「で?妖術も聞くかい?」
「こちらも妖術が使えるとしか話しておりませんので、具体的な内容は遠慮しておきますわ」
「そうかい?まあ俺としてはどちらでもかまわないが」
「なら得意な分野だけ話してもらいましょうか。私も藍も結界に関しては他の追随を許さないつもりよ」
「結界ねぇ……基部の破壊が絶対条件のものならともかく、そうでない結界はディスペルで消え去ると思うんだがな」
「あら、どんな結界でも解除できるなんて随分大それた魔法なのね」
「結界の解除に限らずほとんどの魔法的な効果を消し去っちまうぜ。いいもの悪いもの問わずに、な」
「デタラメな魔法ね。そんなことが可能だなんて信じられませんわ」
「ま、実際とんでもない魔法だぜ。なんせ世界の浄化能力を個人で扱おうってシロモノだからな」
「そんな魔法使えるの?」
「俺には無理だが伝承してる人間はいるようだし、何より使える魔物を見たことがある」
「なるほど。となると貴方の元居た世界とこちらでは魔法に対する前提意識が違うのかしら?あるいは概念そのものが違うということも……」
「小難しいことは知らんが俺がデジョンでここへ落ちてきたんだ、俺以外が来ないとは言えないだろうし持続型の妖術を使うなら基点を定めて直接消されることがないようにしといたほうがいいだろうな」
「何事もないのが一番ですけれど、何かがある前に対抗策を知れたのはありがたいことですわね」
「知ってるのと知らないのとじゃ大違いだからな」
「ええ全く。それで、なのですけれど」
「何だ?」
「何度か話に上がっていたデジョンという魔法について教えていただけますか?」
「デジョンは次元の狭間へ続く落とし穴を開ける魔法だな。ある程度の吸引力があるから飛んでる相手も吸い込める」
「私の隙間に吸引力をつけたようなものかしら?何にしても私の能力を一部とはいえ魔法で再現しているなんてね」
「あんたの能力を再現してるわけじゃないと思うけどな」
「経緯はどうあれ私固有の力だと思っていたものが限定的とはいえ他人にも使えるというのは恐ろしいものよ」
「そこまで恐れるようなことか?」
「あたりまえじゃない。私はこの次元の隙間は絶対的な安全領域だと思って拠点を構えているのよ?」
「なるほど、そんな場所に誰かが一方的に敵対者を送り込んでくる可能性が見えたってわけだ。そりゃ確かに心穏やかではいられないな」
「幻想郷の外から来るとなると弾幕ごっこで収まることもないでしょうし、本当に厄介なことだわ」
「弾幕ごっこ?なんだそりゃ?」
「こういう風な……殺傷力のない攻撃をお互いにぶつけ合って、先に被弾したほうが負けという決闘方法よ」
「ほーう。面白いこと考えるな。どの程度の攻撃密度まで許されるんだ?」
「絶対回避不可能なものは反則、回避の余地があればどれだけ濃密な弾幕でも構わないわ」
「そりゃあ相殺合戦になりそうだな」
「そうね。だから原則相殺禁止、お互いに相手の弾幕には干渉しない弾幕を放つことになっているわ」
「原則ってことは例外もあるんだな?」
「ええ、それが決め技たるスペルカードの特権ね。このカードを見てちょうだい」
「えーと、「深弾幕結界 -夢幻泡影-」?これがあんたの決め技か?」
「そうよ。決闘前にこういうカードをお互いに何枚使うか宣言してから始めるの」
「使い方は?最初に見せてりゃ適当に使っていいのか?」
「そんなわけないでしょう?使うときにはカードに書いてある技名を宣言するのよ。もちろん一枚一回しか使っちゃだめよ?」
「使い切ったらどうするんだ?」
「使い切ったら被弾してなくてもその時点で負けよ」
「お互い同時に使い切ったら?」
「相手の弾幕の避け方で決まるわ。よりギリギリまでひきつけつつ優雅に避けていたほうの勝ちよ」
「なるほど。この勝負が強い奴は自分の決め技を使うことなく相手の決め技をよけきれる奴ってことか」
「そうなるわね」
「弾幕っつってるけど、やっぱり物理攻撃は禁止なのか?」
「そんなことはないわ。非殺傷なら切っても叩いてもいいことになっているのよ」
「相手の身体能力を制限する妖術は?」
「それだけで勝負がつくようなものでなければ構わないわ。聞きそびれていたけど、貴方の得意な妖術って……」
「ああ、相手の身体能力を制限するものだな」
「自身を強化、相手を弱体化したうえで戦うのが貴方のやりかたなのね」
「立場上、一度に大勢を相手にすることが多かったんでね」
「弾幕ごっこにせよ真剣勝負にせよ、貴方と戦うことはいい勉強になりそうね」
「そうかい?今の俺は根無し草だ。雇ってくれるならできる限りのことはするぜ?」
「そうね……ならとりあえず一年雇われてくれるかしら?」
「報酬と内容は?」
「報酬はここ幻想郷での生活の保障、内容は幻想郷の住民と積極的に弾幕ごっこをすること」
「よし乗った。となると、決め技と通常技の振り分けを考えないとな」
「焦らなくていいから最低でも5枚はスペルカードを用意しなさいな」
「そう言えばどうやってそのカードを作るんだ?」
「頭の中にスペルカードにしたい技を思い浮かべてカードになるように念じなさい。そうすればカードになるわ」
「どれどれ……おお!こいつは面白いな!」
「あらあら、そんなに簡単に決めてしまってよかったのかしら?」
「ああ。この技は相殺せずに放つのは無理だろうからな」
「そう。それじゃ、スペルカードを作り終えたら藍に声をかけなさい。そのころには起きているでしょう」
「ああ、折角茶を淹れてくれる嬢ちゃんがいるんだ、ゆっくり考えさせてもらうぜ」
橙の淹れてくれるお茶を啜りながらゆっくりする
う、羨ましい!羨ましすぎるぞチクショウ!