面をしながら黙ってキュゥべえにグリーフシードを放るとグリーフシードはキュゥべえの背中に飲み込まれていった。

 

「キュップイ」

 

「ご苦労様キュゥべえ。ついでにこれもどうぞ」

 

まどかを片手で支えているほむらが無表情でそう言うとチャカ、ともう片方の手で拳銃をキュゥべえに向ける。

 

「「「え…?」」」

 

次の瞬間、ほむらはキュゥべえの身体に銃弾を数発撃ちこんだ。背中だけでなく体のあちこちに銃弾を撃ち込まれたキュゥべえはその場で倒れこみ、そのまま動かなくなってしまった。

 

「ほ、ほむらさん!?」

 

「暁美さん!?な、なんで…!?」

 

天馬達はほむらの唐突な凶行に度肝を抜かれ、マミも全ての元凶とはいえ、ずっと自分と一緒だったキュゥべえをいきなり射殺したことに戸惑う。

 

「いえ、よく見てて」

 

「え?」

 

 

 

「―――やれやれ、代わりはいくらでもいるんだけどむやみに潰されるのは良くないな」

 

 

 

「「「!?」」」

 

天馬達が横に振り向くとそこには無傷のキュゥべえがいた。しかし、前には確かにほむらが射殺したキュゥべえの亡骸があった。

 

「なっ…!?キュゥべえが、二匹…!?」

 

天馬は目の前の死骸のキュゥべえとこちらに歩み寄るもう一匹のキュゥべえを交互に見やる。

 

「君たち人間はどうして意味も無い事をやりたがるのかな」

 

キュゥべえはもう一匹のキュゥべえの死骸にたどり着くと何事も無かったようにその死骸を貪り始めた。

 

「げっ!?コイツ共食いしてやがる!」

 

「全然かわいくない…」

 

水鳥と茜は自分と同じ姿をした生物を喰らっているキュゥべえの姿に嫌悪感を露わにする。その奇怪な光景に他の面々もドン引きしていた。

 

「こいつらは一つの意識を共有している生命体。一体殺してもすぐに同じ意識を持った個体が現れる。変わりはいくらでもいるってことよ」

 

「ゴキブリみてーな奴だったのか……色は白いけど、厄介さは同格って事かよ」

 

「酷い言われようだなあ。僕達は無駄に残ってしまう肉体を効率よく処分しているだけだよ」

 

ほむらだけは顔色一つ変えずに説明を続け、杏子がぼやく間にキュゥべえは死骸を食べ終わり、キュップイと独特のゲップを済ます。

 

「それにしても、まさか美樹さやかを魔法少女に戻すとはね。さすがに僕も予想外だったよ。君たち異世界人にはホント驚かされる事ばかりだね」

 

「アンタ、よくもヌケヌケと…」

 

全ての元凶を作ったにも関わらず、まるでショーを観た観客のような口ぶりで語るキュゥべえにさやかは唇を尖らす。

 

「でも僕としては嬉しい方だね。君達にはますます期待してしまうよ」

 

「…?」

 

キュゥべえの言葉の意味が理解できず、天馬は仲間たちと共に疑問を抱く。

 

「キュゥべえ」

 

そんな中でマミが一歩前に出る。

 

「あなたは、私と出会った時からずっと一緒だった。この中の誰よりも」

 

マミは真剣な視線でキュゥべえを見つめる。キュゥべえも目をそらさずマミを見つめ、他の面々は全員二人に注目していた。

 

「一人ぼっちになってしまった私にとって、あなたの存在は大きかった。あなたは……確かに私の支えになってくれていた。皆と出会うまで」

 

マミは冷静に語りながら、目を閉じる。その瞼の裏ではそれまでキュゥべえと過ごした様々な出来事が甦っていた。

 

「いずれ魔女になる運命を背負わせたとはいえ、あなたは結果的に私の命を救ってくれた……そのおかげでここにいる皆とも友達になれた。だからその事だけは感謝してるわ。でも…」

 

ここでマミは沈んでいく夕日を背にしながら目を開けて告げた。

 

 

 

「―――キュゥべえ、今すぐ私の前から消えて」

 

 

 

ザアッと公園に吹く風が無表情のマミの髪を揺らした。

 

「あなたが私達を利用していたとわかった以上、あなたとこれまでどおりの関係ではいられないわ」

 

それはマミのけじめであった。今、目の前にいるのは絶望の運命を自分達に課せた元凶であるがマミにとっては長年の相棒でもある存在。しかし今の仲間達と共に運命を乗り越えるために、わずかに残っていた友好心を断ち切り決別するためにはっきりと宣言したのであった。

 

「……やれやれ、君からそう言われる日が来るとはね。仕方ない、とりあえずここは言われた通り引くことにするよ」

 

キュゥべえはその場から踵を返して立ち去った。

 

「………」

 

終始その様子を見守っていた一同は悲しげな空気に包まれていた。

 

「……マミさん…」

 

「いいの……今の私には、みんながいるもの…」

 

マミは天馬の質問のを理解したようにやさしくも悲しげな顔で振り返りながら言葉を返すのであった。

 

 

 

 

 

(まさか、巴マミの暴走すら止めてしまうなんてね………)

 

一方でまどかを抱きかかえるほむらは改めて雷門の心の強さに感心していた。

 

(キュゥべえじゃないけど、あなた達は何もかも予想外の出来事を私にもたらしてしまった、でも……

 

 

 

 

これで―――確信したわ)

 

ほむらは何かを決意したように表情を締め直す。

 

「とりあえず、今日のところはみんな帰りましょう。まどかもこのままにしておくわけにはいかないわ」

 

「そうですね」

 

「あっ、ヤバッ……あたし、帰ったら絶対怒られるわ…」

 

ほぼ二日間行方をくらましていたさやかは帰った時の両親の反応を予想して顔を青ざめる。

 

「大丈夫。僕も一緒に謝ってあげるから」

 

「俺も付き合おう」

 

「私もです」

 

「三人共…ありがとう…」

 

恭介がさやかを慰め、神童と仁美も一緒に謝罪することにした。三人から救いの手を差し伸べられたさやかはまるで仏に助けられたようにホッとする。

 

 

 

「そしてみんな……明日の放課後、私の家に来て」

 

「「「!」」」

 

ほむらの言葉に全員が反応する。

 

「ほむらさん…」

 

神童の呼びかけにほむらはその意味を理解するように頷く。

 

「魔法少女の真実を受け入れ、乗り越えたあなた達にはもう隠す必要は無い……明日、私の家に来て………

 

 

 

そこで…私の知ってる事を、全て話すわ…」

 

「………」

 

真剣な表情で招集を掛けるほむら。そんな彼女の思いを顔つきと共に気を引き締めることで受け止める天馬であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか天馬達がこんな事に巻き込まれてるなんてね…」

 

ほむらが召集を掛けているその時、物陰から二人の人物がその様子を見ていた。どうやら彼らはマミの暴走が収まってからの全ての出来事を見ていたようである。

 

「別の世界に迷い込んだとわかった時はヒヤヒヤしたが、彼らも無事でとりあえずは安心だ」

 

二人組の片方が天馬たちを見つめる。しかし、彼は普通なら言葉を発したら誰もが驚くような姿をしていた。

 

「でも、さすがにこれ以上の事は天馬達だけじゃ荷が重いよ。話の規模が大きすぎる」

 

一方でまだ天馬と変わらない歳の少年が年相応とは思えないような目つきでもう一人に告げる。

 

「どうする?」

 

「もちろんついて行くさ。どっちにしろ、このまま黙って見ているわけにはいかないよ」

 

少年は再び天馬たちを見ながら何かを決意したように呟いた。

 

「君の思い通りにはさせないよ……インキュベーター……」

 

 

 




――ED『やっぱ青春』――






~~おまけ~~



さやか
「ところでさ。信助ってかなり身長小さいよね」

信助
「え?それがどうかしたんですか?」

さやか
「さっきさ、マミさんが信助を思いっきり抱き締めてたじゃない。でも、マミさんのナイスバディを考えたらさ…」

先ほどの状況を思い出してみよう。先ほどまでマミは信助を抱き締めていた。信助の顔が自分の顔の隣に来るぐらいに。さきほどさやかが言ったように信助の身長は小学生と思われるほど低い。その上でマミは信助を抱き締めていた。それはつまり、信助の体の前面のほぼ全域が、マミの、豊満な胸に―――

「「………」」



((ボンッ!!///))




次回予告

天馬
「長かった絶望の一日を終えた俺達はほむらさんの家に招かれる。そこで衝撃の真実が次々と明らかに!!」

次回!

『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第14話『魔法少女 暁美ほむら』!」


というわけで小さなゴールキーパーが勝ちました。
ちょっとご都合主義でしたかね。

さて次回はいよいよほむらがカミングアウトします。
真実の扉を開く天馬達が行きつく先とは……。

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