魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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魔女退治始まります。

今回はほぼ原作どうりなのでちょっと長いです。
最近文才とか欲しくなる今日この頃。


――OP『天までとどけっ!』――



第2話『魔法少女とマギカボール』

 

 

~~マミの自宅・夕方~~

 

 

 

「「いっただっきまーす!」」

 

天馬と信助はシフォンケーキとハーブティーを口にしていた。天馬たちを助けた少女は見滝原中学三年生、そしてキュゥべえと契約した魔法少女、(ともえ)マミと名乗り、彼らを自宅に招いておもてなしをしたのであった。ちなみに天馬たちも自己紹介を済ませている。

 

「「おいしい!」」

 

「ホント?じゃあ、あたしもいただきまーす」

 

さやかもフォークを手に取り、ケーキを口に運ぶ。

 

「うん、めっちゃうまっすよ」

 

さやかがマイペースに言う一方、まどかは先ほどの出来事が頭から離れず、ここがまだ夢じゃないかと部屋を見渡す。その様子にマミはクスリと微笑む。

 

「キュゥべえに選ばれた以上、あなたたちにとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って」

 

「うんうん、何でも訊いてくれたまえ」

 

「さやかちゃん、それ逆……」

 

「「あはは……」」

 

天馬と信助は苦笑いし、マミは楽しそうに微笑む。

 

「うふふ…それに松風くんにも説明しないとね」

 

「はい。あっ、俺の事は天馬でいいですよ」

 

「じゃあ天馬くん。あなたも信助くんと同じくキュゥべえが見えてるみたいだから説明するわね」

 

「信助にも見えてるの?」

 

「うん。普通の人には見えないらしいよ」

 

そしてマミは説明した。ソウルジェムのこと、願いを一つだけ叶える代わりにキュゥべえと契約すること、それにより魔法少女になり、魔女と戦う使命を与えられることを。

 

「魔女って何なの?魔法少女とはどう違うの?」

 

さやかが魔女と魔法少女の違いについて尋ねる。

 

「願いを叶えるのが魔法少女だとするなら、魔女は呪いから生まれ出た存在。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす。しかもその姿は普通の人には見えないからタチが悪い」

 

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なの。形の無い悪意となって、人間の心を蝕むの」

 

マミは真剣な顔で口を挟む。

 

「そんなヤバイ奴らがいるのに、どうして誰も気付かないの?」

 

顔をしかめるさやかにキュゥべえはしっぽを丸めながら言った。

 

「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね。さっき、君たちが迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ」

 

「…っ!」

 

まどかはさっきまで自分たちがいた場所がそんな恐ろしい場所だったと理解し、恐怖する。

 

「結構、危ないところだったのよ。あれに飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから」

 

「マミさんは、そんな怖いものと戦っているんですか?」

 

まどかは震える声で尋ねる。それに対しマミは

 

「そう。命懸けよ。だから慎重に選んだ方がいい」

 

真顔で頷く。

 

「キュゥべえに選ばれたあなたたちには、どんな願いも叶えるチャンスがある。でもそれは死と隣り合わせなの」

 

「うぅ………」

 

「うわぁ、悩むなぁ………」

 

まどかは身震いし、さやかは髪の毛を指先で掻きむしる。

 

「……魔法少女ってすごいけどやっぱり大変なんだね……命懸けなんて…」

 

「うん。僕もマミさんから聞いた時はそう思ったよ」

 

三人の少女と一匹の話を聞いていた天馬と信助はフォークとケーキを持ちながら話していた。

 

「そうだ。天馬くん、あの時は助けてくれてありがとう。死ぬかと思っちゃったよ」

 

まどかは思い出したように天馬に礼を言う。

 

「いいですよ。それに俺も結局はマミさんに助けられたし……ところでキュゥべえ。俺と信助にも君が見えてるってことは、俺たちにも魔法が使える素質があるってことなの?」

 

「いや、あんたら男でしょ」

 

さやかがツッコむ。

 

「…いや。君たちには魔法少女の素質はないよ。……そもそも僕の姿が見えるのは

素質のある少女だけなんだ。僕も見せようとすれば素質が無い人にも見せられるんだけど、君たちに関してはまるでわからない。本来素質が無ければ見えるはずがないんだ。………たとえ異世界の人間でもね」

 

キュゥべえは淡々と答える。

 

「そうだよ!さっきも聞いたけど天馬たちが異世界人ってどういうこと?」

 

さやかは声を荒げる。

 

「彼らの持つ情報が僕の知らないことだらけなんだ。昨日信助から聞いたんだけどね」

 

「信助、どういうこと?そもそもどうして信助はマミさんと一緒に?」

 

「…うん………あれは昨日の事だったよ…」

 

 

 

 

 

~~前日の夕方・市立公園~~

 

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁっ!!」

 

ドシャッ!

 

その空中に謎の光が出現し、そこから雷門のジャージを着た信助が落下する。

 

「あいたたた………」

 

信助は落下時の衝撃による痛みを味わいながらも起き上がる。

 

「あれ、ここは………?確か、僕たちは時空乱流に飲み込まれて………そうだ、みんなは!?」

 

信助は慌てて回りを見渡す。

 

「天馬!フェイ!みんな!」

 

しかしいくら周りに叫んでも誰かの姿も返事もなかった。

 

「みんないない……それにここはどこだろ…?……ん?」

 

信助が自分の足元を見るとそこには天馬が授かったものと同じボールがあった。

 

「何だろ、このボール……こんなの持ってたっけ…?」

 

信助がボールを手に取り調べる。その直後、異変は起きた。

 

 

ズアァァァァァァァ!

 

 

「!?」

 

信助は天馬たちが捕らえられたものと同じ魔女結界に閉じ込められる。

 

「な、何!?急に景色が……!」

 

そして、理解する間もなく怪物が現れる。

 

「―――!?!」

 

「う、うわあぁぁぁぁぁ!!」

 

信助はすぐさまボールを抱えて逃げ出す。

 

ガッ!

 

「あうっ!」

 

しかし、慌てて走ったせいか躓いて転び、ボールは前方に投げ出される。そして怪物が襲いかかろうとしていた。

 

「うわあぁぁぁぁぁ!」

 

信助はもう逃げられないと思い、頭を抱えて目を閉じる。

 

「ティロ・ボレー!」

 

誰かの声と何かが爆発した音が響き信助は目を開ける。

 

「……えっ?」

 

すると自分を襲うとした怪物は吹き飛んでいた。そこへ変わった格好をした黄色の少女がマスケット銃を持って現れる。

 

「ボク、大丈夫!?」

 

少女は信助に駆け寄り、手を伸ばす。

 

「は、はい!」

 

信助は少女の手を掴みながら立ち上がる。

 

「あの、あなたは……?」

 

信助は少女に何者か尋ねようとするが、

 

「色々聞きたいことはあるだろうけど、とりあえず……」

 

少女が指をパチンと鳴らすと、信助の周りに無数のリボンが出現する。

 

「リ、リボン!?」

 

それらはまるで信助を守る壁のようになっていた。

 

「その中にいれば安全だから、ちょっと待っててね」

 

少女は信助に微笑むと怪物の方に向き直し、両腕を上げるとたくさんのマスケット銃が出現する。

 

「パロット・ラ・マギカ・エドゥインフィニータ!!!」

 

天馬たちを助けたときと同じ技を繰り出すと怪物は全て消滅し、結界が解ける。

 

「…す、すごい………」

 

「魔女には逃げられたようね。」

 

そう言いながら少女は変身を解く。そして少女は信助を守っていたリボンの壁を解除し

て近づく。

 

「あなた大丈夫だった?」

 

「は、はい。あの、助けてくれてありがとうございました…」

 

困惑しながらも少女に礼を言う信助。すると少女の足元に謎の白い生物が降り立つ。

 

「惜しかったね。マミ」

 

「うわあぁぁっ!ネコが喋った!?」

 

(!?…この子、キュゥべえが………!?)

 

マミは信助が謎の生物、キュゥベえが見えてることに驚く。

 

「ひょっとして君は僕の姿が見えてるのかい?」

 

キュゥべえは表情を変えぬまま信介に確認する。

 

「……み、見えてるって……?」

 

信助の様子にマミは少し考えた後、

 

「……キュゥべえ」

 

「うん。どうやら彼には説明した方が良さそうだ」

 

マミは目線をキュゥべえから信助に直す。

 

「……色々わからない事が多いでしょう。とりあえず、私の家に来てくれない?」

 

「え?………は、はい」

 

信助は戸惑うばかりだったが、自分を助けてくれた恩人をとりあえず信じる事にした。

 

「あの…あなたは……?」

 

「私は巴マミ………魔法少女よ」

 

これが西園信助と巴マミの出会いであった。

 

 

 

 

 

 

「僕、雷門中一年の西園信助って言います!」

 

信助はマミと共に彼女の自宅に移動し、マミが用意したハーブティーとケーキが置かれたテーブルを前に座りながら自己紹介する。

 

「よろしくね。西園君。(中学生だったのね……小学生かと思ったわ…)」

 

マミは信助を小学生だと思い込んでいた。しかし、顔には出さず包み込むような笑顔で挨拶した。そして天馬たちの時のように魔法少女と魔女について説明した。

 

「……魔法少女……まるでマンガやアニメの世界に飛び込んだみたいです」

 

「いきなりで驚いただろうけど、私は悪い魔女をやっつけるのが仕事ってことね」

 

「でも、それってすっごくカッコイイですよ!」

 

信助は目を輝かせる。

 

「ふふっ。ありがとう」

 

「ところで西園信助だったよね。僕は君にとても興味がある」

 

「僕に?」

 

「うん。本来僕の姿は素質のある少女にしか見えないんだ。なのに君には僕の姿が見えている。これは未だ前例のないイレギュラーな事なんだ。それに君が雷門中と名乗った事にも気になる」

 

「どういうこと?(かなり文明が発達した街みたいだから雷門が存在してもおかしくないと思ったんだけど……?)」

 

「僕には仲間たちがいてね。彼らとはテレパシーで繋がっているんだけど、彼らから得た情報によると、

 

 

 

―――雷門中なんて学校はこの世界には存在しないと出たんだ」

 

「…え?えぇぇぇぇぇ!?」

 

信助は驚愕する。

 

「だ、だって雷門はサッカーの名門校なんだよ!フットボールフロンティアやホーリーロードでも優勝したことあるし…」

 

「それはおかしいよ。確かにこの世界にはサッカーというものはあるけど、フットボールフロンティアやホーリーロードなんて聞いたこともない」

 

「そんな…!」

 

ショックを受ける信助。

 

(どういうこと!?………でも雷門が存在してないってことは僕が今着てるジャージも無いって事になるはず…)

 

信助は自分の着ている雷門のジャージを見ながら困惑する。

 

「どうなってるの…?」

 

「ねえ、何か複雑な事情があるみたいだけど、良かったら話してくれる?」

 

困惑する信助を心配したマミは事情を聞くことにした。

 

「………」

 

信助はすこしばかりためらうが、先ほど自分も魔法少女の事など信じられないものを見たので話すことにした。

 

「信じてもらえないかもしれませんけど、実は……」

 

 

 

 

 

「……未来の敵からサッカーを守る為に時を超えていた……ね…」

 

「なかなか興味深い話だね」

 

「信じてくれるんですか?」

 

「私も魔法少女なんてやってるからね」

 

「でもこれでわかったよ。おそらく君はこの宇宙の人間じゃない。君は違う次元からやって来たんだ」

 

「ここは僕にとってパラレルワールドどころか全くの別世界って事?」

 

「そういうことになるね」

 

「……はぁ……これからどうしよう。この世界の事は全くわからないし、皆もいないし……」

 

話を聞いた信助は落胆する。

 

「大丈夫よ。きっとあなたの友達も無事だし元の世界に帰る方法もそのうちわかるわ」

 

「……ありがとうございます」

 

「行くところもないんでしょう?だったらここに住むといいわ」

 

「えっ!?いいんですか!?」

 

「ええ。一人暮らしだし、賑やかのほうが楽しいもの」

 

マミは手を差し伸べる。

 

「よろしくね。西園君」

 

「僕の事は信助でいいですよ。だから僕もマミさんって呼んでもいいですか?」

 

「もちろんよ。信助君」

 

「よろしく!マミさん!」

 

二人は笑顔で握手した。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「……というわけなんだ」

 

「……魔法少女の次は異世界人、さらにはタイムトラベルか。しかもサッカーの未来を懸けて」

 

「もう、何があっても不思議じゃないね…」

 

さやかとまどかは立て続けに起きた超常現象を全て受け入れたようだった。

 

「じゃあ、信助は俺みたいに誰かから助けを求められてこのボールを貰ったんじゃないの?」

 

天馬は魔法陣が描かれたボールを膝に置きながら聞く。

 

「うん。時空乱流に飲み込まれた後に意識を失って、気づいたら公園に落下していて、そばにこのボールがあったんだ」

 

信助も自分のボールを両手に持つ。

 

「うーん、このボール……不思議な力を感じるけど、僕にも解明できないよ」

 

キュゥべえは天馬のボールに長い耳を当てながら答える。

 

「やっぱり俺に助けを求めてこれをくれたのはキュゥべえじゃないんだね」

 

その問いにキュゥべえは、うん、と頷く。

 

「こんなものは僕も初めて見たよ。僕でも解明できない物があるなんてね。確かに僕も助けを求めたけど、それはまどかにだけテレパシーを送ったんだ。まどか以外にも届いてたなんてわけがわからないよ」

 

「……じゃあ、あの時俺に助けを求めていたのは誰だったんだろ……?」

 

天馬は顎に手を添えて考える。

 

「ところで、天馬くんたちってどれくらいサッカーできるの?」

 

「未来の敵と戦ってたんだから相当強いんじゃないの?」

 

まどかとさやかが興味深そうに尋ねる。

 

「いえ、まだまだですよ。でも今年のホーリーロード全国大会で優勝したんです!」

 

「全国大会で優勝!?すごい!」

 

「それから、天馬はその時の決勝戦から雷門のキャプテンをしてるんです!」

 

「へえ。天馬って意外とやる男なんだね」

 

「キャプテンかぁ……かっこいいね!」

 

「俺なんてまだまだですよ。それに信助だってキーパーとして頑張ってるじゃないか」

 

「あら、信助くんってキーパーだったの?」

 

まだ信助から聞いて無かったマミが意外だったように尋ねる。

 

「はい!僕は元々DFだったんですけど、先輩の勧めでGKもやってるんです」

 

「フフッ。小さな体に大きなパワーが詰まってるってことね」

 

「えへへ……」

 

少しだけ照れる信助。

 

(……天馬くんと信助くんもすごいんだ…)

 

まどかは二人の武勇伝を聞いて、二人に感心する。しかし、すぐに俯き、彼らと自分の違いを比べてしまい、

 

(それに比べてわたしは……ましてや……)

 

魔法少女なんて無理、と言いたそうな顔をしながら劣等感を感じる。するとマミが言いだす。

 

「ところで、魔法少女の話に戻すけど……鹿目さん、美樹さん。しばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

 

「「「…え……ええぇ!?」」」

 

「マミさん!?」

 

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」

 

マミはそう言うとあの優しい微笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

~~翌朝・鹿目家~~

 

 

 

ジリリリリリリ

 

「……はぅ?」

 

まどかが目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

 

「……また変な夢?」

 

まどかが昨日の事は夢かと思った直後、

 

「おはよう、まどか!」

 

夢ではない事を証明するあの白い生物が挨拶してきた。

 

「……あはは…」

 

 

 

 

~~通学路~~

 

「おっはよー!」

 

まどかはさやかともう一人の親友である志筑(しづき)仁美(ひとみ)に挨拶する。

 

「おはようございます」

 

仁美は笑顔で挨拶する。

 

「おはよう、ま…」

 

「おはよう、さやか!」

 

さやかがまどかに挨拶しようとしたとき、まどかの肩に乗ったキュゥべえが元気よく挨拶する。

 

「う………あ………」

 

「どうかしましたか?さやかさん」

 

仁美は不思議そうな顔をする。まどかの家族もキュゥべえの姿が見えなかったがやはり自分達しか見えてないようだった。

 

「…やっぱソイツ、あたしたちにしか見えないんだ?」

 

「…そうみたい。」

 

二人が小声で話した後、まどかはキュゥべえに教わった通りにテレパシーを送る。

 

(頭で考えるだけで、会話とかができるみたいだよ)

 

「……いッ」

 

さやかは一瞬驚いたが即座に返事をする。

 

(あ、あたしたち、もう既にそんなマジカルな力が?)

 

(いやいや、今はまだ僕が間で中継してるだけ。でも内緒話には便利でしょ?)

 

(な……なんか変な感じ)

 

「あの、お二人とも、さっきからどうしたんです?しきりに目配せしてますけど」

 

「えッ?いや、これはッ、あの、その……」

 

まどかは必死に言い訳を探そうとするが、

 

「ま、まさか二人とも、既に目と目でわかり合う間柄ですの?昨日はあの後一体何が!?」

 

仁美は既に妄想の世界に入り込んでいた。

 

「仁美ちゃん…あの…」

 

「そんな、いけませんわ、お二方、女の子同士で……」

 

仁美は赤面しながら顔を押さえ、

 

「それは……それは禁断の恋の形ですのよ~~~~!」

 

叫びながらそのまま走り去ってしまった。

 

「バック忘れてるよー!」

 

さやかが叫んだ時には既に彼女の姿は霞んでいた。

 

「……今日の仁美ちゃん、なんだかさやかちゃんみたいだったよ?」

 

「あたし……あんなにひどかったっけ…?」

 

 

 

 

~~一方、市立公園~~

 

 

 

「ええっ!?化身が出せない!?」

 

前日の話の後、天馬も信助同様マミの家に厄介になることになった。そして今朝、マミが学校に行った後、仲間たちを探すために公園に移動した。ちなみに二人とも変わらずジャージ姿である。そして天馬はこの世界に来てから化身を出せないことを話していた。

 

「…そうなんだ。昨日魔女の使い魔を蹴散らそうとして出そうとしたんだけど、化身のオーラすら出なかったんだ」

 

「そういえば、僕も何だか自分の化身の力を感じられないような……じゃあ、ミキシトランスは?」

 

「さっき信助がトイレに行ってるときにやってみたけど、それもダメだったよ」

 

「………やっぱり、この世界に来てしまった影響かな…?」

 

「そうかもしれないね…」

 

不安だらけのこの事態に二人は悩み、黙り込んでしまう。

 

「………」

 

「………」

 

しかし、天馬はボールを見て考えた後。

 

「……よし!やろう!信助!」

 

「へ?やろうって………?」

 

「練習だよ!考えたって始まらない!悩んでるときはボールを蹴ろう!きっとなんとかなるさ!」

 

そう言いながら天馬はジャージを脱ぎ、ユニフォーム姿になる。

 

「………うん!」

 

信助もユニフォーム姿になり、自分のもやもやした感情を吹き飛ばすことにした。

 

「信助!」

 

「…ん?」

 

「俺、早くみんなと合流して、またサッカーがしたいな!」

 

「……うん、僕もだよ!」

 

それから、二人は途中でマミが用意した弁当を食べつつ練習を続けた。そして公園にボールの弾む音と二人の少年の声が響き続け、日は暮れて行った。

 

 

 

 

 

~~夕方~~

 

 

 

「ふ~。そろそろマミさんたちも学校が終わったんじゃないかな」

 

「うん。確か、今日はまどかさんたちを連れて魔女退治するんだったよね」

 

「そうだったね。魔法少女体験ツアーって言って。でも大丈夫かな…?」

 

「やっぱりそうだよね…だからさ、天馬!考えたんだけど………」

 

「あなたたち……」

 

「「!?」」

 

信助が天馬に何か言おうとした直後、いつの間にか二人のそばに一人の少女が無表情で佇んでいた。

 

「………」

 

それは、暁美ほむらだった。

 

「……あなたは確か、ほむらさん?」

 

「この人が?」

 

「うん……」

 

二人は昨日の話の中で、ほむらの話も聞いていた。キュゥべえを襲い、魔法少女の増加を減らそうとしていると。少しばかり警戒する二人。

 

「答えて…あなたは何故、あの時あの場所にいたの?」

 

ほむらは天馬に問う。

 

「へ…?お、俺はあの時、キュゥべえの声が聞こえてあそこに……そしたら魔女の結界に取り込まれて……」

 

(……ッ!?アイツの声が聞こえた!?それに魔女の事も知ってる?)

 

とっさに答えた天馬の言葉にほむらは驚く。

 

「あのっ!僕、西園信助って言います!ほむらさんでしたよね?あなたも魔法少女だって聞きました!どうして同じ魔法少女なのにマミさんと仲良くせずキュゥべえを狙うんです?」

 

「……あなたたちには関係ないことよ。それに彼女たちとも関わるのはやめた方がいいわ」

 

「いやです!異世界の人とはいえ、友達を放っておけないんです!」

 

「し、信助っ!」

 

「あっ!」

 

信助は口を滑らせ、しまった、と言うような顔で口元を手で隠す。

 

「……異世界…?どういうこと…?」

 

しかしすでに遅く、鋭い眼力で二人を睨むほむら。

 

「…あ、その……」

 

「……じ、実は俺たち……」

 

天馬たちはその迫力に負け、自分たちがこの世界に来た経緯を全て話してしまった。話を聞き終えたほむらは、

 

「…そう……」

 

淡と答える。

 

「私の聞きたいことは聞けたわ」

 

「あ、あの…」

 

「元の世界に戻りたかったら、余計なことに首を突っ込まないことね……でないと……大切なものを失うわ…」

 

信助が自分の質問に答えてもらおうとしたが、ほむらは話を聞かずそのまま去ってしまった。

 

「……不思議な人だったね。ほむらさんって……」

 

「………」

 

天馬は何故かほむらが去って行った方向を見ながら黙っていた。

 

「天馬?どうしたの?」

 

「うん……なんだかあの人、

 

 

 

 

―――すごく寂しそうな目をしてたなって…」

 

天馬の言葉に信助もただ黙って同じ方向を見つめる。しかし、すぐにハッとなる。

 

「そうだ天馬!さっき言いかけたんだけど……」

 

 

 

 

 

 

「時を超えていた、ね………まさか私と同じ事をしていた人たちがいたなんてね…」

 

天馬たちのいた公園から少し離れた場所でほむらはただ独り言を呟く。

 

「でも、異世界人とはいえ彼らはただのサッカープレイヤー。害はないけど期待もできないイレギュラーね…。やはりこの時間軸も私が一人で………」

 

ほむらは決意の固い目をしながら呟く。

 

「まどか……あなたは私が必ず守ってみせる…!私一人でも…!」

 

 

 

~~見滝原市街中・駅前~~

 

 

「あっ!マミさんだ!」

 

まどかとさやかは待ち合わせ場所である駅前のファーストフード店にやって来た。この後マミの元で行う、魔法少女体験ツアーの為である。

 

「それじゃとりあえず中に入りましょうか」

 

「はい」

 

「あっ!皆さん!」

 

三人が店内に入ろうとしたそのとき、ジャージ姿でボールを持った天馬と信助がやって来た。

 

「あなたたち…」

 

「僕たちも一緒にいいですか?」

 

 

 

 

 

 

店の中に入った一同はとりあえず、まどかはチーズバーガーセット、天馬はハンバーガーとオレンジジュース、マミはオレンジジュースのみ、さやかはがっつりバリューセット、信助にいたってはオレンジジュースとビッグバーガー5個を注文した。(ちなみに天馬たちはマミから小遣いはもらっていたが元々自分たちの持っていた金はこの世界と同じだった。)天馬以外の注文にマミはクスリと微笑む。

 

「食欲があるのは良いことよ」

 

「てか……あたしより信助、あんたよくそんなに食べられるわね」

 

「はい!僕、おにぎり十個は食べられるんですよ!」

 

「そういえば、元の世界で練習が終わった後もラーメン四杯は食べてたよね」

 

信助の並外れた食欲に一同はその小さな体のどこに入ってるんだろうと不思議に思う。そしてさやかは机の下から布で包まれた細長いものを取り出す。

 

「それ、ずっと持っていたけど何?」

 

まどかが聞くとさやかは口一杯にハンバーガーを頬張りながら無言で中身を見せる。

 

「金属、バット……?」

 

「体育倉庫からガメてきた。何もないよりはマシかと思って」

 

まどかは魔女にバットが効くのかと思いつつその心意気はさすがだと思った。

 

「まあ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」

 

マミも同じように思いながらもどこか呆れたように微笑んだ。

 

「で、まどかは?何か持ってきた?」

 

「え?えっと、わたしは………」

 

まどかはさやかの期待に満ちた視線を受けつつ鞄から一冊のノートを取り出す。

 

「……ノート?」

 

そこにはまどかが考えた自分の魔法少女の時の姿や設定が書き込まれていた。

 

「と、とりあえず、衣装だけでも考えておこうかと思って……」

 

まどかがしどろもどろに説明し始めたが、全て話し終わる前から、

 

「…フ…フフッ……うん、意気込みとしては十分ね」

 

笑いの堪えるあまりに流れた涙を拭うマミ。

 

「ゲホッ、ゲホッ……こりゃあ参った。あんたにゃ、負けるわ」

 

咳き込みながら、腹を抱えるさやか。

 

「し、信助……笑っちゃ悪いよ……く、くく…!」

 

「て、天馬こそ……ふ、ふふふっ…!」

 

天馬と信助は必死に笑いを堪えていた。

 

「て、天馬くんたちまで………」

 

まどかは全員に笑われて落ち込みながら小さくなっていた。

 

 

 

「ところで、どうして二人はここに?」

 

ひとしきり落ち着いた後、マミが天馬と信助に尋ねる。すると信助が待っていたかのように返事を返した。

 

「ここでまどかさんたちと待ち合わせるってマミさん言ってたじゃないですか。それで思ったんです!」

 

「俺たちも一緒に連れて行ってください!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

まどかとさやかとマミの三人は驚く。

 

「二人とも、本気?魔女との戦いは命懸けなのよ?」

 

マミは二人に警告する。

 

「わかってます!でも僕たち、お世話になってるマミさんの力になりたいんです!」

 

「それに俺たちも使い魔ぐらいならこのボールを使ってなんとかできますよ!」

 

二人はそれぞれ、ボールをマミに見せながら言った。マミは悩んだが、二人の決心の固い瞳を見せられ、「はぁ…」とため息をついた。

 

「……しょうがないわね」

 

その熱意に負けたように答えた。

 

「やったあ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし、二人とも無茶だけはしないでね。……さて、そろそろ行きましょうか」

 

五人は店を後にした。

 

 

 

 

 

~~廃ビル前~~

 

 

 

「間違いない、ここよ………」

 

昨日出現した、魔女の結界があったショピングモールに足を運んだ一同。しかし既に魔女本体は移動しており、途中でキュゥベえと合流しながらマミのソウルジェムの魔女探査機能を使って魔女を探すうちにこのビルにたどり着いた。マミが頭上を見上げるに合わせて全員が顔を上げる。するとビルの屋上にOL風の格好をした一人の女性が佇んでいた。女性の目から生気は感じられず、風に髪をなびかせる。

 

「ま……マミさん、あれ!」

 

「あ、危ない!」

 

さやかと天馬が叫ぶと同時に女性は空中に足を踏み出す。

 

「き………きゃあぁぁぁ!」

 

まどかは目を背けながら叫んだ瞬間、マミは魔法少女に変身し、信じられないほど高く飛ぶ。まどかが目を開けると魔法のリボンで女性を受け止めていた。そしてマミは気を失っている女性を抱きかかえたまま地表に降り立ち、そっと寝かせる。天馬たちがマミの元に駆けつけるとマミは女性の首もとを指さす。

 

「魔女の口づけ………やっぱりね」

 

そこには魔女に心を蝕まれている証である魔女の口づけという痣があった。

 

「そ、その人は………」

 

まどかは震えた声で尋ねる。

 

「大丈夫。気を失ってるだけ。―――行くわよ!」

 

マミが駆け出すと、天馬たちも慌ててついていく。そしてビルの入り口で魔女の結界を暴きだすマミ。

 

「今日こそ、逃がさないわよ……」

 

マミの強い覚悟を秘めた呟きに天馬と信助も覚悟を決めた顔つきになり、さやかもバットを取り出す。さやかのバットにマミが手を伸ばすと光の輪がマミの腕からバットへ乗り移り、バットは白いステッキに変わる。

 

「気休めだけど、これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の側を離れないでね。」

 

「「「は、はい!」」」

 

力強く微笑むマミの顔に四人の胸に熱いものがみなぎり、力強く返事をする。

 

「さ、天馬くんたちのそのボールにも………」

 

ピカッ!

 

「「「!?」」」

 

マミが天馬たちの持つボールにも魔法をかけようとした瞬間、二つのボールから強い光が

放たれる。

 

「ボールが光ってる!」

 

「マミさん、どんな魔法をかけたんですか?」

 

「え…?私はまだ何もしてないけど……」

 

「え…?……うわっ!」

 

天馬が声を上げると、二つのボールは二人の手から離れ、空中に浮かぶ。

 

「ボールが宙に浮いてる!」

 

そしてボールに描かれた魔法陣の部分がひときわ輝きを放つと、天馬と信助のジャージが光に包まれ、光が消えると天馬はキャプテンマーク付きの背番号8番、信助は5番の雷門のユニフォームを着ていた。そしてボールから光は消え、二人の前に落下する。

 

「……雷門のユニフォームに変わった!?」

 

「これもマミさんの魔法ですか?」

 

「いいえ、私は何もしてないわ………」

 

マミは不思議に思いながら答えると地面に転がる二つのボールをまじまじと見る。

 

「魔法少女の変身のように恰好を変えるなんて、不思議なボールね……」

 

「それにしてもそれが天馬くんたちのユニフォーム?」

 

まどかは雷門のユニフォームを指さす。

 

「へえ。結構カッコイイじゃん!」

 

「ありがとうございます!」

 

「私の魔法はかけなくても大丈夫かしら?」

 

「はい!なんだかユニフォームに変わってから力がみなぎるんです!」

 

天馬は力強く言った。

 

「そう。みんな、そろそろ行くわよ!」

 

 

 

 

 

~魔女結界~

 

 

 

五人と一匹が踏み込んだ先には昨日と同じ悪夢の空間が広がっていた。迷うことなく突き進むマミについていく天馬たち。そして少し進むと昨日天馬たちを襲った使い魔たちが現れた。

 

「で、出た!」

 

「下がって!」

 

マミは天馬たちを下がらせると、昨日までと同じく、いくつものマスケット銃を生成し使い魔たちを撃ち抜いていく。

 

「……み、みんな!」

 

まどかが後ろを見ると、他の使い魔が押し寄せてきた。

 

「このっ!このっ!」

 

さやかはまどかを自分の後ろに隠し、ステッキで使い魔を叩いて応戦する。しかし追い払うのが精一杯だった。

 

「信助!俺たちもやるぞ!」

 

「うん!」

 

「「はああぁっ!」」

 

天馬と信助は同時にボールを使い魔に向けてシュートを放つ。シュートが決まると使い魔は吹っ飛び、ボンッ!という音を立て、煙になって消滅した。

 

「やった!」

 

「フフッ。二人とも使い魔とはいえ倒してしまうなんてやるじゃない」

 

使い魔に当たったボールはすぐさま二人の元に戻ってくる。

 

「当てたらすぐ戻ってくるみたいだね」

 

「でもこれなら何度蹴っても無くならないよ!よし、もう一発!はああッ!」

 

天馬が使い魔にシュートを放つ。しかし戻ってこようとしたボールはその特性に気づいたのか他の使い魔たちに取られてしまった。

 

「ああっ!取られちゃった!」

 

「だったら取り返します!」

 

天馬は腕を振って身構えると残像を残しながら使い魔に接近し、ジャンプした直後、残像と共に消える。

 

「『ワンダートラップ』!」

 

気が付くと天馬が使い魔からボールをスライディングで取り返していた。

 

「やった!」

 

「な、何アレ!」

 

さやかは天馬が必殺技を繰り出した事に驚く。

 

「僕たちのサッカーにおける必殺技です!」

 

「そんなのがあるんだ…」

 

信助の自慢するような説明にまどかは唖然とする。

 

「天馬くん!前!」

 

「!」

 

マミの叫びに気づいた天馬は前を見る。すると2体の使い魔が待ち構えていた。天馬はすぐさま立ち上がり、ドリブルしながら左手を胸に当てる。そこから鼓動のような電波が現れ、右手を左から右へと大きく振る。

 

「『アグレッシブビート』!」

 

暗転し電波の光が使い魔を通り抜けた直後、天馬は光の道筋に合わせて使い魔を抜いており、そこから一気に走り出すと、軌跡を描いた電波が弦のように弾かれ、弾き飛ばされた使い魔が消滅する。

 

「天馬やるじゃん!」

 

「よーし、僕だって!」

 

信助はボールを高く蹴り上げる。

 

「『ぶっとびジャンプ』!」

 

信助は高く飛び上がるとボールを両足で渾身の力を込めて使い魔が密集している所に放つ。そしてボールが地面に命中すると、多くの使い魔が吹っ飛びながら消滅する。

 

「すごいジャンプ力!」

 

「…てか、ぶっとびジャンプって何よ…」

 

マミが信助のジャンプ力に感心する一方、さやかはその技名に半ば呆れる。すると今度はかなり前の方から大量の使い魔がゾロゾロと列をなすように現れた。

 

「ここは大技かしらね」

 

「いえ、今度は俺のシュートで行きます!」

 

天馬は使い魔に向けてボールを放つ。それはとても使い魔に届く様な距離ではなかったが天馬はボールに向かって加速しながら走っていく。

 

「はあああぁぁっ!」

 

「天馬、速っ!」

 

「いけー!天馬!!」

 

そして天馬がボールに追いつきもう一度蹴るとそのままのスピードでジャンピングボレーシュートを繰り出す。

 

「『真・マッハウィンド』!!!」

 

天馬が放ったシュートは竜巻のように風を纏い、猛スピードで使い魔たちを蹴散らしていった。

 

「…ねえ…あの二人の必殺技って、もうサッカーの域を超えてるよね…」

 

「……うん……」

 

天馬たちの常識外れのサッカーにさやかとまどかは戸惑った。これが超次元サッカーである。

 

「二人とも中々の必殺技ね!」

 

一方でマミは目がキラキラ輝いていた。

 

「みんな!そろそろ結界の一番奥に着くよ!」

 

キュゥベえが呼びかける。どうやら使い魔を蹴散らしていく内に結界の最深部にたどり着いたようだった。

 

 

 

~~魔女の結界・最深部~~

 

 

 

最深部にたどり着いた一行は広い空間の中心を見据える。そこには薔薇をあちこちに着けたヘドロ状の大きな怪物がいた。薔薇園の魔女、ゲルトルートである。

 

「あれが魔女……」

 

「うわっ……グロい……」

 

天馬が魔女を見上げて呟き、さやかは顔を歪めて呟く。

 

「あんなのと………戦うんですか…?」

 

まどかは心配そうに聞くが、マミは笑顔で頷く。そして天馬たちを下がらせると、四人を守るようにリボンの壁を生成する。

 

「一人で大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。負けないわ。」

 

マミは信助に笑顔で返すと、一人、魔女の元へと歩み寄る。そして一度立ち止まり、スカートや帽子の中からたくさんのマスケット銃を出し、次々と手に取っては魔女に向けて撃ち続ける。しかし、魔女は素早く動き弾丸を避け、マミを黒い蔓で拘束する。

 

「ッ!」

 

マミも負けじと撃つが弾丸は地面にめりこむばかりだった。

 

「な、何やってんのさ、マミさん!」

 

「天馬、僕たちも……!」

 

さやかが心配のあまり叫び、信助も加勢しようとしたが、

 

「まあ、見てなさい」

 

マミが落ち着いた声で静止させる。

 

「大丈夫。未来の後輩に、あんまり格好悪いとこ見せられないものね!」

 

すると地面にめりこんだ弾丸から金色の糸が伸びていき、魔女全体を拘束する。魔女は抜け出そうとするが、糸を放った弾丸の数が多く抜け出せない。

 

「まさか、この為にわざと外して!?」

 

天馬が叫ぶとマミは胸のリボンを操り、黒い蔓から脱出していた。

 

「惜しかったわね。」

 

ほどいたリボンを翻すと、それはマミの手の中で光になり、そこから巨大な大砲を生成する。そしてマミは技名を叫ぶと同時に放つ。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

大砲から放たれた閃光が魔女を包み込む。魔女は断末魔をあげながら消滅し、周りの景色は元の廃ビルに戻っていく。

 

「か、勝った………の?」

 

「「凄い……」」

 

「やっぱりマミさんは凄いや!」

 

まどか、天馬、さやかの三人は呆然とし、信助が感激する中、マミは着地する。そしてゆっくりと四人に歩み寄り、手に持っていた黒い宝石のようなものを四人に見せる。

 

「これが、グリーフシード。魔女の卵よ」

 

「た、卵………」

 

「運が良ければ、時々魔女が持ち歩いている事があるの」

 

「大丈夫。その状態なら安全だよ。むしろ役に立つ貴重なモノだ」

 

天馬たちがグリーフシードをまじまじと見る中、マミは自分のソウルジェムを見せる。

 

「ホラ、私のソウルジェム、ゆうべよりちょっと色が濁ってるでしょ?」

 

マミの言うとおり、ソウルジェムの色が少しくすんでいた。

 

「でも、グリーフシードを使えば、ほら―――」

 

マミはそう言いながらソウルジェムにグリーフシードを近づけると、二つの石は共鳴するような音を立て、光り輝き、ソウルジェムの黒い濁りがグリーフシードに移っていった。

 

「わあ……」

 

「ね?」

 

マミがにっこりと笑ってかざすとソウルジェムは元の透き通った輝きを取り戻していた。

 

「これで消耗した私の魔力も元通り。前に話した魔女退治の見返りっていうのが、これ」

 

直後、マミはグリーフシードをどこか部屋の隅へと投げる。一同が投げた方向を見ると、見覚えのある少女が受け止めていた。

 

「……あ、あいつ!?」

 

それはまどかたちと同じ見滝原中学の制服を着たほむらだった。

 

「あと一度ぐらいは使えるはずよ。あなたにあげるわ。暁美ほむらさん」

 

マミの言葉にほむらは無言でグリーフシードを見つめる。

 

「それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら?まるごと自分のものにしたかった?」

 

ほむらは眉一つ動かさず、そのままマミにグリーフシードを投げ返す。

 

「あなたの獲物よ。あなただけのものにすればいい」

 

「そう……それがあなたの答えね」

 

マミが明確にほむらを味方じゃないと定め、ほむらも辺りを凍てつかせるような視線を返す。直後、天馬の方に視線を向ける。

 

「あなたたち、元の世界に帰りたかったら魔法少女に関わらないほうがいいわよ」

 

ほむらはそれだけ言うと踵を返し、闇に溶けるようにその場を去った。

 

「く~っ、やっぱ感じ悪いやつ!」

 

さやかは憎まれ口を叩く。

 

「ほむらさんはどうしてマミさんと仲良くしないんだろ……同じ魔法少女なのに」

 

天馬の言葉にまどかと信助も哀しげな表情を浮かばせる。

 

「お互いにそう思えれば、ね……」

 

マミも三人と同じどこか哀しげな顔で呟いた。

 

 

 

 

 

~~マミの自宅・夜~~

 

 

 

「「いっただきまーす!」」

 

「ふふ。いっぱい食べてね」

 

あの後魔女の口づけから解放された女性は目を覚まし、後遺症もなかったので無事に帰らせることができた。まどかたちと別れた天馬たちは現在、夕食のパスタを食べていた。

 

「それにしてもやっぱりマミさんって凄いですね!あんなに怖い魔女を倒せるなんて」

 

「そんなに大したことじゃないわ」

 

「それに自殺を図ろうとしたあの女の人を慰めた時も凄かったですよ!まるでお母さんみたいでした!」

 

「その時は俺も感動しちゃいましたよ!料理もおいしいし、(あき)(ねえ)を思い出します」

 

「秋姉?」

 

「親戚のお姉さんです。俺もアパートで一人暮らしをしていて、管理人の秋姉に世話になりながら暮らしていたんです」

 

「そう。いいお姉さんなのね」

 

マミは辺りを包み込むように微笑むと、二人に向き合うようにテーブルの前に座る。

 

「それにしても、あなたたちのそのボール……本当に不思議ね」

 

マミは床に置かれた二つのボールをまじまじと見る。

 

「僕も驚いたよ。まさか使い魔とはいえ倒してしまうなんてね」

 

キュゥべえはいつもと変わらない表情と赤い瞳で感想を述べる。

 

「元々天馬たちの身体能力も高かったけど、このボールが更に二人を強化しているみたいだよ」

 

「そうなの?」

 

天馬は間が抜けたように驚く。

 

「それに、恰好も変えてしまうなんて……まるでソウルジェムみたいね」

 

「でもこれでこれからもマミさんの魔女退治のお手伝いができますよ!」

 

「ありがとう。でも、絶対に無茶だけはしないでね」

 

マミは笑顔で感謝しつつもすぐに真剣な顔で警告する。

 

「それで考えたんだけど、このボール、“マギカボール”って名づけない?」

 

マミは一度ボールをチラ見してから天馬たちに問う。

 

「マギカ…?」

 

「ラテン語で“魔法”のことよ」

 

「魔法……そっか!マミさんたちの魔法の道具がソウルジェムなら僕たちは魔法のボールなんですね!」

 

信助はマギカボールを両手に持つ。

 

「このボールで皆に会えるように願いながらサッカーをしていけば、願いが叶うかもしれないね!」

 

「うん!これからも頑張ろう!天馬!」

 

マギカボールに願いを込め、二人は希望を見出す。これからマミの手伝いをしながら、仲間たちを見つけ出すという誓いを立てたのであった。

 

「ところで、二人の必殺技ってかっこよかったわね」

 

「「へっ?」」

 

マミが突如全く別の話をし始め、二人は拍子抜けした声を出す。

 

「私も自分の必殺技や技名を常に考えているの!」

 

マミの目はまるで同志を見つけたようにキラキラ輝いていた。

 

「マ……マミ、さん…?」

 

二人は自分たちの知らないマミの一面に戸惑う。

 

「だからこれから、お互いに必殺技や技名について語り合わない!?」

 

「「え……ええ~~~っ!?」」

 

二人が困惑するのも気にも留めず、マミは語りだした。

 

「まず、大抵英語で技の名前を考えたりするけど、私は英語以外の言語でも名づけたいと思っているの!その為にイタリア語やラテン語を勉強して……」

 

などと楽しそうに語り続け、それが夜遅くまで続いた。翌日、マミはよく眠れたようにすっきりした顔で目覚めたが、天馬と信助は寝不足で目の下にクマが出来ていたという。

 

 

 

 

 

 




――ED『またあした』(歌:鹿目まどか)――



次回予告

天馬
「マミさんと一緒に戦う術を手にいれた俺達!そういえばマミさんはどうして魔法少女になったんだろう?そして俺達は新たな再会に喜びつつ、最初の絶望に立ち向かう!

次回!

『魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~ 』

第3話『一人ぼっちの少女』! 」






というわけで戦闘描写有りの第二話でした。
イナクロに出てくる要素って本当にもはやサッカーか?
というものが多いですね。
でもそれゆえにクロスオーバーの二次創作が書きやすいと思います。

次回はいよいよ革命の始まりです。
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