魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~ 作:サニーブライト
まだ3話を読んでない方はまずそちらをどうぞ
――OP『打ち砕ーくっ!』――
~~魔女結界~~
「はああぁぁっ!」
バシュゥッッ!!
「―――ギャッ!」
「こっちだ!」
魔女は神童の方に振り向く。
「ていっ!」
「―――グアッ!」
神童の方に近づいた魔女は横から信助のシュートを食らう。お菓子の魔女、シャルロッテは長い胴体となんでも噛み砕けるような巨大な牙を持つ。防御技を持たない天馬たちは近くにいるだけで危険にさらされ、噛みつきはもちろん、体当たりでもされたら一たまりもない。それ故、三人で素早く動いて魔女をかく乱しつつシュートを放つというきわめて単純だが確実にダメージを与えられる方法を取ったのだった。しかし時々必殺シュートを交えて放っても魔女は少し怯むだけで倒せるというには程遠かった。その内シャルロッテもイラつき始め、その顔には苛立ちが込められていた。
「うわっ!」
魔女は信助に向かって突撃するが信助もギリギリでかわす。
「動きが速くなってる!二人共、気をつけろ!」
「………」
彼らが戦う中、マミはまどかたちと共にただ隠れて見るしかできなかった。
(私は何をしてるの…?)
彼らは魔法少女ではなくサッカープレイヤーであり、本来は魔女と戦う力など持っていない。
「負けるもんか!」
「………」
しかし、圧倒的不利でも彼らは一歩も引くことなく魔女に立ち向かっていた。
(魔女と戦うのは私の役目なのに………)
マミは自分の役割を果たそうと何度も立ち上がろうとする。
「……ッ!!」
しかしその度に先ほど魔女に食われそうになった光景がよみがえり、足がすくんでしまっていた。
(……信助くんが助けてくれなかったら、今頃は……)
天馬たち異世界人が助けてくれなかったら、マミは間違いなく死んでいた。助けられたものの、死の縁に立たされた時の恐怖が彼女の体と心を縛り付けていた。
「マミさん………」
呆然としていたマミはゆっくりとまどかの方に顔を向ける。
「ごめんなさいっ!」
「……え?」
突然謝られ、呆けた声を上げるマミ。
「わたし……マミさんとコンビを組むって言ってたのに……マミさんが死にそうになった時、わたし怖くて動けなかったんです…」
まどかは申し訳なさそうな表情で言った。
「あたしも…頭の中が真っ白になって……天馬たちが来た直後でも死んじゃうって思ったら動けなかったんです……ごめんなさい」
さやかもまどかと同じ顔をしながら詫びる。
「鹿目さん……美樹さん…」
マミは自分に謝る二人に驚いていた。
(二人も怖かったはずなのに……私の心配を……いえ、それどころか彼らは……)
マミは天馬たちの方を見る。
「―――ギャアッ!」
魔女にもダメージが溜まって来たらしく、動きが鈍くなっていた。
「今だ!」
神童は一度後退しマギカボールを構えるとボールの周りで音符のついた楽譜のようなオーラが飛び回り、ボールは光を纏っていく。
「『フォルテシモ』!」
神童は天馬と、その先にいる魔女に向けてシュートを放つ。
「天馬!シュートチェインだ!」
「はい!はあああぁぁっ!」
天馬は神童のシュートに合わせて魔女に向かって走りながら神童のシュートにさらにシュートする。
「真・マッハウィンド!」
バシュウゥゥゥッ!!!
「―――グアアアアアア!」
シュートチェインで威力が増したシュートは魔女の頬に直撃し、魔女は轟音を立てて地面に倒れた。
「………」
地面に倒れた魔女は陸に揚げられた魚のように痙攣すると動かなくなった。
「……や、やったの?」
天馬は呆然としながら動かなくなった魔女を見る。
「やったぁ!天…」
「…!!!まだだっ!」
「「えっ!?」」
信助が歓喜しながら天馬に駆け寄ろうとしたが、神童の叫びによってその足を止める。二人が見るとなんと魔女の大きな口から新たな体が現れ、戦う前の無傷な状態を再び天馬たちに見せる。
「―――ギャハハハ!」
脱皮した魔女はまるであざ笑うかのような笑みを浮かべていた。
「そ、そんな……!」
状況は最悪だった。魔法少女であるマミは戦闘不能に陥り、何度もシュートしてようやく倒したと思った魔女は脱皮して復活した。しかもこの様子だとまだまだ脱皮はできるだろう。このままでは全滅は免れない。
「天馬くん……」
「このままじゃ……」
「このままじゃまずいね」
キュゥべえが無表情のまま呟く。
「彼らの身体能力は目を見張るものがあるけど、あの魔女は脱皮することで回復しているようだ」
キュゥベえはただ淡々と魔女の能力を分析する。
「あの様子だと彼らに持久戦は不利だ。このままじゃ彼らはやられる」
「そんな……!」
「でも魔法少女ならあの魔女を倒すことができる……でも、今のマミは戦えない」
キュゥベえの言葉に二人はマミの方を見る。今のマミは変わらずおびえており、このまま戦わせても犬死どころか天馬たちの足を引っ張ってしまうだろう。そこからキュゥベえが何を言おうとしているかはまどかとさやかにも予測できた。しかし、もはやこの状況を打破するにはそれしかなかった。
「まどか、さやか、僕と契約して魔法少女に……」
「―――その必要はないわ」
「!」
いつの間にかマミのリボンから解放されたほむらがまどかたちの側にいた。
「ほむらちゃん……」
ほむらは天馬たちが戦っている様子を見る。
「……教えて。何故彼らが戦っているの…?」
「………」
まどかは先ほどまでの状況をほむらに説明した。
「……そう、命があって助かったわね。巴マミ」
「………」
マミは変わらず自分の体を抱きしめながら俯いていた。
「わかったかしら。あなたのやっていた事がどういうことだったのか」
「………」
「魔女と戦う力を持たない彼らに戦わせて……あなたそれでも魔法少女なの?」
「……!」
「あんた!今頃やってきて何をっ!天馬たちが来なかったら、マミさんは今頃……」
「やめて、美樹さん」
怒りに身を任せるさやかをマミは制す。しかしその言葉からはいつものマミの強気が感じられなかった。
「……彼女は私が動きを封じてたから来れなかっただけ……それに彼女のいうとおりだもの」
マミはほむらに反論できなかった。天馬たちが来なければ自分は間違いなく死んでいただろう。それどころか魔法少女というものに彼らとまどかたちを関わらせなければ、全員をこんな危険な目に遭わせることもなかっただろう。マミは怯えつつも自分の愚かさを責めた。
「マミさん……」
(私のせいだ………私が皆を巻き込まなければ……こんなことには……)
マミが自分を責める中でも天馬たちは戦い続けていた。
(彼らでは魔女に勝てない………私がやらなくちゃ………でも…!)
自分が戦わなければならないのは頭では理解できた。しかし、一度命の危険に瀕した時の恐怖が彼女を縛り続けていた。
「……っ!」
「あなたはここで待ってなさい。彼らも私が……」
ドガアァァァァ!
「「「うわああぁぁぁ!」」」
「!!!」
大きな打撃音と叫び声が響き、全員が前を向く。魔女は天馬たちに向かって体当たりを仕掛け、天馬たちは何とか躱すも、魔女が地面に激突した際に発生した衝撃波で三人はまどかたちの前まで吹っ飛ぶ。
「天馬くん!神童くん!信助くん!」
「ぐうぅぅ…!」
「ぐっ……!」
「うう……」
三人は既に満身創痍だった。体のあちこちが傷つき、疲労がたまっているのが目に見えた。
「下がりなさい。あなたたちでは魔女に勝てないわ」
ほむらは天馬たちを下がらせようと前に出る。
「まだですっ!」
「!」
三人はボロボロの体を起こし、立ち上がる。
「あんたたち………!」
「天馬くん!もうやめて!このままじゃ天馬くんたちが…!」
まどかは目に涙を浮かべながら叫ぶ。
「まだ……やれます!」
「……ああ、まだ諦めない!」
「みんなは……僕たちが守ってみせる!」
三人は一歩も引くことなく魔女に向かって立ち尽くしていた。
「………」
マミには理解できなかった。彼らはなぜ勝てる見込みの無い状況なのに一歩も引く事無く戦いつづけるのか。
「あなたたち……怖くないの……?」
「!」
マミは恐る恐る震えた声で聞く。
「あんなに怖い魔女を相手にして………死んじゃうかもしれないのよ……」
「………」
「あなたたちは………怖くないの……?」
「………」
三人はマミの言葉をただ黙って真剣な顔で聞く。そして三人は答えた。
「―――怖いです」
「…え?」
「ああ……あんなに大きな怪物を相手にして怖くないはずがない…」
「今でも、今すぐ逃げ出したいって言うぐらい……体が震えてます……」
三人はおびえながらもはっきり言った。彼らもその震えた声から恐怖しているのがわかる。
「だったら……どうして、戦うの…?」
マミには理解できなかった。自分も殺されかけ、こんなに恐怖しているというのに、どうして彼らは戦うのか。
「確かに、あんな怪物を相手にするのは怖い」
神童が言った。
「死んじゃうかもって思うとどうしても怖いです。でも………」
信助が言った。そして、
「本当に怖いのは……大切な仲間が目の前で死んじゃうことなんだ!!!」
「!」
天馬が強い思いを込めて叫んだ。
「俺たちはサッカーを守らなければならない。だから死ぬわけにはいかない…でもっ!」
「ここでマミさんたちを見捨てたら、きっとサッカーだって守れない!」
「何より……まどかさんたちは……俺たちの、大切な友達だから!!!」
「「!!!」」
神童、信助、天馬の決意にほむらとマミは目を見開く。
「天馬くん……!」
「信助……神童…!」
天馬たちはサッカープレイヤーであるが、魔女と戦う魔法少女ではない。しかし出会ってまだ日にちが立っていないまどかたちを仲間と呼び、彼女たちを守りたいという思いが恐怖を乗り越えていた。そんな彼らの心の強さにまどかたちは言葉を失う。
「仲間を守れない様じゃ何も守れない!だから俺たちは戦う!!!」
「マミさんたちもサッカーも絶対に守ってみせる!だから僕たちは負けない!!!」
「そうだ!俺たちは、大切なものを……」
「「「―――――守りたいんだ!!!」」」
キイィィィィィィンッ!
「「「!!!」」」
三人が強い思いを込めて叫んだ直後、三人の側に転がっていたマギカボールから今までに無いくらいの強い輝きを放つ。
「これは………!」
全員が驚く中、ボールの輝きに同調するように天馬たちの体から金色のオーラが出現し、三人をまるで炎のように包み込む。信助においては首から下が光に包まれ、光が消えるとグローブと背番号20番のキーパーユニフォームを身に着けていた。そしてオーラが消えていくと同時にマギカボールの輝きも消えた。
「今のは……一体……」
一同は今の現象が理解できず、困惑する。
「また変わった………ううん、それだけじゃない……」
信助はグローブを着けた両手の平を見ながら呟く。
「天馬………感じないか……?」
神童と天馬も広げた両手を見る。
「はい……!…感じる…俺たちの力が!」
天馬たちは自分たちの中のある力を感じ取り、意気高揚する。
「今なら……いける!」
天馬は開いていた両手を閉じて拳を作り、顔を上げる。そして魔女の方にキッと視線を戻すと、魔女に向かってドリブルで突っ込む。
「「天馬!」」
「うおおおぉぉぉぉぉ!」
「何をやっているんだ!君じゃ魔女に勝てない!戻るんだ!」
キュゥベえの制止にも応じず、天馬は魔女に向かっていく。そして一方魔女もその長い体を不気味に伸ばし天馬を食らおうと大口を開ける。
「―――グアアァァァッ!!!」
「危ない!」
「ッ!」
さやかが無意識に叫び、ほむらが自分の魔法を発動させようとし、
「天馬くーーーんっ!!!」
まどかが悲痛に叫んだその時だった。
「はああああぁぁぁぁっ!!!」
天馬がドリブルしながら両手を広げて叫ぶと、彼の背中から深い藍色のオーラが出現した。
~挿入曲「天までとどけっ!」~
「―――『
天馬の背中から出現したオーラが広がると翼を形成するかのように形を成していく。藍色のオーラが消えるとそこから背中から真っ白な翼を生やし、強固な肉体とボリュームのある長い赤髪を持ち、頭にペガサスを模した装飾を着けた巨人が雄叫びを上げながら現れる。
「天馬!」
「こ、これは…!?」
天馬から出現した化身に神童と信助は歓喜し、まどかたちは驚愕する。
「はああああぁぁぁっ!」
天馬がマギカボールを魔女に向かってシュートする。するとそれに合わせるようにペガサスアークも雄叫びを上げながら拳を伸ばす。
バキィッ!!!
「―――!!?」
天馬に向かっていた魔女は天馬のシュートと共にペガサスアークの拳を顔面に受け、ボールの勢いに押されて遥か後方に吹き飛び、轟音を立てて壁に叩き付けられる。そして地面に落下した直後、天馬のボールが戻ってくる。
「やったあ!」
「化身が……復活した!」
「…な、何よ……アレ…!?」
「天馬くんの体から……巨人が…!」
「何が…起こったの…!?」
「彼は…一体…!?」
「………」
さやか、まどか、マミ、ほむら。四人の少女が突然の出来事に驚きを隠せず困惑する。その中でキュゥベえは赤い瞳を輝かせながら静かに呟く。
「……彼の出した、あの力は……」
一同がそれぞれの感想を漏らす中、地面に転がる魔女は再び口から新しい体を生み出す。
「っ!」
そして再びこちらに向かって突撃を仕掛け、天馬は身構える。
「―――グアアァッ!」
しかし魔女は天馬の上空を通り過ぎる。どうやら天馬の後ろにいるまどかたちを狙っているようで一気にその体を伸ばしていく。
「危ない!」
「っ!」
ほむらは今度こそ自身の魔法を発動させようと身構えた。
「今度は僕の番だ!!!」
が、信助が小さな両手を構えながら前に出る。
「信助くん!」
マミが咄嗟に呼びかけた直後、
「うおおおおぉぉぉっ!!!」
信助が叫びながら力を溜める。するとその背中から天馬と同じ色のオーラが現れ、形を成すと大木のような剛腕を持つ青を強調した剣闘士のような鎧を着けた巨人になる。
「―――『
「信助くんも!?」
マミが驚くと信助は大きく右腕を引き、タイタニアスもそれに合わせるように腕を引く。
「『マジン・ザ・ハンド』!!!」
魔女の突撃に合わすように腕を掌底のように突き出すとタイタニアスもその剛腕から掌底を繰り出し、魔女の顔面に当てる。
「―――!?!?」
魔女は掌底をまともに喰らい、まるでダムにせき止められた水のように突撃を止められる。
「魔女の攻撃を……止めた!?」
ほむらはただの一般人と思っていた少年が魔女の攻撃を防いだ光景に目を疑う。
「神童先輩!」
信助が叫ぶと神童は了承したように頷く。
「はああああぁぁぁぁっ!!!」
今度は神童が腕を交差させながら叫ぶと、その体から天馬たちと同じ色のオーラを放つ。そしてそれは一本の指揮棒と四本の腕を持つ水色のウェーブがかかった髪の指揮者の巨人に変わる。
「―――『
『奏者マエストロ』はマギカボールに四本の腕をかざすと、ボールはシャボン玉のように水色のオーラに包まれ地面に弾んで波紋を広がす。エネルギーの溜まったそのボールを神童が放つ。
「『ハーモニクス』!」
ドゴォォォ!!!
「――グアァァ!?」
タイタニアスに抑え込まれていた魔女は横から化身シュートを喰らい、そのままボールと共に吹き飛び、轟音と共に壁に叩き付けられた。
「「「………」」」
先ほどまで苦戦していたはずの魔女を吹き飛ばす天馬たちにまどかたちはただひたすら目を丸くしていた。
「……すごい…」
「……魔女を……圧倒してる…!」
「……天馬くん、あなたたちは一体…!」
「………」
ほむらもその光景に呆然としていたが、ハッと気が付き真剣な顔つきに戻す。
「………巴マミ、あなたは何をしているのかしら…?」
マミは反射的にほむらの方を向く。
「彼らはあなたたちを守る為に戦っている……魔法少女であるあなたは今何をするべきなの……」
「!」
その瞬間、マミの頭の中でいろいろな思いが駆け巡る。
(……私は何をやっていたの……何を浮かれていたの……何を怯えていたの……?)
マミは再び新しい体を出した魔女と戦う天馬たちを見ながら思った。
(私は一人が怖かった……でも一人じゃなくなって、今度は浮かれていた……)
恐怖で硬く感じていた体が徐々に柔らかさを取り戻していく。
(でも…そのせいで私はまた死にかけて……彼らや鹿目さんたちを危険にさらした…)
マミはまどかたちを見る。まどかたちは心配そうな目で自分を見ていた。
(それでも…みんなはこんな私を想ってくれた……守りたいと言ってくれた…)
再び天馬たちを見る。魔女は既に新しい体を出し、天馬たちに襲いかかっている。
「まだまだぁ!」
(彼らは恐れながらも、必死に戦っている……私たちを守る為に…!)
マミの目に勇敢に魔女と戦う天馬たちの姿が焼き付く。
(……そうよ!彼らのあの姿こそ…!)
マミの目頭が熱くなっていく。
(私が憧れた……『正義の味方』の姿じゃない!)
気づけばマミは胸の奥から熱いものを感じていた。
(なら、私も……戦わなきゃ……守らなきゃ……!)
マミは恐怖しながらも自分を奮い立たせる。
(私たちを守ろうとしている彼らを……かけがえのない……仲間を!!!)
そしてついにマミは立ち上がった。失いたくない大切なモノを守るために。
「……鹿目さん、美樹さん。ごめんなさい、心配掛けちゃったわね」
「「!」」
「…でも、もう大丈夫……そこで見てて……」
マミはその場にいくつものマスケット銃を作り出し、地面に突き立てる。
「……魔法少女としての私を……本当の正義の味方の姿を!!!」
「「マミさん!」」
マミはついに恐怖を乗り越え、その瞳には強い決意が現れていた。
ドカァ!
「うわあぁっ!」
信助は魔女の体当たりによる衝撃波で吹き飛ぶ。
「いてて………ッ!!」
直後、魔女が信助を喰らおうと大口を開けて迫っていた。
「グアアァァ!」
「「信助!」」
「パロット・ラ・マギカ・エドゥインフィニータ!!!」
マスケット銃による弾幕が魔女を怯ませる。
「―――ギャアアアア!!」
「今のは……!」
「ごめんなさい、皆!待たせちゃったわね」
一同が声がした方向に振り向くとそこにはいつもの勇ましいマミの姿があった。
「マミさん!」
マミはリボンの壁を作り出し魔女と自分たちを遮断する。そして倒れている信助に手を伸ばし、立ち上がらせると三人に顔を合わせながら言った。
「みんな……私も、みんなを守りたい!…だから、一緒に戦いましょう!」
マミの表情はもう恐怖におびえているものではなかった。それは天馬たちと同じ大切なモノを守る為に決意を固めた戦士の表情だった。
「「「はいっ!」」」
三人はマミに力強く返事を返した。
「私も戦うわ」
「!ほむらさん…」
気が付けばほむらも側にいた。
「暁美さん……」
ほむらはうん、というように頷く。
「あの魔女はもうかなり弱ってる。口の中を攻撃すれば倒せるはずよ。一気に決めましょう」
「ええ!」
「俺もやります!」
「天馬くん……わかったわ!じゃあ、私たち三人で魔女にとどめを刺すから、信助くんと神童くんは鹿目さんたちを守って!」
「わかりました!」
神童と信助がまどかたちの方へ向かい、マミたちはリボンを消して銃を放って挑発しながら逆方向に走り出す。
「―――!?!?!?」
見事に挑発に乗った魔女は天馬・ほむら・マミの方に向かう。
「行くわよ!」
「ええ!」
ほむらとマミは高くジャンプする。
「はあああぁぁぁっっ!!!」
そして天馬も合わせるように力を溜めて飛び上がる。三人の高さが重なった瞬間、魔女は一気に三人共喰らおうと大口を開ける。
「グアアアアアァァァ!!!」
「今よ!」
ほむらの掛け声と共に三人は魔女の口めがけ、
「喰らいなさい!!!」
ほむらがバズーカを放ち、
「ティロ・フィナーレ!!!」
マミが大砲を撃ち、
「『ジャスティスウイング』!!!」
天馬がペガサスアークの拳を当てたシュートを放つ。
「―――!?!?!?!?!?!?!!?」
三人の攻撃は一斉に魔女の口内に飛び込み、魔女は動きを止める。次の瞬間、内側から轟音を立てながら爆散し、跡形もなく消滅する。それと同時に結界も崩れるように消滅し、天馬たちが着地したと同時に景色が元の病院の駐輪場に戻り、天馬たちの化身が再び藍色のオーラとして三人の体内に戻る。そしてその空中からグリーフシードと天馬のボールが地面に落下する。
~~病院・駐輪場~~
「やった…!」
天馬は結界が消滅したのを確認するとそう呟いた。
「天馬ーーー!」
「信助!」
天馬が振り向くと信助たちが笑顔で駆け寄っていた。
「やったね天馬!僕たち、魔女を倒したんだ!」
「うん!マミさんたちを守れたんだ!」
天馬と信助はハイタッチをしながら喜ぶ。
「マミさん!」
まどかたちもマミに駆け寄る。
「鹿目さん、美樹さん……」
「良かった……マミさんが無事で本当に良かったです…!」
「やっぱりマミさんは凄いや!」
まどかは少し涙ぐみ、さやかは感激していた。
「そんなことないわ……それに二人こそ無事でよかったわ……」
「でも、あなたたち…これでわかったでしょう。魔法少女になることがどういうことなのかを」
「っ!あんたは…!」
「いいの。美樹さん…さっきまでの私は……油断していたの…」
ほむらの言い方に鼻がついたのか敵意を見せるさやかをマミが制す。
「マミさん?」
まどかが呼びかけるとマミは顔を俯かせながら目を閉じて語りだす。
「……私はずっと一人ぼっちがいやだったの。突然両親と死に別れて、誰にも知られずに戦い続けることが苦しかったの。それは本当につらかったわ」
「マミさん……」
「そんな私もかつてある魔法少女を弟子にしていたわ……でもある時をきっかけに彼女は私の元を離れていった。それが私の孤独をさらに強めたの。そんなある日、信助くんたちと鹿目さんたちと出会って、一緒に戦う仲間が出来て、魔法少女の後輩も出来ると浮かれてしまったの……その結果、暁美さんの言うとおり、私は自分だけでなくあなたたちまで危険にさらした……」
ここでマミは顔を上げてまどかとさやかを見る。
「二人共、今日で体験ツアーは終わりにしましょう」
「「え?」」
「やっぱりあなたたちをこれ以上危ない目に合わせられないわ。これでいいでしょう?暁美さん」
「……わかってくれればいいわ」
「で、でも…」
「鹿目さん。さっきまでの命懸けの戦いをこれからずっとしていきたい?それまでにあった日常を捨ててでも……命を懸けてでも……」
「日常……命……」
まどかは日常と言われて自分の日常を思い出す。いつも笑顔で自分を愛してくれる家族。先生やクラスメートとの楽しい学校生活。放課後でのさやかや仁美とのおしゃべり。そんな環境の中で笑っている自分。しかし魔法少女になればそれらが一気に失われ、最悪の場合、先ほどのマミのように命が危険にさらされる。
「…ッ!」
日常を捨てて戦いに赴く覚悟もないまどかには返す言葉が無かった。
「そういうことよ?だから…あなたたちのその日常を守らせて」
「………」
さやかもまどかと同じことを考えたと同時に以前マミに言われた自分の半端な覚悟を恥じた。
「それでも魔法少女になりたいなら、それ相応の願いを叶えなさい…その時は私が鍛えてあげるから……」
マミはいつもの頼りがいのある言葉で言うと今度は天馬たちに顔を向ける。
「天馬くん、信助くん、神童くん。あなたたちがいなければ私は確実にあの魔女に殺されていたわ。本当にありがとう…」
マミは深々と頭を下げる。
「いいですよ。俺たちだってマミさんに助けられた身ですし…」
天馬たちは両手を左右に振りながら謙虚に返す。しかしマミは首を左右に振った。
「ううん。心からお礼を言わせて。さっきのあなたたちの姿は私の理想とするヒーローの姿だった。あなたたちはずっと怖がっていた私を勇気づけてくれた……私の命だけでなく、私の心も救ってくれた…」
マミは目を閉じて手を胸を当てる。
「あなたたちのその勇気……私にも伝わったわ」
マミのその声はとてもやわらかなもので温かみを感じた。天馬たち三人も穏やかな表情を浮かばせる。
「マミさん…」
マミは目を開けて信助の方を向く。そして信助は昨晩の時のように再び笑顔で手を伸ばした。
「これからも……よろしくお願いします!」
「ええ!これからもよろしく!」
マミも笑顔で再び信助と握手を交わした。
「信助……」
天馬が呟いた直後、やさしいそよ風が吹きその場に居た全員の髪を揺らした。その風はかつての天馬達の革命が進んだ時に吹いたものに似ていた。まるでこの世界にも革命を起こしたように………。
「それにしても驚いたよ」
風が止んだ直後、無機質な声が響く。
「キュゥべえ」
「まさか天馬が魔女を倒すとは思わなかったよ」
「何言ってるのさ、俺だけじゃないよ。最後はマミさんやほむらさんが一緒に撃ったから倒せたんじゃないか」
「いや、あの魔女はもうかなり弱っていた。弱点を攻撃するなら天馬の攻撃だけで倒せてたよ」
「そうなの?」
「それより、僕としては他に気になる事がある。
―――君たちが魔女を倒したあの力………あれはなんだい?」
「そうだよ!なんか天馬たちの体からブワ~ッて巨人が出たじゃん!」
さやかは両手を大きく広げる。
「私も気になるわ……あれは、何なの…?」
さすがのほむらも気になり、尋ねられた三人は答えた。
「あれは、化身です!」
「化身?」
「化身とは、俺たちの世界では『人の心の強さが気の塊として形になったもの』、そう呼ばれている」
「化身が出せる人は化身使いって呼ばれてて、凄いパワーを発揮できるんです!」
「化身使い……」
「人の心の強さが形に………なるほど、それはまさしく魔法少女が持つ希望の力と同義……だから絶望の象徴である魔女に絶大な効果があったのね…」
「おそらくそうだと思います」
ほむらとマミの推測に同じ推測をしていた神童が頷く。
「やっぱり天馬くんたちって凄いんだね!」
「いやぁ…」
グゥ~~~。
まどかに褒められた直後、天馬と信助の腹が鳴った。
「「「………」」」
「ぷっ………」
「「「あははははっ!」」」
空気が笑いに包まれた。天馬と信助は少し照れていたが。
「なんだかおなかがすいちゃって……」
「それじゃ、帰ってみんなでお茶会しましょうか」
「やったーー!」
信助とさやかは笑顔でバンザイする。
「あはは……ほむらちゃんも一緒に……アレ?」
二人に苦笑いしていたまどかが辺りを見渡すと、いつの間にかほむらとキュゥべえの姿が消えていた。
「ほむらちゃんは?」
「そういえばキュゥべえもいないね」
「何よあの転校生!せっかくみんな無事だったっていうのにホントムカつく!」
「まあまあ彼女もいつか来てくれるわよ」
そして一同は病院の入り口に向かって歩き出す。
「あっ、そうだ。上条に持ってきたCDがまだだった」
「今日は都合が悪いみたいだよ」
「でも今なら大丈夫かもしれないじゃない?それに美樹さんも会いたがってるみたいだし」
「ま、マミさんっ!?」
マミがさやかをからかい、天馬たちは再び笑いに包まれる。
「……………」
そんな様子を少し離れたビルの屋上からほむらが眺めていた。彼女は化身の話を聞き終えたあたりから姿を消していたのだった。
「ただのサッカープレイヤーと思っていたら……とんでもないイレギュラーが現れたわね……」
ほむらはただ天馬たちを見続けながら呟く。
「しかもまだ仲間がいるなら……アイツと戦う良い戦力になりそうね」
ほむらはある目的の為に天馬たちを利用しようと考えていた。
「…………」
彼らはただの戦力。そう思っているはずなのになぜか彼らの言葉が頭から離れなかった。
(――――まどかさんたちは………俺たちの大切な友達だから!!!)
(私にとって大切なのはまどかだけ……それなのに…)
(―――仲間を守れない様じゃ何も守れない!!!)
(―――マミさんたちもサッカーも絶対に守ってみせる!!!)
(―――俺たちは………大切なものを―――――)
(―――守りたいんだ!!!)
「…ッ!!!」
ほむらは辛そうな顔で自分の胸を押さえる。
「何?………この、胸の奥から突っかかるような感覚は……」
彼らの言葉がほむらに不思議な感覚を与えていた。
~~某所・夜~~
「あそこでマミが死んでくれれば、まどかやさやかと契約できると思ったんだけどね」
キュゥべえはどこまでも変わらない表情で呟く。
「まあ、いいか。まだいくらでもチャンスはあるし、マミから取れるエネルギーも期待できるからね」
キュゥべえは感情を全くこめずに言い放つ。
「―――それに思わぬ収穫もあった」
夜風がたびたび月を雲で隠してはその影でキュゥべえを包む。
「……化身……か……これからは利用させてもらうよ……『化身使い』……」
雲が晴れてキュゥべえを照らす月光がその赤い瞳を怪しく輝かせていた。
――ED『愛情・情熱・熱風』(歌:空野葵)――
次回予告
天馬
「化身が復活して、マミさん達を守り切った俺達!あれ、なんだか上条さんの様子がおかしい……?それと同時にまどかさんが一人魔女の結界に閉じ込められてしまい、大ピンチに!そこに現れたのは…………。
次回!
『魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と
第5話『誰がために少女は願う』!」
というわけで連続投稿してみました。
タイトルでネタバレして連続投稿なんてもうそうそう無いでしょうね。
ストックがたまるまで少しの間投稿を休ませてもらいます。
ご感想お待ちしてます 執筆意欲になるので(笑)。