魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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えー、皆さま。大変長らく……

「どりゃあああああああ!!!」

ぐああああ!百裂クリティカルヒット!

ほむら
「今度こそ死にたいようね……駄作者」

いや、マジでごめんなさい。

ほむら
「ごめんなさいじゃないわ……前回は2か月も待たせた上に、今度はその倍?おかげでまどかの誕生日もハロウィンも過ぎちゃったじゃないの……」

あ、いや、そのスンマセンした……新しい仕事を始めたり、ネタは出来上がってもどんな文章にするかで結構頭悩ませてました。いや、この間にまどかが妖怪ウォッチを手に入れるとは。


「それは別の人です。ごまかさないでください」

さやか
「全く、あんたの技量が知れるわね」

おっしゃるとおりです……いっそこう言ってください。「いつもお前は遅いんだよ!」と!

天馬
「円堂監督の友情の名ゼリフを投稿遅れに使わないでください」

て、天馬まで……





というわけで、仕事を変えたり、ネタや文章が思いつかなかったりとで投稿遅れ自己最高記録を叩き出してしまいました。待っていた皆さま、すみませんでした。

しかし待たせていたにも関わらず、閲覧数は3万を突破し、新たにお気に入り登録も増え、新たに高評価を下さる方も現れました。

こんな駄文でも応援してくれる皆様がいるおかげでどんなに遅れても続けることが出来ます。本当に感謝です。

さて、遅れてしまった分、今回は今までよりもコミカルに描いております。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イナマギ、コミカルと青春の特訓シーン。それではどうぞ。





第16話『見滝原の特訓!』 Bパート

~~放課後・河川敷~~

 

 

「いくよー信助!」

 

「うん!」

 

まどか達と別れた後、天馬たちはいつも通り河川敷で練習をしていた。団結後初の魔女戦闘の合同特訓が今日から始まる。今はその事を楽しみにしながらシュート特訓を行っていた。

 

「元気だなーあいつら。いつもあんな疲れる特訓やってんのか?」

 

「はい。サッカーにおいても基本は大事ですし、魔女との戦いでは更に重要になりますからね」

 

雷門が休憩所代わりにしているベンチに腰掛ける杏子に葵が答える。先ほどまで彼らが行った特訓はまとめて言うならただ一つ。走り込みや腕立て伏せなどの基礎トレーニングだった。以前雷門のコーチを務めた人物から言われたことであるが、サッカーにおいて必殺技は欠かせない。だが時には通じない場面もあり、そんな時に基礎体力が重要になるという。ましてや自分たちがやるのは命がけの魔女戦闘。どんな魔女がどんな特性を持っているか予測も出来ない状況下では必殺技に頼りきる戦法だけでは乗り切れないこともある。よってマミたちが来るまで大介の指導の元、彼女たちとの特訓に支障を起こさない程度の基礎トレーニングを行ったのである。

 

「にしても、その間あたしにまでマネージャーの仕事やらせることないだろ。かったるいし、めんどいんだよね」

 

「その割には練習してるあいつらのことを気にしながら黙ってやってたけどな」

 

「うるせー」

 

「みんなお待たせ!」

 

声に振り向くと、まどか、ほむら、マミ、さやかの四人が制服姿のまま河川敷の坂を降りてきていた。天馬たちも練習を一時中断してベンチに集まる。

 

「おかえりなさい。あれ?上条さんと仁美さんは?」

 

天馬が周りをキョロキョロしながら尋ねる。

 

「仁美は茶道のお稽古。恭介はバイオリンのレッスンだって」

 

「そうですか。まどかさん達は学校からそのまま?」

 

「うん。わたしもさやかちゃんも、みんなの特訓のお手伝いするってママ達に言ってあるから。もちろんサッカーの特訓って名目でね」

 

「まあ、魔女退治の特訓なんて言ったら認めてくれるわけがないからな」

 

割って入った声に振り向くと、ワンダバが陸橋の下のTMキャラバンの中から顔を出していた。天馬たちが基礎トレをしている間、ワンダバはキャラバンの修理を可能な限り行っていたのだった。

 

「ワンダバ、キャラバンの修理は進んでるの?」

 

「少しずつだがな……だが時空移動機能や浮遊機能の損傷が激しく、修理にはまだ何日もかかる。それに今までと違ってこの世界は我々のいた世界とは次元そのものが違う。我々が使っていたタイムルートとは全く繋がりが無い世界なのだ。修理出来たとしても、元の世界に無事に帰れるどうかはまだ何とも言えん状態だ」

 

「そっか…」

 

「だが私は諦めるつもりはない。必ず元の世界に帰るつもりだ。お前たちと共にこの世界での革命を成功させて、な……」

 

こっちの方は任せておけ、と言って安心させるかのように微笑むワンダバ。天馬たちはもちろん、彼のコミカルな姿しか知らなかったまどか達もその姿にどこか頼り甲斐があるように感じられた。

 

「ワンダバ……うん、そうだよね!ワンダバもそろそろこっちへおいでよ!みんなで特訓始めるからさ」

 

「ああ、そのつもりだ!よーし、皆の衆!この大監督クラーク・ワンダバット様のもと、熱血特訓を始めようではないか!」

 

ワンダバは、よっ、とキャラバンから降り、ワンダバスイッチでキャラバンを隠してから天馬たちの方に駆け出す。

 

「行くぞーっ!燃やせ、ハート!倒せ、ワルプルギス!だが、勢いづいてケガしないように気を付けダバァ!!!」

 

威勢よく叫びながら走るワンダバだったが、途中で石にけつまずいて勢いよく転んでしまう。そのブザマな姿に全員唖然とするが、ワンダバは何事もなかったかのように素早く立ち上がり、コホン、とわざとらしく咳をする。

 

「今見たとおり、油断は禁物だ!」

 

「コケてから言うと説得力が違うわね」

 

「「「あはは……」」」

 

ほむらが呆れ気味に言うが、天馬たちは苦笑いするしかなかった。

 

「ワルプルギスもそうだけど、実はみんなに言っておきたいことがあるの……」

 

と、ここで何故かさやかが深刻そうな顔で告げた。仲間たちは心配そうに耳を傾ける。

 

「言っておきたいこと?」

 

「うん。あたしにとって本当に大事なことなの……」

 

「本当に重要な話なら俺たちはどんなことでも受け入れるよ。さやかさん」

 

「本当?じゃあ、話すね……実は…」

 

「実は…?」

 

緊迫した表情で語るさやかと言葉を繰り返す神童。そのただならぬ雰囲気に全員がゴクリと息を飲む。緊張感が漂う中、さやかは両手を上げる。そして―――

 

 

 

「恭介とデートに行くんだ~!」

 

両頬に手を添えて言った直後、全員がその場でずっこけた。

 

「今度の休みに恭介と映画観に行くんだ~!しかも内容が音楽家の恋物語なんだって~!恭介の奴、絶対狙ってるよね~!もうさやかちゃん幸せ全開ですよ、えへへへへ~~!」

 

さやかは自分が今、幸せの真っ只中にいることを主張するようにイヤイヤと身体を左右に振っては一人でハシャギまくっていた。

 

「たくっ…こんな時にどんな話かと思ったら……」

 

「さやかちゃん、上条くんと恋人同士になってから、授業中よく上条君と目配せしてて、休み時間とかでも上条くんの話題が出るといつもこうなっちゃうの……」

 

「学校が終わって彼に誘われてから、ここに来るまでずっとニヤけていたわ。うんざりするぐらい」

 

水鳥が頭を押さえながらため息をつくと、まどかとほむらが困り果てたようにさやかの浮かれっぷりを補足した。

 

「あたしの曲づくりの参考にするって言ってたんだけど、その後こう言ったの!『何より君と二人きりの時間を過ごしたい』って!やだも~、恭介ったらカッコつけちゃって~!さやかちゃん照れちゃうじゃないの~~!!!」

 

「おい……少しばかりさやかがウゼェと思ったのはあたしだけか?水鳥」

 

「気にすんな杏子、あたしもだ」

 

「もしこの先死ぬとしたら色ボケによる油断ね。友達が出来たことに浮かれた誰かさんみたいに」

 

「ちょ、暁美さん!?」

 

「やれやれ……神童くん、特訓する時間がもったいないから、そろそろさやかさんを甘すぎる夢から覚まさせてくれないかな?君の言葉ならきっと彼女も聞き入れてくれるはずだよ」

 

「ああ、わかった」

 

両手を広げて肩を竦めるフェイに頼まれ、神童は説得を試みる。

 

「さやかさん」

 

「ん、何?」

 

「君が上条と結ばれて、俺も本当に良かったと思っている。だが、いつまでも浮かれていては戦いの時に命取りになる。上条だって、君に何かあったりしたらたまらないはずだ」

 

「神童……」

 

「上条を心配させないように、君ももっと強くなる必要があるんじゃないか?この街を襲うワルプルギスを倒し、君たちの幸せな未来を守るために、今は特訓に集中しよう」

 

「………」

 

神童の言葉にさやかは両手を下ろし、徐々に心を落ち着かせて真剣な顔つきに戻していく。そして改めて神童と顔を合わす。

 

「そうだよね……うん、あたし頑張る!この街の人たちと恭介を守るために特訓だー!」

 

「その意気だ、さやかさん!」

 

さやかは気を引き締め直すように拳を突き上げる。天馬たちもさやかを現実に戻したその手腕に感心する。

 

「そして強くなったあたしを恭介に見せていっぱい褒めてもらうんだ!そんで恭介とキスして、誰もいない二人っきりの場所に行ってその後………いや~ん、今の時間帯じゃ聞かせらんない展開になるじゃないの~!恭介のえっち~!」

 

と思った直後、さやかは更に深みを増した妄想の世界に入り込んでしまった。

 

「……すまない。失敗したようだ」

 

苦い顔で謝る神童に天馬たちはため息をつきながら首をカクンと下げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いたか?」

 

「うん、ゴメン……ちょっと長く妄想に浸りすぎた」

 

「ちょっとじゃねえだろ。よくもまあ13分もイチャつく妄想できるよな……」

 

「あははは……」

 

杏子はジト目で睨まれたさやかは笑ってごまかす。

 

「さてと美樹さんも元に戻ったことだし、そろそろ始めましょう」

 

マミが気持ちを入れ替えるように仕切りだす。

 

「よーし!では監督であるこのワタシが特訓の指揮を……」

 

「特訓の内容は事前に大介さんと打ち合わせてあるわ」

 

「あう……」

 

またもや監督業が出来ず、撃沈するワンダバ。

 

「さあ、みんな!準備はいい?チーム雷門と魔法少女による合同特訓開始よ!」

 

「「「おーーーっ!」」」

 

「お~……」

 

ワンダバの落胆をよそにようやく特訓が開始された。

 

 

 

 

 

 

~~挿入曲『情熱で胸アツ!』~~

 

 

 

 

 

「さあ、みんな!この的を狙ってシュートして!」

 

「はい!でやぁ!」

 

マミがリボンで的を作り、空中に浮かばせる。天馬、神童、信助がその的を狙ってシュートを放つ。その内、天馬と神童は命中したが信助は外してしまう。

 

「あー外した!」

 

「惜しかったね。でもちょっとの失敗くらい……」

 

「いや、これじゃダメだ」

 

「え?」

 

「もしあれが魔女や使い魔だったら確実にやられていた。もっと命中精度を上げなければ」

 

「あっ、そうか!そうですよね…」

 

神童の説明に信助はシュンと落ち込む。

 

「大丈夫。落ち着いて狙えば信助くんも当てられるわよ。それに気負い過ぎると体が強張って動きが鈍くなってしまうわ。神童くんも、これはあくまで特訓なんだから、あまり気を入れすぎないようにね」

 

「マミさん……」

 

「そうですね……ありがとうございます」

 

マミのフォローによって、信助は気を取り直し、神童も肩の力が抜けた。

 

 

 

 

 

 

「そりゃ!どうした!」

 

「くっ!」

 

一方で近接攻撃がメインとなるさやかと杏子は互いに打ち込みの練習をしていた。二人が最初に出会った時は本気でやり合う殺伐としたものであったが、今は互いを鍛え上げるため、ケガしない程度の力で打ち合っていた。剣と槍先がぶつかり合いによって火花を散らし続けること数回。やはり手加減しているとはいえ、歴戦の杏子の槍使いに押され気味になってきたさやかがいったん後ろに下がって距離を取る。杏子も息を整えながら槍を肩に担ぐ。

 

「そういやあんた。これからはマミからも戦い方を学ぶんだよな」

 

「そういうことになるけど、それが何?」

 

「あたしもかつてはマミから戦い方を学んだ。つまりあたしたちは兄弟弟子ってことになるわけだ。先輩としてビシビシ鍛えてやるから覚悟しろよ。(いもうと)弟子(でし)

 

「いっそあんたも打ち負かせるぐらいになるよ。(あね)弟子(でし)

 

「言ってくれるじゃねぇか」

 

お互い不敵に微笑むと同時に再び地面を駆け出した。

 

バシュウ!

 

「「!」」

 

が、直後。二人は咄嗟に後ろに飛び退く。そして二人の刃が再び重なるはずだった場所をマギカボールが通過した。

 

「実戦では、敵は目の前にしかいないとは限りませんよ」

 

横を向くと、剣城が蹴り足を上げたまま不敵な笑みを浮かべていた。剣城は思わぬ不意打ちの時の対応力を高めるため、こうして時折何の前振りもなくシュートを放っているのである。

 

「もう一コ、思い出したよ。あたしたちが初めて三人揃った時も、こんな風に止められたっけな」

 

「それがまさか、こうして一緒に特訓することになるなんてね。人生、何が起こるかわかんないね」

 

「……フッ」

 

今となっては懐かしい思い出のように語り合う杏子たち。同じ願いから始まった三人はようやく分かり合い、今はその願いの先にある未来を共に掴むと誓ったであった。

 

「さあ、まだまだ行きますよ」

 

「うん!隙あればジャンジャン撃ってきて!」

 

「時々撃ち返してやるからな!」

 

 

 

 

 

 

「どりゃあ!」

 

「っ!」

 

マミのリボンで作ったドームの中で錦がほむらにシュートを放つ。ここでは敵の攻撃と接近を防ぐ特訓が行われていた。一回ごとに役をローテーションし、今はほむらが攻撃を受ける番だった。ほむらは身体を反らしてシュートを躱すが、後ろから地面から生やしたリボンが伸びてくる。このリボンはマミがトラップ用に仕掛けたもので、近づいた者を捉えるように出来ている。ほむらは即座に盾から取り出した拳銃でリボンを弾き飛ばす。そこへすかさず横から錦が再びシュートを撃ち込み、それと同時に新たにリボンが前後から伸びてくる。ほむらはその場から飛び上がり、離れたところに着地しては左から来るリボンを撃ち払う。

錦は戻ってきたボールを三度撃とうとトラップする。が、ほむらはその一瞬の隙を逃さず、空砲に変えた銃を向ける。それに気づいた錦は降参するかのように両手を上げて動きを止める。これによって今回の攻撃はしのぎ切った、と思われた直後。

 

「………まだまだね」

 

「うん」

 

ほむらが銃口を錦に向けたまま振り向くと、フェイが自分のもう片方の腕を掴んでいた。もし掴んでいたのが魔女や使い魔だったら即座にやられていたかもしれない。フェイが手を放すと、ほむらは「ふう…」と小さく息を吐いて銃を盾にしまう。

 

「しかし……ワシらはともかく、おまんには時間停止の魔法があるじゃろ。こんな特訓でええんか?」

 

錦が腰に手を当てながら歩み寄る。

 

「私の魔法は不意打ちには有効だけど、私に直接触れている者の時間も止まらないの。だから掴まれたり、動きを封じられたら命取りになるわ。それ故に、回避術も必要になるのよ」

 

「ある意味、僕たちと五分五分というわけだね」

 

「ええ、だからこそあなたたちもこの特訓が必要だとわかってるでしょう?」

 

「うん、ただサッカーのテクニックだけじゃ魔女とはまとも戦えないからね」

 

「分かってるならいいわ。さあ、次はまた錦くんの番よ」

 

「げっ!防ぎきれなかったら、またあのゴム弾を食らわにゃならんのか!?」

 

「魔法で威力は抑えてあるわ。それに、防ぎ切ればいいのよ。実際、魔女や使い魔から食らった時はあれぐらいじゃすまないわよ?」

 

「ぬうう……」

 

少しだけ意地悪そうに語るほむら。ほむらは敵役に回った時、攻撃手段としてゴム弾を放っていた。練習用に威力をかなり抑えてあるが、それでも当たったらかなり痛いものである。当然、錦も自分の番が回るたびにゴム弾を受け、特に尻に十発以上も食らっていた。それからは思い出す度に尻をさすっていたのである。

 

「……これ以上食らったらケツがボールみたいになるぜよ……もう食らいたくないぜよ……はぁ……」

 

顔を青ざめながらため息をつく錦にフェイとほむらはクスリと笑った。

 

 

 

 

 

「葵ちゃん、配分ってこれくらいかな?」

 

「ええ、合ってますよ。まどかさん」

 

そして休憩用のベンチではまどかが葵たちのマネージャー業を手伝っていた。今は特訓しているメンバーたちのドリンクを作っているところである。

 

「葵ちゃんたちも大変だよね。こんなにたくさんのものを用意しなきゃならないんだから」

 

まどかはドリンクボトルに粉末ドリンクを入れると、ベンチの傍に置かれたアイスボックスを見る。その中には疲労回復に効くレモンのハチミツ漬けや怪我したときに使うコールドスプレーなど、天馬たちの特訓の為に用意された数多くの道具が入っていた。

 

「ええ。でも、苦じゃありませんよ。天馬やみんながしっかり戦えるようにしたいと思ってますから」

 

「そっか……だから、ほむらちゃんにもあんなこと言えたんだよね」

 

「あんなこと?……ああ、あの時の!」

 

 

 

『―――戦いに疲れた天馬たちやマミさん達の帰る場所になる事です!』

 

 

 

葵は、さやかが魔法少女になった後、彼女を見捨てようとしていたほむらに啖呵(たんか)を切った。葵は自分が戦えない代わりにいつも天馬たちの為に出来る限りのことをしてきた。先日の戦いにおいても、自ら動いたことによって恭介のさやかへの好意を自覚させ、魔女になったさやかの意識を取り戻すキッカケを作った。その行動力はみんなを支えると決めたまどかにとっても、良きお手本にもなっていた。

 

「確かに。あんときの葵のセリフは、あたしたちもスカッとしたぜ」

 

「葵ちゃん、カッコ良かった」

 

水鳥も目を閉じて思い出しては心地よく頷き、茜も自前のカメラを持ちながら微笑む。

 

「そんな……あの時はただ、何も出来ないなんて言われて、黙っていられなくなっただけですよ」

 

「それでも、堂々とあんなこと言えるなんてやっぱりすごいよ。わたしもあんな風になれたらいいな……」

 

「大丈夫ですよ!その時のまどかさんだって、ほむらさんに言ったじゃないですか!」

 

「え?……あ!」

 

 

 

『―――ほむらちゃんにとっても、わたしが帰る場所になっちゃダメかな……?』

 

 

 

「その気持ちさえあれば、まどかさんだって絶対なれますよ。大事なのは力になりたいって気持ちですから」

 

「あ!それ、前に天馬くんも言ってたよ!」

 

「ふふ。やっぱり天馬も言ってたんですね。それじゃあ、その言葉通りになるように一緒に頑張りましょう、まどかさん!」

 

「うん!」

 

お互いを励ますように微笑み合う葵とまどか。水鳥はそんな二人の姿にニヤリと口元を緩め、茜も二人の笑顔にカメラを向ける。そしてシャッターを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、天馬。タオル」

 

「ありがとう、葵」

 

合同特訓を始めて数十分後、休憩時間に入った天馬たちはベンチに集まっていた。天馬は葵から受け取ったタオルで汗を拭き、そのまま首に掛ける。

 

「はい、天馬くん」

 

「ありがとうございます」

 

今度はまどかが差し出したドリンクボトルを受け取る天馬。彼を気遣うように渡すまどかのマネージャー姿は、彼女の優しげな雰囲気も相まって中々サマになっていた。

 

「おっ、両手に花だね~天馬!」

 

「え?何のことですか、さやかさん?」

 

「やれやれ……そういうところはまだまだなんだから……」

 

「?」

 

「「……///」」

 

さやかの突然の揶揄(やゆ)に顔を赤くする葵とまどか。しかし、当の本人である天馬はその意味を理解できず、首を傾げていた。

 

「んが~~。……ぷはぁ!こうして大勢で特訓してると、サッカー部の皆との特訓を思い出します」

 

水分補給をする信助が懐かしむように語りだす。

 

「あんたたちは、こうやって特訓して強くなっていったわけか」

 

揶揄を終えたさやかが信助に語り掛ける。

 

「はい!その特訓の中で、新しい必殺技のヒントが生まれたりするんですよ!」

 

「へぇ~、あの“ぶっとびジャンプ”っていう変な名前の技とか?」

 

「へ、変って何ですか!?さやかさん!」

 

「べっつに~。ただ、技の名前のセンスならあたしの方があると思ってね。“スパークエッジ!”ってさ。まあ、マミさんには負けるけど」

 

「確かにそうじゃの。イタリア語で技名をつけるとは考えたのう。“ティロ・フィナーレ”っちゅうんは確か、最後の射撃、という意味じゃろ?」

 

「「「……え?」」」

 

錦の口からイタリア語、しかもその訳。まどか達は一瞬、聞き間違いかと思い、呆けた声を出す。一方でマミも最初は眼をぱちくりさせていたが、すぐさま問い直す。

 

「わかるの?じゃあ、“パロット・ラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ”は?」

 

「無限の魔弾、じゃろ?」

 

「“ボンバルダメント”は?」

 

「砲撃!」

 

「“テ・ポメリアーノ”!」

 

「午後の紅茶、じゃ!」

 

「……ほ、ほむらちゃん……なんだろ、あれ……」

 

「ごめんなさい、まどか。私も分からないわ……」

 

マミのイタリア語の訳をすぐさま返す錦に、目が点になるまどか達。

 

「ね、ねえちょっと天馬。錦のやつ、何であんなにイタリア語わかんのよ?」

 

「あれ、言ってませんでしたっけ?錦先輩、イタリアに留学してたことがあるんですよ」

 

「え!?あんなサムライ感バリバリなのに!?」

 

「そうなんですよね。でも、人は見かけによらないと言いますから」

 

「限度があるでしょ……」

 

意外過ぎる錦の経歴に言葉が出なくなってしまったさやか達であった。

 

「それはそうと、合同特訓は正解でしたね。これなら、これからの俺たちに必要なことが見えてきそうな気がします」

 

一方、神童がマミに合同特訓の成果を語る。

 

「私もそう思うわ。でもキュゥベえの話が本当なら、これから現れる魔女はどんどん強くなってくるわ。これを計算に入れたらワルプルギスはどれくらいの強さになるか……」

 

現在の状況を冷静に分析するマミ。今日から始めた合同特訓は大まかに分けて二つの目的がある。一つは雷門と魔法少女の連携の強化。もう一つは、そこから魔女戦闘における自分たちの課題を明確にするためであった。彼らが行うのは、あくまで命がけの戦い。一度の油断や失敗が命取りになる。故に、ただ共に特訓するだけでなく、そこから見出した課題を克服し、その成果を実践でどう生かせるかが重要になってくる。闇雲に互いを鍛えるだけでは、これから更に激しくなる戦いを勝ち抜くことは出来ないのである。

 

「ワルプルギスを倒すために、もっと特訓して強くならなきゃ……でも、一体どんな特訓をすれば……」

 

天馬自身もそのことは自覚していた。ボトルを見つめながら更なる成長の決意を固めつつも、その具体的な方向性がハッキリせず、頭を悩ます。するとマミが天馬に近づき、こんな提案を持ち出す。

 

「ねえ天馬くん。前から考えてたんだけど、私と一緒に必殺技を作ってみない?」

 

「え?俺とマミさんで、ですか?」

 

「ええ。あなたたちのサッカーと私たちの魔法を組み合わせれば、戦略の幅が広がると思うの!」

 

「サッカーと魔法の組み合わせ、か……確かに盲点でしたね」

 

「でも、それって面白そうじゃん!」

 

顎に手を添えて納得する神童と未だかつてない試みに興奮するさやか。

 

「その為には、もっと私たちと雷門の連携を上手く取れるようにしなきゃね。何か、ないかしら……?」

 

「連携……う~ん…」

 

天馬は顎に手を添えて考える。しかし首をかしげても中々考えが浮かばない。

 

「ん?」

 

その時、ふと地面にたたずむボールが目に入ると、「あっ!」と何かをひらめいた。

 

「だったら………マミさん達もサッカーやってみませんか?」

 

「え?」

 

「一緒にサッカーをすれば、上手く動きが合わせられるようになると思うんです!」

 

「なんじゃそりゃ。でも天馬らしい自論だね」

 

どこか無理やりな気がしつつも、納得するさやか。

 

「うん。確かにいいかもしれないわ!やりましょう!」

 

「マミさん、なんか妙にやる気ですね?」

 

「もちろんよ。信助くんも言ってたでしょ?サッカーの特訓から新しい必殺技のヒントが生まれるって!それに、みんなと一緒にサッカーやるなんて楽しいじゃない!」

 

「最近太ったからだろ」

 

「ギクッ!さ、佐倉さん……何でそれを?」

 

「昨日、風呂上りに体重計乗ってショック受けてんの見てたからな。確か、そん時の体重は……」

 

「キャーーー!みんなの前で言わないで!」

 

「……とりあえず、今の話は聞かなかったことにします…」

 

マミの体重問題を置いておくことにする天馬たちだった。

 

「あの……わたしも一緒にやってみてもいいかな…?」

 

「まどかさんも?」

 

「わたしも、みんなと一緒にやってみたくなって……」

 

まどかは少し控えめ気味にながらも天馬たちに頼み込む。

 

「もちろんいいですよ!みんなでやった方が楽しいですから!」

 

「ホント!?ありがとう!」

 

「でも、まどかさんミニスカですよね?」

 

「あっ…///」

 

葵に自らの服装を指摘されて赤くなるまどか。

 

「というか、魔法少女の格好って、基本的にみんなミニスカだよね……」

 

さやかもよくよく考える。自分たちは変身を解いても、杏子を除けば全員ミニスカート。サッカーは基本的に足を大きく振り上げるスポーツ。ミニスカートでそんなことをすればどうなるか誰でも想像できるだろう。もちろんその結果を想像した天馬たちも顔を反らして赤くなる。

 

「確かにまずいな。このままサッカーをやったら、パン、ツー、まる、みえ、だからな」

 

「ギャグ、古っ!」

 

いつの間に出てきていた大介がギャグをかまして水鳥が即座にツッコむ。まどか達も同じ年頃の男子中学生に乙女の秘密の花園を見せるには抵抗があった。

 

「そういうことならお任せあれ。ワ~ンダバスイッチ、オン!」

 

すると突然、ワンダバが例のリモコンを取り出し、まどか達5人に向けてボタンを押す。

 

「「「?」」」

 

何事かと思った直後、まどか達の首から下が虹色の光に包まれる。そして光が消えて、自分たちの姿を改めて確認すると、

 

「おぉ~!これって!」

 

「わあ…!」

 

服が左胸にイナズマのマークが入った黄色いユニフォームと青い半ズボンになり、靴はサッカー用のスパイクに変わっていた。そう、これはいつも天馬たちが着ている、背番号が入ったあの服。

 

「雷門のユニフォームだ!」

 

まどかとマミは天馬たちと同じ姿の自分をまじまじと見て、さやかは見せびらかすようにその場で回り、ほむらと杏子は初めてのユニフォームに少しばかり戸惑っていた。ちなみに背番号はまどかが35、ほむらが36、マミが37、さやかが38、杏子が39番だった。

 

「これでサッカーをしても問題ないだろう」

 

「うん!ありがとうワンダバさん!」

 

笑顔でお礼を言うまどか。すると天馬と葵がまどかに近づく。

 

「着心地はどうですか、まどかさん」

 

「うん、動きやすくてすごく良いよ!でも二人とも……わたし似合うかな?」

 

「う~ん。似合うというより、新鮮って感じがします!」

 

「私も。まどかさん達がユニフォームを着るって、思ってませんでしたから」

 

「そっか。でもこれで天馬くん達と一緒にサッカー出来るね!」

 

「はい!俺の一番の特技のドリブルを教えてあげます!」

 

「ありがとう、天馬くん!」

 

笑顔で約束する天馬とまどか。

 

「それにしても、マミさん……」

 

「ん?」

 

そんな中、マミをジト目で見つめるさやか。その視線はある一点に集中していた。

 

「ユニフォームだと余計目立ちますなぁ」

 

「な!?ちょ、ちょっと美樹さん!どこ見てるの!///」

 

とっさにその発育が進んだ胸を両手で隠すマミ。二人のやり取りにまどかは思わず苦笑いし出す。

 

「あはは……マミさんはスタイルいいからね。ね、ほむらちゃん?」

 

「何、食べたらあんなに大きくなるのかしら……」

 

「え?」

 

「な、何でもないわ!」

 

「よーし!それじゃみんなでサッカーやるぞー!」

 

「「「おぉーーーーっ!!!」」」

 

天馬の号令で仲間たちは再び拳を突き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、まどかさん!やってみてください!」

 

「う、うん!」

 

サッカーを始めて数分後、まどかとほむらは天馬とフェイからドリブルを教わっていた。そして今はまどかが三人に見守られながら教わったドリブルを披露しようとしていた。

 

「ボールを、小刻みに蹴りながら走る……」

 

天馬から教わったコツを繰り返すように口にしながらボールを蹴り出す。初挑戦だけあって遅いスピードながらもしっかりと小刻みにボールを蹴っていた。

 

「やった!」

 

これならいけるんじゃないかと少しだけスピードを上げる。

 

「あ、あれ!?」

 

「ま、まどかさん!」

 

が、そのせいでボールを蹴るリズムが乱れてしまい、蹴る位置もずれて違う方向に転がり始めた。

 

「わわっ!?ちょ、ちょっと待って!」

 

右往左往するボールを慌てて追いかけながらドリブルを続けようとするまどか。

 

ギュム!

 

「へ?わわわわわ!」

 

そうしているうちにボールを踏んでしまい、そのまま玉乗りに失敗したようにベシャアと前に倒れ込んでしまった。

 

「あちゃ~」

 

「ま、まどか!」

 

「まどかさん!」

 

フェイはとっさに片手で顔を覆い、ほむらと天馬は慌ててまどかに駆け寄った。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「う、うん。なんとか……」

 

地面が芝生だったおかげでケガも無く、まどかはゆっくりと起き上がる。

 

「天馬くん達は当たり前のようにやってたけど、実際はこんなに難しかったんだね…」

 

天馬たちの技術を実感し、芝生にへたり込んで落ちこむまどか。

 

「俺だって最初はボールがあちこち行きましたよ。でも練習し続けたおかげで上手くなったんです。それにまどかさん、初めてやったにしては上手くできたと思いますよ!」

 

「そ、そうかな?」

 

「はい。まどかさんだってもっと練習すればきっと上手くなりますよ!絶対なんとかなります!」

 

「……何とかなる、か……」

 

天馬の励ましがまどかの心に染みわたり、落ち込んで重くなった心を軽くしていく。まどかは水の底から浮かびあがるようにゆっくりと立ち上がり、天馬と向き合う。

 

「なんだか不思議だね。天馬くんにそう言われると、ホントになんとかなっちゃうような気がするよ」

 

もう大丈夫。そう告げるかのようにまどかは可愛らしい笑顔を見せた。

 

「そうですか?ありがとうございます!」

 

「それじゃ次はほむらさんの番だよ。その後、練習の続きをやろう」

 

二人を見守っていたフェイが仕切りだす。

 

「ええ。やってみるわ」

 

「ちなみにやらないと思うけど、時間停止でコマ送りみたいにして上手く見せるというのは無しだよ」

 

「…………………ええ、わかってるわ」

 

(……考えてたみたいだね)

 

ちなみに結果はまどかが先に失敗例を見せてくれたおかげで、ボールを集中して真っ直ぐ蹴り続けることに成功し、同じ徹を踏まずに済んだ。

 

 

 

 

 

「さあ、マミさん!どっからでも撃ってきてください!」

 

一方こちらでは剣城がマミとさやかにシュートを教えていた。そして今はマミがシュートを放とうとしており、ゴール前で信助が待ち構えていた。

 

「いくわよ信助くん!」

 

なんだかFWになったような気分になり、高揚するマミ。

 

「それじゃ、雷門の皆にならって……ティロ・フィナーレ!」

 

その高まった気持ちを開放するように、そのしなやかな足で地面に置いたボールを思い切り蹴り飛ばす。放たれたシュートはゴール前の信助に向かって真っ直ぐ飛んでいく。

 

「ふん!」

 

信助は身体に力を込めてボールを両手で捉える。その勢いに少しだけ後ろに押されたが、しっかりとボールをキャッチすることが出来た。

 

「いいシュートですよ、マミさん!」

 

「ホント?ありがとう!」

 

「なるほど、ああやってカロリーを消……」

 

「もう!そのハナシは忘れて美樹さん!」

 

顔を真っ赤にして腕を振り下ろしながら怒鳴るマミ。

 

「じゃ、今度はあたしがやるね」

 

マミの怒りをよそにさやかはボールを地面に置いて距離を取る。それに合わせるようにマミもふてくされながらシュートコースを開けた。

 

「いくよ!あたしのスーパーシュートをぶちこんでやるよ!」

 

「そう簡単にはいきませんよ!」

 

自信満々なさやかに信助も再び気合を入れて身構える。

 

「くらえ!必殺、さやかちゃんデストロイヤー!!!」

 

さやかは走り込みながら渾身の力を込めてシュートを放った。

 

ガンッ!

 

「へ?……ぶべらっ!」

 

シュートはゴールバーに当たって跳ね返り、見事さやかの顔面にぶちこまれたのだった。

 

「さ、さやかさん!?」

 

「美樹さん、大丈夫!?」

 

顔面にボールがめり込んだまま仰向けに倒れたさやかに慌てて駆け寄る信助とマミ。そんな姿に剣城はやれやれ、と肩を竦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

「よっ……ほっ……とっ…」

 

杏子は頭と両足を使ってボールを弾ませ続けていた。彼女は神童と錦からリフティングとボールキープを学んでいた。基礎を一通り教わった後、見事なリフティングを披露していた。

 

「杏子さん、中々筋がいいね。初めてとは思えないよ」

 

「ま、あたしは不規則な動きをするエモノ使ってるからな。少し慣れればこれぐらい出来るさ」

 

頭にボールを乗せてバランスを取る杏子は返事を返しながらボールを足元に転げ落とす。

 

「そうか?それじゃ……」

 

「!」

 

その瞬間、錦がボールをかっさらい、見せつけるようにリフティングする。

 

「30秒以内に奪い返してみるぜよ」

 

「へッ、上等……だっ!」

 

杏子は即座にボールを奪い返そうと飛び掛かる。だが錦も即座に反転して躱す。

 

「おりゃあ!」

 

「ほっ!」

 

「まだまだぁ!」

 

「よっ!」

 

それから何度も奪い返そうとするが、錦も上手く躱し、時間だけが過ぎていった。

 

「このままじゃラチが開かねえ。これでどうだ!」

 

杏子は錦が自分を躱して横を向いた直後、即座にスライディングを仕掛ける。

 

「おっと!」

 

錦はボールと共にジャンプして躱す。その時、少しばかり体勢を崩してしまった。

 

「チャンス!」

 

杏子は錦の下をくぐった直後、持ち前の反射神経で芝生を両手で押して素早く立ち上がり、反転する。

 

「もらった!」

 

空中で体勢を崩したら躱せまいと一気に駆け出す。

 

「ふっ!」

 

しかし、錦も即座に身体をひねらせ、片足で着地する。そしてもう一方の足の裏でボールを蹴り上げ、その着地点に向かって走り出した。

 

「なにっ!?」

 

杏子が驚いて足を止めると、錦は地面を弾んだボールを踏みつけた。

 

「30秒じゃ」

 

「おいおい……今の動き、ありかよ?」

 

「こう見えても、キープ力には自信があるぜよ。神童!」

 

錦からパスを受け取った神童は両足と両膝を使って小刻みにリフティングする。そして一度ボールを高く蹴り上げると、背中で柔らかに受け止める。そして身体を跳ね上げて空中に放ると今度は胸元でトラップし、瞬時に再び跳ね上げる。するとその場で素早くターンしてからボールを再び背中で受け止め、首周り伝いに転がして足元に落とし、再びリフティングを始める。

 

「……………」

 

最初に背中で受け止めてからの動きがあまりにもなめらかすぎて、杏子も思わず見とれてしまった。

 

「……やっぱサッカーに関しては勝てねぇな、お前らには」

 

まいるように杏子はため息をついた。

 

 

 

 

それからまどか達はパスやブロックの練習もしたり、信助のようにキーパーをやってみたり、天馬たちと共に古タイヤを付けたロープを腰に巻いてランニング(大介の紹介)など、サッカーの色んな特訓を経験した。ちなみに最後のランニングに関して、まどか達はあまりタイヤを引っ張れなかったが、杏子がいたずらにマミの耳元で何かをささやくと、マミは泣き叫びながら古タイヤを引きずって全力疾走したそうな。

 

 

 

 

 

「今日の特訓はここまで!」

 

「おつかれさまー!」

 

「お腹空いたー!」

 

「さあ、飯じゃ飯じゃ!」

 

日の入りと同時に初日の合同特訓は終わった。一同はそれぞれぼやいたり、葵たちからドリンクを貰ったりと、特訓を終えた解放感を噛みしめていた。その一角で、まどかは芝生にへたり込みながら息を乱していた。

 

「ふう……天馬くん達っていつもこんな特訓してたんだね」

 

隣で立ち上がったまま水分補給をする天馬に疲れた声で語り掛ける。

 

「どうでした、まどかさん?サッカーの特訓は」

 

「はは……今朝走ったのも合わせてヘトヘトになっちゃった。でも、楽しかったよ。天馬くんたちと特訓して」

 

「俺もです。でも、そのおかげで、深く考え過ぎてたってことに気づけました!」

 

「え?」

 

天馬は笑顔でまどかにそう言うと、真剣な顔に変えて一番星が輝く夜空を見上げた。

 

「俺、これからも命がけの戦いをするために、今までとは違う特訓をしなきゃならないって思ってたんです。サッカーじゃやったことないくらいの特訓を。でも、忘れてました。俺たちの戦いの基本は、やっぱりサッカーなんです。俺たちはそこから魔女戦闘に生かすしか、強くなる方法が無いんです」

 

「天馬くん……」

 

「だから、みんなでこうしてサッカーをやれて良かったです。やっぱりサッカーはみんなで楽しむものですから。こんな風に、“楽しい”って気持ちから始めれば、絶対強くなれると思いますから!」

 

曇り一つ無い笑顔を再びまどかに向ける天馬。その時の笑顔がまどかもまぶしく見え、自然と口元が緩み、

 

「“楽しい”気持ちから始める、か……ふふ、天馬くんらしいね!」

 

クスリ、と笑顔がこぼれた。すると隣から「ふぅ…」と、小さな吐息が聞こえ、まどかは反対側に顔を向ける。

 

「ほむらちゃん、大丈夫?」

 

「ええ……心配ないわ。少し疲れただけ…」

 

そこではほむらが汗だくになりながら大の字で芝生に寝そべっていた。

 

「私ね……生まれつき心臓が悪くて、運動が出来なかったの。魔法少女になって、それが出来るようになったけど……まどかを救うために闘い続けていたから、まともにスポーツを楽しむなんて考えたこともなかったの……」

 

ほむらはもう一度ため息をつき、呼吸を整えてからこう言った。

 

「スポーツで掻く汗って、こんなにも清々しいものだったのね……」

 

「ほむらちゃん……」

 

心に染みわたるようなほむらの微笑みと言葉が、高まった自分たちの絆を実感させる。そのことを祝福するかのように河川敷に再び風が吹いた。

 

 

 

 




というわけで初日に特訓シーンは終わりました。
ネタは出来上がってもそこまで展開を考えるのはやっぱ難しかったです。

次回でこの16話も終わりたいと思います。

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