魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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またまた大変長らくお待たせいたしました。

仕事が忙しかったり文が思いつかなかったり誘惑があったり(コラ!)で待たせてしまい申し訳ありませんでした。

さて、ここまで時間が掛かっている間にイナイレやまどマギで色々と変化がありましたね。新作が両方とも延期が続き(この小説ほどじゃない)、イナイレ最新作は来年公開、マギアレコードはリリースされました。

マギレコの方は作者は使ってる機種が古くてやれてませんので今は動画サイトで見てます。そろそろ機種変しようかな……。

出てくる魔法少女は皆かわいいし、ストーリーも面白いし、織莉子たち外伝組も実装されて声も獲得するという、おりマギ編を書いている自分にとっても嬉しいことばかりでした。これからは織莉子たちのセリフも脳内でアテレコしてもらえるとより楽しんでもらえるかと思います。

にしても、マギレコのおかげで魔法少女の年齢層が跳ね上がってきましたね。そういえば他の外伝においては社会人の魔法少女もいましたね……。


大学生や社会人の魔法少女………。


ここで、またまた音名野寺 丞(おとなのじ じょう)兄貴の力で復活したアニメの主人公のマネ!


え、何?お前ら、その歳で魔法少女なんて名乗ってんの?イタイタイタイタイ痛いよ~お母さん!ここに頭、大ケガした人達がいるよ~!


「アブソリュート・レイン!」

「桜火!」


ギャアアアアアア!


こんなんですが、これからもよろしくお願いします。





第17話『動き出した白い少女』 Bパート

~~風見野市・魔女結界~~

 

 

 

 

「ゆま、危ないから下がってろよ」

 

「うん、気を付けてね」

 

杏子はゆまと再会した後、剣城とも合流できた。が、その直後に魔女の結界に捕らわれてしまい、臨戦態勢に入っているところであった。

 

「にしても小っせえ魔女だな」

 

杏子が目の前を見つめる。その先にいるのは黒い球体の頭を白い布で覆った、ゆまと同じぐらいの背丈のした小人のような魔女だった。

 

「油断は出来ません。来ますよ!」

 

剣城がそう言うと、魔女は袖から似つかわしくないほど大きな拳を突き出す。そして拳を開き、白い歯をむき出しにした口のような使い魔たちを放つ。

 

「おらぁ!」

 

それに対し剣城がシュートを放って使い魔を一気に蹴散らし、そこから杏子が突き進む。

 

「そらよっとぉ!」

 

そのまま槍を振り下ろし、魔女が伸ばした2本の腕を切断する。一方で魔女も小さな体を生かし、ジャンプで軽やかに杏子の追撃を躱そうとする。

 

「逃がすか!」

 

そこへすかさず剣城が再びシュートを放ち、魔女の真横を掠めて逃げ道を塞ぐ。

 

「そこだ!」

 

突然の不意打ちに硬直した瞬間を逃さず、杏子が槍で魔女を上半身と下半身に両断する。

 

「すごい…」

 

物陰から見ていたゆまは二人の戦闘力とコンビネーションに驚くばかりだった。

 

(ゆまも、あんな風になれたら…)

 

そんなことを考えていると上半身だけになった魔女の頭から3本の刃が飛び出し、ゆまに飛び掛かる。ゆまは突然の急襲に反応できず、動くことすら出来なかった。

 

「え…?」

 

直後、魔女は杏子が投げた槍に貫かれ、呆然と固まっていたゆまの顔に魔女の血が降りかかる。

 

「大丈夫か?ゆま」

 

「う、うん」

 

杏子は魔女が絶命したことを確認するとゆまに駆け寄る。顔に付いた血は少量だったが、悪影響を及ぼす可能性もあるので、直ぐに剣城から借りたハンカチで顔を拭う。そして額に着いた血も拭おうと前髪をめくると、二人の動きが止まった。

 

「!」

 

「これは…!」

 

そこにはタバコの火を押し付けたような痛々しい火傷の痕が幾つもあり、明らかに魔女によるものではなかった。気になりはしたが、血を拭うことを最優先とした杏子はせっせと額の血を拭き取る。一通り拭き終わると、杏子は剣城にハンカチを返し、何かを察して尋ねた。

 

「……親、か?」

 

ゆまはハッと顔を上げる。そしてすぐに下を向き、怯えるように震えだした。

 

「話したくねぇなら言わなくていいけどよ」

 

そう言うと杏子は変身を解きながら横を向く。幼い少女の口から嫌な話を語らせるのは、杏子としても快くなかったからだった。

 

「……ゆま、本当はパパもママも好きじゃなかった」

 

語りだしたゆまに杏子と剣城は注目する。

 

「パパとママはけんかばっかり。パパはいつも帰ってこないし、ママは……ゆまにいじわるするの。パパが帰ってこないって……パパがおそとに遊びに行っちゃうのは、ゆまが可愛くないせいだって。ゆまに………すごくいじわるするの」

 

怯えているような空虚な目で語るゆま。脳裏には何度も自分を蹴り、額に火のついたタバコを押し付ける、歪んだ顔の母親の姿が浮かんでいた。

 

「虐待、か…」

 

「世知辛いねぇ……でもまあ、親に裏切られる気持ちなら分からなくもないよ。あたしも似たようなもんだからな……」

 

そう言われたゆまは思わず顔を上げる。杏子は遠い目をしていたが、先ほど出会った霧野とは違い、憂いるような悲しいものだった。杏子は自分の気持ちが伝わらず、自分を残して一家心中してしまった父親の事を思い出していた。そのことに同情するように剣城も暗い目で地面を見た。三人が憂い募らせているうちに結界は消滅し、周りの景色は普通の公園に戻っていった。

 

 

 

 

 

~~風見野市・市立公園~~

 

 

 

「………」

 

景色が戻っても三人は一言も喋らず、沈黙は続いた。そんな中、ゆまは奮い立たせるようにスカートの裾を掴む。

 

「ゆまは…」

 

「「!」」

 

「ゆまは……強くなりたいっ!」

 

ゆまは切実の思いを込めてそう叫ぶと必死の形相で問い詰める。

 

「ねぇ!キョーコ達はなんで魔女と戦ってるの!?」

 

「それしかやることがないからだよ」

 

「キョーコが強いのは魔法少女だから?」

 

 

 

(―――お前なんか何も出来ないんだ!)

 

 

 

ゆまは考えていた。なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか。愛されるべき親からひどい仕打ちを受け、必要とされなかったのはなぜか。そして、そんな親たちを殺した魔女を倒した杏子と出会って思った。

 

(ゆまがいじめられるのは、ゆまが弱いから…?)

 

母親が自分を痛め続けたのは自分が何の役にも立てないからだと。今はこうして杏子の傍についているが、役立たずで弱いままじゃ、いつか杏子も自分を捨ててしまうかもしれない、そんな恐怖がゆまの心を縛り付けていた。

 

「ねぇ教えて!どうすれば魔法少女になれるの!?魔法少女になればキョーコみたいに強くなれるの!?」

 

「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇよ……魔法少女なんてろくなもんじゃねぇんだ」

 

「魔法少女って他にもいるの!?魔法少女ってみんなキョーコみたいに強いの!?」

 

「だから……」

 

 

 

「いるよ」

 

 

 

そこへ話に割り込んでくる者がいた。それは、白いネコのようなあの生物。

 

「この世界にはたくさんの魔法少女がいるんだ。そしてゆま。織莉子の言う通り、君もその素質があるみたいだ」

 

それは言うまでもなく、杏子を魔法少女に変えたキュゥべえであった。

 

「わあ!ぬいぐるみがおしゃべりしてる!」

 

「ぬいぐるみじゃないよ。僕はキュゥべえ。よろしくね、ゆま」

 

ゆまは突如現れた喋る不思議な生き物にはしゃぎだし、無邪気にぎゅっと抱きしめたのだった。

 

(なんでコイツがここに…?それに、“織莉子”?)

 

一方で杏子は何の前振りもなく現れたキュゥべえに疑問を持ったが、同時に初めて聞く名前にも気になりだす。

 

「貴様……見かけなくなったと思っていたが、よくも俺たちの前に姿を現せたな」

 

剣城がいまいましそうな目でキュゥべえを睨みつける。

 

「相変わらず君は僕に対して厳しいね。でも今回用があるのは彼女さ」

 

そう言うとキュゥべえはゆまに顔を向ける。

 

「さっきも言ったけど、君も魔法少女になれるよ」

 

「ほんと!?ゆまもキョーコみたいになれるの!?」

 

キュゥべえの言葉にゆまも杏子の力になれると期待を膨らませる。

 

「本当だよ。それに魔法少女になれば―――」

 

「それ以上ガキに余計な事吹き込むんじゃねぇよ」

 

ここで杏子がキュゥべえの耳を掴んでゆまから引き離す。

 

「やれやれ、やっぱり君たちの前じゃ新しい魔法少女を生み出すのは難しいみたいだね」

 

そう言いながら、キュゥべえは杏子から放り投げられる形で解放され、地面に着地する。

 

「でも、君たちはワルプルギスと戦おうとしている。一緒に戦う魔法少女は多い方が合理的じゃないのかい?」

 

「誘導させるような言い方はやめろ。魂胆が見え見えなんだよ。それに戦う仲間ならもう間に合ってる。だろ?剣城」

 

「ええ。ゆまの話によると、彼女が出会ったのは間違いなく霧野先輩です。DFの霧野先輩が戻ってくれば、俺たちの守りに関する問題も少しは改善できるはずです」

 

「というわけだ。お前はお呼びじゃねーんだよ、失せな」

 

杏子はシッシッ、と手を振って追い払おうとする。

 

「以前よりも更に嫌われてるみたいだね。僕にゆまの事を教えてくれた織莉子とは大違いだよ」

 

(また“織莉子”……誰なんだそいつは?)

 

「やれやれ、仕方ないなぁ。今は引いてあげるよ。その雷門の新しいメンバーも化身使いなら僕にとっても良いからね。もっとも、雷門の仲間が一人増えただけじゃワルプルギスには敵わないだろう。不安なら、まどかやその子に……」

 

「それ以上言うなら今度は俺が蹴り飛ばす」

 

剣城が一歩前に出てキュゥべえの話を遮る。するとキュゥべえも水鳥に蹴られたのが応えたのか「はいはい…」と仕方ない様に話を打ち切って去っていった。

 

「相変わらず虫唾が走る野郎だ」

 

杏子がふて腐れていると、ゆまが困惑しながら杏子の服の裾を掴む。

 

「ね、ねえキョーコ…」

 

「ゆま、今見たモンの事は忘れろ」

 

「!……つ、剣城おにいちゃん……」

 

「何を言おうとしてるかは大体予想が付く。だが、それは俺も認めるわけにはいかない」

 

「そんな…」

 

「ゆま」

 

杏子はショックを受けているゆまの頭に手を置き、冷淡な声で言った。

 

「魔法少女になろうとするな」

 

「………」

 

そう言われると、ゆまも黙り込んでしまい、それ以上の話を続けることは出来なかった。

 

「さ、日が暮れねえ内にゆまが出会った雷門の仲間を探しに行くぞ」

 

「ええ」

 

杏子と剣城が霧野を捜しに向かうと、ゆまも遅れないように二人の後に続いて歩き出した。

 

(なんでだろう?キュゥべえはゆまも魔法少女になれるって、言ったのに。なんでキョーコも剣城おにいちゃんもダメって言うんだろう?)

 

そんなことを考えながら、二人の背中を見上げるゆま。自分が魔法少女になることを何故そこまで拒むのか、ゆまには理解できなかった。

 

 

 

『戦う仲間なら間に合ってる』

 

『霧野先輩が戻ってくれば』

 

 

 

(ゆまよりランマルの方が強いから?)

 

頭をよぎったのは二人が先ほど口にしていた言葉。二人は霧野を当てにしている。そこから更に思い出すのは霧野の言葉。

 

 

 

『思い出すんだ。俺が強くなれた時の事をな……』

 

 

 

(ランマルは強くなれた。だから二人はランマルの方がいいの?だったら何で、ゆまは魔法少女になって強くなろうとしちゃダメなの?)

 

強くなれない。強くなければ捨てられる。そんな無力感と恐怖が再びゆまの心に襲い掛かり、自分を痛めつける母の記憶を甦らせる。

 

 

 

『お前なんか何も出来ないんだ、バカガキ!

 

―――役立たず!!!』

 

 

 

(やっぱりキョーコも……ゆまの事を役立たずって思ってるのかな…?)

 

心の一部を削られたような喪失感に陥るゆま。再び見上げた二人の背中はとても遠くに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

~~同時刻・某所~~

 

 

 

「ここまでは予定通り……彼らの望みに傷をつける未来に進んでるわ。さて、私も動きましょうか。後押しをするために」

 

誰もいないどこかの路地裏で織莉子は黄昏時に近づいていく空を見上げながら一人語っていた。

 

「ああ、深い。人の思いはなんて深いのかしら。それが神や悪魔を、そして全てを生み出すのだわ」

 

「それは素晴らしいことだね」

 

織莉子は不敵な微笑みを崩さないまま振り向くとキュゥべえが佇んでいた。

 

「あら、キュゥべえ。どう?彼女は魔法少女に出来た?」

 

「いや、止める者たちがいたからね。君の言う通り中々の素質だったのに」

 

「そう。だったら今度は私も協力してあげるわ」

 

「それはありがたいね。それにしても“人の思いは全てを生み出す”か。確かにその通りだね。本当に素晴らしいよ。それが魔法少女を生み出し、傍にいる彼らの力を引き出すものなのだからね」

 

「ええ、だからキュゥべえ。あなたも感謝しなければならないわ。

 

 

 

―――あなたの望んだものが手に入るのだから」

 

織莉子は、微笑みをより一層深めてそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~市立公園・夕方~~

 

 

 

「見つからねぇな……このまま日が暮れそうだぜ」

 

「早く見つけないと、今度は別の町へ行ってしまうかもしれませんね……」

 

霧野を捜索し始めてから数十分後、3人は公園を中心に周囲を探し回ったが未だに見つけられずにいた。徐々に沈んでいく夕日が杏子と剣城の焦りを加速させる。

 

「ゆま、お前の話が正しけりゃそう遠くへは行ってねぇはずだ。どっか心当たりねぇか?」

 

「ううん。さっきランマルと一緒にいたところは全部行ったから……」

 

「手掛かり無しか……霧野先輩、一体どこに…」

 

「………」

 

(ゆま、やっぱり役に立ってない……二人ともランマルを必死に探してるのに。やっぱり二人とも、ゆまの事……)

 

遠くを見つめる二人の背中を見つめ、歯痒くなるゆま。二人は何の力も持たない自分の面倒を見てくれる。それなのに自分はその恩を返すことも出来ない。何も出来ない自分はやっぱり役立たずなのかと自分の力の無さを痛感していた。

 

「「!」」

 

その時、杏子と剣城は覚えのあるおぞましい気配を感じた。

 

「ちっ!魔女か……時間掛けられねぇてのによ」

 

「とにかく早く退治しに行きましょう。また誰かが犠牲になるかもしれません」

 

「仕方ねえな。ゆま、お前はここで待ってろ。絶対動くんじゃないぞ」

 

「う、うん」

 

「行きましょう、杏子さん」

 

ゆまをその場で待機させ、二人は魔女の元へ向かったのだった。

 

「キョーコ……」

 

 

 

 

~~魔女結界・最奥~~

 

 

 

「あいつがこの結界の主か」

 

結界を見つけた剣城と杏子は途中で使い魔に襲われながらも退け、結界の最奥にたどり着く。そこは空中から何本もの巻物が長く開かれている空間で、奥にはドクロ頭で和服を着た一本足の魔女と、腹巻きを付けたナマコのような使い魔たちがいた。

 

「おりゃあ!」

 

手始めに杏子が接近して使い魔たちを一掃して飛び上がる。

 

「ふっ!」

 

そこへすかさず剣城が魔女にシュートを放つが、魔女をジャンプして躱す。そこへ杏子が上から槍を叩き込むが、再びジャンプで躱されてしまう。

 

「くっ、すばしっこいな」

 

杏子が歯嚙みしながら突撃するが魔女は三度飛び跳ねる。

 

 

ペロン

 

 

「ひゃあ!」

 

杏子が素っ頓狂な声を上げる。魔女がすれ違いざまにドクロから伸ばした舌で杏子の背中を舐めたからだった。

 

「こ、この!///」

 

「ふぎぃ!」

 

杏子は顔を赤くしながら振り向き様に槍を振るう。槍はドクロの頭に当たって魔女を地面に叩き付ける。

 

「杏子さん!」

 

杏子が地面に着地すると剣城が心配そうに駆け寄ってくる。

 

「大丈夫だ。それより……」

 

「?」

 

何事か、と思っていると杏子は後ろに振り向き、

 

「い、今の事は皆には絶対言うなよ……///」

 

恥ずかしそうに思いきり睨みつけてきた。剣城は気まずそうに「は、はい…」と返事を返した。そうしている内に魔女は再びゆったりと起き上がる。

 

(なんでだ…?)

 

気持ちを切り替えた杏子は魔女を見つめる。ふざけた行動をする魔女だが、杏子の歴戦の魔法少女としての勘が何かを告げる。

 

(嫌な予感がする…!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

~~市立公園・夕方~~

 

 

 

「暗くなってきたな、ゆまは無事だろうか……」

 

剣城と杏子が魔女と戦い始めたころ、霧野は公園の結界近くにやって来ていた。

 

「このままじゃゆまを見つけるどころか野宿だな。とにかく、一刻も早く見つけ……っ!?」

 

これからの行動を考えていると、ボールを入れた袋が突然光り出す。

 

「な、何だ!?」

 

霧野は袋から光るボールを取り出すと、自身の身体も光り出し、格好がジャージから背番号3番のユニフォームに変わる。

 

「ユニフォームに変わった……っ!」

 

するといつの間にか目の前に魔女の結界の入口が現れていた。

 

「入ってこい……てことか?」

 

誘われるがままに霧野は結界の中に入っていった。

 

 

 

 

 

~~魔女結界~~

 

 

 

「ここは一体……」

 

不気味な魔女結界に足を踏み入れてしまった霧野。不思議な空間を見渡している内に、背後にあった入口が消滅する。

 

「出口が…!誰かの罠だったのか……っ!?」

 

その時、何かの気配を感じ、前を見ると使い魔たちが現れていた。

 

「怪物…!?うわっ!」

 

ゆっくりと驚いている暇も無く、使い魔は飛び跳ねて襲い掛かってくる。霧野はギリギリで躱して危機を脱する。

 

「くそっ!こんなところで死んでたまるか!」

 

霧野は普段はあまり撃たないシュートを放って襲ってきた使い魔を倒す。しかし、ボールが戻ってくるときには地面から新たな使い魔が次々と現れる。

 

「くっ!キリが無い……はあっ!」

 

再びシュートを放つが、使い魔に当たって跳ね返ったボールが使い魔の一体に取られてしまう。

 

「ボールが……!どちらにせよ、ここにいたら危険だな。ボールを返してもらうついでに通させてもらう!」

 

相手にしてられないと判断した霧野はボールを持った使い魔に向かって走り出す。

 

「『ザ・ミスト』!!!」

 

霧野は右手を左から振りかざすと背後から白い霧が発生する。どこからともなく現れた霧に使い魔たちは混乱し、その隙に霧野が霧の中から現れ、使い魔からボールを取り返し、そのままドリブルで突破する。

 

「俺の技がこんな形で役に立つとはな……それにしても出口はどこだ?」

 

ドリブルを続けながら出口を探しまわる。しかし何処を見渡しても不気味な光景が広がっているだけだった。

 

「でやっ!」

 

「この!」

 

「!」

 

霧野は咄嗟に立ち止まる。遠くの方で誰かの声と大きな衝撃音が聞こえていた。

 

「俺以外にも誰かいるのか?……行ってみよう!」

 

 

 

 

 

 

~~市立公園~~

 

 

 

「キョーコ、大丈夫かな…?」

 

そのころ、ゆまは一人沈んでいく夕日を見ながら杏子たちの帰りを待っていた。

 

「キョーコ……」

 

 

 

『お前はここで待ってろ。絶対動くんじゃないぞ』

 

 

 

杏子の身を案ずると同時に先ほどの言葉を思い出す。自分だけ置いてきぼりにされたのは、やはり自分が足手まといだから。魔法少女になることも許されないのも、なったとしても役に立たないからだと思い始めた。捨てられたくない。その為に強くなりたい。強くなりたいのになれない。結局いつか捨てられてしまう。そんな悪循環がゆまの頭の中でグルグルと駆け回っていた。

 

「キョーコは、ゆまのこと……」

 

 

 

「―――何の力も持たない者は何も出来ない。ましてや何もしようとしない者にはね」

 

 

 

「え?」

 

いつの間にか白いドレスを身に纏った少女が背後からゆまの肩に手を置いていた。

 

「だ、だれ?」

 

「私は織莉子。あなたに伝えに来たの。佐倉杏子に死神が迫っていることを」

 

「しに、がみ…?」

 

織莉子のささやくような言葉にゆまの動きが止まる。死という単語が聞こえた瞬間、凄惨な姿で死んでいった母の姿が頭をよぎった。そこから連想されるのは当然。

 

「キョーコ……しんじゃう……の…?」

 

信じられないように震える声で訊き直すと織莉子はニコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

~~魔女結界・最奥~~

 

 

 

「そこだ!」

 

杏子の槍が魔女のドクロの額に突き刺さる。魔女は血を吹き出すと同時にグリーフシードが排出して動かなくなる。

 

「終わりましたね」

 

「ああ、案外大したことなかったな。やっぱり気のせいだったか……」

 

「え?」

 

「いや、何でもねぇ」

 

杏子は空ぶかしに終わった心配を捨て去るようにグリーフシードを拾うと、無造作に何度も空中に放りだす。

 

「とにかく邪魔は消えたんだ。早くゆまんとこ戻って……」

 

そう言って剣城に向き直した直後、パンッ、というクラッカーのような破裂音が響く。手元を見ると、グリーフシードは割れた電球のように粉々になっており、そこから「はずれ」と書かれた紙がヒラヒラと舞っていた。二人があっけに取られていると地鳴りが起こる。そして地面から障子のようなものが結界を彩るように次々と現れる。

 

「結界が変化してる……割れたのは外っ側だけってことか」

 

杏子が冷静に分析していると、魔女は胴体をドクロから突き出し、そこから更に蛇のように長い胴体を持った二つの顔を伸ばしていく。さらにその横で使い魔たちが、昨日戦った使い魔のように一ヶ所に集まり、壁を作り出していた。

 

「ここからが本番、みたいですね……」

 

剣城が警戒しながら呟くと、二人の背後からツボのような使い魔が現れ、その口から更に小さい使い魔を吐き出していく。

 

「くっ!チマチマとウザい奴だな!」

 

杏子は振り向き様に槍を払って使い魔を蹴散らすと、剣城も魔女に向かってシュートする。

 

「―――尾っ穂、捕っ。欄、乱、蘭」

 

しかし、魔女は不気味な声を上げながら飛び跳ねてシュートを躱す。そしてそのまま二つの顔を伸ばして襲い掛かってくる。

 

「くっ!」

 

「ちぃ!」

 

二人は噛みついてくる二つの顔を右へ左へと飛び回って躱していく。一方で魔女の本体が着地すると、使い魔の壁が反対側に回り込み、二人は挟み撃ちにされてしまう。

 

「クソッ!囲まれたか!」

 

杏子と剣城はとっさに背後を取られないように背中を合わせる。これは昨日まで行っていた特訓の中で身に着けたもので、敵に囲まれたときに有効な戦術の一つであった。

 

「あの使い魔たち……昨日戦った奴らと特性が似てますが、どうやら魔女を守ることなく攻撃してくるようですね……」

 

「ああ。うかつに魔女を狙うとマズそうだ。あの壁もきっと一部を壊してもすぐ直るだろうな……さて、ここからどうするか……」

 

 

 

「―――『ディープミスト』!!!」

 

 

 

二人が視線だけを動かして次の手を模索していると突然深い霧が現れ、魔女と使い魔を包み込んでかく乱させる。

 

「な、何だ!?」

 

「この技は…!」

 

「剣城!」

 

二人が声に気づくと、霧野が駆け寄ってきていた。

 

「霧野先輩!」

 

「無事だったのか!ここは一体…」

 

「話は後だ!戦えるなら手伝え!」

 

「え?何を……」

 

「とにかく、手伝ってください!ここから出るために!」

 

 

 

 

~~市立公園~~

 

 

 

「はあっ……はあっ……」

 

霧野が剣城たちと合流したころ、ゆまは必死に杏子を捜していた。まだ幼く発達してない身体で走り続け、肺が破けそうでも、足が棒のようになっても捜し続けていたのだった。

 

「キョーコ!どこにいるのキョーコ!」

 

周りを見渡しながら何度も呼びかけるが、姿も無ければ返事も無い。返ってくるのは無慈悲な静寂だけで、その度に織莉子の言葉が頭の中でこだまする。

 

 

『―――死神が……』

 

 

「キョーコ……しんじゃやだ……やだよぉ……キョーコ!」

 

涙がこぼれそうになりながらも、杏子はまだ生きていると信じ、息を切らせながら再び走り出す。

 

「あっ!」

 

が、途中で勢い余って地面に蹴つまづき、倒れ込むように転んでしまう。

 

「う、うう……痛い、痛いよぉ…」

 

擦りむいた膝から血が滲みだし、痛みで涙を浮かべる。しかし、こうしている間にも杏子が死んでしまうかもしれない。死んでほしくない。その想いだけで必死に両手を着いて起き上がろうとする。必死に身体を起こそうとするがが、捜し疲れてそれ以上の力が入らず、足の痛みも相まって立つことが出来なかった。

 

「早く、早く見つけないと…!どこにいるの…?キョーコ…!」

 

ゆまの目から涙が伝う。杏子は死にそうになっていた自分を助けてくれたのに、自分は助けるどころか立ち上がる事も出来ない。そんな無力な自分に対する嫌悪感と杏子を失う恐怖心が募るばかりであった。

 

 

 

「杏子がどうかしたのかい?」

 

 

 

そんな時にあの白い生物が街灯の上から話しかけてきたのだった。

 

 

 

 

 

 

~~魔女結界・最奥~~

 

 

 

「ようやく終わりが見えたな。たくっ、面倒な時にてこずらせやがって」

 

杏子がふて腐れる。霧野が加わってから戦況は一気に逆転した。霧野の必殺技が魔女と使い魔の目くらましとなってスキを作り、剣城と杏子の怒涛の攻めで使い魔を全滅させ、魔女もボロボロになっていた。

 

「魏ヒ、魏ィィ……」

 

「まあいいや。こうして目的も果たせたし、一気に決めるぞ」

 

「はい」

 

「あ、ああ…」

 

前に出る杏子は二人と視線を合わせ、剣城と霧野はそれぞれ相槌を打つ。

 

「ギィィ……」

 

すると魔女は突然長い顔の一つを地面に向け、口から大量の血を吐き出した。

 

「血…?」

 

魔女の血に目を奪われていると、魔女は飛び跳ねて杏子たちの反対側に着地する。

 

「悪あがきに目くらましの猿真似か?往生際が悪いんだよ!」

 

杏子はトドメを刺そうと振り返り、槍を構えて走り出す。そして剣城と霧野の間を通り抜け、全員の視線が魔女に向いた直後。

 

ズアッ!

 

魔女が吐いていた血が突然ゼリー状になって背後から襲い掛かってきた。

 

「何っ!?」

 

「くっ!ディープ……」

 

三人は同時に気づき、霧野が必殺技で防御しようとしたが、魔女の血は急速なスピードで剣城と霧野に迫る。

 

(間に合わな…!)

 

「あぶねえッ!」

 

杏子は咄嗟に、両手で扉を開くように二人を左右に突き飛ばす。そして(まばた)きする間もなく、魔女の血は杏子の四肢に纏わりつく。

 

「くっ、離しやが……」

 

杏子は血を振り払おうとしたが、魔女の血は杏子の手足を拘束したまま焼けるような音を立てて光り出す。

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

―――バツン!!!

 

 

 

 

 

破裂すると同時に杏子の四肢を切断したのだった。

 

「―――ッ!!!」

 

「なっ!?」

 

「杏子さんっ!!!」

 

杏子はあまりの激痛に声なき声を上げ、倒れ込んだ霧野と剣城は目を見開く。

 

(……ああ、しまったな。あたしとしたことが、らしくねぇことを……少し前までこんなんじゃなかったんだけどな)

 

剣城たちはそれぞれ立ち上がり、必死の形相で杏子を助けようと駆け出すが、魔女は既に杏子の目前まで迫っており、シュートを撃ったとしても到底間に合わなかった。

 

(マズイな。これ、死ぬじゃん……こんなガラでもねぇ事しちまったのは、もっと前のあたしのことを思い出されちまったせいかな……)

 

現実は一瞬のはずなのに、自分だけは時が遅くなったようにゆっくりと倒れていく。杏子はそんな不思議な感覚に陥っていた。

 

(これで見るのは2度目かな……色んなことを思い出されちまう)

 

杏子の頭にさやかと心中しようとした時のような走馬灯が駆け巡る。さやかを助け出してからの生活は、それまでの杏子には考えられなかった事ばかりだった。仲間たちと共に食事して、特訓して、ケンカもするけど笑い合える。そんな人の温かさを味わい、自分も幼い少女の面倒を見るようになった。そんな思い出も四肢と共に奪われ、力なく倒れていく中、杏子は視線だけを動かす。視界に入ったのは必死に叫びながら走って来る剣城の姿。

 

(剣城……わりぃな。あたしのために色々してくれたのに)

 

出会ってからずっと自分を支えてくれた剣城。最期の言葉も、芽生えていた想いも告げることなく死んでしまう事を心から詫びた。

 

(霧野、だったな……ゆまの面倒を見てくれて、ありがとな)

 

反対側から走って来る霧野に視線を移し、感謝の意を込める。そして視線を前に戻すと目の前には残った自分の身体を食らおうと長い胴体の口を大きく開ける魔女がいた。

 

(さやか……)

 

ふと頭の中にさやかの顔が浮かぶ。自分が叶わなかった願いを叶え、自分の分まで幸せになってほしいと無意識に考えたからかもしれない。そこまで思考が至った瞬間、マミや他の仲間たちの笑顔まで思い出してしまう。

 

(みんな……ゴメン)

 

もう助からない。そんな諦めの心だけが杏子の中にあった。

 

(どうやらあたしはここま―――)

 

 

 

 

 

「―――だめっ!!!」

 

 

 

 

 

次の瞬間、魔女の口が閉じた。しかし、その口は何も捉えておらず、杏子の姿もいつの間にか無くなっていた。どこへ行った、と魔女は周囲を見渡す。すると、どこからともなく深い霧が現れ魔女の周囲を包み込んでいく。

 

「ギィ!」

 

魔女は必死に払おうとするが、今度は背後から伸びてきた鎖に巻き付かれ、一本釣りのように上空へ引き上げられると、一気に霧の中に引きずり込まれる。霧を抜けた先では杏子が待ち構えていた。鎖は彼女の槍の中に仕込まれていたもので、杏子は五体満足で鎖を引っ張っていた。

 

「でやあぁぁっ!」

 

そして化身アームドを纏った剣城がシュートを放ち、引き寄せられていたことによって何倍もの衝撃を受けた魔女は粉々に粉砕されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~市立公園・夜~~

 

 

 

魔女が倒されたのと同時に結界も崩壊し、空中に放りだされたグリーフシードを杏子が回収する。そして着地したと同時に服を普段着に戻す。

 

「杏子さん、大丈夫ですか?」

 

「ああ……何が起きたか知らないけど命拾いしたみたいだな」

 

杏子は改めて自身の肉体を確認する。確かに自分は魔女に四肢を奪われ、絶体絶命のピンチのはずだった。しかし魔女に喰われる直前、何事も無かったかのように四肢が再生し、魔女を倒すことが出来た。剣城はもちろん、初めて会ったばかりの霧野も明らかにそんな能力は持っていない。あの現象は一体何だったのか。

 

「杏子さん、どうして……」

 

「だから何が起きたかあたしにも……」

 

「違います。俺が言っているのはどうしてあんな危険なことをしたかです」

 

「!」

 

杏子は思い出す。かつてさやかの為、仲間たちの為に犠牲になろうとしたこと。そしてその時剣城に言われた事も。今の彼はその時と同じ目をしていた。

 

「言ったはずです……誰にも死んでほしくないと」

 

「い、いいじゃねぇか。こうして無事だったんだから。そのおかげでお前も……」

 

「はい。助けてもらったことには感謝してます。でも、だからって代わりに杏子さんが死んでは…!」

 

「わ、わかったわかった!あたしももうあんなムチャしねぇから、それ以上言うな!」

 

杏子は強引に話を終わらせる。考えてみれば自分が一刻も早くトドメを刺そうと急いだせいで魔女の罠にかかってしまった。そんな自分を心底心配してくれる剣城の視線がたまらなかった。

 

「杏子さん…」

 

理解してくれたことに安堵した剣城は大きくため息をつく。そんな剣城に杏子も少しだけ照れて顔を逸らした。

 

「剣城…」

 

そこへ話を切り替えるように霧野が話しかけてくる。事情はわからないが、大事な話だと察して待っていたようだった。

 

「今の怪物は何だったんだ?それに彼女は確かに…!」

 

未知の出来事の連続に冷や汗を掻く霧野。一方で気持ちが落ち着いた杏子はポケットから取り出した棒状のスナック菓子を頬張る。

 

「……あたしもわかんないんだよね。回復できるダメージじゃなかったってのに。勝利の女神でも現れたってのか?」

 

 

 

 

「そうだよ」

 

 

 

 

ふと聞こえてきた声に振り向くと、杏子は目を見開き、絶句した。

 

「やったね!キョーコ!」

 

信じられないものを見たように驚愕する杏子。無邪気な笑顔で呼びかけたのは待機していたはずのゆまだった。しかし格好はいつもの緑のワンピースではなく、頭にネコ耳の白い帽子を被り、胸元に鈴、腰に大きなリボンを付け、肩を露出した緑と白のドレスを着ており、その下にドロワーズを履いていた。そのファンタジーを思わせる姿は紛れもなく、魔法少女であった。

 

「お、お前……ゆまか!?」

 

「あ、ランマル!見てみて!ゆまも魔法少女になったんだよ!」

 

「まほう…しょうじょ?」

 

「……なんてことだ…」

 

霧野は何の事か分からず戸惑い、剣城は恐れていた自体に嘆きだす。そんな二人の様子を気にせず、ゆまは嬉しそうにトテトテと杏子の元に駆け寄った。

 

「キュゥべえの言ったとおりだ!ゆまだって戦えるよ!治癒魔法って言うんだって!これからキョーコがケガしても、ゆまが治してあげるからね!えっへん!」

 

誇らしげに胸を張るゆま。もう自分は役立たずなんかじゃない。杏子の危機を救うことだって出来る。これならきっと杏子も褒めてくれる。そう信じて疑わなかった。

 

 

 

パンッ

 

 

 

直後、ゆまの頬に杏子の無言の平手が飛んできた。

 

「え…?」

 

「お、おい!いきなり何を…!」

 

突然の平手にゆまの変身が解け、咎めようとした霧野の肩を剣城が掴んで静止させる。そして杏子は冷え切った声色で尋ねた。

 

「……ゆま、何で魔法少女になった?」

 

「え……だ、だって…」

 

「だってじゃねぇ!」

 

予想外の反応に動揺しながらも反論しようとしたゆまだったが、火が付いたように怒鳴る杏子に両肩をガッ、と掴まれ、口をつぐんでしまう。

 

「言っただろうが!魔法少女になんかなるなって!!!」

 

大きな声で怒鳴りつける杏子。自分は魔法少女になってしまったから家族を失ってしまった。たった一つの願い事と引き換えにたくさんの大切なものを失い、最終的には魔女になってしまう。そんな残酷な運命をゆまに背負わせたくはなかったのだった。

 

「だ……だって…」

 

杏子の気迫に押され、怯えるように顔を歪ませるゆま。杏子を助けたい。杏子に褒められたい。そのために魔法少女になったのに杏子は怒っている。激昂して威圧するような彼女の目を見て、ゆまは思い出してしまう。

 

『―――お前なんか何も出来ないんだ、バカガキ!役立たず!』

 

自分を虐待する母の言葉。そしてもう一つ。

 

 

 

~~~~

 

 

『キョーコ……死ん…じゃ、うの?』

 

織莉子の宣告を受け、信じられないように身体を震わすゆま。

 

『そう。彼女は魔女と戦って、死ぬ運命』

 

穏やかに、それでいて淡と告げている織莉子の言葉が嘘ではないと感じ取ったゆま。さすがここまで聞かされたゆまも黙っていられなくなる。

 

『おねえちゃん教えて!キョーコのいるところ!』

 

切羽詰まったように尋ねる。ゆまの心は今すぐ杏子の元に駆け付け、このことを伝えたい気持ちでいっぱいだった。

 

『聞いたところでどうなるのかしら?』

 

『!』

 

『あなたに運命の輪が回せるのかしら?』

 

それをあざ笑うかのように聞き返す織莉子。自分でもわかっていた。今の自分には何の力もない。結界に一人入ったところで、伝える前に使い魔か魔女にやられるのがオチ。魔法少女になるのが最善策だが、杏子の言いつけも守りたい。そんな板挟みの中、必死にやれることを考える。そして出した答えが、

 

『キョ、キョーコを、助けて…!』

 

目の前の少女に、泣きながら頼み込むことしかなかった。その答えに織莉子はフッと微笑むと、ゆまの耳元までかがみこんだ。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「言った…!言った…!織莉子が、言ったよ…!」

 

「“織莉子”…!?」

 

 

 

 

 

 

『どうやらあなたには輪を回すだけの強い想いも力も無いようね』

 

 

 

 

 

 

「言った!言ったよ!」

 

 

 

 

 

 

『何も出来ない』

 

 

 

 

 

 

「ゆった!ゆったよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――可愛いだけの“役立たず”さん』

 

 

 

 

 

 

 

「ゆった…!ゆったよ…!うわあああああああああんっ!!!」

 

織莉子の冷酷な言葉が頭の中で何度も響きわたる。ゆまは身体を振るって杏子の手を払うと、頭を抱えて叫び出した。

 

「お、おい!」

 

「どうしたんだ、ゆま!?」

 

杏子と霧野が慌てて呼びかけるが、錯乱したゆまの耳には届かない。

 

「ゆま……はっ!役立たず……ない!役立たず、じゃ、ないっ!」

 

母親に虐められていた日々がゆまの頭の中を駆け巡る。どんなに酷い目に合わされても、我慢していればいつかは愛してくれると、誰かが助けてくれると信じていた。しかしそんな時は何時になっても訪れず、役立たずだと罵られるばかりだった。何も悪いことはしてないのに、年相応に愛を求めているだけなのに、ただただ傷つけられるだけ。そんな自分を愛してくれない両親も、助けてくれない他人も、誰からも愛されない自分も大嫌いだった。

 

「キョーコの役に立つ!みんなの役に立つ!わがまま言わない!好き嫌いもしない!」

 

そんな時に杏子と出会い、拠り所を失った自分の面倒を見てくれた。剣城も自分を気にかけ、霧野は二人とはぐれてしまった自分を助け、もう一度会わせてくれた。それらはゆまがずっと欲しくてたまらなかった人の温もりだった。

 

「痛いのも我慢する!みんながケガしたらゆまが治す!」

 

それを失うくらいなら、せめて手に入れた力で必要とされるだけでもよかった。捨てられる恐怖、自己嫌悪、求愛。色んな感情がぐちゃぐちゃになったゆまは今にも暴れ出しそうな自分を抑えつけるように肩を抱く。杏子たちはそんなゆまを呆然としながら見つめることしか出来なかった。

 

「だから……だから……」

 

そしてゆまは涙を拭くことも忘れ、みっともない顔を晒すこともいとわず、追いすがるように顔を上げると、

 

 

 

「ゆまを、ひとりにしないで……」

 

 

 

消えてしまいそうな声で杏子を見上げながら泣きすがると、わめきすぎて疲れたのか、その場で膝から崩れ落ちたのだった。

 

「ふぐっ……ひっく、えぐ……ひっく……」

 

「………」

 

 

膝を着きながら泣き続けるゆまを見て、杏子は思い出していた。かつて自分は父親の為に願いを叶え、魔法少女になった。しかし結果、家族は自分を残して死んでしまい、その願いは永遠に叶わなくなってしまった。杏子は魔女になってもおかしくないほどの絶望の中で、自分を置いていった父たちに涙ながら願った。

 

 

 

『ひとりにしないで』

 

 

 

それ以来、杏子は他人の為に願いを叶えるのは愚かなことだと思っていた。今でこそさやかの件で気持ちの整理は出来ているが、勝手な思いやりで家族を死なせてしまった自分の為に魔法少女になって欲しくはなかったのだった。

 

「バカヤロウ……あたしなんかの為に魔法少女になりやがって……本当に、バカだよ……」

 

「キョーコ…?」

 

その時、ゆまは杏子の目元に雫が溜まっており、それがキラリと光ったことに気づいた。

 

「キョーコ、泣いてるの?」

 

泣き止んだゆまが立ち上がりながら尋ねると、杏子はゆまの頭に手を置いて言った。

 

「ばーか、泣いてなんかいないよ…」

 

杏子の小さな返事も溶け込みそうな夜の静寂の中、二人を慰めるかのように月の光だけが優しく降り注いでいた。

 

「……剣城、一体何が起こっているんだ…?」

 

「……とにかく、俺たちと一緒に来てください。事情は行きながら話します」

 

霧野は状況を飲み込めなかったが、杏子たちの心境を察し、「…わかった」と、素直に受け入れたのだった。

 

(織莉子……)

 

杏子はスッと顔を上げる。そして鋭い目つきで夜空を見上げると、

 

(この落とし前は、必ずつけてやる…!)

 

ゆまをけしかけた織莉子に復讐を誓い、拳を強く握ったのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

「どうやら受け取ったようね、宣戦布告を。これで破滅の未来を防ぐピースが一つ埋まったわ」

 

誰もいない静かな部屋で静かに微笑む織莉子。彼女は望み通りに事が運んだことを祝うかのように紅茶をたしなんでいた。祝杯の香りを優雅に味わっていると、フッ、と笑みを深めた。

 

「さて、そろそろね」

 

そして何かのタイミングを測っていたかのようにティーカップをソーサーに置く。すると、ガチャ、と玄関のドアを開く音が鳴り、二人分の足跡が近づいてくる。そして織莉子のいる部屋のドアが開いた。

 

「織莉子さん、ただいま戻りました!」

 

「ただいまッス」

 

入ってきたのは、髪の一部が葉っぱのような形にまとまった青紫の髪の少年と、浅葱(あさぎ)色のセミロングヘアーで黄土色の猫目が特徴の少年だった。

 

「おかえりなさい。あら、あの子は?」

 

「家に着いたとたん玄関で爆睡しちゃいました」

 

「あらあら……仕方ない子ね。後でベッドまで運ばなきゃ」

 

「織莉子さんの為に張り切りすぎたみたいっすねー。という訳でこれが今日の成果っす」

 

そう言って猫目の少年がグリーフシードを手渡す。

 

「ありがとう。ごめんなさいね、あなた達に任せちゃって」

 

「いえいえ!居候の身ですからこれくらい…」

 

「二人が来てから魔女との戦いもずいぶん楽になったわ。あの子の近距離の攻撃にあなた達の守りとシュートが加わって、バランスが整っているおかげね」

 

「いやあ、織莉子さんの能力のおかげでもありますよ。初めて戦う魔女がどんな攻撃をしてくるか予知してくれるから、うまく戦えてるんですから」

 

「てか、そろそろ夕飯にしましょうよ。俺、もう腹ペコで…」

 

「ふふ、そうね。それじゃ、あの子を運んだら、お夕飯の支度をしましょう。

 

 

 

 

 

―――(ひかる)、マサキ」

 

 

 

そう言って織莉子は雷門の1年FW影山(かげやま)輝と、同じく1年DF狩屋(かりや)マサキに笑顔を向けたのだった。

 

 

 




―ED『明日のフィールド』(歌:神童拓人&霧野蘭丸)―




次回予告
「新たな波乱の中に潜む織莉子の影。これからの戦いに向けてそれぞれの休日を過ごす中、マミさんと信助に新たな魔法少女が襲い掛かる!」

次回!
『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第18話『漆黒の愛』!」




というわけで公式により声が追加された魔法少女たちの物語に新たな雷門メンバーを追加しました。

織莉子たちが暗躍する中で彼らがどう動くのかも楽しみにしてください。

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