魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~ 作:サニーブライト
チャ~ララ~ラ~ラ~
さやか
「皆様、新年明けましておめでとうございます!ワンダバフル☆ニュースのお時間です!キャスターの美樹さやかです!」
神童
「神童拓人です。では、新年初のニュースです。
ついに、このイナマギのお気に入り登録人数が100人を突破し、通算UAも4万を超えました。このことに作者のサニーブライト氏は『投稿が遅くなりがちなのに、読み続けてくれた読者の皆様のおかげです。心からありがたく思います』と、感謝のコメントを述べ、『今回から本格的に第2部の物語が始動するので、もっと皆様が楽しめたらうれしいです』とも述べているとの模様です」
さやか
「では、バラエティです。現在、
ピラッ
神童
「失礼。ここで臨時ニュースです。
本日、風見野市の路上で男女の惨殺死体が発見されました。遺体はまるで何かに食い殺されたかのように酷いもので、警察は猟奇殺人事件と扱いましたが、不明な点が多く、遺体の身元判明にいたる遺留品も損壊しているため、捜査は難航している模様です」
さやか
「では、バラエティです。現在、食戟プロリーグ10連覇中のタレント料理人、スライス秋山が」
ピラッ
神童
「失礼。ここで再び臨時ニュースです。
先ほどのニュースの続報です。遺体発見時より数時間前の目撃証言で被害者の男女と一緒にいた、娘と思われる小学生の少女が行方不明となっていることが分かりました。警察は少女が今回の事件に何らかの形で巻き込まれたと見ており、一刻も早い遺体の身元判明と少女の発見に力を入れていると同時に、学生たちに対する早急な帰宅要請を呼びかけているとのことです。
…………まことに申し訳ありませんが、我々にも要請がかかったようなので、本日のワンダバフル☆ニュース、ここで失礼します」
さやか
「あっ!でも、スライス秋山が!」
神童
「さやかさん。今回の俺たちの出番はここまでだ。行こう」
―OP『感動共有!』―
~~某日・某所~~
「ああ、なんということでしょう」
何処かの暗い一室に一人の少女が嘆いていた。
「ここまで来ても、あの未来は……変わらなかった」
少女は豪華な造りの椅子に座ったまま上を向く。そこには暗闇の天井しかなく、彼女が視たモノを暗示しているかのようであった。
「やはり、運命は変えられないようね……私が最初に視た、あの時から決まっていたことだった……」
~~回想~~
―――さあ。君の
少女が思い出すのは、あの白い妖精と契約した時の事。自身の魂の結晶を輝かせると、少女は純白のショールが付いた帽子と純白のドレスを身に纏い、美しい銀髪のポニーテールがほどけて広がる。そして言われるがまま、願いから生まれた魔法を発動すると彼女の目にある光景が映し出された。
「ここは…見滝原なの!?」
少女の目に映し出されたのは赤く染まった空に包まれる、崩壊した見滝原だった。たくさんの建物がガレキとなって次々と空に飲み込まれていき、それはまるでこの世の終わりのような地獄の光景だった。
「街が崩れていく……なんて力なの」
恐れおののきながらゆっくりと上空に目を向ける。そこには青いドレスを身に纏い、頭を下に向け、逆さまのまま浮いている巨大な怪物がいた。
「あれが魔女…?それにあれは…」
そこからさらに見下ろすと、そこには何人もの魔法少女とサッカーボールを携える少年たちの姿があった。誰もが決して臆さず、射抜くような視線で魔女を見据えていた。
(彼らはあれに立ち向かおうとしている…?彼らはこの世界を救う救世主だというの…?)
「これが私の運命だというのならば、なんとしても止めてみせるわ…」
少女は彼らと協力し、無邪気な声で笑いながら街を破壊する魔女と戦う決意を固めた。
―――その時だった。
「!!!」
突如、桜色の光が視界を覆う。そして光が晴れると、少女は絶句した。
「あ……あぁ…!」
少女は恐怖する。先ほどの魔女は消え、代わりに現れたのは更なる災厄。それは、この惑星をまるごと飲み干せるかと思うほど巨大な魔女だった。
「どうしたんだい?顔が真っ青だよ」
ここで映像は途切れる。少女は白い生物に答える余裕もなく全身からドッ、と大量の冷や汗を噴出させた。
「ハアッ…!ハアッ…!」
恐怖のあまり息が乱れる。先ほどの映像は夢から覚めたように見えなくなったが、脳裏に焼きついたその光景を忘れることは出来なかった。
「大丈夫かい?」
「え、ええ。大丈夫よ……」
少女は心を落ちつかせてゆっくりと考える。確かに最後に現れた魔女はとてつもない力を秘めていたが、彼らが敗北する姿は無かった。初めて使った魔法が本当に正しいものなのかと見定める必要があると判断した。
(もう少し、彼らの未来を視る必要がある……それまでは、あの未来は仮定としておきましょう……)
~~~~~~
「でもあの未来が見えなくなる日はなかった……そして、もう一つの未来も見え始めた」
~~~~~~
少女が見えたもう一つの未来。それは服のあちこちが破れ、身体中から血を流して横たわっている魔法少女と少年たち。しかしその中でただ一人、左腕に赤いバンドを着けた少年が満身創痍となりながらも立ち続けていた。
「―――――!」
少年は白い球を蹴りながら魔女に向かっていく。しかし、それをあざ笑うかのように魔女から無慈悲な光が放たれ、少年は倒れた仲間たちと共に飲み込まれる。
~~~~~~
「ある未来を期限として彼らの力を測ることにしたけど、結局あの予知が消える日は来なかった。あの予知こそ……希望の最後の一欠片を砕く、絶望の未来」
少女は下を向きながら手で顔を覆う。少女の彼らに対する希望は既に失われていたのだった。
「あの未来は誰にも止められない。運命の歯車を止めることは、彼らにも出来ない………
ならば、私が止めましょう」
少女は突然顔を上げ、吹っ切れたように鋭い光をその眼に宿らせる。
「もう黙っているわけにはいかない。私が視えた未来の一つ。それを利用しましょう。彼らに対する宣戦布告として……ね」
そう言うと少女はスッと、椅子から立ち上がる。
「キュゥべえ、いるかしら?」
少女は誰もいない正面を向かって呼びかける。
「……呼んだかい?」
すると、まるで潜んでいたようにあの白い生物が部屋の隅の暗闇から現れた。
「ええ。実はあなたにとって良いものが視えたの」
「それは興味深いね。それで、良いものというのは?」
「どうやら風見野にとてもいい魔法少女の素質を持っている子がいるみたいよ」
「へえ、それは楽しみだね」
「ええ。近いうちに会いにいくといいわ。そうすれば………
あなたの望んだモノが手に入るわ」
まるで何かを確信しているかのように少女は―――
~~風見野市・路上~~
「ふぅ……いっちょ上がり」
魔女を倒し終えた杏子がグリーフシードを手に取り、魔法少女服から普段着に戻る。風見野に到着した直後、杏子はさっそく魔女の気配を察知し、剣城と共に倒したのであった。
「あんまり大したことなかったな。それともあたしたちが強くなったのか?」
「そうかもしれませんね。ですがあれは……」
剣城が横目で見るのは、魔女に喰われ、肉塊と化した男女の惨殺死体だった。死体の損壊はひどく、手足は千切れ、骨や臓物が露出していた。さすがの剣城もそれを直視することは出来ず目を逸らしていた。
「……仕方ねぇだろ。あたし達が着いた時にはもうああなってたんだから」
「俺たちがもっと早く着いていれば……」
「過ぎたことをウダウダ言ってもしょうがねぇさ。それよりも………おいガキ」
「………」
杏子の視線の先に緑色の髪をゴムで両端を束ねた幼い少女がいた。彼女の両親なのか、男女の肉塊と血の海の前で膝を抱えて座り込み、泣くことも無く、ただ黙って死体を見続けていた。
「災難だったね。でも、現実なんてこんなものさ。震えたって泣いたって死んだ両親は帰ってこないよ。生き残った幸運に感謝するんだね」
「………」
少女は返事を返さない。まるで人形のように無表情で目の前の死体を眺めているだけだった。
「杏子さん。この子はどうしましょう?」
「どうもこうも、あたし達が連れて行くわけにはいかねーだろ。そのうち他の誰かが見つけて保護するさ」
そう言って杏子は踵を返して立ち去ろうとする。剣城も少女の事が気になるが、仕方がないように杏子についていこうとする。
「………」
が、少し歩いたところで杏子は足を止める。やはり気になるのか、杏子はちらりと後ろに振り返る。少女は未だに呆然としており、動く気配すら感じられなかった。その幼い少女を見ていると、杏子はどうしてもある少女のことを思い出してしまう。
(おねえちゃん)
「………」
背丈や年が近いからか、杏子は目の前の少女にその少女の面影を重ねていた。やがて杏子は「チッ…」と、軽く舌打ちすると少女の方に歩き出す。
「杏子さん…?」
剣城の呼びかけにも応じず、杏子は少女の背後に立つ。そしてポケットからロリポップキャンディーを取り出すと、少女の頭上に突き出す。それに気づいた少女も杏子を見上げる。少女にじっと見られながら杏子はぶっきらぼうに言った。
「……食うかよ?」
「はぐはぐ、もぐもぐ、むぎゅむぎゅ…」
「いいか。それ食ったらどっか行けよ」
あの後、杏子と剣城は少女を連れて近くの公園に移動していた。少女は二人と共にベンチに座りながら近くのコンビニで買ってもらった肉まんを夢中で頬張っていた。
「むぐ…!」
すると、突然少女の動きが止まる。どうやら肉まんを喉に詰まらせたらしく、苦しそうに胸を何度も叩きだす。
「ああもう、急いでがっつくからだ」
杏子が呆れながら一緒に買った缶ジュースを差し出す。少女はそれを受け取ると一気に飲み干す。
「お前がっつきすぎだろ。ちゃんと飯食ってんのかよ」
「ふへ……」
喉のつっかえが取れた少女は涙目で安堵の息を吐く。そして再びジュースを口にしようとしたその時。
―――なんで。
少女は目を見開く。それは確かに幻聴だった。しかし先ほどの出来事を思い出す度に、少女の頭の中でその声は響きわたる。
―――なんでお前だけ生き残った!?
~~~~
「わぁー変なお花が咲いてるー」
少女の目の前に不思議な紫色の空間が広がる。花が咲いた太い根っこのようなものがあちこちが伸びており、それまで一緒にいたはずの両親の姿がなくなっていた。
「ママとパパはどこだろ…?」
少女はキョロキョロと周りを見わたしながら両親を探し出す。すると後ろから何かがうごめくような音が聞こえる。
「ママ?…」
少女はとっさに後ろに振り向く。そしてそこにあったのは。
「ひ、ひぎぃぃ…!た、助け……」
魔女に身体を食われ、血まみれでもがき苦しんでいる母親の姿で、少女は悲鳴を上げて飛び退いた。
~~~~
「大丈夫か?」
剣城の呼びかけで少女はハッと気が付く。目をぱちくりさせながら周りを見わたすと剣城が心配そうに自分を見ており、杏子は正面を向いたまま目を閉じていた。現実を再確認した少女は安堵するように再び大きく息を吐いた。
「お前の両親を殺したのは、魔女っていう化け物さ」
杏子の言葉を聞いて、少女は杏子に顔を向ける。杏子は正面を向いたまま話を続ける。
「まじょ…?」
「ああ。そんであたしはその魔女と戦う魔法少女ってやつさ。マンガやアニメみたいな話だろ?でも、そういうもんみたいに希望に満ち溢れているわけじゃないし、何もかも上手くいくわけじゃない。居なくなった家族だって返ってきやしないのさ」
「………」
寂しげに語る杏子を黙って見つめる少女。その一方で剣城も杏子から少女に視線を移す。杏子の家族はもうこの世にはいない。この子も杏子と同じ身になってしまったと、少なからず哀れに思っていたのだった。
「お前も両親を亡くしちまったんだ。これからはお前も、この先どう生きるか考え……」
「……ゆま」
と、少女は突然杏子の言葉を遮る。二人はキョトンとした顔で少女を見る。
「あん?」
「おまえじゃなくて、ゆま」
どうやら呼ばれ方が気にくわなかったらしく、少女―――ゆまは膨れっ面で名乗った。大人しかった少女が急に生意気になり、杏子もイラッときて仏頂面になる。そんな杏子の苛立ちに気にすることもなく、ゆまはベンチから降りて尋ねた。
「ねえ、おねえちゃん。ゆまも魔法少女になれるかな?」
「はあ?何言ってんだ」
「ゆまも魔法少女になって、おねえちゃん達みたいに魔女と戦いたい!」
「バカなこと言ってんじゃねぇよ…!お前、あたしの話聞いてなかったのか?んなことよりこの先どう生きるか考えろって…」
「うん。だからゆまも魔法少女になっておねえちゃん達と一緒に戦うの!」
「簡単に決めるな」
「え…」
剣城も口を挟みだす。
「魔女との戦いはお前が思っているほど甘いものじゃない。痛いだけじゃ済まなくなる事だってあるんだぞ」
剣城は厳しい目つきで忠告する。剣城もこんな幼い少女に戦わせることは好まなかった。もっとも、その忠告の意味は魔法少女の大変さだけではなかったが。
「そんなの平気!ゆま、何だってするもん!」
「甘ったれんな」
ゆまの必死の懇願を即座に否定する杏子。
「文字通り命懸けなんだよ。同じ命を掛けんなら、まともに生きることに掛けるんだな」
杏子はウザったそうに言ってベンチから立ち上がり、ゆまの横を通り過ぎて立ち去ろうとする。
「ひっく…」
「?」
が、突然聞こえてきた声に立ち止まる。後ろに振り向くと剣城がギョッとした顔で驚いていた。何事かと杏子が引き返すと、ゆまはこちらに振り向く。そしてその顔を見て同じようにギョッと驚く。
「えぐ……えぐ……ううぅ…!」
ゆまは目に大量の涙を浮かべ、今にも大泣きしそうだった。
「お、おい……」
「だって……だって……そんなこと言われたって……ゆま、どうすれば……えぐ……ぐっす……うう…」
罪悪感がこみ上げるような顔で泣かれ、困り果てる杏子。このまま泣かれ続けたら、誰かが気づいて更に面倒な事になってしまうかもしれない。それどころかキュゥべえまで招き、勢いに任せて契約してしまうかもしれない。どちらにしろ、このまま放っておくことは出来そうになかった。
「あーもう!泣くな泣くな!たくっ、仕方ねぇな。マミにダメ元で頼むしかねぇか…」
杏子は呆れかえるように大きなため息をつきながら手で頭を押さえる。
「おねえちゃん…?」
「……いいか、あたしはおねえちゃんじゃない。佐倉杏子だ」
「キョーコ?」
「ああ。後であたし達が世話になってる奴の家に行くからな。それまで魔法少女になろうとか考えるなよ」
「うん!わかったよ、キョーコ!」
ぐうぅ~~~。
「「「………」」」
それは、ゆまの腹からなった音だった。
「はあ。どうやら肉まん1個じゃ足りなかったみてえだな」
「また何か買ってきます」
「ああ、すまねぇ。頼む」
杏子に頼まれ、剣城は再びコンビニに向かった。それを見送ると杏子は再びベンチに座った。
「とりあえずゆま。あたし達と一緒に来るんなら、あたし達の事を知っとかなきゃならねぇ。あいつが戻ってくるまで、ある程度話すからしっかり聞くんだぞ」
「う、うん」
「まず、さっきも言ったが魔法少女って奴は楽なもんじゃねぇ。んなもんになっちまったせいであたしは宿無しになったんだからな」
杏子は思い出すように目を閉じて語りだす。家族を失って剣城と出会うまで杏子は生きるために人に自慢できることではないこともやった。今でこそ、まともに暮らしているだけにその時の大変さをゆまにも味わせたくはないという思いから話し出したのだった。
「そんなあたしに宿をくれたのは昔の知り合いでな。色々とお節介な奴だが、あたしはそれなりに感謝はしてんだ」
「あ、チョウチョだ!」
と、突如漂ってきたチョウチョに興味が移り、ゆまは追いかけ始めてしまった。
「一応あたし達に飯や寝床までくれた奴だからな。世話になるなら、あんまり迷惑かけんじゃ……」
と、杏子が横に振り向くと、そこには既に誰もいなかった。
「……ゆま?」
杏子はベンチから降りて辺りを見渡す。
「ゆま?おーい、ゆま!?」
大きな声で呼びかけるが返事は無い。どうやら自分が思っているより遠くへ行ってしまったようだった。
「くそ!どこ行きやがったんだ……全く、ホント世話のかかるガキだぜ…」
「待って~!」
必死にチョウチョを追いかけるゆま。そうしている内にチョウチョは茂みに紛れて隠れてしまった。
「あっ、見えなくなっちゃった………アレ?」
ようやく立ち止まったゆまは周りを見渡す。が、人の姿はなく、ささやかな風の音だけが聞こえていた。
「キョーコ?……アレ?ここ、どこだろ?」
呼びかけても返事は無い。見渡しても誰もいない。
「キョーコ?キョーコ!」
大声で呼んでも、杏子どころか人っ子一人見当たらなかった。
「ひっく……どこ~!キョーコ!?」
孤独に耐えきれなくなり、泣き出してしまうゆま。それでも彼女を助けてくれる者は現れない。
「キョーコ~!ゆまを……一人にしないで…!ヒック、ヒック…」
号泣しながらゆまは必死に杏子に助けを求める。しかし、ただひたすら沈黙だけがゆまを包み込んでいた。
―――すると突然、近くの茂みから光がこぼれだす。
「な、なんだろ?キョーコかな?」
ゆまは涙を拭いて光った場所に近づいてみる。ガサガサと茂みを掻き分け、葉っぱがくすぐったいと思いながら進んでいくと開けた場所にたどり着く。
「う、う~ん……ここは…?」
そこには青いジャージを着て、ピンクの髪を2本おさげにした少女が座り込んでいた。少女は鮮やかな青緑の瞳と整った顔立ちをしており、美少女といってもおかしくないほどであった。
「キョーコ、じゃない…」
ゆまは人に会えてわずかに喜ぶが、杏子ではなかった為に再び涙ぐみそうになる。すると少女もゆまの存在に気づく。
「子供…?」
そして目を合わせるとゆまの目が赤くなっていることに気が付いた。
「おい、どうしたんだ?泣いてるのか?」
少女は心配そうにゆまに話しかける。ゆまは杏子と会えなくて張り裂けそうな思いを必死に抑え、涙声になりながら尋ねる。
「おねえちゃん……キョーコ知らない?」
「おね…」
少女は何故かショックを受けて苦い顔で口ごもる。その様子が不思議だと思ったゆまも涙を引っ込めて首を傾げる。そのままじっと見つめていると「はぁ…」と、少女はため息をつきながら立ち上がった。
「あのな……俺は男だ」
「えー?どう見てもおねえちゃんだよ?」
「くっ!」
ゆまが出会ったのは少女ではなく女顔の少年だった。彼は中性的な顔立ちと髪型のせいでよく女に間違えられるが、さすがに幼い少女に間違えられるのはこたえるのであった。が、すぐに仕切り直すようにゆまと向き直す。
「それよりも、お前どうしたんだ?迷子か?」
「ムッ!おまえじゃなくて、ゆまだよ!」
「そうか……じゃあ、ゆま。ここはどこだかわかるか?」
「ん~、わかんない…」
「やっぱり迷子か……キョーコってのは、ゆまの姉さんか?」
「ううん。でもおねえちゃんみたいにゆまをみてくれるの!」
「そうか…」
少年は考える。今の自分に置かれた状況を把握するにはここから動くしかない。しかし目の前の迷子を見捨てるのも気が引く。今の自分にある選択肢はゆまが探している人物を探しながらこの周辺を調べるしかなかった。
「仕方ないな……それじゃ、俺が一緒にそのキョーコって人を探してやるよ」
「ホント!?ありがとうおねえちゃん!」
「だから俺は男だって言ってるだろ!」
「だっておねえちゃんの顔見てると、どうしても呼んじゃうんだもん」
無垢な顔で言い切るゆまに少年は首をカクンと落とす。このままでは杏子を見つけるまでずっと女呼ばわりされそうであった。
「はぁ……しょうがないな……俺はおねえちゃんじゃない。俺の名前は、
「ランマル?」
「ああ。覚えたなら、おねえちゃんって呼ぶなよ」
「うん、ランマル!」
「やれやれ、仲間を探す前に迷子の親探しか……とにかく行こうか」
「あ、ランマル!ボール忘れているよ」
「え?」
霧野がゆまの指差す方を見ると、そこにはマギカボールが落ちていた。
「いや、これは俺のじゃないが……それに妙な魔法陣が描かれているな」
「ゆまがランマルを見つけた時にはそばに落ちてたよ?」
「そうなのか……まあ、とりあえず貰っておくか……にしても、みんなは無事だろうか……神童…」
~~風見野市・街中~~
霧野はゆまを連れて大通りに出る。杏子を見つけるには人通りが多い場所から探すべきだと判断したからだった。予想通り街は人でごった返しており油断すればはぐれてしまいそうだが、それだけ杏子と再会出来る可能性は高かった。
「この通りなら何か情報を掴めるかもしれないな。はぐれるなよ、ゆま」
「………」
「ゆま?」
「キョーコ……ちゃんと会えるかな…?」
「ゆま……」
不安になるゆまに霧野も心配すると同時に共感する。自分が今どこにいるのかさえ分からない中で探し人を見つけるのは至難の業にもなり得る。霧野はせめてもの気休めぐらいになるようなものは無いかと周りを見出す。
「ん?あれは……」
ふと路上の先を見つめると、どこかの店のエプロンを付けた女性がキャンディを配っていた。
「ただいまキャンペーン中につき、小学生以下のお子様にキャンディをプレゼントしております!」
「ゆま、もらってきたらどうだ?甘いものを食べると元気が出るぞ」
「うん、貰ってくる!」
ゆまは店員に駆け寄り、霧野も見守るようについていく。そしてゆまが近づくと気づいた店員がスッとキャンディを差し出す。
「はい。お嬢ちゃんどうぞ」
「ありがとうおねえさん!」
「良かったな、ゆま」
「せっかくなのであなたもどうぞ!」
「え?俺もですか?」
「ええ。小さな妹さんの面倒を見てるのが偉いと思って」
「い、いや……妹では…」
「ぜひ妹さんと一緒に食べてください、お姉さん!」
「………」
「またおねえちゃんって呼ばれちゃったね」
「ああ……俺はそんなに女に見えるか?まあ……もう慣れちゃったけどな」
慣れてしまったというより諦めたように肩を竦める霧野。現在二人は休憩がてら近くの建物の壁に寄りかかりながら、杏子を探していた。
「杏子いないね……」
「取り合えずキャンディを舐めて、いったん仕切り直そう」
二人は包み紙をはがしてキャンディを出す。どうやら貰ったのはミルクキャンディだったらしく乳白色をしていた。ゆまは嬉しそうな顔で杏子のマネをするかのように口の中に放った。
「うん!美味しいねランマル!」
「ああ…」
何度も口の中で転がして堪能するゆまと対照的に、霧野は目を閉じてキャンディの優しい甘みをじっくりと味わっていた。
「どうしたの?キャンディ、美味しくなかった?」
「いや。キャンディを舐めてると思い出すんだ。俺が強くなれた時の事をな……」
「ランマルが強く…?」
「機会があったら話してやるよ。舐めきったら行こうか」
そう言うと霧野は遠い目で空を見上げる。それはここにはいない誰かの事を想っているようで、なんとなく感じ取ったゆまも杏子の事を思い出す。
(ランマルが強く……ゆまも強くなって、キョーコの役に立てるかな…?)
数分後、二人はマギカボールを入れるための手提げ袋を購入し、人波が押し寄せる歩道を歩いていた。この道を抜けた先にある歩道橋で街中を見下ろすのが二人の狙いだった。
「やっぱりすごいな、この人波は。ゆま、大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ」
二人は人にぶつかってはぐれないように手を繋ぎながら歩いていた。
「もう少しの辛抱だ。手を離すなよ」
「うん……あっ!」
というところでゆまは足をつまずかせ、その一瞬のうちに手を離してしまった。
「しまっ…!」
「ランマル!」
霧野はすぐさま離した手を掴もうとしたが、人波に流されてしまう。一方でゆまも何とか踏みとどまり、人波に飲まれないようにすぐに壁際に寄る。しかし、振り向いた時には既に霧野の姿は見えなくなっていた。
「ど、どこ行ったのランマル…!」
急いで周りを見わたすが、霧野はどこからも現れない。
「ゆまを、一人にしないで…」
また一人になってしまい、ゆまは再び涙ぐんでしまう。
「ふえ~ん、どこ行ったの~?キョーコ!ランマル~!」
「―――ゆま!」
泣きべそをかくゆまが声に振り向くとそこには杏子がいた。
「あ、キョーコ!やっと会えた!」
嬉しさのあまりすがるように杏子に駆け寄るゆま。それに合わすように杏子もゆまの目線に合わせてしゃがみ込むと、ゆまは杏子の胸に顔を押し付けて泣きだした。
「ふえ~ん……」
「心配掛けやがって……大丈夫だったか?」
「うん。ランマルと一緒だったから大丈夫だよ」
「ランマル…?とにかく離れるぞ。この人ごみに飲み込まれたら厄介だ」
「あ……う、うん」
杏子に引っ張られ、人ごみに消えた霧野を心配しながらもその場から離れるしかなかった。
「ランマル、大丈夫かな……お礼、言いたかったな…」
「ぷはっ!やっと出られた……」
その数十秒後、霧野もなんとか脱出に成功し、すぐにゆまとはぐれた場所まで戻る。しかし既にゆまは杏子と共にその場を離れていた。
「ゆま、一体どこに行ったんだ……?」
その後、霧野は通りを捜しまわったが、結局ゆま達を見つけることは出来なかった。
しかしその後、思わぬ形でゆまと再会することになるのであった。
というわけで皆様お久しぶりですと同時に遅れましたが新年あけましておめでとうございます。
冒頭のニュースのコメントで述べた通り、お気に入り登録数や通算UAに関してはホントに感謝しております。もっともっと増やせるように頑張っていけたらと思いました。(何年たっても文才伸びないのが心許ないけど)
今回は織莉子を含めた、新たなキャラ三人を出しました。ここから雷門が織莉子からの襲撃にどう立ち向かっていくのか楽しみにしていてください。
ご感想お待ちしております。