一話から四話までの・・・を……に変えました。
「楽しそうだなあ……」
ディスプレイの中で魔法を使っている少年を見て、私は呟いた。
私の名前は
そんな私は今、自室にあるノートパソコンで映画を見ている。画面の中ではたくさんの少年少女が魔法を使っており、未知があふれる世界を楽しんでいるようだ。
……映画だから演技なのだろうが。
私は魔法が好きだ。幼稚園児の頃からいつか魔法を使いたいと星に願っていた。ていうか今も願っている。私が憧れているのは、窯をかき混ぜながら「イーッヒッヒッヒ……」と笑うような魔法使いではない。いや、そっちもある意味楽しそうだけど。私がなりたいのは、膨大な蔵書に囲まれ、訪れる人に知識を授ける・・・そんなミステリアスな雰囲気の魔法使いだ。
しかし、戦う魔法使いを否定するわけではない。アニメや映画に出てくるような世界規模の魔法なんかすごい興奮するし。
「はぁ……」
私はため息をつくと、パソコンの電源を落として部屋の電気を消し、ささっとベッドに潜り込んだ。
――――――
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――
私の両親は私に関心がない。二人ともあまり家に帰ってこないし、いても金を置いたらすぐにどこかへ行ってしまう。二人の不仲は私が生まれた頃からで、ちょくちょく口論になっていたらしい。私が幼稚園に行くようになる頃には父親はほとんど家に帰ってこなくなっていた。私はいつも『両親が仲直りしますように』と願っていた。その願いはいつしか『両親を仲直りさせられますように』となり、最終的に『両親を仲直りさせる魔法を使いたい』となった。
……私が魔法使いに憧れるようになった原点である。
ちなみに、何故そんな両親なのに高校に進学できたりできたのかというと、母方の祖父母のおかげだ。二人はよく私に世話を焼いてくれて、保護者の承認が必要となる様々な手続きを済ましてくれたのだ。私が不良少女にならずにいれたのも二人のおかげである。
机の上に置いてある写真を見て、そんなことを考えていた。写真には祖父母と私の三人が写っている。私がもっている唯一の写真だ。
「……おはよう」
私以外誰もいない家でそう呟き、朝食を作るため部屋を出た。
毎朝しているラジオ体操の後、制服を着て朝食をぱぱっと食べ、歯磨きをしてからイヤホンをつけて家を出る。高校へは歩いて行ける距離なので、毎日音楽を聴きながら徒歩で登校している。足を動かすとなんとなく頭がスッキリするのだ。
いつも通りの日。今日も何事もなく過ごす。私のそんな漠然とした考えは、あっさりと覆された。
家を出てから約10分……私は残り少ない高校生活をどう過ごそうか。そんなことを考えながら歩道を歩いていた。そんな時、なにやら周りが騒がしいことに気づいた。音楽の音量はそれほど大きくしてないので、周りがうるさければすぐにわかる。何かあったのだろうかとイヤホンを外して後ろを振り返る。
――――私の目には、猛スピードでこちらに迫ってくる一台の車が映っていた。
・・・
『えー、続いてのニュースです。今朝、〇〇市で歩行者と車による事故があり、男性2人と女性1名が重傷・意識不明の重体で病院に搬送され、まもなく女性の死亡が確認されました。男性2名の命に別状はなく――』
・・・
――――私はどうなったんだろう
意識はある。記憶もある。しかし、状況がわからない。真っ暗闇の中をふわふわと浮いているかのような……そんな感じだ。宙に浮いているような感覚を楽しんでいると、だんだん眠くなってきたので、その欲求のままに眠りにつくことにした。起きた時、状況が変わっていることを願って……。
――――――
――――
――
目を覚ましても相変わらず暗闇の中だった。周りを探ってみると、結構近くに壁があった。どうやら小さい部屋のような場所にいるらしい。病室ではないようだ。
がっかりしてると、お腹が空いてきた。しかし、お腹が空いても周りには暗闇しか見えず、もし食料があったとしても気づけない。そんなことを考えてるとますます空腹が増してきた。
「何でもいいから空腹を満たしてくださーーーい!!」
そう叫ぶと、少しだが飢餓感が薄れた。おや?と思い意識を集中させてみると、なにやら私の周りにはエネルギーのようなものがあり、それを取り込んだようだ。何故わかるかというと、なんとなくとしか言いようがない。もしかしたらこのエネルギーには名称があるのかもしれないが、そんなこと今はどうでもいい。
何で口も使わず体に取り込めるのとか、一体ここはどこなんだとか、色々疑問はあるけれど……お腹が満たされるし、なんか体も温まってきた。得体のしれない何かだけど、今できることは他にない。とりあえず、あるだけもらっちゃえ!
そこまで考えて、私は取り込みを再開した。しかし、吸っても吸ってもエネルギーに尽きはこないし、満腹にもならない。とうとう満たされることはなく、眠気がきたのでお休みした。
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――――
――
あれから暗闇の中で目が覚めては全力で吸収して、眠気がきて眠るというサイクルで生きている。30回ほど繰り返して、そんな生活にも飽きてきた頃、エネルギーの底が見えてきた。
「ん?なんか……エネルギーが薄くなった? ……これは!ついに尽きてきたか!」
そろそろ光が見たい。暗闇の中で妄想に思いを馳せるのもいいが、いい加減に外に出たい!
全力でエネルギーを吸収すると、意外と早く尽きた。その瞬間、周りの空間が広がったのを感じ取る。
「エネルギーがなくなったら壁もなくなる仕組みだったのかな?」
そんなことを考えていると、閉じっぱなしの瞼に光を感じた。何十日ぶりの光だ。眼が潰れてしまわないだろうかと恐る恐る目を開く。
――――そこには、宇宙が広がっていた。
「うわぁ……綺麗……」
前後左右上下全てに広がる宇宙を見て、感動に心を震わせる。じっとその光景を眺めていたが、しばらくしてようやく現在の状況に気付く。
「え……宇宙? 私は今…………え?」
どうして私は宇宙にいるのか、ここは宇宙のどこなのか、ていうか何で喋れるのか、何で生きていられるのか、あの部屋とエネルギーはなんだったのか、これは全て夢なのではないか。
疑問は尽きないが答えは出ない。思考を一度リセットして、ただ一つのことだけを考える。
「地球へ帰るには……どうしたらいい……?」
頭に思い浮かべた瞬間、右後ろに意識を引かれる。振り向いても暗闇と星以外何もないが、何となく理解した。
「こっちの方向にあるのかな?」
何もわかってない今の状態だから、ごちゃごちゃ考えても仕方がない。この直感のようなものに従ってみよう。不思議と、宇宙空間での進み方は感覚でわかった。直感が導く方へ体を向ける。
「一人ぼっちの宇宙旅行の始まりだ」
――――――
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――
宇宙旅行をスタートしてから数日(感覚的に)経ったが、私は既に飽きていた。周りは確かに綺麗だけど、それでもずっと見続けてたらさすがに飽きる。今はエネルギーについて考えていた。小さい部屋に満たされていたアレである。
しばらく宇宙を進んでいると、ほぼ無意識にでも直感の示す方向へ進むことができるようになった。つまり、考える時間ができたのだ。暇つぶしに何かできないかなーと瞑想もどきのことをしてみると、体の周りに薄い膜のようなものがあるのに気が付いた。さらに意識を向けてみれば、その膜はあのエネルギーと同じようなものであり、何と私が無意識のうちに展開していたものだとわかった。これはどういうことだと体の中に意識を向けてみると、体の中にはあの吸収したエネルギーが莫大に溜め込まれているのが感じ取れた。なるほど、どうりでお腹が空かないわけだ。どうやら私の活動はこのエネルギーによって成り立っているようである。
私は、このエネルギーで何ができるのか実験をしてみた。
以下は、その実験の結果である。
・形を自由に変えられる
試しに日本刀や拳銃の形にした。思い描いたものならどうにでも形を変えられるようだ。テレビの中でしか見たことないものを作れて面白かった。
・硬さや大きさは込める量で変わる
エネルギーを込めれば固くなるし、抜けば脆くなる。形作るものが大きければエネルギーを多く使うし、小さければそこまで使わない。
・飛ばせる
自由自在に操れる。エネルギーで作った日本刀を手を使わずに振れたりする。人形のようなものを作って操作してみたが、かなり細かい動きでも問題なくできた。手品とかに使えそう。
・再吸収できる
操っていた刀や人形は体から切り離していたので吸収できなかったが、体に直接触れたり、体から出しているエネルギーに触れれば吸収することができた。なんともエコである。
・色は変えられない
エネルギーは透明か白のどちらかにしか色を変えられない。中間くらいの色にしてみたら、曇りガラスみたいになった。赤とかにできたらラスボスみたいなオーラにできたのに。
・宇宙で活動できる
今まで発した声が聞こえていたのは、空気の代わりにエネルギーを震わせて耳まで届けていたからのようだ。空気がないのに生きているのは確実にエネルギーのおかげだろうし、宇宙で進むのにもエネルギーを消費している。私無意識にエネルギー使い過ぎじゃね?試しにエネルギーを2倍にして進んでみるとかなりスピードが増した。これなら地球にも早く着きそうだ。
私は地球に着くまでエネルギーで遊ぶことにした。まるで魔法のようなこのエネルギーをもっと使いたいと思ったからだ。幸いにもエネルギーと時間は十分過ぎるほどにある。できることを試してみようと思った矢先、ようやく私は睡眠をとらなくていいようになっていることに気が付いた。今更感が半端なかった。
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時が経った。100万年か200万年か、もしくはそれよりも長い時が。私はその間ずっとエネルギーをいじっていたので、扱いは大分上達した。今なら反射的にでもエネルギーを展開することができるだろう。
前世のことは未だに覚えている。というか全然忘れない。退屈を紛らわすため、何回か思い出しているうちにすっかり頭に定着してしまった。ほとんどはアニメやゲームだったり、歌やドラマ等のことなのだが。この体はずいぶんと物覚えがいいようだ。
そんな私の目に映っているのは故郷である青い星、すなわち地球である。私はとうとう辿り着いたのだ。しかし、泣くのはまだ早い。安心するのは地に足をつけてからだ。
先ほど言ったように、ずいぶんと長い時が経っている。正確な年月はわからないが、1000年や2000年程度ではないのは確かだ。おそらく、知っている人は確実に亡くなっていることだろう。医療の超発達が起こっていなければ。
覚悟はとっくにできている。そのための時間は十分あったのだ。世界はどれほど変わっているのだろう。楽しみな気持ちと不安な気持ちがごちゃ混ぜになって、ワクワクとドキドキが止まらない。
――――新世界への希望と共に、私は大気圏に飛び込んだ。
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