魔球闘士イナズ☆マギカ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~   作:サニーブライト

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お待たせしました。再開します。
ああ、文才が欲しくなる……


第5話『誰がために少女は願う』 Bパート

~~河川敷~~

 

 

 

天馬たちが練習場所の一つにしている河川敷に暁美ほむらがただ一人佇んでいた。静かな風が吹き、夕焼けを背に目を閉じている彼女の髪を芝生と共になびかせる。そこへ足音がほむらの耳にはいる。

 

「来たようね…」

 

ほむらが目を開け、左を見る。

 

「松風天馬……」

 

そこには松風天馬の姿があった。

 

「ほむらさん、用ってなんですか?」

 

彼はほむらに呼ばれてここに来た。先ほど練習を終え神童は上条に見舞いに行き、信助はマミの買い物を手伝いに行き、天馬は一人ランニングをしてる最中にほむらと出くわし、河川敷に来るよう言われたのであった。

 

「松風天馬、あなたたちは何故魔法少女に関わろうとするの?」

 

「え?」

 

「魔法少女の戦いは本当の命懸け。サッカーの試合をするのとはわけが違うのよ。」

 

「………」

 

「巴マミが殺されかけるほど恐ろしい魔女だってこれからも出てくるのよ。昨日の様に必ず勝てるとは限らないわ……なのにどうして私たちの事に関わって来るの?」

 

「…………」

 

何故ほむらが天馬を呼び出したのか。ほむらは天馬達が化身を魔女と戦えることがわかり、利用しようと考えていた。しかし、彼らは化身の力が目覚める前から魔女との戦いに関わろうとしていた。いざ利用しようとしたとき、彼が臆して逃げ出さないか確認したかった為であった。ほむらの質問に天馬は終始黙って聞いていたが真剣な眼差しで口を開く。

 

「約束したんです」

 

「約束……?」

 

「この世界に来る直前、宇宙みたいなとこにいて誰かの声が聞こえたんです。その人の姿は見えませんでしたが、とても悲しんでいたんです………大切な友達を失って一人ぼっちになっていたその人のことが俺は放っておけなかったんです。だから約束したんです。なんとかしてあげるって!そしたらその人は俺にマギカボールをくれてこの世界に送ったんです」

 

「そんな誰かもわからない人と約束をしたの?酔狂(すいきょう)としか思えないわ」

 

「確かにそうかもしれませんけど、でもこの世界に来たからには必ずやるべき事があると思うんです。そしてそれが魔女と戦うことだってわかったんです!」

 

「そうだとしてもあなたたちの目的はもとの世界に帰る事なんでしょう?自分の命を危険に晒す事に恐れを抱かないの?」

 

「……確かに怖くないといえば嘘になります。でも約束は守りたいし事情を知った以上、そこから逃げたくないという気持ちに嘘はつきたくありません」

 

「……そう、あなたたちの覚悟はわかったわ。元の世界に帰るまで死なないように気を付ける事ね」

 

ほむらはそう言うと風で乱れた髪を巻き上げながら踵を返して立ち去る。いや、立ち去ろうとした。

 

「ほむらさん!あなたはどうしてマミさんと仲良くしないんですか?」

 

天馬の突然の質問に足を止めるほむら。

 

「……なぜそんなことを聞くの?」

 

「信助も言ってたじゃないですか、同じ魔法少女なんだから協力すればいいって!昨日だってちゃんと連携が取れてたじゃないですか!」

 

天馬は声を荒げる。そんな天馬と対照的にほむらは天馬に背を向けながら静かに答えた。

 

「私も彼女もずっと戦い続けてきた魔法少女、ある程度行動を共にすれば大体の動きは合わせられるだけよ」

 

「だったら………」

 

「でも、彼女と共に魔女退治をしていくことはできない。彼女の側には危険が多すぎる。それはあなたたちも昨日知ったでしょう」

 

「ぐっ……」

 

マミが油断して魔女に殺されかけたことを突かれ返す言葉を失う天馬。もっともほむらの言葉の意味は戦いの事だけではなかったがそれを天馬が知る由もなかった。

 

「昨日の様に同じ結界に入ったなら共闘するでしょうけど、所詮ただの同じ魔法少女、それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

「だったら、なぜマミさんとまどかさんを結界から帰らせようとしたんですか?」

 

「あの時の魔女は彼女たちには荷が重すぎた。一緒にいればかえって邪魔になっていた。それだけよ」

 

ほむらは冷たくそう言って立ち去ろうとする。

 

「本当に……そう思ってるんですか?」

 

「?」

 

ほむらは再び足を止めた。そして天馬はほむらの言葉の裏を返した。

 

「本当はあの時、マミさんも俺たちも危険な目に合わせたくなくて帰そうとしたんじゃないですか?」

 

ほむらも眉がわずかに動く。

 

「あの時の魔女ってほむらさんが一度戦ったことがある魔女だったんじゃないですか?だからマミさんと相性が悪いと知っていて危険から遠ざけようと……」

 

「……変な勘繰りはやめなさい。私は別にそんなふうに思ってないわ」

 

ほむらはそう言って話を打ち切り、今度こそ立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

 

しかし天馬は言った。

 

「ほむらさん、あなた……自分に嘘をついてませんか?」

 

「!?」

 

ほむらはビクッと動きを止め、動揺を見せる。

 

「……どういう意味かしら?」

 

「だってほむらさん、初めて会った時からとても寂しそうな目をしてたから……」

 

「私が……寂しそう…?」

 

「本当は諦めたくないのに何かを諦めて辛そうにしている………俺にはそんなふうに見えるんです…」

 

「ッ!」

 

天馬の指摘にほむらの体が震えだす。しかし爪が食い込むほど拳を強く握ることでその震えを必死に抑える。

 

「……馬鹿なことを言わないで……それはあなたの思い違いよ……」

 

ほむらは必死に声の震えを押さえながら言うと次の瞬間にその姿を消した。

 

「あっ!……ほむらさん…」

 

天馬はただ悲哀に満ちた表情でほむらが消えた場所を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

河川敷から離れたビルの屋上でほむらは考えていた。

 

(……あの時と同じね………)

 

ほむらは昨日の天馬たちの言葉で胸に何かが突っかかるような感覚があった。そして先ほどの天馬の指摘でその感覚を思い出していた。

 

(彼の言葉は胸に突き刺さる……)

 

「すぅ……はぁ……」

 

天馬の言葉に胸が張り裂けそうになっていたほむらは一度深呼吸して心を落ち着かせる。

 

「……それにしても……約束、か……私も粋狂よね……あの子との約束のためにこんなことをやっているんだから……人の事、言えないわね」

 

ほむらのぽつりとつぶやいた独り言は誰にも届かなかった。

 

 

 

 

 

~~見滝原市路上~~

 

 

 

「ホントにマミさんが無事で良かった」

 

まどかは一人街中を歩きながらマミが生きている現実を噛みしめていた。

 

「でも、ほむらちゃんはどうしてマミさんや天馬くんたちと仲良くしてくれないんだろう…」

 

まどかは考えていた。自分たちがお菓子の魔女の結界で最初に遭遇したあの時に協力し合えば、マミの命を危険に晒すこともなかった。天馬たちから聞いた話によると、後から結界に入った天馬たちにもマミの事を諦めて帰るように促そうとしたらしい。魔女を倒す力が彼らにあると思っていなかったためとも思われるが、まどかには諦めるには早すぎるのではなかったのだろうかとも思った。

 

「ほむらちゃんって…、わたしたちに心を開いてくれないのかな…」

 

まどかがふと悲しげな瞳でふと顔を上げる。そこには人ごみにあふれていた。

 

「あれ、あそこにいるのって…」

 

まどかが人ごみの中に注目するとそこには仁美の後ろ姿があった。

 

「仁美ちゃん?」

 

「あら、まどかさん……」

 

いつもと変わらぬ口調で返事を返す仁美。

 

「こんな所でどうしたの?今日はお稽古無いの?」

 

「それより、もっと素敵な所に行くのですよ」

 

しかし彼女の目は虚ろでまどかは不気味に感じる。

 

「す、素敵な場所って……ッ!」

 

その時、まどかは彼女の首筋に見覚えのある模様がある事に気づく。

 

「…魔女の…口づけ…!」

 

「ふふ、まどかさんも一緒に行きましょうよ…」

 

「ひ、仁美ちゃん!ダメっ!」

 

仁美はまどかの言うことに耳を傾けず、どこかへ行こうとする。まどかは必死に仁美を正気に戻そうと彼女の後を着けた。

 

 

 

~~工場~~

 

 

 

まどかが仁美を追いかけていくと小さな工場にたどり着いた。そこには生気がなく空虚な瞳をした人々がバケツを中心にして集まっていた。そして彼らにも仁美と同じく首筋に魔女の口づけがあった。

 

「まさか……この人たち全員…」

 

魔女にとらわれている、とまどかは恐怖する。

 

「こんな小さな工場一つ切り盛り出来ない様じゃもうダメだ……」

 

「私なんて生きててもいい事なんてないのよ…」

 

魔女の口づけによって操られた人々が絶望的な事をぼやき続ける。その中の一人の男性がバケツに洗剤を入れていた。

 

「あれって…」

 

「ふふ、これから素敵な場所へ旅立つ為の神聖な儀式ですわ」

 

仁美が笑顔で答える。すると別の方向から一人の女性が別の洗剤を手に現れた。

 

「あれって確か……ッ!?」

 

まどかは女性の洗剤の容器の「混ぜるな危険」という文字を見て母の言葉を思い出す。

 

『いいかい、まどか。洗剤ってのは種類によっちゃ混ぜたら危険な毒ガスを出しちまうものもあるんだ。洗剤を選ぶときは気をつけろよ』

 

「仁美ちゃん!止めなきゃ!早く止めないと皆死んじゃう!」

 

「フフフ、何を言ってるんですか、まどかさん。…私たちは肉体という小さい枠を超えた素晴らしき存在に変わるんですのよ。その為に私たちは楽園に旅立つのです。さあ、まどかさんも一緒に行きましょう」

 

仁美はまどかの言うことに全く耳を貸さなかった。

 

「仁美ちゃん、ダメっ!!」

 

「邪魔しないでください!」

 

バキッ

 

「あぐっ…!」

 

まどかは仁美を止めようとしたが腹を殴られる。

 

「ぐ、うぅ…!」

 

まどかは腹を抱えながらうめき声を上げる。

 

「さあ、一緒に行きましょう。私たちの楽園へ」

 

仁美は両手を広げ、女性が洗剤をバケツに入れようとする。しかしまどかも必死に痛みをこらえながら立ち上がる。

 

「ダメ!」

 

そして一気に駆け出し、無我夢中でバケツを掴むと高く放り上げる。バケツは少し高い位置に設置された窓を突き破り、その姿を消した。

 

「はあっ、はあ………間に合った……」

 

まどかは息切れしながら安堵した。

 

「……よくも…」

 

「っ!」

 

視線を感じて後ろを見る。すると仁美も含め魔女に操られた人々が恨みがましい目でまどかを睨んでいた。そのあまりの恐ろしさにまどかの顔が強張る。

 

「……よくも私たちの儀式を邪魔してくれたな……」

 

「悪魔め…」

 

「邪魔者は消すべし…」

 

自分に怨みの念をぶつけてくる向ける人々はまるでホラー映画に出てくるたくさんの怨霊の様だった。

 

「捕まえろ!」

 

中年の男性の叫ぶと人々は火が付いたように一斉にまどかを捕らえようと襲いかかる。

 

「きゃあああっ!」

 

まどかは仁美たちの手を振り払いつつ逃げ出す。必死になって走り続け、近くの部屋に飛び込むと即座に部屋のドアに鍵を掛ける。

 

「はっ…はっ!」

 

しかしドアをこじ開けようとしているのか外から何度もドアを叩く音が響く。まどかは早く移動しようとしたがそこはどうやら物置だったらしく部屋を見渡してもどこにも出口が無かった。

 

「……そんな」

 

まどかはその場で膝を着き、震えながら自分の両肩を抱く。

 

「わたしへの罰なのかな………」

 

こんな状況になったことにまどかは自分を責める。自分には魔法少女としての強い素質があるというのに戦う覚悟も勇気も無く死ぬことを恐れている。ただ自分は見ていることしかできなかった。どんなに怖くても必死に戦おうとしているマミや天馬たちと違い、ただ憧れだけで、誇れるものが欲しいという思いしかなく、命懸けの戦いを甘く見ていた。そんな自分がこうなってしまうのは当然ではないかと思い始める。

 

「怖いよ……」

 

まどかは自分ではどうしようも出来ない事に恐怖する。

 

「怖いよ……どうしたらいいの?どうしたらよかったの?……助けて……マミさん……さやかちゃん……ほむらちゃん……ひっく………ううっ…」

 

そして最後にはとうとう泣き出してしまう。

 

「……助けて、天馬くん…」

 

その時だった。

 

「う~ん…」

 

「!」

 

自分以外誰もいないと思われていた物置で声が聞こえ、まどかは体をビクッと震わす。

 

(わたし以外に誰かが…!?)

 

まどかは涙を拭きながら声がした方向に恐る恐る近づいてみる。そして大きな木箱の裏を覗き込む。

 

「ッ!」

 

そこにはちょうど自分と同い年ぐらいの三人の少女がいた。まどかは魔女に操られていると思いとっさに後ずさる。

 

「…おい、大丈夫か?」

 

「はい…」

 

「ここは…?」

 

先に起き上がった緑のリボンを頭に着けた紅緋のロングヘアのスケバン風の少女が、藍色のボブカットの少女と、タレ目で藤色の髪を三つ編みにしている少女に声を掛ける。

 

「倉庫みてえだな」

 

「私たち、確か時空乱流に飲み込まれて……」

 

「誰かいる……」

 

三つ編みの少女がまどかに気が付き目を向けると、二人の少女も目を向ける。まどかは先ほどの様に襲われると警戒する。

 

「…っ」

 

「おい、アンタ、ここはどこかわかるか?」

 

スケバン風の少女がそう質問をして、まどかはキョトンとした顔をする。

 

「あなたたちはなんともないんですか?」

 

「何の事ですか?」

 

藍色の髪の少女がまともに返事を返す。どうやらこの三人は魔女の口づけを受けていないようでまどかはほっとしたように胸をなでおろす。

 

「良かった……この人たちは普通だ……」

 

「…?どうし………!?」

 

藍色の少女が訳を聞こうとした直後、四人の周りの景色がぐにゃりとゆがむ。

 

「な、何だ!?」

 

「うそ…!まさか!?」

 

 

 

~~~魔女結界~~~

 

 

 

四人は気が付くと自分たちの周りでメリーゴーランドが砂嵐が映し出されているテレビをたくさん乗せている空間にいた。

 

「な、なんだこりゃあ!」

 

「ここは一体…!?」

 

「不思議な空間…」

 

スケバンの少女と藍色の少女が突如辺りが変化したことに動揺するが、三つ編みの少女が興味を持ち何処から出したのかカメラで辺りを撮影し出す。

 

「魔女の結界…!」

 

まどかが切羽詰った表情で呟く。

 

「魔女の結界?」

 

「なんだそりゃ…?」

 

藍色の少女とスケバンの少女は首を傾げる。

 

「きゃあああっ!」

 

突然三つ編みの少女が叫びだす。

 

「どうした!?」

 

三人が三つ編みの少女に顔を向ける。

 

「なんにも映ってない……」

 

三つ編みの少女は涙目で真っ黒なカメラの画面を見せる。魔女結界は特殊な空間の為、カメラには何も映らないのであった。

 

「「………」」

 

「お前、この非常時に………」

 

まどかと藍色の髪の少女は目を点にし、スケバンの少女は溜息を突きながら呆れる。

 

「!?あ、あれは!?」

 

藍色の少女が上を見ながら叫ぶ。一同が見上げるとてっぺんから少女の形をした影が生え、両脇に羽を着けた巨大なパソコンと絵本に描いたような描写をした片羽の不気味な天使が現れた。

 

「パ、パソコンが飛んでる!」

 

藍色の髪の少女が驚いていると魔女と使い魔がケタケタと不気味に笑う。

 

「おいおい、なんかヤバくねえか?」

 

スケバンの少女が一筋の汗を垂らしながら言うと、魔女と使い魔は突如ピタッと動きを止める。

 

「……っ!来る!」

 

まどかが直感した直後、無数の使い魔がまどか達に襲いかかる。

 

「きゃあああ!」

 

まどかの叫びを皮切りに四人は一斉に目をつぶって両腕で庇う。

 

 

 

 

 

―――その時だった。

 

 

 

バシィン!!

 

 

 

「!?」

 

何かが弾かれるような音が響き、四人は顔を上げる。なんと自分たちの周囲に光のバリアが発生しており、四人を使い魔から守っていた。

 

「な、何が起こったの?」

 

「あたしたち、助かったのか?」

 

「……!二人共、私たちの左手…!」

 

三つ編みの少女が言った後二人の少女が自分達の左手を見てみると左手の薬指にそれぞれ藍色の少女は髪と同じ藍色の、スケバンの少女はリボンと同じ緑色の、三つ編みの少女は夕焼けのような茜色の宝石がついた指輪が着いていた。それはバリアと同じぐらいの光を放ち何やらソウルジェムの指輪形態に酷似していた。

 

「これって指輪?」

 

「あたしたちこんな指輪なんて着けてたか?でも、まさかこいつがあたしたちを守って…?」

 

「きれい…」

 

三人の少女達は自分たちの指輪をまじまじと見つめる。

 

(……助かったのは良かったけど、あれってソウルジェム?でもこの人たちは魔法少女の事を知らない…?どうなってるの?)

 

予想外の出来事に魔女に対する恐怖が消えて考え込むまどか。

 

「はあああああぁっ!!」

 

「!」

 

突如上空から誰かの声が聞こえ、まどか達が上を向くと白いマントを着た露出度の高い衣装を着た青い髪の少女が降ってきた。少女はその手に持った剣で使い魔を切り裂きながら自分たちの下まで落下する。

 

「今度は何だ!?」

 

「今のって…まさか!?」

 

スケバンの少女が驚きの声を上げ、まどかには見覚えのあるように目を見開くとその少女は上昇して今度は魔女の上空まで移動する。

 

「これで……終わりだぁ!!!」

 

少女は剣を振りかぶりながら落下する。

 

「スパークエッジ!」

 

少女はそう叫ぶと剣を振りおろし、魔女に縦一閃が入る。少女が魔女の下に着地した時には少女の影とパソコンが真っ二つになって消滅していた。そして結界が崩れその少女はニカッと笑みをまどか達に向けた。

 

「どう、初めてにしてはなかなか上出来だったでしょ?」

 

「さやかちゃん…?」

 

さやか以外の四人はポカンと口を開けて彼女を見ていた。

 

 

 

~~工場~~

 

 

 

夕焼けが差し込み、仁美や多くの人々が横たわる中、まどかはさやかに聞く。

 

「さやかちゃん、どうして…」

 

「う~ん、なんていうか、心境の変化って奴?というか……」

 

さやかはまどかと一緒にいた少女たちの方を見るとまどかも目を向ける。

 

「……さすがにこりゃまずかったかね…」

 

さやかは後頭部を掻きながら苦笑いする。

 

「あ、あの助けてくれてありがとうございました……でも、あなたは?」

 

「なんだその恰好?コスプレか?」

 

「カッコイイ……」

 

三人の少女はそれぞれの感想を漏らす。その直後、魔法少女姿のほむらが慌てている様子で現れた。

 

「ほむらちゃん!」

 

「ま、また変なのが出やがった!」

 

スケバンの少女がまた驚く。

 

「美樹さやか、あなた……!」

 

「あら転校生、遅かったじゃん」

 

ほむらが溜息を突きながら悔しそうに呟く。

 

「……本当に遅かったわ……なんてことなの…」

 

「え?」

 

しかしさやかにはその言葉は届かなかった。

 

「……美樹さやか、魔法少女にならない方がいいって言ったはずでしょう?」

 

「魔法少女…?」

 

ほむらの『魔法少女』という単語に藍色の少女が首を傾げる。

 

「……あたしはしっかり考えて決めたんだよ。だからアンタにとやかく言われる筋合いはないよ」

 

「…全く、あなたは色々と軽率なのよ」

 

「なっ!何よそれ!どういう意味よ!」

 

「私は事実を言ったまでよ。現に一般市民にその姿を見られるなんて……」

 

ほむらは三人の少女たちに目を向ける。

 

「お、おい何者なんだよお前ら!?」

 

「それにさっきの怪物たちは一体……!?」

 

スケバンの少女と藍色の少女が聞こうとする。

 

「鹿目さん、美樹さん!」

 

すると二人の後ろからマミの声が聞こえた。一同が振り向くとマミが天馬、信助、神童と共に走ってきていた。

 

「「あっ!」」

 

天馬と藍色の少女の目が合う。

 

「天馬!」

 

「葵!」

 

天馬と葵と呼ばれた藍色の少女がお互いの顔を見て喜ぶ。

 

「水鳥さん、茜さんも!」

 

「信助!」

 

「神サマ!」

 

信助がスケバンの少女と三つ編みの少女に向かってそう呼ぶと、二人もぱあっと笑顔になる。

 

「三人共無事だったのか!」

 

「お前らこそ!」

 

神童と水鳥の言葉と共に再会を喜ぶ六人。まどか達は天馬たちの様子に目をぱちくりさせていた。

 

 

 

 

数分後、仁美だけや魔女の操られた人々は目を覚ました。魔女の口づけを受けていたため全員何故自分たちがここにいるのかも覚えていなかった。現在天馬たちはマミが呼んだ警察が到着するのを待っていた。集団催眠として事件を片付け、体に異常がないか検査させる為である。

 

「仁美ちゃん、大丈夫?」

 

まどかは心配そうな顔で仁美に聞く。

 

「はい…なんとか…」

 

「体には異常が無かったけど一応検査は受けといてね」

 

マミがそういうと仁美はまだ調子が戻っていないのか少し弱弱しく、はい、と答えた。

 

「ところでこの方たちはもしや…今朝まどかさんたちが話していた…」

 

仁美は天馬たちを見ながら質問する。仁美はまどかたちから天馬たちの事を聞いていた。当然、異世界から来たことや共に魔女と戦っていることを伏せられて。

 

「はい。俺は松風天馬と言います」

 

「僕は西園信助です」

 

「俺は神童拓人」

 

「神童…ああ!あなたが最近上条君と親しくしているという…」

 

「ああ、上条とは音楽の話で親しくなったんだ」

 

「そうですか、それでそちらの方たちが…」

 

仁美は葵たちの方に目を向ける。

 

「初めまして、私は空野葵と言います。天馬たちのマネージャーをしています」

 

「同じく瀬戸水鳥だ」

 

「私、山菜茜」

 

「私は志筑仁美と言います。まどかさん達の同級生です」

 

全員が自己紹介を終えた直後、パトカーと救急車のサイレンの音が近づく。どうやら警察が到着したようだ。

 

「警察が来たみたいだな」

 

「仁美ちゃん、たぶん大丈夫だと思うけど気を付けてね」

 

「はい、みなさんご迷惑をおかけしました」

 

そして仁美と人々は病院で検査を受ける為にその場を後にした。

 

 

 

~~帰宅路~~

 

 

 

「にしてもまさかここが異世界で、しかも魔法少女と魔女が戦ってるなんてなあ」

 

水鳥は両手を頭の後ろで組む。あれから天馬たち一向は先ほどの出来事を整理していた。

 

「時空を超える旅をしていたのに、まさかこんなことになってしまうなんて」

 

葵が呟く。

 

「でも、魔法少女……私もなってみたい!」

 

茜は頭上に花のイメージを撒き散らし目をキラキラ輝かせる。

 

「魔法少女になんてならない方がいいわ。……それより、あなたたちのその指輪が自分たちを守ってくれたのよね」

 

ほむらはマネージャー達の指輪を指さす。

 

「はい。でもこんなのつけた覚えが無くて…」

 

「あたしも…こういうのはあんまり趣味じゃねえんだが…」

 

「私は気に入った。キレイ…」

 

三人はそれぞれ薬指につけたままの指輪を掲げる。

 

「あなたたちの話から察するにそれはどうやらソウルジェムじゃないみたいね。魔力を感じないもの」

 

「もしかしてマギカボールと似たものなのかも」

 

ほむらとマミが分析する。

 

「でも、それだけじゃきっと助かりませんでしたよ。さやかさん、助けてくれてありがとうございました」

 

葵はさやかに頭を下げる。

 

「いいよいいよ、気にしないで。魔女から人々を守るのがあたしたち魔法少女なんだからさ」

 

さやかは笑顔で返した。

 

「それはそれとして私は別の事に驚いたわよ。まさか美樹さんが魔法少女になってるなんて」

 

「あぁ……マミさん、それは…」

 

「……さやかさん。やはり君は……上条の腕を治すことを願って魔法少女になったんだね……」

 

「ッ!」

 

さやかは返答に詰まっているさやかに図星を突いたのは神童だった。一瞬ビクッと体を震わすさやか。

 

「さやかちゃん、上条君の為に…?」

 

まどかが聞くと、さやかは顔を下に向ける。その瞳には強い決意があった。

 

「…うん、アイツの苦しんでいる姿に耐えられなくってさ……でもあたしは心底考えて決めたから……後悔なんてあるわけないよ…」

 

拳をギュッと握りしめるさやか。

 

「…やれやれね」

 

マミは肩を竦める。

 

「美樹さん、なってしまったからには仕方がないわ。その代わり、バリバリ鍛えてあげるから覚悟しておきなさい!」

 

マミは呆れながらも新しく後輩が出来たことにどこか喜んでいるかのように言った。

 

「ハイ!これからお願いします!」

 

さやかは元気にそう返した。

 

 

 

「………」

 

ほむらはさやかを見つめながら一人考えていた。

 

(……美樹さやかが魔法少女になってしまった……これでは彼女がああなってしまうのは時間の問題………今回は私以外のイレギュラーがいるとはいえ、さすがにこればかりは彼らにもどうすることできないでしょうね………)

 

ほむらは諦めているような目で気軽に話し合っている天馬たちを見た。

 

 

 

 

 

 

~~同時刻・展望台~~

 

 

 

「なんだよあれ、あんなの聞いてないけど?」

 

見滝原の誰もいなくなった展望台で赤いポニーテールの少女がたい焼きを片手に変わった形の双眼鏡でさやかたちを見ていた。

 

「ついさっき契約したばかりだからね。知らないのも無理はないさ。にしてもまさか君がやって来るとはね」

 

キュウベェは相変わらずの表情で話す。

 

「風見野には最近魔女が少なくてね。ホントはあんまりこっちに来たくなかったんだけどさ……会いたくない奴もいるしね…」

 

少女はそういうと一口分になったたい焼きを口の中に放ってゴクッと飲み込んだ。

 

「でも、この街には既に魔法少女が三人もいる。特にその中で厄介になりそうなのは……暁美ほむら……彼女はイレギュラーだ」

 

「イレギュラー…?どういうことだよ?」

 

「彼女は確かに魔法少女だけど、僕と契約した覚えがないんだ」

 

「は?お前が忘れてるだけじゃねーの?」

 

「いや、それは無いよ。僕は契約した魔法少女の事を全て記憶してるからね」

 

「ふ~ん。まあ、どうでもいいけど」

 

「それにイレギュラーといえば、他にもいるんだ。化身使いというイレギュラーがね」

 

「化身使い?なんだそりゃ?魔法少女の一種か?」

 

「いや、彼らはサッカープレイヤーだよ」

 

「彼らって事は男か?てか、サッカープレイヤーが化身使いってなんだよ」

 

「彼らは不思議なボールと化身という気の力をつかって魔女と戦うんだ。昨日魔女に殺されかけたマミを助けてその魔女を倒してしまったんだ」

 

「マミを殺そうとした魔女を倒したってことは結構強えって事か……てゆうかそれ本当にサッカープレイヤーか?」

 

「なんにせよ、君がこの街をテリトリーにしたいなら厄介になると思うけど?」

 

「まあいいさ。あたしがやるべき事は……」

 

少女はニカッと八重歯を見せながらにやける。

 

「みんなぶっ潰しちゃえばいいんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

~~さらに同時刻・某所~~

 

 

 

パアアァ

 

ボロボロの礼拝堂のような場所で突如光が現れる。

 

「…う……」

 

光が消えるとそこから一人の少年が横たわっていた。ゆっくりと体を起こしながら少年は呟く。

 

「……ここは、どこだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

――ED『かなり純情』(歌:空野葵)――



天馬
「魔法少女になったさやかさん!そこへ新たなる魔法少女が現れてさやかさんと一騎打ちに!!………えっ!?どうしてお前がここに!?それにマミさん、この人と知り合いなんですか!?

次回!

『魔球闘士イナズ☆マギカ ~魔法少女と革命(カゼ)の少年達~』

第6話『三つの刃』!」


次回はあの赤い少女と黒い少年の登場です。
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