魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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ほむら
「おかえりなさい、駄作者。2ヶ月も更新しないからてっきり死んだのかと思ったわよ」

いや、あの…ごめんなさい。色々忙しかったし今回の話の文がなかなか思いつかなかったから。だからそのマグナム下ろしてください。ホントに死んじゃいますから。

マミ
「そうよ暁美さん。あまり作者さんを怯えさせちゃだめよ」

人を正座させたままリボンでグルグル巻きにした人のセリフじゃないですよね。

さやか・杏子
「「なんか言った?」」

すいません。だから左右から首筋にサーベルと槍の切っ先を当てないで。何これ、どっかの海賊王の処刑?

ほむら
「大丈夫よ、たとえあなたが死んでも駄作者王としてギネスブックに載るわ」

載らないよ!というか、んなアホな名前で歴史に名を残したくないよ!




というわけで(どんなわけだ)お待たせしました。

今回は本格的に新展開に入る前に日常的な話を書きたいと思ってオリジナルストーリーに挑戦してみました。そのネタと文章を考えていたらここまでかかってしまいました。申し訳ないです。

というわけで、わたくしサニーブライトによる、まどマギ&イナゴ勢の青春白書、どうぞお楽しみください。

はじまりはじまり。



―OP『情熱で胸アツ!』―


第16話『見滝原の特訓!』 Aパート

~~マミの部屋・早朝~~

 

 

 

チュンチュン

 

「ん……」

 

6時15分、スズメの鳴き声でマミは目を開けた。まだ頭がぼ~っとしながらもゆっくりと上半身を起こし、周りを見渡す。部屋は窓から入り込んだ陽光がカーテンによって抑えられ、穏やかな明るさを保っていた。マミは「う~ん……」と両腕を上に伸ばして体をほぐすと、ふう、と一息吐いて腕を下ろす。

 

「くか~、くか~」

 

ふと床に目を向けると敷かれた布団の上で静かないびきを立てている杏子がいた。

 

「佐倉さん……そっか、一緒に暮らし始めたのよね」

 

「むにゃむにゃ……」

 

マミは自分が貸したパジャマを着て安心しきったように寝ている杏子を可愛いと思いながらも制服に着替えた。

 

 

 

 

~~リビング~~

 

 

「ふあ~あ……」

 

マミは手を口元に当ててあくびをしながら朝食を作るためにキッチンへ向かう。

 

「あっ、マミさん。おはようございます!」

 

そこへ可愛らしい花柄のエプロンをつけた葵が元気に挨拶してきた。ハキハキした彼女の声が朝の始まりを告げるようだった。

 

「おはよう。あら、あなたたち……」

 

「はい。今、朝ご飯を作ってるところなんです」

 

「寝床を貸してもらってんだ、これぐらいしないとな」

 

「神サマたちもランニングが終わったら来る予定」

 

キッチンを見れば水鳥と茜も同じようにエプロンを着ていた。昨日の夕方、雷門の拠点であるTMキャラバンがフェイ、ワンダバと共に戻り、その後の相談の結果、天馬たち男子はキャラバンの中、葵たち女子はこれまで通りマミの家で寝泊まりし、食事を取るときだけマミの部屋に集まる、という話になったのである。

 

「ふあ~あ……ねみぃ…」

 

そこへ杏子がパジャマ姿のまま起きてくる。彼女もまだ眠気が残っているようでまぶたをこすっていた。

 

「あら、佐倉さんも起きてきたの?」

 

「ああ、何か美味そうな匂いがしてきたんで起きてきちまった」

 

「今、サンドイッチ作ってますから待っててくださいね」

 

「人数が多いからな。もうちょっとかかりそうだからお前も顔洗って着替えて来いよ」

 

「ん……わかった」

 

杏子は「ふあ~あ…」と、再び大きなあくびをしながら洗面所に向かった。

 

「空野さん、私も手伝うわ」

 

「いいですよ、マミさん。これはいつもお世話になってるお礼でもあるんですから。座って待っててください」

 

「期待してろよ。とびっきり美味いのを作ってやるからよ」

 

「水鳥ちゃんが切ったトマト、汁がすごい飛び散ってる」

 

「え?あ、いや、これはちょっと力入れすぎて失敗しただけで食えねえことは……」

 

「フフフ……」

 

マミは言われた通り、リビングの真ん中に置かれた三角形のローテーブルのそばに座る。そしてふとローテーブルに密着させたもう一つのテーブルに目をやる。それは天馬たちがやってきてから用意したものだった。広くなったテーブルからそのまま視線をずらし、キッチンで朝食を作る葵たちを見る。

 

(そういえば……こうして誰かにご飯を作ってもらうなんて久しぶりね……)

 

朝食の支度をする葵たちの姿に、今は亡き母の後ろ姿を思い出す。マミは両親を亡くした後、当然のごとく自炊を始めた。最初は失敗もあったが、以前より母から教わっていたこともあってすぐに慣れることが出来た。それ以来、日常的に誰かのために料理を作ることなど結婚するまで無いと思っていた。故に、雷門の面々に料理を振る舞うことも、ましてや誰かに朝食を作ってもらうことなど想像すらしていなかった。

 

「ただいまー!」

 

そんな風に感慨深くなっているうちにランニングを終えた天馬たちが帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

「「「いただきまーす!」」」

 

手洗いなどを済ませ、テーブルを囲むように全員が座る。そして全員で号令を行うと目の前の大皿に並べられた大量のサンドイッチに手を伸ばす。朝の活力にふさわしいその味わいに誰もが笑顔になる。

 

「あー!杏子さん、それ僕のサンドイッチですよ!」

 

「いーじゃねーかちょっとぐらい!」

 

「もう、まだいっぱいあるんだから二人ともケンカしないの!」

 

信助と杏子がギャーギャーとサンドイッチを取り合い、マミがなだめる。よく食べる二人に世話を焼くマミの顔は呆れながらも何処か笑っているようだった。

 

「マミさん、なんだか楽しそうですね」

 

「弟と妹が出来た気分だろうからな。まっ、これでもうあんな無理心中なんて図ろうとはしないだろ」

 

葵と水鳥も本当の姉弟のようなマミたちの姿にほのぼのする。

 

「うおっ!なんじゃこのトマト、グシャグシャじゃなか!まるで水鳥の怒った顔みたいぜよ」

 

「んだとコラ!!!」

 

水鳥と錦の夫婦漫才で天馬たちは再び笑いだす。ちなみにその時の眉間にしわを寄せて怒鳴った水鳥の顔は本当に少し潰れたトマトみたいで怖かったと錦は後に語ったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~通学路~~

 

 

朝食を終えた一同は談笑しながら通学路を歩いていた。マミは学校、雷門と杏子は特訓を行うために河川敷と、目的地は違うが道は途中まで同じなのでそれまで一緒に歩くことにしたのだった。

 

「みんなおはよう!」

 

前を見るとほむら、仁美と共に待っていたまどかが手を振って挨拶していた。

 

「まどかさん、おはようございます!」

 

「おはよう、天馬くん!」

 

「おはよう」

 

「おはようございます。今日は皆さんお揃いですのね」

 

「はい。途中まで一緒に行こうと思いまして」

 

「まどかさん、さやかさんと上条はまだなのかい?」

 

神童が周りを見渡しながらまどかに尋ねる。

 

「うん、さやかちゃん達ならきっと…」

 

「「おはよう!」」

 

後ろから男女の挨拶が響き、振り返る神童。そこには笑顔で手を繋ぐさやかと恭介がいた。

 

「おっ、ウワサをすれば」

 

水鳥が思わず呟いた。

 

「おはよう。上条、さやかさん」

 

「おはよう、神童くん」

 

「おーおー、今朝はみんなお揃いじゃん。仲良しこよしって奴?」

 

「さやかちゃんと上条くんだって負けてないよ」

 

「あ、やっぱそう思う?」

 

「朝っぱらから見せつけてくれるぜよ!」

 

「や~ん、さやかちゃん照れちゃう~!」

 

「あはは……」

 

嬉しそうに片手を頬に当ててにやけるさやかと冷やかされて少し恥ずかしがる恭介。そんな二人を見て神童は思わずフッと微笑む。

 

(上条……取り戻したその手を、もう二度と離すんじゃないぞ……)

 

幸せそうに手をつなぐ仲睦(なかむつ)まじい二人に心の中でエールを送った。

 

 

 

ズズズ………

 

 

「「「!」」」

 

その時、全員の視界が暗い何かに覆われる。

 

「こ、これは!?」

 

「魔女の結界!?」

 

 

 

 

~~魔女結界~~

 

 

気が付いた時には周囲は赤い竹林に覆われており、地面から切り株にタヌキの尻尾をつけたような使い魔が現れる。

 

「葵!上条さん達を!」

 

「うん!」

 

天馬が呼びかけると同時に葵はすぐさま水鳥たちと共にバリアを張って恭介、仁美、ワンダバの安全を確保する。

 

「いくぞみんな!」

 

「「「おう!」」」

 

天馬の号令と共に仲間たちはそれぞれユニフォームと魔法少女の姿になり、使い魔に向かって一斉に駆け出す。

 

「アグレッシブビート改!」

 

天馬がドリブル技で先制攻撃を仕掛け、使い魔たちを蹴散らす。

 

「伝来宝刀!」

 

「デスドロップ(G3)!」

 

それに続いて仲間たちもそれぞれの必殺技で使い魔たちを次々と薙ぎ払う。

 

「相変わらずすごい威力だね!マミさん、あたし達も負けてられませんよ!」

 

「ええ、まず私が道を開くわ!美樹さん、走り出す準備を!」

 

「はい!」

 

さやかが身構えた直後、マミはマスケット銃を取り出し、前方の使い魔に狙いを定める。

 

「ティロ・ボレー!」

 

そして使い魔に向けて四発の弾丸を放つ。すると予想外のことが起きた。

 

「え!?」

 

なんとマミが放った弾丸は使い魔をいとも簡単に貫通し、消滅させた。それだけでなくその先に佇んでいた使い魔まで倒してしまった。

 

「威力が……前より上がってる?」

 

「はあああぁっ!」

 

マミが驚いているうちに開けた道をさやかが駆けだす。しかしここでも驚く出来事が起きた。

 

「なっ…さやかの奴、あんなに速かったか!?」

 

杏子が声を上げる。確かにさやかは4人の中でも最速の魔法少女であるが、その時のさやかはいつもより数段速かった。

 

(何これ!?足が軽い!まるで羽が生えたみたい!)

 

さやかも自身の加速力に高揚する。

 

「おりゃあ!」

 

そしてそのままの勢いに乗って一気に使い魔に接近しては切り裂いていく。

 

「今度はあたしの番だ!おらぁ!」

 

後ろから杏子がさやかを飛び越え、片手で槍を握る。そして薙ぎ払うように大きく振ると柄の中に仕込まれていた鎖が鞭のように広がり、周囲から集まってくる使い魔を弾き飛ばす。

 

「杏子、上!」

 

さやかが叫んだ直後、頭上から多数の使い魔が降ってくる。

 

「上からも来んのかよ!おらぁ!」

 

着地した杏子はウザそうに見上げると一度槍を引いて再び槍を突き上げる。すると槍の先端は鎖を利用してリーチを伸ばし、使い魔を貫いていく。

 

「そらっ!おりゃ!うらぁっ!」

 

連続で槍を突き出し、降ってくる使い魔たちを次々と貫く杏子。その正確さに自身も驚愕する。

 

(何だ…!?身体の調子が良い…!槍を手足のように使える…!)

 

その時、奥の方から巨大な影が現れる。全員が思わずその巨影を見ると、そこには巨大なタケノコのようなものにラフレシアの花のような形の口がついた怪物がいた。

 

「あれが魔女の本体ね。行くわよ!」

 

マミの掛け声と共に全員が魔女に向かって一斉に駆け出す。

 

「―――!」

 

魔女もそれに反応したのか、周囲の地面から土だらけの木の根のようなものを出し、天馬たちに襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

天馬たちは素早く反応し、後ろに下がることで躱す。よく見れば、根は本体を守るかのように周囲を張り巡らせていた。

 

「これじゃ近づけない!」

 

「この!」

 

マミは左側に回って銃を放ち、天馬たちも反対側に回ってシュートを撃つが、根が魔女を覆うように集まって壁となり攻撃を弾いてしまう。

 

「くそっ、両側から攻めてもダメか」

 

天馬が唇を噛む。

 

「だったら私が隙を作るわ」

 

ほむらは魔女が根を地面に戻して姿を見せた時を見計らって盾のバックルを回し時間を止める。そして自分一人だけが動ける世界で高くジャンプし、魔女の周囲にお手製の爆弾をばら撒く。そしてここでも今までとは違うある変化があった。

 

(……妙ね、あまり魔力の消費を感じられない…?)

 

ほむらの時間停止は魔力があれば意外と長く続けられる。それ故に発動中はジリジリと魔力を消費する感覚があるのだが今回はそれが無く、むしろ未だに底が知れないぐらいの魔力量を感じていた。ほむらは何故このような魔力の増加が起きたのか疑問が残るが、今は戦闘中であることに集中する。そして地面に降り立ち魔女から離れるとバックルを再び動かす。次の瞬間、魔女は爆発に飲み込まれた。

 

「―――!」

 

煙が晴れると、魔女は体のあちこちを黒く焦がしており、相当効いたようでその場でフラついていた。

 

「今よ!」

 

「任せて!」

 

ほむらの合図と共に、背番号11番を着るフェイが周囲をアクロバティックに飛び回り、ボールも同じように弾んで最後には高く飛び上がる。そして空が大きな満月が映える夜空に変わり、フェイもボールを追いかけるようにジャンプする。

 

「『バウンサーラビット』!!!」

 

満月をバックにそのままオーバーヘッドでボールを地面に叩き付けると、ボールはエネルギーを纏い、まるでウサギのように地面を弾みながら魔女に向かっていく。

 

「―――!」

 

爆発と爆音で動きを鈍らされた魔女は不規則に飛び回るボールを捉えることが出来ずその身にくらってしまい、先ほどよりも大きく身体を揺らしていた。

 

「やるのう、フェイ!ワシも負けられんぜよ!」

 

するとここで錦のマギカボールが光りだし、黄金の光が錦を包む。

 

「ぬおおおぉぉっ!これならいけるぜよ!ドオリャァァァ!!!」

 

錦は気迫の入った声と共に足を大きく前に踏み下ろし、その背中から化身を出現させる。

 

「戦国武神ムサシ―――アームド!」

 

そして拳を作った両腕を左右に大きく広げるとムサシは金色のオーラとなり、錦の体を包み込む。すると錦は戦国時代の鎧武者のような格好になり、その丁髷のような一本おさげも相まって、本物の侍のようにも見えた。

 

「やったぜ、錦!」

 

水鳥が歓喜した直後、錦は「ヌンッ!」とシュート体制に入りボールを弾ませる。

 

「伝来宝刀!」

 

「―――!!!」

 

そして地面を切り裂くような刀のオーラを纏ったシュートを放つと魔女は真っ二つになって消滅し、グリーフシードに変わる。

 

「やったぜよ!」

 

錦は自分がとどめを刺したことにガッツポーズをする。

 

「錦、喜ぶより試すことがあるだろ」

 

「おっとそうじゃった。ヌンッ!」

 

錦は身体に力を込めると鎧となっていた化身のオーラが元に戻り、さやかを救った時のようにグリーフシードを包み込む。しかし包み込んだオーラが弾けても、そのグリーフシードはソウルジェムに戻らなかった。

 

「ダメか……」

 

全員が落胆の表情を浮かべているうちに主を失った結界も消え、同時に全員の服装も元に戻った。

 

 

 

 

 

 

~~通学路~~

 

 

 

「やっぱり僕たちの力でも、全てのグリーフシードをソウルジェムに戻せるわけじゃないんだね」

 

「うん……」

 

昨夜、天馬たちはほむらたちからグリーフシードを何個か借り、化身の力でソウルジェムに戻せないか試してみた。しかし、その中で戻せたグリーフシードは皆無だった。どうやらさやかのように一日ならまだしもグリーフシードに変わって時間が経ちすぎてしまったソウルジェムは戻せないようだった。

 

「俺たちの力で、魔女になった魔法少女もみんな元に戻せると思ったのに……」

 

天馬は大きくため息をつく。今自分たちが倒した魔女も、もう少し早かったら魔法少女に戻せたかもしれない。そんな無力感と悔しさが自身の胸中に立ち込めていた。

 

「顔を上げなさい、天馬」

 

声に反応すると、ほむらがこちらを見つめていた。

 

「ほむらさん…」

 

「今のあなたの気持ちは痛いほどわかるわ。私も何度も経験したことだから」

 

ほむらはこれまでの時間軸で、魔女になったさやかを何度も倒してしまったことを思い出す。魔法少女には魔女を元に戻す手段など無い。だからこそ魔女化してしまった魔法少女はどんなに心苦しくとも倒すしかなかった。それが仲間だった魔法少女ならばなおさらだった。

 

「でもこれが本来の魔女との戦いの形なの。一度魔女になったら元には戻せない。だからこそ魔女の正体を知ってしまったら、これまでと全く同じ気持ちで魔女を退治する事なんて出来なくなるわ。それでも私たちは魔女を倒さなければならない。それはあなたもわかってるはずよ」

 

「………」

 

ほむらの言うことは天馬も理解していた。たとえ魔女が元は人間であっても人々を襲う以上、野放しには出来ない。さらに言うなら魔法少女たちも倒した魔女が落とすグリーフシードがなければ同じように魔女になってしまう。だから魔法少女たちは魔女との戦いをやめるわけにはいかないのである。

 

「あなたたちは私たちと違って魔女を魔法少女に戻す力を持っている」

 

「ええ……でもこの力でも、全ての魔女を元に戻すことは出来ない……」

 

だから辛いんだ、と言葉を紡ぐように再びグリーフシードを見つめる天馬。そのくすんだ瞳は魔女に対する憐みと、救えなかった悔しさが入り混じっているようだった。

 

「だからって、ここであなたが悔しがって落ち込むのは大間違いよ」

 

「え…?」

 

弾けたように顔を上げる天馬。他の雷門の面々も驚いた顔でほむらに注目する。

 

「確かにその力でも全ての魔女を救うことは出来ない。でもいずれ倒される運命しかなかった魔女たちの内のわずかでも救うことが出来る。それだけでも私たちや魔女たちにとってはありがたいことなのよ。確かに魔女を魔法少女に戻せる力を持っているなら、ぜひ戻してもらいたいわ。でもだからって、戻せなかった時の責任まであなたたちが背負う必要なんて無いし、悔やむ必要だって無いわ。戻すのは、あくまで出来ればの話だから」

 

「ほむらさん…」

 

「そーそー。そんな風に落ち込まれたら、そのわずかに入ってるあたしはどうなんだって話だよ」

 

さやかがしかめっ面で両手を頭の後ろで組みながら会話に参加する。

 

「あたしは運が良かっただけって言われたらおしまいだけど、助けてくれたあんたたちにはホントに感謝してるんだよ?あんたたちは倒した魔女を戻せるかやってみた。それでも元に戻せなかったら仕方ないよ。それでも、あんたたちが今の自分たちに出来ることを全力で取り組もうとしたことに変わりは無いんだからさ。戻れなかった子たちだって、自分たちを助けようとしてくれたあんたたちを恨んだりしないよ」

 

そう言うと、さやかはニカッと笑顔を見せた。

 

「さやかさん…」

 

「そうよ。それに魔女になった子たちだって、いつまでも絶望を振りまいて人々を襲い続けるなんてきっと望んでないわ」

 

今度はマミが口を出す。

 

「もしかしたら魔女になった子たちも、自分たちを倒してもらうことを望んでるかもしれないわ。そしてそれが出来るのは私たちしかいないのよ。そんな私たちがいつまでも暗い顔をしてたら、倒した魔法少女たちもきっと安らかに眠れないわ」

 

「マミさん…」

 

「わかったかしら、天馬」

 

再びほむらが喋り出す。

 

「あなたたちは、その魔法少女をも上回る希望の力で魔女たちに対して最善を尽くしているわ。そしてその力を徐々に大きくし、こんな悲劇をいずれ終わらせるために戦っている。悲しんでる場合じゃないでしょう?」

 

「!!!」

 

背中を押すようなほむらの言葉に天馬はハッとなり、一度視線を落として自分の成すべきことを再確認する。魔法少女たちを破滅の運命から救い出す。それを成し遂げるのは極めて困難な道のりである。しかし困難な道のりに近道など無い。かつて本当のサッカーを取り戻す為、ホーリーロードを一戦ずつ勝ち上がって革命を進めたように今の自分たちや現状に嘆かず、今出来ることをやりながら少しずつ前に進むしかない。そう思った天馬は自然と口元を緩み、顔を上げた。

 

「そう、ですよね……こんなところで挫けてる場合じゃないですよね」

 

「元気出たみたいだな」

 

杏子が腕を組みながら微笑む。

 

「はい!こんな悲しいこと、いつまでもあっちゃいけないんだ!みんな、やるぞ!」

 

「「「おおーーーっ!」」」

 

活気を取り戻した天馬に合わせるように雷門全員が拳を突き上げた。

 

「ふふふ、良かった……天馬くんが元気になって。それに元気づけたのがほむらちゃんだから余計に嬉しいな」

 

「どういう意味?まどか」

 

「だって今までは天馬くん達が私たちを励ましてたから……そのおかげでほむらちゃんも前より心を開いてくれて、私たちは今団結してるんだって思えるんだ」

 

「まどか……」

 

「確かに、あんたが天馬を励ますなんてな。少し性格丸くなったんじゃねぇか?」

 

水鳥が腰に手を当ててそう言った。

 

「というかこれがクーデレって奴ですな!あんたもあたしの嫁にしてあげよっか?」

 

「断固お断りするわ」

 

「まどか……ほむらがクールどころかゴミを見るような目で即答したんだけど」

 

「さやかちゃん…」

 

そんなやり取りで仲間たちは声を揃えて笑い出す。浮気まがいの発言をされた恭介は若干苦笑いだったが。

 

「それにしてもマミさん達、なんかいつもよりすごくなかったですか?」

 

信助が先ほどまでの戦いを振り返って尋ねた。

 

「ええ……なんだかいつもより力が増しているような気がするの」

 

「あれ?あんだけすごい力を出したのに、ソウルジェムがそんなに濁ってない?」

 

「あたしもだ」

 

さやかと杏子がそれぞれ自分のソウルジェムを取り出して確認する。大量の魔力を使うような戦い方だったはずなのに彼女たちのジェムはそれぞれの綺麗な色を保っていた。

 

「私のジェムも……こんなこと初めてだわ。暁美さん、何か心当たりない?」

 

「いいえ。私も時間停止を発動している間の魔力消耗を感じなかったわ。これは一体……」

 

「おそらくそれは大介さんのおかげだろうね」

 

そう言ったのはフェイだった。

 

「大介さんの…?どういうこと?」

 

「大介さんの今の状態、クロノ・ストーンには魂の力を増幅する効果があるんだ。それによって自らの魂を魔力の源としている魔法少女の力を底上げしたんだよ」

 

「つまり大介さんのおかげで、私たち魔法少女がパワーアップしてるってこと?」

 

「でも、それじゃ元は魔法少女だった魔女にも影響与えんじゃねぇのか?」

 

「心配はいらん」

 

マミと杏子が推測した直後、フェイのオレンジの袖からクロノ・ストーン状態の大介が飛び出す。

 

「そのあたりはワシ自身の力でコントロール出来ておる。魔女をパワーアップなどしたらマズいに決まっとるからな」

 

「コントロールって、そんなこと出来るんですか?」

 

恭介が尋ねる。

 

「そもそも大介さんがこの姿でも自由に行動できるのも大介さん自身の強い精神力のおかげなんだ。そしてその凄まじい精神力を生かし、サッカーで数々の偉業を成し遂げた大介さんは歴史に名を遺し、僕とワンダバの時代では“マスターD”って呼ばれてるんだ」

 

「歴史に名前が載るなんて……大介さんって凄い人なんですね!」

 

「なに、ワシ自身は大したことではない。全てはサッカーのおかげだ。ほっほっ!」

 

まどかが感激と尊敬のまなざしで大介を褒めると、大介は六角形の石になっている身体を上に向けながら笑いだす。しかし、すぐに俯かせるように身体を斜め下に傾けた。

 

「だが、ワシは正直サッカーをこんな命がけの戦いのために使うなど許せん」

 

「大介さん…」

 

低い声で語る大介に天馬たちは黙り込む。大介がサッカーを心から愛していることはフェイが語った経歴から誰もが理解していた。サッカーで魔女と戦うことを誓った天馬たちだが、大介の気持ちは同じサッカープレイヤーとしてわからなくはなかった。

 

「しかし、色々な思いと経験を得て成長し、未来を作っていく若い娘たちがたった一つの願いを叶えただけでその道を閉ざされ、最期には人を襲う化け物になってしまう。そんな現実を知りながら放っておいたら、ワシは自分をもっと許せなくなるだろう。ワシらのサッカーで少しでも多くの少女たちの未来を守れるのなら、ワシは協力を惜しまん」

 

「「「…!」」」

 

大介のその言葉に全員が反応する。

 

「大人の立場として、出来る限りお前たちをサポートする。だからお前たちも決してその決意を曲げてはならんぞ」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

全員が力強く返事をした。

 

「大介さん。これからは私たちにもご指導鞭撻(べんたつ)よろしくお願いします」

 

マミが魔法少女を代表し、貫禄のある賢者のような大介に敬意を表して一礼をする。

 

「おう、困ったことがあるならいつでも相談に来い!ところでお前さん達、学校はいいのか?」

 

 

 

「「「………」」」

 

大介の最後の一言に全員が沈黙。そして、4秒後。

 

 

 

「忘れてたーーっ!!!」

 

「い、今何時!?」

 

「大変!あと五分しかありませんわ!」

 

登校中であったことをすっかり忘れていたまどか達。なんてこったと慌てふためくが、平等に課せられる始業のベルのカウントダウンは止まらない。

 

「こうなったらほむら!あんたの魔法で一気に行くよ!」

 

「わ、わかったわ!みんな、私に掴まって!」

 

さやかの奇策でほむらは再び魔法少女に変身し、まどか達はロボットアニメの合体のように一斉にほむらの肩や腕に掴まる。しかし、その姿は合体したロボットというより、たくさんの実を付けたブドウのようだった。傍から見たらかなりの不格好だったが今は外面を気にしてる場合でもなかった。

 

「じゃあみんな!また後でね!」

 

「は、はい……」

 

まどかが早口で挨拶した次の瞬間、彼女たちの姿は消えていた。

 

「いってらっしゃい……」

 

その後、止まった時間の世界でほむらに掴まりながら全力疾走したまどか達は教室に到着したころにはヘトヘトになってしまい、まどかとさやかに至っては疲れて授業中に居眠りしてしまい、担任教諭に怒られたのであった。

 

 

 

 




今回はここまで。

次回からイナイレの定番、特訓シーンに入ります。
お楽しみいただけたら幸いです。

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