「と、いうわけで、こいつに剣撃弾幕の伊呂波を教えてやってほしい」
「わ、私はまだまだ未熟者です!剣術指南役というのも形式上就いているだけで、全くそれらしいことはできていないんです!」
「そう難しく考える必要はない。剣術ではなく弾幕の出し方を教えるだけでいい。むしろ剣術に関してはお前の方が学ぶところが多かろうな」
「あらあら、あんなこと言われてるわよ?」
「確かに面白くはないですが、事実そうなのでしょうし……」
「うじうじしたやつだな。おい藍、こいつ本当に剣士なのか?」
「剣術の腕前でいえば天狗の方が上だろうな。剣に限らないならナイフを扱うものは幻想郷にも多い」
「うぐっ」
「ならそっちあたったほうがいいんじゃないか?」
「残念ながらそうはいかん。幻想郷でも剣撃弾幕を放つのはこの魂魄妖夢だけだからな」
「残っ……いいでしょう!そこまで言うならやってやります!ギルガメッシュとやら!表へ出なさい!」
「この程度で主をほったらかして出ていくとは、どうしようもない未熟者だな」
「挑発した本人がそれを言うのかよ」
「それは貴方も同じじゃない。それに、これは乗せられた妖夢が悪いわよ。まったく、終わったらお仕置きね」
「お仕置きもいいが、悪いところはちゃんと説明してやれよ?見たところ自分で気づいて成長するタイプじゃないだろ、あれは」
「そうね。教えてあげたことはそのうちできるようになるけれど、教えてないことができるようになることはほとんどないわ」
「わかってるならちゃんと躾けてやれよ」
「おいおい、あまり他所様の教育に口を出すものじゃないぞ」
「いいのよ藍。外部との接触が増えていることを考えれば、今までのように甘やかすのは妖夢のためにならないわ」
「あいつはでかい恥かいて家名に泥を塗ったら立ち直れなくなりそうだし、気を付けてやれよ?」
「そうするわ。私もそんな妖夢は見たくないもの」
「どうしたギルガメッシュ!早く出てきなさい!今更怖気づいたなんて言わせないわよ!」
「おお、怖い怖い。それじゃ、ちょっといってくるぜ」
「妖夢は師匠との稽古ばかりで剣術勝負をしたことがないから、きっちり負かしてあげてちょうだい」
「いいのかい?折れちまったら立ち直れないかもしれないぜ?」
「負けた経験がないわけじゃないし、大丈夫よ。立ち直るまで時間はかかるかもしれないけどね」
「そうかい。それじゃ、立ち直れると信じてきっちり折ってきてやるよ」
「……よかったのですか?あいつは戦場を駆け回っていたと聞きます。命を懸けた戦いの経験がない妖夢は卑怯だ何だと言いながら押しつぶされて終わるんじゃないですか?」
「今日は命を懸けた戦いに卑怯も何もないということを学んでくれたらいいわ。他のことはまた後日ね」
「心が折れれば立ち直るのに時間が必要でしょうし、敵愾心だけで向かっていくようでは成長は見込めないので熱を冷ます時間が必要でしょう。後日というのは随分と先のことになりそうですね」
「妖夢は頑張り屋さんだもの、一通り泣くか怒るかした後にお尻を叩いてあげればすぐに立ち直るわ」
「母と娘のようですね」
「そうよ。私にとって妖夢は娘のようなもの。あたなたちもそうでしょう?」
「紫様を母だと思ったことはありません」
「あらあら、紫が泣くわよ?」
「母だとは思っていませんが、大切な家族だとは思っていますよ」
躾とは恥をかかないために必要な常識を覚えさせるもの
躾をしない=生涯にわたって恥をかかせるという精神的虐待といえる