魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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マミさんはマミられてしまうのですかという
質問が来ましたが
今回であきらかにします

それではお楽しみください


――OP『打ち砕ーくっ!』――



第3話『一人ぼっちの少女』

 

~~見滝原市立総合病院前・夕方~~

 

 

 

「今日も疲れたね、信助」

 

「うん、でもこの調子で特訓すればマミさんの力になれるはずだよ!」

 

まどかとさやかの為の魔法少女体験ツアーから翌日、天馬と信助は昨日と同じ練習を終え、マミの家に帰宅するところであった。現在は病院の前を通りかかっている。

 

「あれ…?」

 

「どうしたの?信助」

 

「あそこにいるのって……さやかさんじゃない?」

 

信助が指さす方向を見ると袋を持ちながら病院に入っていくさやかの姿があった。

 

「ホントだ。さやかさん、どこか体が悪いのかな…?」

 

「ちょっと気になるね。行ってみようよ!」

 

「うん!」

 

二人は駆け足でさやかを追った。

 

 

 

~~見滝原市立総合病院~~

 

 

 

ある病室に一人の少年がいた。彼の名は上条(かみじょう)恭介(きょうすけ)。美樹さやかの幼馴染である。将来を有望視されていた天才バイオリストだったが交通事故に遭い、左手が動かなくなっていた。

 

「……そうなんだ」

 

「ああ。俺も気持ちを落ち着けたいときはピアノを弾くんだ」

 

現在、今日入院してきた自分と同い年の少年と音楽の話で盛り上がっていた。

 

「少し喉が渇いてきたな。水を飲んでくるよ」

 

「うん」

 

少年は病室から出ていく。

 

「恭介!」

 

その数秒後、入れ違えるようにさやかがやって来た。

 

「さやか、今日も来てくれたのかい」

 

「うん。またCD持ってきたよ」

 

さやかは恭介の為にこうしてレアもののCDを見舞い品として持ってきては彼に聞かせていたのだった。

 

「あっ!これ中々手に入らないものじゃないか」

 

恭介はCDのカバーを見て興奮する。

 

「そうなんだ。それ、こないだまどかと一緒に見つけたやつなんだ」

 

「さやかは本当にいいCDを見つける天才だね」

 

「やめてよ。それにお礼ならまどかにも言ってよ」

 

さやかは少し照れる。恭介は早速CDをプレイヤーにかけ、イヤホンをつける。さやかは目を閉じながら聞く恭介を見て微笑む。すると恭介はイヤホンを片方外す。

 

「ほら。さやかも聞いてごらん」

 

恭介は片方のイヤホンをさやかに差し出す。

 

「えっ…!……う、うん…」

 

さやかは顔を赤くしながらイヤホンを受け取る。

 

 

 

 

 

「う~ん、さやかさんどこにいるんだろ……」

 

一方、天馬と信助はさやかを探して病院内をうろついていた。

 

「どこかにいると思うんだけど……ん?」

 

天馬は扉がほんの少し空いていた病室の中を垣間見る。

 

「あっ、さやかさんだ!」

 

「えっ!」

 

信助もこっそり覗くとそこには目を閉じながらCDを聞く恭介と彼とイヤホンを分け合いながら聞くさやかがいた。

 

(うわ~~っ!顔近い!近い!///)

 

イヤホンを分け合いながら聞くので二人の顔がかなり接近している。あまりにも近いために恭介の体温を感じ取ったさやかは顔を赤くしていた。

 

「わぁ……さやかさん、顔真っ赤だよ…」

 

「一緒にいるのは誰かな……」

 

天馬たちも少しだけ顔を赤くしていた。さやかはCDの音楽は聞きつつも、恭介との接近でそれどころではなかった。と、ここでさやかはふと恭介の左手を見る。そこには痛々しい手術跡があった。動かなくなり彼の大好きなバイオリンの音色が聞けなくなったその手を見て、さやかの表情が徐々に赤みが無くなり哀しげなものに変わる。

 

(なんであたしなのかな……なんで恭介じゃなくてあたしなのかな…)

 

「さやかさん……?」

 

天馬たちはさやかの表情が変わった事に疑問を抱く。するとさやかがふと恭介の顔を見る。二人も後を追うように見ると、恭介はさやかに見えないように顔をそらし、その瞳から一粒の涙が流れているのがわかった。

 

(……もしあたしが、恭介の腕を直してって願ったら……)

 

「………」

 

事情も知らない天馬と信助もいたたまれない表情になる。

 

「天馬、信助!?」

 

「「わああぁっ!?」」

 

ドガシャア!

 

「「!?」」

 

突如声を掛けられ、驚いた二人は前のめりに倒れこんで病室の扉が開いてしまい、さやかたちに見つかってしまう。

 

「天馬、信助!?」

 

「さやかさん、あ、あの……」

 

「あんたたち、何してんのよ!?」

 

さやかは顔を赤くしながら問いただす。

 

「あっ…あの俺たち、さやかさんがココに入っていくのを見かけてどうしたのかと思って…」

 

「で、後をつけてきたと?」

 

さやかは仁王立ちで二人を睨み、その声には若干の怒気が込められていた。

 

「ス、スミマセン………」

 

「あははは………」

 

二人は苦笑いしながら謝る事しかできなかった。

 

「全く、やっと会えたと思ったら……」

 

「えっ…その声は…」

 

天馬と信助は倒れこんだまま後ろに振り向く。

 

「「あっ!」」

 

そこに立っていたのは病院のパジャマを着ていたが灰色のウェーブがかかった髪をなびかせる少年、

 

「「神童先輩!」」

 

雷門の前キャプテンであり天才ゲームメイカー、神童拓人だった。

 

 

 

 

 

 

~~病院・外~~

 

 

 

神童と再会した後、信助がマミを連れてくる。そして神童をマミの親戚ということにし本人の体にも異常がなかった為、マミが治療費を支払い、無事に即日退院することができた。現在この場には天馬、信助、神童、まどか、さやか、マミの6人が集まっていた。ちなみに神童も雷門のジャージに着替えている。

 

「改めて名乗るよ。俺は神童拓人。中学2年で、天馬や信助と同じ雷門イレブンだ」

 

「よろしくね。神童くん」

 

「しかし、ここが異世界でしかも魔法少女が存在する世界とはな………」

 

神童はまどかとマミが来る前に天馬たちと移動し、彼らから説明を受けていた。

 

「でもどうして神童先輩がこの病院に?」

 

「俺は時空乱流に飲み込まれた後、気が付いたらこの病院のベッドで寝ていたんだ」

 

神童は語った。病院のベッドの上で目覚めた時、自分を介抱してくれていた看護婦によると、どうやら自分は数時間前に病院の裏側で倒れていたらしく、すぐに運ばれた。検査の結果、幸い体に異常は無く病院側も安堵したという。

 

「この世界での俺の身分を証明するものはなかった。その代わり、このボールがあったんだ」

 

そういうと神童は自分のマギカボールを見せる。

 

「じゃあ、神童先輩も気が付いたらそのボールがあったんですね」

 

「ああ」

 

(やっぱり、直にこのボールを受け取ったのは俺だけみたいだ……)

 

神童も信助と同じようにボールを持っていたために天馬は考え込む。

 

「マミさん、でしたね。退院手続きを取ってくれてありがとうございました」

 

神童はマミに深々と頭を下げる。

 

「いいのよ。天馬くんたちのチームメイトというならいくらでも」

 

マミは謙虚に返す。

 

「ところで、上条くんと仲良かったみたいだけど…」

 

まどかがふと尋ねる。

 

「ああ。目覚めて少し経った後、看護婦さんの付添で飲み物を買おうとしたんだ。その時、ちょうど上条が着けていたイヤホンが外れて外に漏れたクラシックが聞こえてね。彼に話しかけたら、音楽の話で盛り上がったんだ」

 

神童の頭の中で恭介との会話の様子がフラッシュバックする。

 

「でもその後、看護婦さんから事故の事を聞いたんだ。それで彼を励まそうとさっきも音楽の話をしていたんだ。その最中に俺は水を飲もうと席を外した。後は天馬たちも知ってるとおりさ」

 

さやか「………」

 

恭介の事故の話が出てきたため、さやかは再び暗い顔でうつむいてしまう。その様子に天馬やまどかが心配そうにさやかを見る。

 

(さやかちゃん………)

 

そんなまどかたちの様子を察したように、

 

「みんな。気持ちはわかるけど、そんな暗い顔じゃ何も始まらないわよ」

 

マミは真剣な目をしつつもいつもの優しい笑顔で言った。

 

「………そうですよね。今日も体験ツアーよろしくお願いします!」

 

「よろしい」

 

「天馬くんたちもまた付き合うんだよね?」

 

「はい!今日も使い魔を退治して、マミさんのお手伝いをするんです!」

 

「なら俺も一緒に行こう。天馬たちだけでは心配だからな」

 

「神童先輩!」

 

「それじゃマミさん、案内よろしく!」

 

さやかは元気な姿を見せるように歩き出そうとしたとき、

 

「美樹さん」

 

マミに呼び止められる。

 

「私はあなたに魔法少女になる事に強制はしないわ。そしてそんな権利もない」

 

マミはそこで一呼吸置いて言った。

 

「でもこれだけは約束して。なるのなら、叶える願いがあるのなら、よく考えて決して後悔しないようにしなさい。あなたには考える権利があるんだから……」

 

マミの言い方にどこか疑問を持つさやか。しかし胸に刻んだように、

 

「……はい…」

 

静かに返事を返した。

 

「もちろん、鹿目さんもね……」

 

「は、はい!」

 

まどかにも忘れずに忠告した。

 

 

 

 

 

~~魔女結界~~

 

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

激しい爆音と共に使い魔が消滅する。それと同時に結界が消滅する。

 

「やったあ!マミさん!」

 

「これが………魔法少女と魔女の戦い……」

 

背番号9番のユニフォームを着た神童は驚きを隠せなかった。マミが魔女の結界を見つけた後、昨日と同じくマギカボールが輝き、天馬と信助はもちろん、神童の格好もユニフォームに変化した。そして今、使い魔を全て蹴散らしたところである。

 

「でも今回の魔女はグリーフシードを落とさなかったね」

 

「今のは魔女から分離した“夢”の使い魔。グリーフシードは持ってないよ」

 

キュゥべえはまどかにそう答える。ちなみにまどかたちは魔女結界を探しているうちにキュゥべえと再会し、神童にもやはりその姿が見えており初めて見たときは驚いていた。

 

「なんか、ここんとこハズレだよねぇ」

 

さやかはバットを肩にかつぐような姿勢で溜息をつく。

 

「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば分裂元と同じ魔女になるんだから」

 

マミは凛とした表情でそう言った。

 

 

 

 

 

~~市立公園・夜~~

 

 

 

夜の公園にキュゥべえと別れた6人の少年少女がいた。夜の静けさの中、神童が口を開く。

 

「それにしても、あんな怪物たちがいるなんて……でも俺たちのサッカーで退治することができる」

 

「ええ。だから本当に驚いたわ。魔法少女でもないのに戦う力を持つ人たちがいるなんて」

 

マミが神童に相槌を交わす。

 

「そういえば……マミさんはどうして魔法少女になったんですか?あんなに大変な戦いをしてまで叶えたい願いが?」

 

「………」

 

天馬の質問にマミは無言で暗い顔をする。

 

「…マミさん?」

 

「私は戦う事なんて考えてなかったの…それどころか願いを考える余裕もなかったの」

 

「え…?」

 

マミの答えに一同は疑問の表情を浮かべる。

 

「……あまりいい話じゃないけど、聞いてくれる?」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「もうすぐ着くわね」

 

「うん、お母さん!久しぶりの外食だから私楽しみ!」

 

「あそこの店はうまいって評判だからな。マミは何にする?」

 

「う~ん、何にしようかしら……」

 

それは笑顔あふれる、どこにでもありふれた家族の様子だった。マミは愛情をたっぷり注いでくれる両親が大好きだった。幸せな家族が外食に向かう笑顔あふれる光景がそこにあった。

 

 

―――しかし、それは突如覆された。

 

 

ギャキキキキッ!

 

「!」

 

次に彼女が目にしたのは反対車線から一台の車が横転してくる光景だった。

 

 

 

 

 

「……う……」

 

マミは気が付くとシートに挟まれて動けなくなっていた。

 

「痛い……痛いよ…」

 

マミは今にも体もろとも心まで潰れそうなほどの痛みに苦しんでいた。

 

「お父さん……お母さん……」

 

マミは両親に助けを求めるが、二人は既に息絶えていた。

 

「痛い……怖いよ……」

 

痛みと死の恐怖がマミの心を支配していく。

 

「死にたくない……誰か助けて…」

 

今にも消えてしまいそうなか細い声で助けを求める。

 

「巴マミだね」

 

そこへ現れたのがあの白い獣だった。

 

「僕と契約すればどんな願いでも叶えてあげるよ」

 

「本当……?」

 

「うん。でも魔法少女として戦ってもらうけどね。と言っても、今の君には叶えてもらう願いは決まってるみたいだけどね」

 

瀕死状態のマミに考える余地はなかった。

 

「死にたくない……私を……助けて……」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

「………」

 

マミの話に誰も口を開こうとしなかった。

 

「あの時キュゥべえが現れなかったら、今の私はいないわ。だからキュゥべえには感謝してるの」

 

マミは目を閉じながら語る。

 

「でも今は少しだけ後悔してるの。あの時、どうしてお父さんとお母さんも助けてって言わなかったんだろうって。あの時の私はとにかく死にたくなかったから…」

 

ここでマミはさやかに視線を向ける。

 

「だから美樹さんに言ったの。考える余地があるのだから時間をかけてよく考えなさいって」

 

マミの言葉にさやかとまどかの心に重みが感じられる。

 

「私みたいに後で後悔して戦いに身を置く事が無い様に、しっかりと決めてほしいの。一人きりで戦いの場に赴く事が無いように…」

 

マミは寂しそうな顔をしながらも強く言った。

 

「マミさんはもう一人ぼっちじゃありません!」

 

「!……信助君」

 

「今は僕たちやまどかさんたちがいるじゃないですか………魔法少女じゃなくともマミさんの側には僕たちがいるじゃないですか!」

 

「!」

 

「そうですよ!俺たちも何時雷門の皆をそろえて元の世界に帰れるかわかりませんけど、それまではマミさんの側にいますよ!」

 

「何があっても仲間を大切にする。それが俺たち雷門なんですから」

 

「あなたたち…!」

 

信助と、彼の言葉に触発された天馬と神童の言葉にマミは目を見開く。

 

「マミさん。わたしたちも側にいます!だからまた一緒にお茶会しましょう!」

 

「まだ魔法少女になるかはわからないけど、マミさんの紅茶とケーキはおいしいからね」

 

「鹿目さん……美樹さん…」

 

まどかとさやかからも励まされ、マミは涙ぐみそうになる。

 

「……ありがとう、みんな…」

 

マミはこぼれそうな涙を拭くと信助はマミの前に立つ。

 

「マミさん。まどかさんたちが魔法少女になるかどうかは別として、僕はマミさんのお手伝いがしたいんです。だってマミさんは僕の大切な友達だから!」

 

「信助君………」

 

信助のその言葉がマミの心に深く響き渡り、その瞳を再び潤す。そして信助は出会いの時のように笑顔で手を伸ばす。

 

「だから……これからもよろしくお願いします!マミさん!」

 

「!」

 

 

 

 

 

(―――マミさん!)

 

 

 

 

 

マミの頭の中である少女の姿が甦る。それはかつて自分を慕っていた赤い魔法少女で、彼女が今の信助と同じように笑顔で手を伸ばす姿だった。

 

「………」

 

「…マミさん?」

 

信助の呼びかけにマミはハッと我に返る。

 

「……何でもないわ。これからもよろしく」

 

マミは笑顔で信助と握手した。信助も同じく笑顔で返した。

 

(そっか……この子が私に向ける笑顔は……あの時の彼女にそっくりなのね)

 

マミは自分に笑顔を向ける信助に赤い魔法少女を重ねていた。

 

「……さてそろそろ帰りましょうか。もう暗いし」

 

「そうですね」

 

「私は少し用事があるから天馬くんたちは先に帰っててくれる?」

 

「わかりました。気を付けて帰ってきてくださいね」

 

「ええ。天馬くんたちもね」

 

マミは公園を去る天馬たちの背中を見送り、一人公園に残る。そして天馬たちの姿が見えなくなった事を確認すると独り言のように呟く。

 

「……さてと、いるんでしょう?出てきたらどうかしら?」

 

不敵な笑みを浮かべながら後ろに振り向く。

 

「―――暁美ほむらさん」

 

「………」

 

そこには無表情のほむらが立っていた。

 

「分かっているの?あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」

 

「……それは鹿目さんたち?それとも天馬くんたちの事かしら?」

 

「両方よ。彼女たちは魔法少女になっていないし、彼らは異世界人とはいえ一般人とほぼ変わらない」

 

「私も彼らには危険だと言ってるわ。それでも付いていこうとするんだもの。でも彼らは使い魔を倒す力を持っている。それは見てたあなたもわかるでしょう?」

 

「それでもあなたが彼らを巻き込んでいることに変わりはない。それにあなたは鹿目まどかと美樹さやかを魔法少女に誘導している」

 

「あの二人には魔法少女になる資格がある。ただ彼女たちには魔法少女になる事がどういうことなのか分かってほしい。私はその上で魔法少女になるかどうか決めて欲しいだけよ?」

 

「それが迷惑だと言ってるの。特に鹿目まどか。彼女だけは契約させる訳にはいかない」

 

「なるほど……あなたも彼女の素質に気付いたのね…」

 

「私は無駄な争いをしたくないだけよ」

 

「そう……それなら私も同意見だわ。だったら次からはそうなるように努力して。次からは穏便に済まなさそうだから」

 

マミはそう言うとカールした髪をなびかせながら踵を返し、公園を後にした。

 

「………」

 

ほむらは公園を去るマミの後ろ姿を哀しげな目で見つめていた。

 

 

 

 

 

~~翌日・夕方・見滝原市立総合病院~

 

 

「おまたせ」

 

まどかはキュゥべえと共に上条の見舞いに来たさやかを待っていた。

 

「さやかちゃん、上条君には会えたの?」

 

「ううん。今日は都合が悪いんだって。せっかく来たのに失礼しちゃうよね」

 

さやかはふてくされながら呟く。

 

「そういえばさ、今日学校でマミさんに会ってさ。そこで誰かの為に願いを叶えて魔法少女なるのは有りなのって聞いたの」

 

「それってもしかして上条くんの事?」

 

「べ、別に恭介の事じゃ………!」

 

さやかは慌てて顔を真っ赤にして否定するが、まどかの言うとおりなのは明らかだった。

 

「とにかくそう聞いたんだけど、そしたらさ、『あなたはその人の夢を叶えたいの?それともその人の恩人になりたいの?』って言われちゃった。」

 

さやかは参ったように言った。

 

「そう聞かれてあたし何も言い返せなかった。その後『似てるようだけど全然違う』って言われた。恭介を助けてやりたいのにあたしの思いなんてそんなもんだって実感したよ」

 

「さやかちゃん……」

 

まどかはそれ以上の言葉をかけることができなかった。マミの言うことは自分でも理解できるほど的を射ていたからだ。そしてふと横を見るとその方向を凝視する。

 

「どしたの?まどか」

 

「あそこに……何かが…」

 

まどかの視線の先をさやかとキュゥべえも見る。そこは病院の自転車置き場で壁に黒い物が突き刺さっていた。

 

「グリーフシードだ!孵化しかかってる!」

 

まどかの足元にいたキュゥべえが驚いたように叫ぶ。

 

「まずいね。もうすぐにでも結界が出来上がりそうだ。」

 

「そ、そんな」

 

まどかとさやかに不安がよぎる。病院という弱っている人間が多くいる場所に魔女の結界が出来てしまえば多くの人間が犠牲になってしまう。するとさやかが意を決したように言った。

 

「まどか、あんたはマミさんたちを呼んできて!」

 

「さ、さやかちゃんは?」

 

「あたしはこいつを見張ってる」

 

「無茶だよ、さやか。もし、マミが来るまでに結界が出来てしまったら君は閉じ込められてしまうよ」

 

「でも、ここには恭介がいる。ほっとけないもん」

 

さやかはキッと覚悟を込めた目でそう言った。

 

「さやかちゃん……」

 

「……仕方ないね。それなら僕も残るよ。僕がいればマミとテレパシーで連絡できるからね。」

 

動こうとしないさやかにキュゥベえは少し呆れたように言った。

 

「待ってて、二人共!すぐにマミさんたちを連れてくるから!」

 

まどかは駆け足でマミのマンションに向かった。

 

 

 

 

 

~~マミの自宅~~

 

 

 

「マミさぁん!みんなぁ!」

 

マミの部屋の前に着いたまどかはインターフォンを何度も鳴らしながらマミたちを呼ぶ。数秒後、玄関のドアが開き、中からマミが出てきた。

 

「あら、鹿目さん。どうしたの、そんなに慌てて?」

 

「はぁっ、はっ……た、大変なんです!病院に魔女の結界が!」

 

「!」

 

まどかは息を切らしながら状況を伝えた。

 

「美樹さんとキュゥべえが……わかったわ!すぐに案内して!」

 

「は、はい!……ってあれ?あの、天馬君たちはいないんですか?」

 

「……ええ、天馬くんたちは今、仲間を探しに出かけてるの」

 

「そんな…」

 

「残念だけど探して合流する時間はないわ。行きましょう!」

 

「は、はい!」

 

天馬達がいない事にショックを受けていたまどかはマミに条件反射のように返事した。

 

「こうなったら、今回は私一人でやるしかないわね……」

 

マミは真剣な眼差しで呟く。

 

 

 

 

~~見滝原市立総合病院~~

 

 

「こっちです!」

 

マミを連れてきたまどかはグリーフシードがあった場所に向かい、目印にしていた自分のカバンの前にたどり着く。

 

(……キュゥべえ。状況は?)

 

(さやかと一緒に結界に取り込まれてしまったけど今のところは大丈夫だよ。)

 

マミはすぐにテレパシーでキュゥべえに連絡する。どうやらキュゥベえとさやかはまだ無事のようだった。

 

(そう。でも美樹さんが中にいるんだから急いで追いかけるわ)

 

(頼むよ、マミ。まあ、いざとなったらさやかを魔法少女にするって手もあるけど)

 

(それもアリだと思うけど、それは本当にヤバくなったときにするよ。願いもちゃんと決めたいしね)

 

「さやかちゃん…」

 

「鹿目さん、行くわよ!」

 

まどかの心配をかき消すようにマミは叫び、ソウルジェムで結界の入り口を開けてまどかと共に結界の中に入っていった。

 

「………」

 

その様子をうかがっていた一人の少女が二人の消えた場所に降り立ち、マミと同じくソウルジェムを使って結界に入っていった。三人の少女が消えた場所にはまどかのカバンだけが残されていた。

 

 

 

 

 

~~魔女結界~~

 

 

 

まどかたちが結界の中に入るとそこには無数の薬瓶が広がる病院の通路のような空間だった。まどかとマミはさやかたちの安否を気遣い、早足で進む。少し進んだところでマミがなぜか足を止める。まどかが何をしているのだろうと神妙な顔をしているとマミが口を開く。

 

「……穏便に済ませたいと言ったはずなんだけどね…」

 

マミはそう言うと体を後ろに向ける。まどかも後に続くように後ろを向くと、そこには暁美ほむらがいた。

 

「ほむらちゃん?」

 

「今度の魔女は私が倒す。あなた達は手を引いて」

 

ほむらは冷ややかな声色と表情で言った。

 

「そうはいかないわ。美樹さんとキュゥべえが待ってるから」

 

マミも極めて冷徹に言い返す。

 

「その二人の安全も保障するわ」

 

「……信用すると思って?」

 

するとマミは下げていた手を挙げ、ほむらは即座に反応して何かをしようとする。しかしマミの方が早く、その手が光らせるとほむらを大きく長いリボンで拘束する。

 

「馬鹿っ…!こんなことしてる場合じゃ……」

 

ほむらは空中で縛られながらも必死にもがく。

 

「そこでおとなしくしててね。帰りに解放してあげるから」

 

「今度の魔女はこれまでの魔女とは違うっ……!」

 

ほむらは苦しそうにもがきながら叫ぶ。

 

「何を言ってるのかしら、行きましょう、鹿目さん。」

 

まどかはマミとほむらの様子に困惑しながらもマミについて行く。

 

「待ちなさっ……ぐっ!」

 

ほむらは叫ぼうとしたがリボンが更に彼女を締め付けた。

 

 

 

 

 

 

~~一方・病院前~~

 

 

 

「結局、今日もみんなと会えなかったね。」

 

「うん。でもきっとみんなこの世界のどこかにいるよ!」

 

「ああ。それに俺たちは三人共、この世界に来たタイミングが違っていたんだ。まだ来ていないだけかもしれないしな。」

 

病院の前に天馬、信介、神童の三人が来ていた。今日はマミの言うとおり仲間を探していたと同時にマギカボールを肩から下げるために入れる袋などを買っていた。

 

「そのCD、喜んでくれるといいですね。神童先輩」

 

「ああ」

 

三人は袋のついでに買ったクラシックのCDを見舞い品に恭介の見舞いに来たのであった。

 

「もうまどかさんたち来てるかな」

 

「そうかもね」

 

三人が他愛もない会話をしながら病院に入ろうとする

 

―――その時だった。

 

 

 

「「「!?」」」

 

突如、三人のそれぞれの袋に入れていたマギカボールが光り出す。

 

「これは…」

 

天馬が袋からボールを取り出すと自身の体に不思議な感覚が現れる。

 

「この感じは一体…」

 

「俺たちにも感じる…」

 

「ボールが何かを伝えようとしてる……?」

 

信助と神童もボールを取り出すと、自分たちにも同じ現象が起きる。するとボールは何かに反応するように更に強く輝きだし、三人は何かに誘導されるような感覚に陥る。

 

「こっちに何かあるの…?」

 

天馬はボールに導かれるように自転車置き場に向かう。

 

「「天馬!」」

 

二人も追いかけるように天馬の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

「ここに何かがあるのかな…?」

 

ボールに導かれるまま自転車置き場にたどり着いた天馬たち。すると神童が何かを見つける。

 

「二人共、あれを見ろ!」

 

「!」

 

神童が指を指した方向を見るとそこにはまどかのカバンが置いてあった。

 

「まどかさんのカバンだ!」

 

「なんでこんなところに!?」

 

天馬たちが驚いているとマギカボールが再び強く輝く。三人が再び困惑すると、魔女の結界が開き、三人の格好がジャージからそれぞれのユニフォームに変わる。

 

「これって魔女の結界!?」

 

「まさか、この中にまどかさんが!?」

 

「とにかく中に入るぞ、二人共!」

 

天馬と信助が頷くと三人はマギカボールを袋にしまいながら結界に踏み込んだ。

 

 

 

 

~~魔女結界内~~

 

 

 

暗い結界の中を進むまどかとマミは先ほどの出来事から一言も喋らず、ただ無言で歩き続けていた。

 

「……ごめんね」

 

「……え?」

 

まどかが暗い顔でうつむきながら歩いていると不意にマミが謝罪し、まどかは顔を上げる。

 

「時々、余裕がなくなるの」

 

「………」

 

「私、無理してカッコつけてるばかりで、どんなに怖くても、辛くても、誰にも相談できないし、一人で泣いてばかりだったの」

 

その時まどかの目に移ったマミの姿は、普段は自分が憧れた頼りになるカッコいい先輩ではなく、孤独を恐れる感情豊かな、ただの一人の少女に見えた。

 

「……いいものじゃないわよ。魔法少女なんて」

 

直後、小さく「…ごめんなさい」と呟くマミにまどかは首を左右に振って言った。

 

「マミさん。わたし……願い事をわたしなりに考えてみたんですけど……」

 

「……え?」

 

「……もしかしたらマミさんには考えが甘いって言われるかもしれないけど…」

 

そう言いながらもまどかは自分の正直な思いを打ち明けた。

 

「……わたし、昔から才能とか人に自慢できるものが…何もなくて自信が持てなかったんです。だからずっと役立たずのままなのかなって思ってたんです。でもサッカーを守る為に戦っている天馬くんたちや誰かを助けるために魔女と戦うマミさんを見て、わたしにも皆と同じことができるって聞いた時、それが本当嬉しくて…」

 

「………」

 

「願い事を叶えて魔法少女になるって言われても、わたしが魔法少女になったらそれでわたしの願いは叶っちゃうんです……こんなわたしでも誰かの役に立てるって胸を張れたらそれでいいんです………」

 

マミは目を見開く。

 

「……大変だよ?怪我もするし、恋したり遊んだりする暇も無くなっちゃうよ?」

 

「……それでも、わたしは頑張ってるマミさんに憧れてるんです」

 

「……憧れるほどのものじゃないわよ、私――」

 

そう言いながら顔を曇らせるマミにまどかは再び首を振る。

 

「……天馬くんたちも言ったじゃないですか、マミさんはもう一人ぼっちじゃないって」

 

「……!」

 

(――マミさんの側にいます!)

 

(――仲間を大切にする。それが雷門ですから!)

 

(――マミさんは僕の大切な友達だから!)

 

「………」

 

マミの頭の中で何度も彼らやまどかの言葉が響き渡る。やがて震えた声で言った。

 

「まいったなぁ……まだまだ先輩ぶってなきゃいけないのに……やっぱりダメな子だなぁ…私」

 

「マミさん…」

 

「……本当にこれから私と一緒に戦ってくれるの?側にいてくれるの?」

 

「……はい、わたしなんかで良かったら」

 

まどかはもらい泣きをぐっとこらえて言った。マミは両目に溜まった涙を指先で拭いながら照れくさそうに笑顔で言った。

 

「……グスッ……でも一応契約は契約だから願い事は決めないとね」

 

「はい。でもどんな願い事にしようかまだ決めてなくて…」

 

「……だったらこの結界の魔女を倒すまでに決められなかったら、キュゥべえにケーキをお願いしましょう!」

 

「ケ、ケーキ!?」

 

マミの突拍子の提案にまどかは戸惑う。

 

「そう。魔法少女コンビ結成記念のお祝いケーキ。信助くんも『もう食べられないよ~』って言うぐらい大きなケーキをお願いしましょう!」

 

「わ、わたしのお願いがケーキって……」

 

「だったら願い事をちゃんと決める!」

 

マミはそういうとまどかの尻に平手打ちする。

 

「は、はいっ!あいたた……」

 

まどかは尻をさする。直後、何かに反応するようにマミは顔を上げる。

 

「っ!」

 

すると前方から無数の使い魔が現れた。

 

「鹿目さん!下がって!」

 

まどかが言われた通りに後ろに下がると、マミは使い魔に向かって駆け出す。

 

「―――ふっ!」

 

使い魔に一斉に飛びかかるがマミも同時にマスケット銃を取り出し、使い魔たちに放つ。撃ち漏らした使い魔にはリボンで拘束して他の使い魔にぶつけたり、弾切れになった銃で薙ぎ払う。その姿のマミはまるで踊っているようで動きが普段より数段キレが増していた。

 

「………」

 

その戦う姿にまどかはただ見惚れているばかりだった。

 

(……体が軽い…!こんな気持ちで戦うのは初めて!)

 

マミはとても嬉しそうな顔で舞うように銃を振るい、使い魔を捌いていく。

 

 

 

(……もう何も怖くない!)

 

しかし、この時の彼女は気づいていなかった。

 

 

 

(………私、もう一人ぼっちじゃないもの!)

 

その浮かれた気持ちが戦いの場において命取りとなる事を。

 

 

 

 

~~その頃・結界入り口付近~~

 

 

 

「……ここにまどかさんがいるのかな…」

 

一方で天馬たちも結界の中に踏み込んでいた。

 

「とにかく病院に結界が出来てしまっている以上、放っておくわけにもいかない。行こう!」

 

「「はい!」」

 

三人は結界を何とかするために進んでいく。

 

「ん?天馬、あれって…」

 

「え?」

 

少し歩いたところで信助が何かを見つける。信助が指を差す方向を見ると、そこにはマミのリボンで拘束されているほむらの姿があった。

 

「ほむらさん!?」

 

天馬の声に反応したほむらはこちらに振り向き、目を見開いて驚く。

 

「あなたたち、どうやって結界の中に…!」

 

「それより、これってマミさんのリボンですよね!」

 

「……ええ。巴マミに縛られたわ」

 

「やはり、君はマミさんと協力しなかったのか?」

 

神童が神妙な面持ちでほむらに問う。ほむらは厳しい面持ちながらも冷静な声で言った。

 

「そうよ。彼女にはこの結界の魔女は荷が重すぎる。鹿目まどかを連れて外に出てもらいたかったけど、これでは美樹さやかも救えそうにないわ」

 

「!?やっぱりまどかさんがこの中に…!それにさやかさんも…!」

 

「待っててください!今外しますからっ!んぎぎっ!」

 

信助はその小さな体でほむらを縛るリボンを外そうとするが、魔法でできたリボンは外すことができない。

 

「無駄よ。あなたたちでは外すことはできないわ。それよりどうやって中に入ったか知らないけど、今すぐ引き返しなさい」

 

「嫌です!結界を放っておけないし、まどかさんたちがいるならなおさらです!」

 

天馬がほむらの忠告を拒否する。ここで引き下がるほど彼らもお利口では無かった。

 

「あなたたちはただのサッカープレイヤー。何もできることはないわ……あなたたちがこのまま行っても……

 

 

 

 

 

 

 

 

巴マミ同様……死ぬだけよ」

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

ほむらの言葉が天馬たちに衝撃を走らせた。

 

「なん……だって…!?」

 

「マミさんが……死んじゃう!?」

 

信助の頭にあの優しく微笑むマミの笑顔がよぎった。

 

「マミさんっ!」

 

「あっ、信助!!」

 

神童の制止も聞かず信助は結界の奥に向かって走り出す。

 

「ほむらさん!あとで必ず助けに戻りますから待っててください!」

 

そう言って天馬は神童と共に信助を追いかける。

 

「待ちなさい!あなたたち!」

 

ほむらの制止は届かず、三人は結界の奥に消えた。

 

 

 

 

 

~~結界・最深部~~

 

 

「この先ね…」

 

マミはキュゥべえのテレパシーをナビにしてまどかと共に結界の最深部に続く扉を開く。そこにはたくさんのお菓子が散らばる広い空間だった。

 

「あっ!マミさん、まどか、こっちこっち!」

 

声のした方向を見るとそこにはキュゥべえと共に大きなケーキの影に隠れているさやかがいた。

 

「よかった。二人共無事だったんだね」

 

二人が無事でまどかとマミはひとまず安心する。まどか達がさやか達の側まで移動するとキュゥべえが視線を前に向ける。

 

「マミ、出てくるよ!」

 

キュゥべえが叫んだ直後グリーフシードが孵化し、空間の中心に脚の長い椅子にちょこんと座った可愛らしいぬいぐるみが現れた。

 

「………」

 

お菓子の魔女、シャルロッテである。

 

「性質は“執着”―――生前大好きだったお菓子を司る協力な魔女だ。気を付けて!」

 

しかし、マミはキュゥべえの言葉にも怯まなかった。

 

「悪いけど、今日は一気に決めさせてもらうわ!」

 

マミはマスケット銃を逆さに持って長椅子の脚を叩き折り、落ちてきた魔女をバッティングの要領で殴り飛ばし、無数のマスケット銃で乱れ撃ちにする。魔女はなす術もなくただ黙って攻撃を受けていた。

 

「………」

 

魔女はその内動きを鈍らせ地面にぽとりと落下する。

 

「これで終わりよ!」

 

マミは無数のマスケット銃を巨大な大砲に変化させて放つ。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

轟音が結界に響き渡り、銃から伸びたリボンが魔女を絡め取ると急激に締め上げ、やがて魔女は首をかくりと落とした。

 

「やった―――」

 

マミさん、とまどかが続けて言おうとした時だった。

 

 

グニャア

 

 

魔女の口から黒くて長いピエロのような顔が付いた恵方巻きのようなものが出てきた。

 

「―――え?」

 

マミが気が付いた時にはそれは既にマミの目の前にまで間合いを詰めており、巨大な口を開いていた。

 

 

 

 

 

 

 

~~結界入り口付近~~

 

 

「…!」

 

突如、ほむらを縛っていたリボンが消え、ほむらは地面に着地する。ほむらは自分の手のひらで溶けていくように消えていくリボンを見てある予感を感じる。

 

「まさか……!?」

 

ほむらは駆け足で結界の奥に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

―――私は一人が怖かった。

 

 

 

 

(お父さん、お母さん……ッ!)

 

 

 

 

―――突然一人ぼっちになって怖かった。

 

 

 

 

(僕と契約して魔法少女になってよ!)

 

 

 

 

―――いきなり戦いの場に一人置かれて孤独だった。

 

 

 

 

(あの子最近付き合い悪くなったよね)

 

 

 

 

―――化け物と戦っていることを誰にも相談できず、知られることもなかった。

 

 

 

 

(―――マミさん!)

 

 

 

 

―――一緒に戦う魔法少女がいたときもあった、でも。

 

 

 

 

(さよなら、巴マミ)

 

 

 

 

―――また一人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~結界・最深部~~

 

 

 

(体が……動かない)

 

突然の出来事に対応できず、目の前に魔女が大口を開けて迫っているのに体が硬直して

動けなかった。

 

(動かなきゃ……このままじゃやられる)

 

しかし、動かそうにも体が言うことを聞かなかった。

 

(このまま………死んじゃうの?)

 

マミの中で一つの思いが駆け巡る。

 

(いや…!)

 

 

 

 

マミの中の思い。それは、

 

 

 

 

(……死にたくない……!)

 

ただそれだけだった。

 

 

 

 

(死んだら………一人ぼっち……)

 

 

 

 

マミは孤独を恐れていた。大好きだった両親とある日突然死に別れ、選択の余地なく命懸けの戦いを強いられた。そしてそんなマミの事を誰にも知られず理解もされないことが何より辛かった。精神をすり減らしてゆく生活の中で、正義の魔法少女として振る舞うことだけがマミの精神を支えていた。そうすることで、孤独を少しでも拭いたかったのだ。

 

 

 

(死にたくない……!)

 

 

 

マミの頭の中でまどかとさやか、そして天馬たちの笑顔が思い浮かぶ。マミはもう一人では無くなっていた。それ故に、孤独をより恐れるようになったのだった。

 

 

(……お願い……私を…!

 

 

 

 

一人にしないで…!)

 

 

 

 

魔女が迫り、マミの視界が暗闇に覆われた。マミは再び生きることを望んだ。

 

 

 

 

 

(………誰か……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――助けて…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっとびジャンプーーーッ!!!」

 

 

 

ドゴオォォォォォォォ!!!

 

 

 

「!!!」

 

 

 

マミが強く望んだ直後、強烈な打撃音が結界内に響く。マミはハッと我に返る。そして気が付いたマミの目に映ったもの。

 

 

 

「うおおおおぉぉぉぉっ!!!」

 

それは西園信助が自身の必殺シュートの要領で魔女の顔面に飛び蹴りをくらわしている光景だった。

 

「―――!?!?!?」

 

魔女は横から不意に飛び蹴りをくらい、マミを食らおうとしていたその口を閉じることなく轟音を立てて地面に叩き付けられた。

 

「………」

 

マミは未だにその場で立ち尽くしていた。

 

「マミさん!大丈夫ですか!?」

 

地面に着地した信助が声を掛ける。

 

「……信……助くん…」

 

マミは力なく呟いた。

 

「信助!」

 

「間に合ったか!」

 

天馬と神童も駆けつけ、マミや信助と合流する。

 

「ハァ…ッ…は…」

 

「信助、大丈夫?」

 

「うん。大丈夫……マギカボールでシュートしてたんじゃ間に合いそうになかったから、直接飛んでちゃった…」

 

信介は息切れ気味の声でそう答えた。

 

「まったく、無茶をするなぁ…」

 

神童は溜息をこぼしながら言う。

 

「―――!?!」

 

「「「!!!」」」

 

もぞっと音がした直後、再びマミたちを食らうために魔女が起き上がろうとしていた。

 

「魔女が起き上がる!」

 

「させるか!」

 

神童は祈るように手を合わせると神童の体が光りだし、両手を左右に広げる。

 

「『オリンポスハーモニー』!」

 

すると神童の背後に光り輝く神殿が現れ魔女はその輝きに魅せられ動きを止める。

 

「―――!?」

 

「今のうちだ!一旦下がるぞ!」

 

「はい!」

 

「…っ!」

 

魔女が光に魅せられているうちに天馬たちはマミを連れてまどかたちが隠れているケーキの影まで後退する。

 

「「マミさん!」」

 

まどかとさやかはマミに駆け寄る。

 

「良かった。まどかさんたちも無事だったんですね!」

 

「うん、なんとか……」

 

無事だ、とさやかが言おうとした直後、

 

 

ドサッ

 

 

「「「!」」」

 

力が抜けたのかマミが膝を着く。

 

「マミさん!大丈……!?」

 

まどかが声を掛けようとしたが…

 

 

 

「……っ!!……っ!」

 

マミは両腕で自分の体を抱き、震えていた。

 

「……い…っ」

 

「……え?」

 

マミが何かを呟いていた事に気づいた一同は耳をすます。

 

「………こわい…!」

 

「「「…!」」」

 

「……死ぬのはっ、怖い…!一人は、怖い…っ!」

 

マミは両目を瞑り、その顔から冷や汗を流し、完全におびえていた。先ほどまで命が危険にさらされ、過去のトラウマから死と直面し、再び一人ぼっちになる恐怖が甦ってしまうのも無理は無かった。

 

「マミさん……」

 

今のマミはもはや魔女と戦える状態ではなかった。

 

「………」

 

天馬・信助・神童は互いの目を合わせ、同時に頷く。そしてそれぞれのマギカボールを取り出し、その場に袋を落とす。それに気づいたまどか、さやか、キュゥべえは天馬たちに視線を向ける。そして天馬たちもそれに合わすようにまどかたちに視線を返す。

 

「まどかさん、さやかさん」

 

「マミさんを頼みます!」

 

「あんたたち……」

 

「て、天馬くんたちは…?」

 

突然マミを託されたまどかたちは心配そうな表情で天馬たちを見る。

 

「俺たちは……」

 

神童が言った直後、三人は魔女の方向に体を向ける。一方で魔女は既に『オリンポスハーモニー』の効果が切れて、信助に叩き付けられた場所からこちらを睨んでいた。天馬はキッと魔女を睨みながら言った。

 

 

 

 

 

「―――あの魔女を倒します!!!」

 

 

 

 

 

 

 




――ED『Magia』――



次回予告

天馬
「マミさんの代わりに魔女と戦うことになった俺達。でも魔女は手強く、俺達の力が通用しない!負けるもんか!絶対まどかさん達は守ってみせる!その時、俺達の中の力が………!

次回!

『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第4話『化身覚醒!お菓子の魔女シャルロッテ』!」



というわけでマミらせませんでした。
だってそれだと革命にならないんですもの。

タイトルでネタバレになるので連続投稿します。

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