魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~ 作:サニーブライト
リアルでも忙しかったり、文章をどうまとめようか考えていたら
こんなにかかってしまいました。
なお、台本形式はやめたほうがいいとご意見をいただきましたので
今回から台本形式をやめてみました。また、どうしても一話丸々書くとどうしても一万字オーバーしてしまうため、今回から読みやすく早く続きを見られるようAパートとBパートに分けてみることにもしましたのでよろしくお願いします。
それでは続きをどうぞ。
――OP『成せば成るのさ七色卵』――
――まどかは暗い魔女の結界の中にいた。
「やったあ、マミさん!」
さやかが嬉しそうに言った瞬間、マミが撃ち抜いた魔女からグニャリと黒くて長い物が一瞬でマミの間合いを詰め、大きな口を開けていた。
「え?」
マミがそう呟くとそれはマミの頭を捕らえて空中に上げ、グシャリと音を立てながら口を閉ざす。まどかがただ呆然と眺めているとマミが落ちてくる。
「い……」
そしてその体には首から上が――――消えていた。
「い……」
そして魔女は地に落ちたマミの体を追いかけるように体を伸ばしていき、その体を喰らっていく。
――――いやああああぁぁぁぁぁぁ!
ガバッ!
~~早朝・まどかの部屋~~
「はぁ……はぁ……」
そこは自室のベッドの上だった。上半身を起こしていた自分は汗だくで心臓の鼓動と呼吸を乱していた。まどかの耳にチュンチュンと穏やかな雀の鳴き声が響き、周囲を見渡して状況を確認する。早朝の日差しが彼女を照らす中、まどかは静かに呟いた。
「……また、夢……?」
~~通学路~~
(あれは夢だよね…なのに何?この感じ……)
まどかは通学路を歩きながら夕べの夢の事を思い出していた。夢であるはずなのに妙に現実感があった。
(まさか、昨日の事は…)
まどかは昨日マミが助かったのは自分の妄想だったのではないかと疑う。
「鹿目さん」
俯きながら考えていたまどかはハッと振り向く。
「あ…」
「おはよう、鹿目さん!」
そこにはあの優しい笑顔で挨拶するマミの姿があった。
「マ、マミさん…!」
まどかは震えた声で彼女の名を呼ぶ。
「…?…どうしたの…かな…」
マミは様子がおかしいまどかに聞こうとした直後、突如まどかに抱き着かれる。
「か、鹿目さん?」
「ヒック……グスッ…」
まどかは泣きながら自分を強く抱きしめ、その涙でマミの制服を濡らしていた。
「良かった……やっぱり夢だった…マミさん生きてた……グスッ…」
「ど、どうしたの鹿目さん?いきなり…」
「おーい!まどかー!マミさ……ってどしたの、まどか?」
マミは突然泣きついてきたまどかに驚き、ちょうどやって来たさやかも困惑していた。
「そっか。そんな夢を…」
「うん。あまりにもリアルだったから…」
数分後、気分が落ち着いたまどかは夕べの夢の事を二人に話していた。
「でも私はこの通り生きているから、もう忘れた方がいいわ」
「はい。本当に夢で良かったです!」
マミが生きている現実を再確認したまどかはようやく吹っ切れ、二人に笑顔を見せる。
「でも、天馬くんたちが助けてくれなかったら、現実になってたのよね…」
「あいつらのおかげであたしたちも助かったわけですしね。化身なんてものを出した時に驚きましたけど」
二人が話す中、まどかは何故か笑顔で空を見上げていた。
「ん?どしたの、まどか」
「ううん、昨日の天馬くんたち…」
(俺達は……大切なものを……)
(((―――守りたいんだ!!!)))
「…カッコ良かったなって…///」
まどかは昨日の天馬たちの勇姿を思い出し、少しだけ頬を赤く染めていた。
「お~っ!まどかが男をカッコイイなんてね!もしかしてあいつらの誰かに惚れた?」
「ふえっ!?ち、違うよ!そんなんじゃなくって……///」
まどかは顔を真っ赤にして否定する。
「あっ!あそこに仁美ちゃんが!さやかちゃん、行こ!マミさんも!」
「あっ!こらまどか!あたしの嫁になるのだから教えろコノ!」
「フフッ、二人共待って!」
まどかは誤魔化すために話を打ち切って仁美の方へ走り出す。さやかはイタズラな笑みでまどかを追いかけ、マミも後に続いた。ちなみに仁美にマミの事を紹介し、四人は華やかな笑顔で登校したのであった。
~~同時刻・河川敷~~
「それにしても昨日は大変でしたね」
「ああ。でもみんな無事で本当に良かった」
「それに僕たちの化身も復活しましたし、万々歳ですよ!」
あのお菓子の魔女戦で化身が復活し魔女を倒した事で自分たちのサッカーで魔女とも戦えると知った三人は更に磨きをかけようとこの河川敷で特訓に励んでいた。
「それにしても本当に驚かされる事ばかりだな、このボールは」
神童はマギカボールを手に持ちながら言う。
「ええ。ソウルジェムのように魔女の結界を見つけたり、格好を変えたり…」
「さらには化身まで復活させるなんてね!」
天馬と信助も自分のマギカボールを見つめる。
「だが、油断はできない。あの時のようにいつもうまくいくとは限らない。みんなと再会して元の世界に帰る為にも俺たちはもっと強くならなければならない」
「そうですね。よし頑張ろう、信助!」
「うん!」
「天馬、行くよ!」
「うん!」
話を追えて数分後、天馬達はボールのコントロールの精度を上げるためにパスの練習をしていた。
「それっ!……あっ!」
信助は天馬に向けてパスをしたが足元が狂い、ボールはあらぬ方向へと飛ぶ。
「ん?」
そしてボールは小さい子供を連れたメガネの男性の側に落ちる。
「すいませ~ん!」
信助が駆け寄ると男性が連れている子供がボールを持って喜んでいた。
「こら、タツヤ。ダメだよ。」
「あ~ん」
男性は連れていた子供からボールを取り上げて信助に渡す。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」
微笑みながらボールを返すその男性はとても温厚で信助も彼から温かい包容力を感じた。
「君たち、サッカーやってるのかい?」
「はい!」
「でも、この時間にこんな所で……学校はどうしたんだい?」
「えっ!?あの、その…えと…」
「俺たち、この地域に合宿で来てるんです」
いつの間にか天馬と共に側に来ていた神童が返答に困っていた信助のフォローに入る。
「そうだったのか。てっきり学校をサボっているのかと心配したよ」
「「あはは……」」
この世界に自分たちの学校が存在しないとは言えないため、天馬や信助は苦笑する。
「あなたもサッカーが好きなんですか?」
「いや、そういうことじゃないんだけど、娘が最近凄いサッカーが出来る友達が出来たと話していてね。君たちを見て興味を持ったんだ」
神童が聞くと男性は信助のボールに一瞬目を向けて話す。
「娘さんがいるんですか?」
「ああ、まどかって言うんだけどね」
「え?まどかって、それじゃあなたはまどかさんの……」
まどかの名前が出て天馬は一瞬キョトンとした顔になる。
「君たちはまどかを知っているのかい?」
「はい!俺、松風天馬と言います。まどかさんとは最近知り合ったんです」
「そうか。まどかが最近話していたのは君たちの事だったのか。僕は
「あい!」
男性はまどかの父である知久だった。そしてまどかの弟であるタツヤも元気に挨拶する。
「まどかさんの弟なんだ!あ、僕は西園信助です!」
「俺は神童拓人と言います」
「よろしく。そういえばまどかが今朝怖い夢を見たらしく、少し元気が無かったんだ」
「え?大丈夫だったんですか?」
「ああ、学校にはちゃんと行ったから。でもやっぱり大丈夫かな…?」
まどかを心配する知久を見て、天馬は言った。
「大丈夫です!まどかさんは俺たちが元気づけておきますから!」
「……そうか、ありがとう。そうしてくれると僕にとっても嬉しいよ」
天馬に励まされ知久も明るい表情を取り戻す。
「じゃあ僕たちはもう行くよ。サッカーの練習頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
「タツヤ君もまたね!」
「あい!」
天馬たちは手を振りながら笑顔で二人を見送った。
「タツヤ、彼らが気に入ったのかい?」
「あい!」
タツヤは無邪気な笑顔を浮かべながら返事する。
「うん、僕もだよ。まどかも気に入るわけだ。中々いないよ、あんなに目が透き通った少年たちは……」
知久は目を閉じながら静かに語る。
「あい!」
「ふふ、そうか。タツヤもサッカーやって見たくなったかい?」
太陽が照らす見滝原の一角で一組の親子の会話が響いた。
~~夕方・見滝原総合病院~~
「恭介の奴、喜んでくれるかな?」
さやかは今日も恭介を元気づける為にCDを持ってきた。
「やっほー!恭介、今日もさやかちゃんが来てやったぞー!」
さやかはいつも通りに恭介に挨拶した。しかし恭介はこちらを向かずに俯いていた。
「どうしたの恭介、元気ないじゃん」
さやかが顔を覗き込んでも恭介は応じなかった。するとさやかは顔を離して手提げ袋からCDを取り出す。
「そうだ、今日新しいCD持ってきたんだ。これでも聞いて………」
さやかが笑顔でCDを見せようとした直後、
「さやかはさぁ」
そこから出たのはさやかの予想外の台詞だった。
「―――僕をいじめているのかい?」
「………え…?」
笑顔が一転し、さやかは呆気にとられてポカンと口を開けたまま呟く。
「……さやかはいつもCDを持ってきて、僕に聞かせようとする。僕をいじめているのかい?」
「何……言ってるの?」
さやかには信じられなかった。CDを持ってくるといつも喜んでくれる恭介が自分を責めていることを。
「指が動かない僕へのあてつけなのかい?」
そう言う恭介の瞳には憤慨と哀しみが込められていた。
「何で…何で指が動かなくなって音楽が出来ない僕にこんなものを聞かせるんだ!」
「きょう…すけ…」
「もう……意味無いんだよ!聞きたくないんだよ!自分で弾けもしない音楽なんて!」
恭介は怒鳴りながら側に置いてあったCDケースに指が動かない左手を叩き付け、割れたケースの破片が恭介の左手とベッドのシーツを鮮血に染める。
「ちょ……恭介!」
さやかはCDをほっぽり出して恭介に駆け寄る。すると恭介は涙を流しながら言った。
「……先生に言われたんだ、もうバイオリンは諦めろって……」
「え…!?」
「手術をしてリハビリをすれば日常生活は出来るけど、バイオリンの様に繊細な動きはできないって……」
「!!!」
涙しながら語る恭介の姿にさやかも涙する。さやかはバイオリンを弾くことができずに絶望する恭介の悲痛な姿に耐えられなかった。
「もう、無理なんだよ……それこそ、奇跡や魔法でもない限り……」
その瞬間、さやかの決意は固まった。
「……あるよ」
「……?」
恭介は涙しながらさやかに顔を向ける。その瞳には何かを決意したような光があった。
「奇跡も魔法も、あるんだよ」
さやかはそういうとカーテンに隠れてシルエットになっている彼女にしか見えない生物に目を向け、踵を返して病室から出ていき走り去っていった。
―――入り口のすぐ側の壁に身を隠していた人物にも気づかずに。
「さやか…?」
恭介はさやかの行動が理解できず、たださやかが去って行った方向を見つめるだけだった。
「……さやか……僕は……」
恭介は顔を扉に向けたまま再びうつむいていると突如病室の扉がガラッと開く。恭介は一瞬さやかが帰って来たと思い顔を上げる。
「上条……」
「し、神童くん!?」
しかし現れたのはこの病院で知り合い音楽の話で親友になった神童拓人だった。神童は病室の扉を閉め、散らばってそのままになっていたCDを集める。
「今、人を呼んだ。もうすぐ来るだろう」
「!……聞いてたのかい…?」
「ああ、さやかさんがこれを君に見せているあたりからな…」
神童はさやかが持ってきたCDを見ながら言うとそれらを全て袋にしまって近くの椅子の上に置く。そして恭介が神童の顔を見ると表情が固まる。神童は哀しくも怒っている、そんな二つの感情がないまぜになった表情を恭介に向けていた。
「…今のは、さやかさんに失礼だったんじゃないのか?」
恭介はハッとなって顔をあげると申し訳なさそうにうつむく。
「……わかってるんだ。さやかにこんなことしても何にもならないって……でも、もう音楽が出来ないって思うと……耐えられなかったんだ…」
恭介は再び涙を流しながら震えた声で言う。
「…諦めるのか?」
「諦めたくないに決まっているじゃないか……でも現代医学じゃどうにもならないって言われたんだ…。どうしようもないんだよ……音楽を失ってしまった僕に何の価値も無いんだ…!君にその気持ちがわかるかい……!」
恭介はただひたすら嘆き続けていた。そんな恭介を哀れに思いつつも神童は言った。
「上条、確かに俺は君の代わりになる事は出来ないし、ましてやその腕を直すことなど出来ない。俺もサッカーが出来なくなると考えたらたまらないだろう」
「………」
「だが俺はこう思うよ………
今の君は、君が思っているほど不幸ではないと」
「………え?」
恭介は目に涙を浮かべながら顔を上げる。
「…だって音楽を失った君を支えようとしてくれるさやかさんのような人が居るんだから」
「!さやか…」
「音楽を失った自分は価値が無いといったが、それなら音楽を失った君をさやかさんはどうして支えようとしていた?」
「!……そ、それは……」
「それは、君が音楽とは関係なく大切な幼馴染だったからじゃないのか?音楽を失ってもなお大切だった君をただ元気づけてやりたかったからじゃないのか?」
「!」
恭介の頭の中でさやかが今まで自分に見せたいくつもの笑顔が巡る。
(―――恭介!)
思い返してみればさやかは幼い頃からいつも自分に接し、その度に自分に向ける笑顔はまるで太陽の様に明るく自分も自然に元気になっていた事を思い出す。ある時のバイオリンのコンクールで落選した時も自分を励まし、コンクールで受賞した時は誰よりも自分の事のように喜んでくれていた。そして今の様に音楽を失った今でも懸命に見舞いに来てくれている。恭介はそんなさやかにいつも支えられていた事に気づく。
「俺にも……そんな人がいたよ…」
「神童くん……?」
神童は声のトーンを下げて目を閉じながら語りだした。
「俺が自分の事で悩んで苦しんでいたときに、俺を必死に支えようとしてくれた人がいたんだ……彼女が俺を支えてくれたおかげで俺は前に進めた……あの時の彼女の笑顔は……忘れられない……」
「いたって事は…もうその人は……」
「…ああ、俺はもう……彼女に会うことは出来ないから……」
神童は少し顔を俯かせる。恭介はその神童を見ていたたまれない気持ちになる。
「さっき病室を出てったさやかさんが一瞬その時の彼女に見えたよ。彼女は俺に惚れていた……でも俺は大切なものの為に彼女と別れた。だから今、君を支えようとしている人がいるからこそ言える………」
神童は閉じていた目を開く。
「―――君は一人じゃない」
「!」
「さやかさんだけじゃない俺も音楽を失った今の君でも大切な親友と思っている。そして天馬たちやまどかさんも心配している。取り分け一番心配していたのはさやかさんだったがな」
「さやかが…」
「ああ。一見元気そうに振舞っているが、その裏では誰よりも君の事で悩んでいたんだ。どうして君ではなく自分の腕が動くのかと…」
その言葉に恭介は驚愕する。
「さやかがそんなことを…」
「そうだ、苦しんでいる君を必死に支えようとしてくれる人がいるんだ。だからこそ……
――――自分を支えようとしてくれる人を
「!!!」
病室の窓から差し込む夕焼けが二人の少年を照らす。
(そうだ、さやかはいつも僕を支えてくれた。僕が落ち込んでいる時もいつもその笑顔で励ましてくれたんだ…)
恭介は思った。さやかに対してなんてひどいことをしてしまったのだろうと。
「…神童君……ありがとう。おかげで目が覚めたよ。さやかに会ったら………ちゃんと、謝ろうと思う」
恭介は清々しい笑顔でそう言い、神童も笑顔で頷く。
「そして頑張ればきっと………手も治るよね……」
「ああ。もちろんだとも」
神童は笑顔でそう答えた。
「僕、頑張るよ!………一人じゃないから!」
前に進む決意を固めた恭介に神童は安堵する。
(……それにしても、最後にさやかさんが言っていた……)
夕焼けと共に入ってきた風で揺れるカーテンを見ながら目を細める。
『―――奇跡も魔法も、あるんだよ』
神童はさやかと恭介の会話を聞いていたが、扉が締まっていたのでさやかが最後に
言っていた時に彼女が見ていたものに気が付かなかった。
(それに病室を出てった時のさやかさんのあの目……まさか……)
神童のその予感は既に病院の屋上で当たっていた。
というわけいろいろ初めての挑戦となった更新でした。
ちなみこの神童と恭介のシーンは前から書きたかったシーンの一つでもあります。
原作では恭介がさやかをどう思っていたのか明らかになりませんでした。
ゲームの番外編ではギャグまじりの結ばれ方でしたのでこんな風に神童に揺さぶってもらいました。
神童は果たしてさやかと恭介の恋の引き立て役になれるのでしょうか?
ご感想お待ちしています。