魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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いろは
「皆さんこんにちわ!遂に放送されたTVアニメ”マギアレコード”見てますか?ゲームとは少しだけ違った私達の活躍、楽しんでもらえてますか?私はもちろん、作者さんや明日人君も楽しんでみてます!ね?」



………。(ズーン)


明日人
「………(ズーン)」



いろは
「あ、あれ?二人共、どうしたんですか?いつも投稿遅れがちの作者さんはともかく明日人君まで!」


ほむらにめっちゃどやされた………『どれだけ遅筆なのよあなたは。まどかが誕生日迎えたどころか、遂にプリキュアデビューしちゃったじゃない』って。
2周年のPUガチャで一回天井すり抜けしても完凸させて精神フル強化もしてエースとして活躍させてやってるのにさ………。


いろは
「何の話ですか!」

明日人
「遂にゲームが発売する前に俺達のアニメ終わっちゃいましたよ………何がいけなかったんでしょう……俺が主人公だったのがいけなかったんですかね……?」

いろは
「明日人君が超ネガティブ!”太陽に選ばれたサッカー小僧”とは思えないほど暗くなってるよ!」

明日人
「太陽……か。奥入(おくいり)マギレコ(そっち)衣美里(えみり)さんと組ませて日輪刀でも持たせときゃ良かったですかね……?俺達とマギレコ、両方合わせたら中の人は意外と揃……」

いろは
「よそはよそ!うちはうち!」





はい。というわけで続きを待ってた皆様、またまた遅れまして申し訳ありません。
相変わらず仕事が忙しかったり、文章が浮かばなかったり、入院したりもしましたがようやく戻ってきました。
こんなでもお気に入り登録し続けてくれた皆様には感謝感激雨あられです。


それではどうぞ。



―OP『初心をKEEP ON!』―




第19話『交錯する想い』 Aパート

~~マミの自宅・夕方~

 

 

 

「狩屋達が…」

 

マミと信助が織莉子達と遭遇したその夜、二人は天馬達に事の一部始終を話した。狩屋と輝が無事だったことに安堵したが、同時に織莉子に味方していた事に衝撃を受けていた。

 

「まさか、あたし達の初デートの裏でそんなことが起きてたなんて……」

 

「うん。僕もさやかから話を聞いてはいたけど、正直まだついていけてないよ……」

 

あまりの急展開に困惑するさやかと恭介。デートを終えた後、マミから連絡を受けた二人はそのままやって来たのだった。

 

「だが、かつて剣城が俺達と再会しても杏子さんに付いていたように、あの二人にもきっと何か訳があるんだろう。今は無事を確認できただけで十分だ」

 

神童は冷静に状況を推測しつつ、周りを落ち着かせるように自身の意見を上げる。

 

「信じてるんだね。彼らの事を」

 

「ああ」

 

たとえ敵陣にいたとしても絶対に信じる。そんな雷門の信頼関係に恭介は感心していた。そして霧野が本題に切り出す。

 

「狩屋達に事情があるとして、問題は織莉子達だ。ゆまを魔法少女にしたと思ったら、今度は信助達を襲ったんだ。次は何をしでかすか予想がつかない」

 

「そのためには情報が足りないわ。呉キリカはともかく、織莉子については姿を見せただけで未だに分からないことだらけ。何か手掛かりを掴まないと……」

 

マミが危惧の念を込めながら言葉を繋ぐ。再び襲ってくるであろう敵について何も知らないのはあまりにも不安だった。

 

「その二人なら私が知ってるわ」

 

リビングのドアが開くと同時に声が聞こえる。全員が振り向くと武器の調達から帰ってきたほむらが立っていた。

 

「ほむらちゃん!」

 

「美国織莉子と呉キリカ……まさか、あの二人がこの時間軸にもいたなんて…!」

 

まどかが安堵しながら名前を呼ぶ一方、ほむらは忌々しそうに眉間にしわを寄せた。

 

「美国織莉子……思い出しましたわ!」

 

ハッとなった仁美はスマホを取り出して操作する。やがて目的のデータを見つけると信助とマミに見せた。

 

「お二人が出会ったのは、この方ではありませんか?」

 

天馬達も見ようと、全員が集まる。差し出された仁美のスマホに映し出されているのは、舞台の上で何かの賞を受賞している織莉子の写真だった。

 

「!……信助君!」

 

「はい!この人です!間違いありません!」

 

「ゆま、どうだ?」

 

「うん!織莉子だ!」

 

杏子がゆまに確認を取り、仁美も確信を得る。

 

「やっぱり、この方でしたのね…」

 

まじまじと織莉子の写真を見つめる仁美にさやかは尋ねる。

 

「仁美、もしかして何か知ってんの?」

 

「はい。この方は美国織莉子さん。白羽(しらは)女学院(じょがくいん)の3年生ですわ」

 

「白羽女学院って、あのお嬢様学校の?」

 

「ええ。彼女の父は見滝原の市議会議員、美国久臣(ひさおみ)。私もお父様を通じてお会いしたことがあります。そしてその娘である織莉子さんは、とても気品に溢れて人望も厚く、成績優秀で生徒会長も務めていた方でした」

 

「ほへ~……正に完璧超人じゃん……でも“でした”って?」

 

「少し前、美国議員は経費改ざんなどの汚職疑惑を掛けられ、自宅で首を吊って自殺してしまったのです」

 

「「「自殺!?」」」

 

「疑惑の真相は明らかになっていませんが、それまで慕っていた人達も皆、手の平を返して彼女を責め立て、美国議員が亡くなっても世間の批判が絶えなかったそうです。聞いた話によると学校でも居場所は無くなり、生徒会長も解任されたとか…」

 

「親の因果が子に報う、というわけか……」

 

織莉子の境遇を諺に例える神童。天馬達も敵とはいえ、幸せだった少女が不幸のどん底に突き落とされた事に少なからず同情していた。

 

「ほむらさん、この方をご存知だったのですか?」

 

「ええ。私にとっては忘れたくとも忘れられない女よ……」

 

そう語るほむらの顔は怒りと敵意で満ちており、拳を強く握りしめていた。ただならぬ様子に天馬は思わず訊く。

 

「どういうことですか?」

 

「天馬。私が繰り返してきた時間遡行の中で、まどかがイレギュラーに殺された時があった。この話、覚えてる?」

 

「はい……って、まさか!?」

 

「この女よ。その時まどかを殺したのは…!」

 

瞬間、全員が織莉子の写真を見た。中でも一番動揺していたのは当人であるまどかだ。

 

「この人が、わたしを…?」

 

写真で見る限り、嬉しそうに受賞し、自分が見ても惚れ惚れしそうなほどの美人が自分の命を奪った。あまりにも対極すぎる印象に、まどかも現実味が湧かなかった。

 

「なるほどな…」

 

そこへ、別の者の声がする。全員が再びリビングの入口を見ると、腕を組んだワンダバが立っていた。

 

「ワンダバ…」

 

「その織莉子とやらがこうして動いているならば、この世界でもまどかの命を狙っている可能性があるということか」

 

真剣な表情で推測するワンダバ。そんな彼を見て、ゆまは「わあ!」と、目をキラキラ輝かせると、すぐさま駆け寄って抱き付いた。

 

「すごい!今度はクマさんがおしゃべりしてる!」

 

「誰がクマだ!」

 

抱きしめられたワンダバは腕を振って抵抗する。キュゥべえの時と同様、動いて喋る動物の出現がゆまの子供心をくすぐったのだった。ジタバタするワンダバに変わってほむらがコホンと咳をして話を戻す。

 

「ワンダバの言う通り、織莉子がまどかを殺そうしている可能性は十分にあるわ。その子……千歳ゆまが織莉子にそそのかされて魔法少女になったというならなおさらだわ。まどかの存在が既にキュゥべえに知られている以上、そんなことは起こらないと思っていたけど……」

 

「どういうことだ?それじゃまるでキュゥべえがまどかの事を知らなかったら、ゆまが魔法少女になってたみたいな言い方じゃねえか」

 

ほむらの言い回しが気になった杏子が疑問をぶつける。するとほむらはためらいもなく答えた。

 

「その通りよ」

 

「「「!?」」」

 

「私が以前出会った美国織莉子もキュゥべえにその子を紹介し、まどかの事を気づかせないようにしていた。だから私はその子の事を知ってたの。あの時の事は今でもハッキリと覚えてる……最初から最後までイレギュラーだらけだった、あの時間軸を……」

 

当時の事を思い出して遠い目をするほむら。そしてフェイが頼み込む。

 

「ほむらさん。その時の事について詳しく話してくれないか?織莉子の事を含めて」

 

「ええ、もちろんよ」

 

そう言うとほむらは皆の前に立つ。そして一度全員と目を合わせてから語り出した。

 

「まず、その時間軸での私は常にまどかの傍に寄りそうという策を取ったわ。キュゥべえが近づいて契約させないように。しかし、その時間軸では何故かキュゥべえがまどかの前に現れなかった。その代わり、まどかが魔女の結界に捕らわれ、危うく殺されるところだったわ」

 

「まさか、それは織莉子の仕業だったのか?」

 

杏子が訊く。

 

「その時は分からなかったけど、今にして思えばその可能性はあったわ。その後、巴さんから次々と魔法少女達が殺されていると聞いたの」

 

「「「!?」」」

 

天馬達は一斉に驚く。魔法少女の連続殺人事件と聞いて、さすがに平静ではいられなかった。

 

「殺された魔法少女の一人が犯人は黒い魔法少女と言い残していたらしく、こんな見た目である私も他の魔法少女に疑われて襲われたわ。まあ、時間停止を使って難なく逃げられたけど」

 

「黒い魔法少女?それって…」

 

信助の予想にほむらは話を繋げるように答える。

 

「そう。その実行犯が呉キリカ。そしてその裏にいたのが織莉子なのよ。そうやって騒ぎを起こした理由は……」

 

「キュゥべえにまどかさんの存在を気づかせない為の陽動、か……」

 

剣城が答えを述べる。するとさやかが声を上げた。

 

「そんな…!まどかだけでも許せないのに、目くらましの為に他の子達まで殺したって事!?」

 

「そう。彼女達はキュゥべえを引き付ける為の生贄にされたのよ」

 

「その子達だって全然関係なかったんでしょ!?いくら何でもひどすぎだよ!」

 

憤慨したさやかは立ち上がる。天馬達に救われた事によって、より強くなった正義感が織莉子達の非道な行いを許せなかった。

 

「美樹さん、落ち着いて。気持ちはわかるけど、今の話は過去の時間軸の話。もう過ぎてしまった事よ。続きを聞きましょう」

 

「………」

 

見かねたマミの言葉でさやかは頭を冷やす。そして再びほむらを見ると、表情はいつもの冷静さを保っていたが、その瞳には犠牲になった魔法少女達に対する憐れみが宿っていた。

 

「……すみません。ゴメン、ほむら」

 

二人に謝りながら座るさやか。それを見計らったようにほむらも説明を再開する。

 

「その後、私は織莉子達と直接対決をした。結局、織莉子達と会ったのはそれが最初で最後だったけど、それまで織莉子は隙あればまどかを殺そうとしていたはずよ。私が常にまどかを見張っていたから、手出し出来なかったんでしょうね」

 

過去の出来事を振り返って分析するほむら。そこで天馬が訊く。

 

「ほむらさん。そもそも、その織莉子って人はどうしてそこまでしてまどかさんの命を狙ってたんですか?」

 

「その理由を話す前に……ワンダバ、悪いけど千歳ゆまを連れて外で待っててくれるかしら?」

 

「む?……わかった。ゆま、行くか」

 

「うん!一緒に遊ぼ!クマさん!」

 

「誰がクマじゃ」

 

何かを察したワンダバはゆまと手を繋いで部屋から出て行った。その様子を見届けたまどかは視線をほむらに戻して尋ねた。

 

「ほむらちゃん、どうして?」

 

「ここからはあの子に聞かせるべきではないと思うから」

 

「…?」

 

ほむらの言い方に全員が疑問を持ったが、ワンダバと同じように察し、黙って聞くことにした。

 

「まず最初に言っておくけど、織莉子の力はおそらく予知よ」

 

「予知?未来が見えるって事か?」

 

霧野が訊く。

 

「そう。それによって彼女はまどかが最悪の魔女になり、世界を滅ぼす未来が見えた。だから……」

 

「まさか、まどかさんが魔女になる前に殺そうと…!?」

 

葵がその先の言葉を察する。

 

「そういうことになるわ」

 

「ひどい……まどかさんは何も悪くないじゃないですか!その時間軸のまどかさんだって、魔法少女にすらなってなかったんでしょう!?」

 

「でも、まどかがどうだろうと織莉子には関係なかったのよ。目的を果たす為なら手段を選ばなかった」

 

「織莉子達は他にも何かやったってのか?」

 

水鳥が訊く。

 

「ええ。二人はまどかを確実に殺す為に学校に魔女結界を作り出し、多くの生徒や教師達が使い魔に食い殺されたわ」

 

「「「ええ!?」」」

 

天馬達は再び驚愕し、声を上げる。魔法少女とはいえ、中学生がまどか一人を殺す為にそこまでするとは信じられなかった。

 

「私はまどかに使い魔が寄ってこないように魔法を掛け、織莉子の元へ向かったわ。そこでキュウべぇに招集された巴さん、杏子、千歳ゆまと合流した。そして呉キリカは魔法少女のままでは勝てないと判断し、私達の目の前で魔女となった」

 

「そんな…!」

 

「彼女は織莉子の為に自ら死を選んだ。織莉子に対する狂気じみた想いで魔女になってもなお彼女に尽くしたのよ」

 

「………」

 

ほむらの淡々とした説明にマミは対峙した時のキリカの姿を思い出す。確かにあれほどの忠義心なら、そこまでしてもおかしくない。そう思うと頬に冷や汗が流れた。

 

「そして四人掛かりで決戦が始まったけど、ハッキリ言って劣勢だった。爆弾や近距離の攻撃は予知魔法で先読みして潰し、遠距離の攻撃も魔女化した呉キリカの速度低下魔法と組み合わせて躱していたわ」

 

「組み合わせて躱す?」

 

神童が訊く。

 

「私の魔法は私と接触しているもの以外の時が止まる。でも止まったものにかかっていたスピード自体が変わるわけじゃないから、再び時が動き出した時、時間を止める前と同じ速さで動くのよ。例えるなら電池切れで止まった時計の針が、新しい電池を入れたら再び同じスピードで動きだすってとこかしら」

 

「なるほど。じゃあ時間を止めても、スピード自体が遅かったら結局躱されるってことか」

 

「話は少し逸れたけど、私達の攻撃は躱され、魔女化の真実で動揺した巴さん達が互いに足を引っ張り合い、徐々に追い詰められていった。しかし、それを千歳ゆまが皆を奮い立たせ、連携することによって形勢が逆転した。呉キリカの魔女は崩壊し、織莉子も魔女化寸前まで陥った。しかし、それでも織莉子は戦いを止めず、最後は私が彼女のジェムを撃って終わらせたわ」

 

「結局……織莉子も死んでしまったんですね……」

 

悲しげに語る天馬。大勢の命を奪ったことは許せないが、哀れな最期を迎えた織莉子の事を少しだけ憐れんでいた。

 

「でも、織莉子は最後の力を振り絞り、崩れた呉キリカの魔女の一部を投げ放った。それは傍にいたキュゥべえを貫き、その直後に織莉子は絶命した。私は魔女化を受け入れた巴さん達なら共に戦えると思い、自分の事を打ち明けようとしたわ。でも、それは叶わなかった……」

 

「どうして?」

 

「織莉子の最後の一撃は、その先で避難していたまどかを狙っていたものだったのよ。まどかはその一撃で胸を貫かれ、即死してしまった……」

 

「そして君はまた時間を遡った、というわけか。まさかそんな大惨事だったなんて……」

 

フェイが最後を締めくくった。

 

「「「………」」」

 

話を聞き終え、全員が重苦しい顔をする。ほむらが語ったのは繰り返してきた時間軸の一つであり、結末はわかっていた。しかし、やはり救いの無い話は何度聞いても慣れなかったのだった。

 

「その時間軸は、それまでとはあまりにもイレギュラーが多い世界だったわ。でもだからこそ、今度こそまどかを救える可能性があると思えた。だけど結局、そんな希望もあっけなく崩れ去った……」

 

ほむらは憂いた瞳で(てのひら)を見つめる。イレギュラーだらけの世界で掴んだ希望は、開いた指の隙間からこぼれた砂のように消えてしまった。期待が大きかっただけに、他人に対する不信感を強める要因となってしまったのだった。

 

「美国織莉子に呉キリカ……なんて奴らじゃ……たった一人を殺す為に何人も巻き添えにするとは……!」

 

錦が怒りを込めて拳を握る。

 

「問題はこれからどうするかだよ。この世界でも織莉子達が同じ事をしようとしているなら厄介だ」

 

「でも、ほむらさんが体験した出来事がまた起きるとは……」

 

フェイの発言に天馬が異見する。自分達の前で大量虐殺など起きて欲しくない。そんな願望が彼の心にあった。しかし、それを承知の上でほむらは言った。

 

「いいえ。あなた達の存在という違いはあれど、千歳ゆまが織莉子に唆されて魔法少女になり、巴さんが呉キリカに襲われた。どちらも以前の時間軸で起きた事よ。だからきっと、この世界の織莉子もまどかを狙ってくる。他人を犠牲にしても、ね……」

 

「そんな……!」

 

ショックを受ける天馬。合致する事象が一つだけなら偶然で済ませられる。しかし、二つ以上合致すればもはや偶然ではない。それがほむらの総計だった。

 

「もしも、前みたいに学校に結界が現れたら、何十人もの人達が襲われる……そうなったら私達全員でも守り切れない。確実に犠牲者は出るわ」

 

「じょ、冗談じゃないわよ!何とかならないの!?」

 

さやかが必死に訴える。自分達の学校が殺人現場にされるなどたまったものではない。

 

「まず、織莉子の動きを把握する必要がある。だが、今は影山達が付いている上に呉キリカも負傷している。今すぐ行動は起こさないだろう」

 

神童がさやかを鎮まらせるように状況を整理する。敵の動きが見えない時でも冷静な判断が出来る彼の存在は、このチームには欠かせなかった。

 

「でも、時間の問題よ。呉キリカが動けるようになれば、直ぐにでも次の行動に移すでしょうね」

 

そして同じようにほむらも冷静に言葉を繋げる。彼女は何度も繰り返した時間遡行によって、全てが望み通りにいくとは限らない厳しさを味わい続けた。今回の織莉子達の出現においても、事が穏便に運ぶとは思わない。都合の良い願望などせず、地に足を付けて考えていた。

 

「でも、狩屋達がいるんですよ!あの二人なら……」

 

止めてくれる。信助はそう信じて疑わなかった。

 

「確かにあなた達の仲間なら止めるかもね。でも、もし本当に織莉子がまどかを狙っているなら、彼らには隠している可能性があるわ。それに知ったとしても、簡単に止められるとは思えない。最悪の場合は……」

 

「……!」

 

ほむらがそこまで言いかけた時、想像した天馬達の顔がこわばった。

 

「!……ごめんなさい。最後の考えない方がいいわね。忘れて」

 

ほむらはとっさに口をつぐむ。その先の言葉はあくまで可能性であり、なにより失言だと思ったからだ。

 

「とにかく、織莉子は私達に宣戦布告してきた。暁美さんの推測通りなら、何のしないわけにはいかないわ。でも、いつ仕掛けてくるかがわからない上に、場所によっては何十人もの人達を守るとなると、しっかり対策を練る必要があるわ」

 

「「「う~ん……」」」

 

マミの発言に全員が一斉に考え込む。先手必勝でこちらから仕掛けるとしても、狩屋達を人質に捕られる可能性がある。かといってただ迎え撃つだけでは、まどかの護衛を手薄にする為に無関係な人々が巻き込まれてしまうかもしれない。どうしたって誰かが危険にさらされる。手段を選ぶ必要が無い織莉子の方が確実に有利になってしまうのだった。

 

「だ~~っ!いい方法が思いつかん!」

 

たまらず錦が頭を抱えて喚きだす。

 

「どうしたらいいの?」

 

「ほむらちゃん?」

 

ほむらの呟きにまどかが注目する。

 

「放っておいたら、また犠牲者が出てしまう……!まどかも、他の人達も……織莉子に殺される……!どうすれば……!」

 

切羽詰まった顔で悩むほむら。まどかと一緒にいたいだけなのに、彼女と幸せに生きたいだけなのに、それを嘲笑うかのように邪魔が入る。ようやく大切なことが分かったのに、まどか達とも分かり合えたのに、運命は変えられないのか。

 

「ほむら」

 

そんな中で杏子に呼びかけられ、顔を上げる。そして杏子は言った。

 

「アンタ………

 

 

 

 

 

やっぱり変わったな」

 

 

 

「……え?」

 

予想外の言葉に、ほむらは呆けた声を出す。

 

「今まではまどかを守る為だけだったってのに、無関係な奴らの事まで気にするようになったんだからな」

 

「!……そ、それは他の人を犠牲にして生き延びても、まどかは喜ばないと……」

 

「さっき、ゆまを外に出させたのだって魔女化の話を聞かせたくなかったからじゃないのか?」

 

「あ、あれは、この世界の彼女も受け入れるとは限らないと思ったからよ。絶望して魔女化したら大変でしょう?」

 

冷静な口調でもっともらしく答えるほむら。しかし、目は逸らしており、いつもより早口だった。

 

「でもそれって結局、ゆまちゃんの事を想ってしてくれたって事よね」

 

「う……」

 

苦しい言い訳だったようで、マミには通じなかった。そこで気づいてしまう。仲間達が全員、優しい目で自分を見守っていたことを。その視線から逃げるようにまどかを見るが、それに合わせるかのようにまどかも「フフッ」と、笑みを深めた。

 

「うう……」

 

その満面の笑顔にたじろいでしまう。完全に逃げ場を失い、ほむらは顔を真っ赤にして俯いた。

 

「照れてるほむらちゃん……可愛い」

 

「~~~~~!!!」

 

茜が追い打ちをかけると、赤くなった顔を見られないように真下を向いた。そのまま沈黙が続き、やがて顔から熱が抜けると、ほむらは観念したように大きく息を吐いた。

 

「……今まではまどかを救うことが精一杯で、他の人達の事まで構ってる余裕なんて無かった。でも……今は無駄な犠牲を出したくない。戦力とかの問題じゃなくて、誰も死なせたくない。そう思ってしまうの……」

 

「ほむらさん……」

 

心情を吐露するほむらに天馬は河川敷での二人きりの会合を思い出す。あの時のほむらはまどか以外に関しては無頓着で、自分達の事もただの戦力としか見ていないような口ぶりだったが、心の底では皆も助けたいと思っていた。その事を天馬に見抜かれていたが、叶えられるわけがないと認めようとしなかった。しかし、今は押し殺していた優しさが隠せないくらいに溢れて出ており、会合の時と比べたらまるで別人のような変わりように天馬も嬉しく思えた。するとまどかが笑顔でほむらに呼びかけた。

 

「ほむらちゃん」

 

「まどか……」

 

「恥ずかしがらなくたっていいよ。だって今のほむらちゃん、すっごく素敵だもん」

 

「え?」

 

「ほむらちゃん、前よりずっと優しくなったよ。わたしだけじゃなく、みんなも守ろうとして頑張ってる。見た目はクールなのに、心は温かくて………ううん、ほむらちゃんの名前みたいに燃え上がってて、すっごくカッコいいよ!」

 

「―――!」

 

 

 

 

 

『―――わたしは素敵だと思うな。だって、なんか燃え上がれ~って感じでカッコいいんだもん!』

 

『―――………名前負け、してます…』

 

『―――そんなの勿体ないよ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ』

 

 

 

 

 

「………」

 

まどかの言葉に呆然とするほむら。まどかと初めて出会った時、彼女はそれまでずっと足枷だった自分の名前を褒めてくれただけでなく、踏み台にすればいいと諭してくれた。だけど、そう言われた時から何度時間を繰り返しても、誰も救えなかった。そんな自分がいつの間に本人から言われるほど変わったのか実感が無くて驚いていた。

 

「ほむらちゃん、すっごくカッコよくなって頼もしいよ。これも天馬君達のおかげかな?ほむらちゃんは今度こそわたしを守ってくれるって、信じられるんだ」

 

「―――!!!」

 

 

 

 

 

―――鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなく、彼女を守れる私になりたい。

 

 

 

 

 

「………」

 

自身の願いを思い出したほむらは無意識に天馬を見る。無言でじーっと見つめられた天馬は「?」と、首を傾げる。

 

「ほむらちゃん?」

 

「……!ご、ごめんなさい。何でもないわ」

 

まどかの呼びかけにハッと気が付いたほむらはまどかに向き直す。そして視線だけを天馬に向けた。

 

(……まさかね)

 

「とにかくまどかさんが狙われている可能性がある以上、常に誰かがまどかさんを見ている必要があるね」

 

フェイが話を戻しながら案を出す。そしてそれに名乗り出たのは当然ほむらだった。

 

「それは私がやるわ。織莉子はきっと、私がまどかを守ろうとしていることは分かってる。簡単に手は出さないはずよ。でも守ってるだけじゃダメ。こちらからも攻めなければ、まどかに安息の時は訪れないわ」

 

「攻めるって、どうやって?」

 

さやかが訊く。

 

「まず、織莉子達が私達の行動を予知できるなら、その隙をついて動き出さないよう、こちらも常に織莉子をマークし続けるのがいいでしょうね」

 

膠着(こうちゃく)状態に持ち込むわけか……だが、織莉子の家を見つけたところでどうやって監視する?予知で知られていたら、どんなやり方だろうと潰されるぞ?」

 

「狩屋達に頼もうとしても、織莉子はそれすら阻止してくるだろう。二人に近づくことも出来ないだろうな」

 

霧野と神童が意見を出す。こちらの動きが分かる相手を長い時間監視し続けるのは容易ではない。方法すらままならない策に誰もが諦めかけていた。

 

 

 

「そういうことなら僕に任せてくれないかな」

 

 

 

そこへ別の声が割り込む。天馬が見ると、キュゥべえがちょこんと座っていた。

 

「キュゥべぇ?」

 

「ここはひとまず、僕達と協力し合うというのはどうかな」

 

 

 

 

 




はい。というわけで展開は決まっていたものの、そこまでどうやって繋ぐか考えて、合間を縫って書いてたらこんなに時間がかかってしまいました。改めてオリジナル部分って難しい……。



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