魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~ 作:サニーブライト
前話からずっとみんな同じ場所で喋らせるだけでしたから書き方に苦労しました。(作者の技量の問題だろ)
最後のCパートはこの小説を読んでいる皆様もちゃんと見たかったであろう場面を描きます。
最後まで読み逃しなく!
それではどうぞ!
「まどか…!?何故、あなたが…!?」
ほむらは信じられないものを見たように驚く。この会議のことはまどかには秘密にしていたはずなのに。
「我々が君たちを見つけた時、彼女は既に君たちの後をつけていたんだ。そしてドアの前で聞き耳を立てていたところを接触し、そのまま待ってもらっていたんだ。ほむらには悪いが、彼女がいては話を聞けないと思ってな」
ワンダバがこうなることを予測、というより覚悟していたかのような冷静な声で説明した。
「つまり、最初から…!?」
「うん……聞いてたの……ワルプルギスのことも、ほむらちゃんのことも…」
まどかのその一言が弾かれたようにほむらの瞳を震わす。まどかは懺悔するかのように胸の前で軽く握った手をもう片方の手で包み込むとそのまま歩き出し、ほむらの前に立つ。
「まど…か…」
「ほむらちゃん、ごめんなさい……わたし、キュゥベえから魔法少女の話を聞いた後、いてもいられなくなって……そしたらみんながほむらちゃんの家に向かっているのを見かけたの……盗み聞きするつもりは無かったんだけど、わたしだけ呼ばれなかったことが気になって………」
「いいえ……あなたが謝る必要はないわ……呼ばなかった私が悪いのだから……」
ほむらは床に両手と膝を着けたまま、下を向いて長い髪を無造作に垂らす。その姿はまどかに対し、逆に詫びているかのようだった。
「ほむらちゃん、どうしてわたしのことをあんなに気にかけてくれてたのかわからなかったけど、全部わたしの為だったんだね………」
「……ええ」
「でも、そのせいでほむらちゃんは、わたしのために苦しみ続けることになっちゃった……」
「…っ!違うわまどか!あなたのせいじゃない!」
自責するまどかにほむらは弾けたように顔を上げて叫び出す。
「あなたは何も悪くない!こうなったのはすべて私自身のせい…私はあなたを助けたい一心で何度も時間を繰り返した。その過程での苦しみなんて、いわば自業自得……それどころか、そのせいであなたはキュゥベえに狙われやすくなってしまった…!苦しませてしまったのは、むしろ私のほうなのよ…」
「ほむらちゃん……」
自分を責めないでほしい。そう言ってるように感じ取れたまどかはそれ以上の自責の言葉を吐くことが出来なくなった。その代わり、痛々しい空気が彼女たちの心を締め付け、黙って見守っていた天馬たちも唇を結んだ。それでもまどかは勇気を振り絞って言葉を続ける。
「……一つだけ聞かせて……どうしてわたしには話したくなかったの?」
「………あなたは優しすぎる……私の事情を知ったら、私の為に魔法少女になってしまうかもしれない……そう考えたら、話すことが出来なかったの……」
ほむらは視線を再び床に向けて申し訳なさそうに呟く。まどかは何となくその答えが返ってくることが分かっていたように悲しげな表情を浮かべていた。
「怖かった……どんなに順調に進んでる時間軸でも、あなたが魔法少女になってしまったら意味を成さなくなってしまう……特に今回は誰も死なずにここまで来ることが出来た……それが、あなたが魔法少女になることで全て壊れてしまうのが怖かった……あなたが魔法少女になることが怖かったの……」
気づけばほむらの両眼からは涙があふれていた。
「それだけじゃない……本当に怖いのは、あなたと共に未来を歩める可能性を完全に失うことなの……このままワルプルギスが来るのを待ったら、もう二度と失敗は許されなくなる…!その時すべてを失うのが怖いの…!」
ほむらはその胸中の不安と恐怖を涙と共に床にぶちまける。
「私、どうすればいいかわからないの……せっかくここまで上手くいってるのに…!ようやく大切なことに気づけたのに!今回失敗したらもう二度とやり直せない……かと言って、今やり直したらあなたの因果が更に溜まってしまう…!やり直しても、やり直さなくても!あなたを不幸にしてしまう!私はただ、まどかをまどかのままでいてほしいだけなのに…!まどかと未来を歩みたいだけなのにっ!どうしてそれが叶えられないの!?どうすればまどかを救えるの!?誰か、誰か教えてよ…!うっ、うう…うぅ…!」
「ほむらちゃん…」
誰に向けられているのかわからないほむらの慟哭が無機質な部屋に響き渡り、まどかも目元から涙が滲みだす。
「ほむらさん…」
彼女の惨めな姿と嘆きが天馬の身体を泥や土で固められたような感覚に陥りさせ、掛ける言葉を失わせていた。
「な~~にを悩んどるんじゃ!」
「「え?」」
その時、どこからか年老いた老人のような声が聞こえた。天馬たちはその声に聞き覚えがあるのか周りを見渡し、ほむらたちも泣くのを忘れてキョロキョロするが姿は見あたらない。するとフェイの服の袖の中から何かが飛び出し、まどかたちもそれに気づいて目で追う。そしてそれが自分たちの頭上で止まり、その姿を視認すると、そこにはアルファベットの“C”の文字が埋め込まれている六角形の形をしたオレンジ色の石が浮いていた。
「お前さんは何もわかっとらんの」
「「「わあああっ!?」」」
「「「キャアアッ!?」」」
石から老人の声が飛び出し、ほむらたちは再び驚きの声を上げる。
「こ、これって…ソウルジェム?」
「でも飛んで喋るソウルジェムなんて聞いたことないわよ?」
「あー違う違う!ワシはソウルジェムじゃないわい!まあ、似たようなものだがな………」
老人口調の石は肩を竦めるように斜めに傾く。どうやらそのようにして自分の感情を表しているようだった。そして自身の向きを縦に直し、「ウオッホン!」と調子を整えるようにわざとらしく咳をした。
「ワシの名前は
「アレ、円堂って…」
「はい、大介さんは円堂守監督のお祖父さんなんです」
まどかが聞き覚えのある苗字だと気になり、天馬がすぐさま解説する。
「話は全て聞かせてもらった。ほむらといったな」
「は、はい」
「お前さんは何もわかっとらん。お前さんはようやく本当に大切なことに気づき、それまでの間違いを認めることが出来た。ならばこれからはその間違いを正し、たとえこの先どんな不安があろうと前に進むしかないじゃろ?いずれにせよ、そのワルプルギスとやらを倒さねば、その先の未来を歩めないことに変わりないではないか。今のお前さんは不安で未来への道が見えなくなっとるだけだ」
その瞬間、ほむらはハッと自分の成すべきことを思い出す。自分がこれまで時間を繰り返してきたのは、まどかを救い、彼女と共にワルプルギスを超えた未来を歩むためだった。そのために何度失敗しても、誰を犠牲にしても時間を繰り返した。たとえその間に幾つもの涙と命が落とされようとも。
「……今まではどんな最悪な結果を迎えようとやり直せばいいと思っていた……それが一番間違っていたけど、そう思っていたおかげで心に余裕を持てた……でも、もうやり直すことが出来なくなるかもしれないと思うと……失敗したときの不安で押しつぶされそうなのよ……」
ほむらは再び俯く。大介の説教はほむらも頭では理解していた。しかし絶望の未来に心が負けそうになっているほむらは昨日の無理心中を図ろうとしたマミのように不安を漏らしながら自分の体を抱く。すると、大介は「はぁ~」と、呆れるように息を吐く。
「やっぱりわかっておらんのう」
「え……?」
「やり直すことが出来なくなる?自分の人生がようやく本来の形に戻っただけじゃろ」
「本来の、形…?」
「よいか?人生というのは本来たった一度しかない。一生悔いが残ることがあっても、取り返しのつかないことを起こしても、やり直すことは出来んのだ。だからこそ人は一度きりしかない人生をわずかな希望を頼りに精一杯生きようとするのだ。その中で数えきれないほどの不安もある。絶対に避けられん問題もある。それらに怯えるのは仕方のないことだ。しかし、だからといってそれに
大介の意見にほむらはさらに思い出す。マミと杏子は家族を亡くしてしまった。だが彼女たちは自分のように時間を戻して家族が死なないように未来を変えることは出来ない。しかし、だからこそ生き残った彼女たちはそれぞれの思いを抱いて魔法少女として生きている。何度も同じ時間を繰り返して彼女たちを見てきたが、どんな末路を迎えようとも、懸命に生きようとするその姿だけはどの時間軸でも変わらなかった。そして松風天馬はこれまでどんなに絶望的なことが起きても、後悔したくないからと勇気を振り絞って絶望に立ち向かい、希望を掴み取っていった。
「だけど私は、何も変えられなかった…」
ほむらは三度顔を伏せて、今にも泣きそうな声で言った。
「何度やり直しても、何も変えられなかった…!まどかを救えず、最後は再び時間を戻すだけだった…!その度にまどかと生きる時間がずれていく…!まどかと同じ時間を生きられなくなる!何度関係を築いても、やり直したら私を知らない他人に戻ってしまう!誰にも理解されないまま、ただ一人時間の迷路を彷徨い続けている私が……一体どんな道を歩めるって言うのよ!!」
ほむらは叫びながら両手の平を床に叩き付けて涙を流す。大介に何と言われようが、自分は何度繰り返しても誰も救えなかった。いつも誰かを犠牲にして失敗し続けていたという経験が大介の言葉を拒ませていた。
「何を言っとる……周りをよく見ろ……ここにはもう、お前さんのことを知らぬ者など一人もおらんではないか」
大介のその言葉にほむらはハッと顔を上げ、ゆっくりと振り返る。そこには自分の話を聞くために集まり、最後まで聞いてくれた仲間たちがいた。天馬も、フェイも、まどかも、いや全員がほむらに微笑んだり、頷いたりしていた。大介の言うとおりだと言うように。
「みんな…!」
「お前さんが見えなくなっとるのは、未来への道だけではない。その道しるべとなる仲間たちの存在じゃ。確かに不安だらけの道のりをたった一人で歩める者はそうはいない。その途中で挫け、倒れてしまう者ばかりじゃろう。だが、今のお前さんは一人ではない。たとえ何度挫けてしまっても、再び立たせ、背中を押してくれる仲間がいる。誰も救えない自分を変えてくれる者たちがいる。その時点でお前さんは既に彼らと同じ時間を歩んでいるのだぞ」
ほむらは思い出す。これだけの人数をこの場に揃えることが出来たのは、異世界から来た雷門のおかげだと。自分たちに大切なことを教え、共に苦難を乗り越えたことによって自分を含めた全員を成長させたからだったと改めて再確認する。
「暁美さん…」
「巴マミ…」
ほむらは立ち上がって体をマミに向ける。
「私もつい最近まで一人ぼっちだった。でも私の苦しみを知ろうとしてくれる人たちが現れて、私に安らぎをもたらしてくれた。そのおかげで私は自分を支えてくれるみんなを守りたいと思える自分になれた。まだ最初の一歩ぐらいだろうけど、前より強い自分になれたような気がするの。もうあなたも、そんな風に変わり始めてるのよ」
マミは自分の思いを混ぜながら論ずる。自分の心の闇を受け入れたその姿はこの世界で最初に天馬たちを助けた時以上の力強さを感じさせるものがあった。
「あたしもだよ!」
「美樹さやか…」
「ほむら……あたし、もっと強くなりたい!力はマミさんたちみたく、心は天馬たちみたく!もう二度と魔女にならないくらい……ここにいるみんなを守れるくらい強くなりたい!みんなが救ってくれたこの命を、みんなを守るために使いたい!あんたがあたしの大事な親友のまどかを守りたいって言うなら、あたしも全力で協力するよ!」
「さやかちゃん…!」
さやかは胸に手を当てて宣言し、まどかも明らかに以前より心が成長したさやかが心強く見えた。
「そういうこったな」
「佐倉杏子…」
「あたしもアンタもすっかりこいつらに感化されちまったってわけさ。“朱に交われば赤くなる”ってやつかな?おかげであたしもなんだか昔に戻っちまった気がするよ。ま、悪い気はしないさ。こいつらとこれからもバカ騒ぎするのもね」
杏子はそう言うと、いつもと同じ、あの八重歯を出した笑顔をほむらに向けた。
「僕もだよ」
「上条恭介…」
「僕は他のみんなと違って戦うことは出来ないけど、事情を知った立場として出来る限りのことはするよ」
「私も……皆さんのお役に立ちたいんです。ですから私が出来ることがあったら何でも言ってください。協力は決して惜しみません!」
「志筑仁美…」
「僕たちも思いは同じです!」
「俺たちも、もう他人事じゃないからな」
「なんにせよ、やるしかありませんからね」
「大船に乗った気でいるぜよ!」
「僕たちが力を合わせれば怖いものなしさ!」
「私たちも雷門だけじゃなく、みんなのマネージャーとして頑張ります!」
「頼りにしとけよ!」
「私、頑張る!」
「この大監督、クラーク・ワンダバット様の見せどころだ!」
信助、神童、剣城、錦、フェイ、葵、水鳥、茜、ワンダバ。雷門のメンバーも誰もが一切の迷いも不安もなく、屈託のない笑顔で胸を張り、共に絶望を乗り越える決意を露わにしていた。
「みんな…!」
「ほむらさん」
「松風天馬…!」
「ほむらさんは自分は何も変えられないって言ってましたよね。でも、みんなほむらさんの話を聞いて、これからの戦いに向けて更に気合が入りました!これはほむらさんのおかげなんですよ!」
「私の、おかげ…?」
「そう!ほむらさんが自分のことを打ち明けてくれたおかげで俺たちの絆がさらに高まったんです!ほむらさんが俺たちの時空を超えた絆をより強く、より堅いものにしたんです!だからほむらさんも絶対に変われます!誰かを救える強い自分に!俺たちみんなが力を合わせて強くなれば、希望の未来は必ず掴みとれるんです!」
「……!」
ほむらは天馬の言葉を心の中で何度も噛みしめる。自分たちの苦しみを受け止め、何度も苦難を乗り越えてきた天馬と雷門、そして彼らの影響を受けて強くなったマミたちを見て、ほむらは自分の心が憑き物が落ちたようにスッと軽くなっていく感覚を覚えた。
「ほむらちゃん…」
「まどか…!」
そして最後は自身の願いの原点であるまどかがほむらの前に立つ。
「ほむらちゃん……わたしがここに来たのはね、やっぱりほむらちゃんのことをちゃんと知りたかったからなの。それでほむらちゃんのお話を聞いて、言いたいことが出来たんだ」
「言いたい、こと?」
「そう……」
「!」
するとまどかは目を閉じながら包み込むようにほむらを抱きしめた。そして微笑みながらほむらの顔の隣でささやく。
「わたし、あなたを守りたい。一人ぼっちの寂しさから」
「……!」
ほむらの目が見開く。
「ほむらちゃん一人につらい思いをさせたくない。それはもちろん、わたしを守ってくれたことへの感謝と、時間の迷路に閉じ込めちゃった責任感もあるよ。ほむらちゃんは、わたしに責任と感謝を混同しちゃいけないって言ってたけど、そういうのも全部ひっくるめてほむらちゃんを支えたいの」
「まど…か…」
「ほむらちゃん。ちょっと前までのわたしだったら、あなたを支えるために魔法少女になってたかもしれない。でも、今は違う。わたしは魔法少女にはならないよ。それは戦うことが怖いからじゃない、そんなこと誰も望んでないってわかってるから。そんなことしなくても、こんなわたしでも出来ることがあるってわかったから」
「え……?」
「……わたしはこれといって得意なことも無くて、鈍くさくて何にも出来ないって思っていたから、魔法少女になれば誰かを助けられると思っていたの。でも、天馬くんたちが教えてくれたの。大事なのは助けたいって気持ちなんだって。その形は、なにも魔法少女じゃなくてもいいんだって」
ここでまどかは一度ほむらから離れ、少しだけ視線を下に移す。
「わたし、魔女と勇敢に戦うマミさんたちやすごいサッカーが出来る天馬くんたちが本当にすごい人たちだって思った。わたしなんかよりずっと前を歩いてて、魔法少女にでもならなきゃとても追いつけないんじゃないかって思ってた」
「でも…」と、まどかは言葉をつなげると天馬の方に振り向く。
「天馬くんは、いつもわたしたちの隣で一緒に歩いていたの。いつも誰かの苦しみと向き合おうとしてくれてたの。だからわたしは天馬くんが誰よりすごいって思えたし、だからこそ雷門のキャプテンになれたんだってわかったの」
「まどかさん…」
天馬は嬉しそうに微笑み、彼以外の全員がまどかの意見に同意する。苦しむ仲間を勇気づけ、支えようとする天馬の姿勢は雷門全員に影響を与え、彼の影響を受けた信助、神童、剣城がそれぞれ、マミ、さやか、杏子の苦しみと向き合った。その結果、彼女たちはもちろん、それを通じて恭介や仁美、そしてまどかやほむらにまで影響を及ぼし、その心を成長させたのであった。そしてまどかは視線をほむらに戻す。
「そしてそれは、魔法少女にならなくても出来ることだってわかったの。誰かの苦しみを受け止めて、その人と一緒に強くなればいいんだって。魔法少女じゃなくても、ほむらちゃんと並んで歩くのはそんなに難しいことかな?」
「それ…は…」
(―――やったね!ほむらちゃん!)
まどかの力強い微笑みにほむらは言葉を失う。今のまどかの微笑みはかつて自分を助け、魔法少女になったばかりの自分に向けていた時と同じ、陽だまりのように暖かいものだった。その笑顔に何度も救われていたほむらは足の力が抜けてしまい、その場にへたり込む。まどかは彼女に続くように膝立ちになり、再びほむらを抱きしめて目を閉じる。
「ほむらちゃん。あなたがこれまでどんなにつらい思いをしてきたか、わたしはその全部をわかってあげることは出来ない。でも、この世界は違うんだよ?わたしも、マミさんもさやかちゃんも杏子ちゃんも、みんな生きてる。魔法少女とは関わりなかった上条くんや仁美ちゃん、そして天馬くんたちも、みんなほむらちゃんのお話を聞いて、そのつらい気持ちを受け入れて、一緒に戦おうとしてくれてるんだよ?今のほむらちゃんは一人じゃない。もう一人で時間の迷路を彷徨う必要なんて無いんだよ?」
「……!」
ほむらの両眼から大粒の涙が溢れだす。
「だから一人で抱え込まないで、一緒に頑張ろうよ……わたしはほむらちゃんの友達でいたいし、ほむらちゃんと一緒に未来を歩きたいから……」
そう言うとまどかはほむらをぎゅっと少しだけ強く抱きしめる。自分の身体と心の熱で彼女を暖めるかのように。
「う、あ、あぁ…」
まどかの言葉が、ほむらの心の最後の壁を壊した。もうほむらは溢れだす感情を抑えることが出来なかった。
「まどか……まどかぁっ!!!」
ほむらは津波のように両手を広げてまどかを抱きしめる。まどかは逃げることなく穏やかな表情のまま、慰めるようにほむらの背中を撫でていた。
「ほむらちゃん……今まで一人でよく頑張ったね……でも、これからはわたしたちがいるから……わたしたちみんなが、ほむらちゃんを支えるから……」
「う、うぅ…!うう…!」
ほむらはただひたすら泣き続ける。張り詰めていた心がほどけていくように、恥も外聞も捨てて泣き続けていた。
「まどか……みんな……
ありがとう…!」
ほむらはたまらず、無意識にそう言った。天馬たちは少しだけ驚きつつも、すぐに顔を
「落ち着いた?ほむらちゃん」
数分後、ようやくほむらも泣き止み、いつもの平静さを取り戻していた。
「ええ……少し恥ずかしいところを見せちゃったわね」
「そんなことないよ。むしろわたしは嬉しかったよ。だって……やっと本当のほむらちゃんが見れたから」
まどかはニコッとほむらに笑顔を向けた。ほむらにはその笑顔が自分と本当の友達になれて嬉しいという思いが込められているように感じられた。
「まどか…」
「しかし、今回の話し合いでも分からないことが残ってしまったな」
「え?」
突如口を開いたのは神童だった。
「このマギカボールと指輪の事さ。ほむらさんの話を聞く限り、関連性は無いみたいだからな」
神童は自分のマギカボールが入った袋を見せながら葵たちの指輪に目を向ける。
「確かに。じゃあ、あの時俺にこのボールを託したのは一体誰なんだろう…?それにどうして俺にだけ直にこのボールを…?」
天馬も自分のボール袋を見つめながら首をかしげる。自分たちにマギカボールを与え、そしておそらく葵たちにも指輪を与えたであろう人物は一体何者なのか。キュゥベえでもほむらでも解明できなかったことに一同の頭を悩ます。
「でもこのボールがあったから、僕たちはここまでやれたんだよね」
「そうだね。俺たちのサッカーでみんなを助けられたんだ!きっとこれをくれたあの人も…!」
喜ぶ、と言いかけたところで天馬は思い出す。あの少女の言葉を。
(わたしたちを救って…!)
「そっか…!そういうことだったんだ!」
「天馬?」
「俺、ずっと気になってたんです!俺にこのボールを託した人が言ってました!わたしたちを救って欲しいって!あの人は一体誰なのか、誰を救って欲しかったのかわからなかったけど、ここへ来てようやくわかったんです!」
天馬はパアッと道が開けたように笑顔になり、袋からボールを取り出して高く掲げる。
「あの人が救ってほしかったのは………ほむらさんたち、魔法少女のことだったんだ!!!」
「魔法少女を、救う…!?」
ほむらが驚きつつも、心のどこかで納得していた。確かに今の彼らの持つ力は魔女と戦い、魔女を魔法少女に戻すという魔法少女のための力。それだけで天馬の結論には説得力があった。
「じゃあ、僕たちにマギカボールをくれた人も魔法少女だってこと!?」
「そこまではわからないけど……でも信助。俺、決めたよ!」
「え?」
天馬はマギカボールを胸元まで下げながら信助に顔を向けた。
「この世界に―――“カゼ”を起こそう!」
「天馬!」
天馬の“カゼ”という言葉に信助は高揚する。
「そうだな!」
「やるか!」
「ここまで来たらやるしかないよね!」
他の雷門のメンバーたちもそれぞれ同意の声を上げた。
「カゼ…?」
“カゼ”の意味を知らないまどかたちは怪訝な顔をする。すると葵が説明し出す。
「以前神童先輩が少し話しましたが、私たちの世界のサッカーはかつてある組織に支配され、誰もが楽しめないサッカーを強いられていました。でも私たちは楽しいサッカーを……本当のサッカーを取り戻すために、天馬を中心として革命を起こしました。それが“カゼ”!みんなの笑顔を取り戻す為に掲げた……革命という名のカゼなんです!」
「革命という名の、カゼ……」
「なんかカッコイイじゃん!」
マミが自分の心に響かせるように呟き、さやかもその言葉の響きに興奮気味になる。
「魔法少女を絶望の運命から助け出す!それがこのボールをくれたあの人の願いで、この世界のカゼなんです!」
天馬は目標が決まったことを喜ぶかのように再びボールを高く上げる。
「おお!なんかテンション上がってきたぜよ!」
「で、具体的にはどうすんだ?」
杏子のその一言で天馬たちは機械のように一斉に動きを止めた。
「え、え~と…」
天馬は一筋の汗を流してどもってしまった。
「おい……まさか何の策も無しに、『魔法少女を救う』なんてそんな大層なことほざいたのか?」
「あ、あははは…」
「はぁ……ちょっとでも期待したあたしがバカだったよ…」
苦笑いする天馬に杏子は呆れてしまう。
「いや、僕たちがこの世界に来た時点でその方向に向かってると考えた方がいい」
「フェイ?」
「天馬、話から察するに僕たちをこの世界に送り込んだのも、マギカボールと指輪をくれた人ってことだよね」
「う、うん」
「僕たちはこの世界に送り込まれ、マミさんたち魔法少女や、まどかさんを救うため、最強の魔女ワルプルギスと何度も戦っているほむらさんと出会い、彼女たちの戦いに関わった。これはとても偶然とは思えないよ」
「あの人が意図的に俺たちをこの街に送り込んだってこと?」
「確かにあなたたちは、私たちの運命を大きく変えたわ。まるであなたたちがそうするためにこの街に現れたかのように…」
天馬の推測にほむらも同意する。
「そう、そして僕たちがこの世界にイレギュラーな存在として送り込まれたことでこの世界の魔女に影響を与えた。上条さんと仁美さんがキュゥベえを視認できるようになったのはその余波。しかし何よりも影響を受けたのはワルプルギスで、本来よりも大きく遅れることになった。だけど、こう言っちゃほむらさんに悪いけど、逆を言えば僕たちにとってその方が都合がよかったのかもしれない」
「どうして?」
まどかが尋ねる。
「本来ワルプルギスが来るはずだったのは2、3週間後だった。でも僕たち雷門のメンバーは今の時点でもまだ全員揃っていない。いざワルプルギスと戦う本来の時期までに残りのメンバー全員が揃うという保証もない。だからワルプルギスが来るのが遅くなったというのは、それだけワルプルギスと戦う準備期間が延びたということになる」
「な、なるほど」
「そしてそんな風に最強の魔女とはいえ、ワルプルギスだけがそこまでの影響を受けたことも偶然とは思えないんだ」
「何にせよ、俺たちがすべての真実を知り、魔法少女を救うにはワルプルギスを倒した先にある。ということか」
「そういうことだね」
神童の結論にフェイは相槌を打つ。
「でも、みんな本当にいいの?あなたたちの目的は元の世界に帰ることじゃなかったの?」
マミが本来の目的を捨ててしまいそうな天馬たちの勢いに不安がる。
「もちろん忘れてませんよ。でも俺たちももう無関係じゃありませんし、ほむらさんにも言いましたけど事情を知った以上、助けてあげたい気持ちに嘘はつきたくないんです。そうだよね、みんな!」
天馬の呼びかけに雷門の全員が力強く頷いた。
「あなたたち…」
「それに元の世界に帰る方法もまだわかってませんし、まだ他のみんなも見つかってませんしね」
「けどあんたたち、もしメンバーが全員揃ったとしても、みんなまとめてマミさん家に厄介になるつもり?」
さやかが雷門の衣食住について尋ねる。
「確かに……佐倉さんも招いちゃったし、これ以上増えるとなると家が狭くなってしまうわね…」
マミが頬に手を添えて頭を抱える。
「だったら、私の財閥の管轄の施設を紹介すれば……」
「無理よ。彼らにはこの世界での身分を証明するものが無い。いずれボロが出るわ」
「うぅ…」
ほむらが仁美の案をバッサリ却下する。
「メンバーの内、半分を私の家で過ごすとしても、さすがに一人暮らしの女子中学生の家に複数の男子が寝泊まりしては目立ちすぎるわ。メンバーが更に増えることも考えると尚更だわ」
「確かに……実は俺たちも、いつまでもマミさん家に世話になり続けるのも良くないかなって思ってたんですよね」
的を射たほむらの考えに天馬は申し訳なさそうに頭の後ろを掻きながら悩む。彼らとてある程度の礼儀はわきまえている。食事はマミの家でも行なうとしても、せめて自分たち男子だけの寝床は確保すべきだと思った。しかし、自分たちはこの世界の住人ではない中学生。そう都合のいい寝床など確保できるとは思えなかった。
「それなら大丈夫だよ」
「え?」
何故かフェイが軽くそう言った。どうやら何か根拠がありそうだった。
「みんな、ちょっとついてきてもらえるかな?」
~~河川敷~~
フェイに連れられ、一同がやって来たのは河川敷だった。日没が近いせいか川の水面が赤く光っている。そしてフェイは車が通る陸橋の下で足を止めた。それに合わせるように天馬が尋ねる。
「河川敷に何があるの?」
「実は僕とワンダバは昨日ここに飛ばされていたんだけど、僕たちのそばにあったのはマギカボールだけじゃなかったんだ」
「というと?」
「まあ見てて、みんな驚くと思うから。ワンダバ!準備はいい?」
「おう!準備はオーケーだ!」
合図を送るフェイにワンダバは相槌を打つと、どこからか真ん中に大きな赤いボタンが着いたリモコンを取り出す。
「ワンダバスイッチ、オン!」
橋の下の影になってる部分に向けてボタンを押すと、そこから何か大きなものが出現した。
「あっ!これって…!」
それは多くの人数を乗せられるであろうイナズマのマーク入りの青い流形型のバスだった。
「
「TMキャラバン?」
「イナズマタイムマシンキャラバン、通称TMキャラバンだ。私たちが時空を超えるために活用しているタイムマシンだ!」
「タイムマシン!?これが!?」
「見た目は普通のバスみたいだけど?」
さやかとまどかがバスを指さす。
「ああ、かつて雷門で作られたイナズマキャラバンバスを参考に私が設計したのだ」
ワンダバが自慢するように「えっへん」と威張りながら説明する。
「これでいつでも僕たちの世界に帰れるんだね!」
まず自分たちの最終目標が解決したことに喜ぶ信助。
「いや、残念ながらこの世界に来た影響で一部が故障してしまったらしくてな。今は普通のバスとしてでしか使えんのだ」
「ありゃ?」
「だが、中で寝泊まりは出来るし、陸地でなら魔女を探して遠くまで行くことも出来るぞ。このキャラバンバスが、我々の前線基地になるのだ!」
「おお!なんか本格的じゃん!」
ワンダバが士気を高めんと拳を突き上げ、さやかも乗り気で気合を入れる。
「みんな」
一番後ろにいたほむらが突如呼びかけ、全員が振り向く。ほむらは何かを決意したように真剣な表情をしていた。
「みんなのおかげで、私も覚悟を決めたわ。―――もう時間を戻さないと」
「!!!」
ほむらの鋭い眼光を研ぎ澄ましながらの決意に全員が震える。
「本気か…?」
「ええ。何にせよ、これ以上まどかの素質を高めるわけにはいかないわ」
水鳥の問いに迷うことなく頷くほむら。そしてその真剣な表情を保ったまま目を閉じた。
「これが私にとっても最後のチャンスにするわ。何としてもまどかを守りきり、まどかと……みんなと一緒に未来を歩みたい。だから……」
ここでほむらは目を開けて仲間たちに視線を向ける。
「巴さん…」
「!」
「さやか…」
「!」
「杏子…」
「!」
「仁美、上条くん…」
「「!」」
ほむらは一人一人視線を合わせながら仲間たちの名を呼んでいく。
「剣城、信助、神童くん、錦くん…!葵、水鳥、茜…!フェイ、ワンダバ、大介さん…!」
そして最後はもちろん。
「まどか、
―――天馬!」
「「!」」
「私と一緒に、“カゼ”を起こしてくれる?」
胸に手を当てて問う。そして天馬たちはお互いを見合いながら無言で答えを確認し合い、頷く。その答えは既に決まっていた。
「もちろん!」
「ええ!」
「やるしかないね!」
「頑張りましょう!」
誰もが揺らぐことなく共に戦うと答えてくれた。ほむらはそんな仲間たちを嬉しく思い、「フフ…」と、笑顔を見せた。それは今までの仏頂面の口元が緩むようなものではなく、年相応の可愛らしい笑顔だった。
「あ!ほむらちゃん笑った!」
「え?」
「フフフ。暁美さんも笑うとちゃんと可愛いじゃない」
「あ……その…///」
不覚をとった、と一気に顔が真っ赤になるほむら。その恥ずかしそうに照れている姿がまどかたちにますます可愛いと思わせた。
「ほぉ~。普段は能面みたいな顔したあんたもそんな顔できたんだ~。いいもの見ちゃった!」
さやかは顎に手を添えながらまるで新しいおもちゃを得たこどものようないたずらな笑みを浮かべていた。
「そ、それよりも!これからワルプルギスと戦うための準備が必要でしょう!どうするべきかわかってるの!?」
ほむらは顔をそらし、先ほどの失態を振り切らんと大声で話を切り替えようとする。
「だったらやることは決まってます!」
「え?」
天馬が両手で拳を作りながら断言する。
「やることって、まだ見つかってない雷門の人たちを探すこと?でもまだ何の手掛かりも見つかってないんだよ?」
まどかが怪訝な顔をしながら天馬に尋ねる。
「もちろんそれも大事ですけど、今のままでも、みんながそろっても出来ることがあります!」
「それって…」
「特訓ですよ!これからの戦いに向けて、みんなで特訓して強くなるんです!」
「やっぱりそうなるか」
「でもそれが僕たち雷門ですよね!」
神童と信助が同意する。そして他の仲間たちも同様に納得していた。
「よーし、みんな!ワルプルギスに向けて、頑張るぞ!!!」
「「「おぉーーー!!!」」」
拳を空に突き上げて叫ぶ天馬に雷門のメンバーは全員拳を突き上げた。まどかたちも彼らのそんな姿を頼もしそうに見守っていた。
(戦える…!このチームなら、戦える…!私たちにカゼを起こした彼らとなら……きっとどんな絶望だって跳ね除けられる…!)
ほむらも、まどかを守るために捨ててしまったある思いを込めた眼差しを彼らに向けていた。
「ほむらちゃん」
「!まどか…」
まどかが横から顔を出して笑顔を向けた。
「これから……頑張ろうね!」
「……ええ!」
笑顔で語り掛けるまどかにほむらは力強く答えた。そして再び、士気を高める天馬たちに眼差しを向けた。そう―――
“信頼”という名の眼差しを。
(まどか、あなたを必ず守り抜いて見せるわ……決して一人ではなく……ここにいる最高の仲間たちと共に!)
ほむらは希望に満ち溢れた目でまどかを守るという決意を改めて固める。夕日で赤く染まった河川敷でそよ風が吹き、彼女の長い黒髪をなびかせていた。
「なるほど………こんなことが起きるのね………」
暗い部屋の一室で、豪華な造りの椅子に座りながら一致団結した天馬たちを
「とりあえず、この時までは様子を見ましょう。でも、もしこの時を迎えてもあの予知が見えるようであれば、その時は私自身の手で彼女を始末しなければならないわ………」
少女は今も見える光景の中で笑顔でほむらと並んで立つまどかの姿を捉える。そして椅子から立ち上がり、呟く。
「――――私の世界を、守るために」
――ED『HAJIKE-YO!!』(歌:空野葵)――
???
「フフフフフ!ようやく……ようやく私の出番が来たわ!この時が来るのをずっと待ってたわ!さあ、次回から私の活躍を読者の皆様にお見せし……」
あ、ごめん。ここまで盛り上げておいて申し訳ないけど次回は君の出番は無いよ?
「………え?」
次回予告
天馬
「ほむらさんとも分かり合え、俺たちは遂に一つになった!迫りくるワルプルギスに向けて、俺たちは特訓を始める!」
次回!
『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と
第16話『見滝原の特訓!』」
というわけで、ようやくほむらも本当の意味で天馬たちの仲間になれたのでした。
あ~長かった。
さてようやく話に一区切りつけられたので、そろそろこれまでのお話のうち4話までの台本形式とかそのほかキャラの初登場時での名前の振り仮名づけなど、直す必要があるなと思ったとこを直しておこうと思います。
ほむら
「また次回の投稿遅れるわね」
うっ…!
さてこのイナ☆マギ、先ほども言った通り一区切りを付けました。ここまではいわば、名づけるなら第1章『まどか☆マギカ』編………
そして次章より新展開!
人気のあのキャラこのキャラたちが続々登場!
まどかの命を狙う謎の白い魔法少女現る!
天馬たちは果たして、まどかを守り抜くことができるのか!?
次章より、『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』
第2章『おりこ☆マギカ』編スタート!
まだまだ文章下手くそですが、ご感想お待ちしております。