生まれ変わって星の中   作:琉球ガラス

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花畑の主

 村から村へ渡り歩き、たまに遠い村へ寄ったりしながら道中で人々を癒すことを忘れずに花畑を目指す。

 こうした地道な努力が私への信仰へと繋がるのだ。

 

 私の『朝日』という名のおかげか、最近では「救いのない人々に手を差し伸べ、明日の朝日を拝ませてくれる神様」というように言い伝えられ、癒しと再生を象徴する『地照大神(くにてらすおおみかみ)』とか言われてたりする。

 人々を癒すことで(くに)を再生させるという、意外とまともな理由からつけられた名だ。

 

 朝日という名の神であることから太陽の化身だと推測され、そこからさらに太陽神である天照大神に近しい者とされたことから似たような名をつけられた……らしい。

 

 ……確かに私の名前は朝日だけど、まさか名前からそんな壮大な由来を想像されるとは思わなかった。

 

 このまま私の由来(偽)が広がってくれれば、いずれは太陽の神として崇められている天照大神への信仰が私に流れてくるかもしれない。太陽に祈ればそれが天照大神への信仰となり、それがまた私への信仰となるのだ。

 すでに掌に炎や光を灯せる程度の力を行使することはできるようになっているので、いずれは太陽の神としての力を使えるようになるかもしれない。

 

 諏訪子や神奈子たちとの訓練、勇儀との実戦から学んだことはたくさんあり、エネルギーの新しい使い方だって見つけられた。

 さらに力がつけば、そうそう死ぬようなことはなくなるだろう。

 

 高揚する気持ちを抑え、朝日か地照大神かどちらの名を名乗ろうかと悩みながら次の村へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

 私は今、長い時をかけてやっと辿り着いた花畑にいる。

 なぜ時間がかかったのかというと、私の名を広めるために日本全国の村へ寄り道していたからだ。

 

 私は地照大神と名乗って村を巡ることにし、全土に私の名を広めて信仰を得ようとしたのだ。

 結果は大成功し、私への信仰は大幅に増えた。私は天照大神の縁者か、はたまた化身かなどと質問してくる人もいたが、そういったものは全てはぐらかした。実際縁者でも化身でもないしね。

 

 おかげでまた新たな能力を得ることもでき、意気揚々と花畑に帰って来たのだが……。

 

 

 

 

 

 私は今、眼前の景色に驚きを隠せないでいた。

 

 黄色、黄色、黄色。花畑が一面向日葵で埋め尽くされている。

 

 私は向日葵が好きだったから、花畑を作るときに他の花よりも多い数を植えた。

 しかし、向日葵だけがここまで大繁殖するものだろうか。

 

 心なしか、私が育てていた時よりも元気なような気がする。私は枯れないよう管理していただけで、どれくらい元気に育つかなどは自然任せだった。

 そんな花たちが以前より元気になっているということは、誰かの手が加えられているのだろうか。

 

 花畑の周囲にはエネルギーで壁を作ったけど、帰ってきた時に一部が薄くなっているのがわかった。壁はもし傷ついても地面から湧き出るエネルギーで自動修復されるようにしてある。それが薄くなっているということは、最近侵入しようとした者がいるか、もしくは私がいない間に侵入されたかのどちらかである。

 私の壁はそれなりに堅く厚くしておいたので、もし後者であればかなりの強さを持っているということになる。

 

 キラキラ輝く向日葵を眺めながら、ゆっくりと家のある方へ向かっていく。

 

 以前よりも元気に、そして綺麗になった花を見ると、もしかしたら侵入者も花が好きなのかもしれない。

 もしそうなら仲良くなれるかもしれないと思いながら歩き続けると、見覚えのあるログハウスが見えてきた。

 

 家に近づき、戻って来たことを実感しながらドアノブに手を伸ばす。

 ドアを開こうとしたその瞬間、私の後頭部に硬い何かが押し付けられた。

 

(――喜び過ぎて円するの忘れてた!)

 

 誰かが後ろにいることに驚いて身を硬直させている私に、冷ややかな声が投げかけられた。

 

「――――あなた、ここが誰の場所かわかっているの?」

 

 今にも殺すと言われそうな殺気をぶつけられながらの言葉。声からして女性のようだが、普通の人間であったら失神するほどの圧力を感じる。

 それにしても、誰の場所かとはどういう意味なんだろう。ここは彼女の縄張りであるということなのだろうか。花を育ててくれたのには感謝するけど、勝手に誰かの縄張りにされては困る。

 

「……ここは、私の家ですが」

 

 そう答えると、後ろからの殺気がさらに増す。もう人間だったら心臓発作を起こすかもしれないレベルだ。

 

「もう一度聞くわ。……あなたは、ここが誰の場所か知っていながら入ってきたというの?」

「当然です。ここの花畑は私が作ったのですから」

 

 後ろからの殺気が少し緩み、困惑したような雰囲気が伝わってくる。

 

「もう一度言いますが、ここの花畑は私が作った場所です。……そこに無断で手を加えているあなたは、一体どちら様でしょうか」

 

 言うと同時に後ろを振り返る。そこには、私が見上げる身長の美少女がいた。

 

 癖のあるショートボブの緑の髪に、真紅の瞳。白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着ていて、その上から同じくチェック柄のベストを羽織っている。東方にも似たような容姿のキャラがいるが、目の前にいる彼女がそうなら何故ここに?

 考えながら彼女と少しの間睨みあっていると、彼女の方から口を開いた。

 

「……聞きたいことがあるわ。続きは中で話しましょう」

「わかりました」

 

 彼女が私を通り越してドアを開く。私に攻撃されるなどの考えはないのか、もしくは攻撃されても平気だと思っているのか。

 彼女に続いて家に入ると、懐かしいものが目に入る。私が作ったテーブルにイスやタンス。彼女はこの家に残していったものを使っているようだ。

 

 彼女に薦められるままイスに座っていると、お茶を私の前に置いてくれた。一応客人としては見られているようだ。

 

「私の名前は風見幽香(かざみゆうか)よ。随分前からここに住んでるわ」

「私は河森朝日と言います。よろしくお願いします、風見さん」

 

「それで、貴女がこの花畑を作ったと言っていたけど……。それは、私がここへ来る前のことね?」

「そうですね。しばらく旅に出ていたものですから」

「数十年以上も旅……ねえ」

「捨てたわけではないのですよ? 荒らされないようにちゃんと壁を作っておきましたから。……まあ、風見さんには壊されてしまいましたけど」

 

「……その風見さんっていうの……やめてくれない? なんか違和感があるわ」

「そうですか? ……では、何と呼べば?」

「なんでもいいわよ…… ふざけた呼び方でなければ」

「では、幽香さんと呼びますね」

 

 そういうと、幽香は微妙な表情になった。自分で言い出した手前、却下しにくいのかもしれない。せっかく名前で呼べるのだから、私から変えるつもりはないけど。

 

「……貴女、図々しいというかふてぶてしいというか……」

「幽香さんも私のこと名前で呼んでくれていいんですよ?」

「……はあ…… わかったわよ、朝日」

「はい!」

 

 微笑んで返事をするとため息をつかれた。少しふざけてみたのだが怒る気配はない。突然殺気をぶつけてくるくらいだから警戒していたけど、挑発さえしなければ普通に会話できる人みたいだ。

 

「今までにいないタイプだわ…… やりにくい」

「あのー…… それで、花畑のことなんですけど……」

 

 本題に入ると、幽香の纏う雰囲気が一変した。どんな攻撃をされても傷つくことはない(と思う)けど、真剣な雰囲気は面接を思い出してしまってどうも苦手だ。

 

「あの、ここの花畑を私が作ったというのは事実なんですよ。でもですね、私はもうここは幽香さんの場所だと思ってます」

「…………は?」

 

 口を開けて固まる幽香。私がここを乗っ取ろうとするとでも思ってたんだろうか。

 

「いえ、あの、ここに戻って来た時から私はもう花畑は私の場所だと認識してなかったんですよ。私がいた頃よりも花たちは元気になってましたし、ちゃんと世話をしてくれる人がいるのだとわかりましたから」

「……じゃあ、なぜ最初に挑発するようなことを言ったの?」

「そ、それはその……」

 

 言い淀んでいると、幽香の威圧感がどんどん増してくる。

 

「……言いなさい」

「い、いきなり殺気を向けられて、イラついたからですう!!」

 

 言ってしまった。なんてプレッシャーに弱いんだ私は。ていうか、我ながら正直にぶっちゃけすぎでは?イラついたってなんだイラついたって。

 恐る恐る幽香に目を向けると、苦笑している顔が見えた。

 

「あー…… まあ、いいわ。確かに、いきなりでアレは悪かったわね。でも、朝日だって自分の家に侵入しようとしてる不審者だったら警戒くらいするでしょ?」

「……そうですね、私も悪かったです。ごめんなさい」

「いや、いいわよ今更…… それに、初めから消すつもりなんてなかったし」

「? ……どうしてですか?」

「……花たちが言ってたのよ」

 

 外を見ながら呟く幽香。つられて窓を見ると、外には向日葵がたくさん咲いていた。

 

「貴女が花畑に入った時から『私たちを育ててくれた人が帰って来た』って私に言ってきたの。半信半疑だったけどね」

「花の言葉がわかるんですか!?」

「感覚よ、感覚。はっきり声として聞こえるわけじゃないわ」

「へえ~……」

 

 もし花と会話できたら退屈はしなさそうだ。なにせこの花畑にある花は一万や二万なんて軽く超える数なのだから。

 

「そういえば、あの向日葵がいっぱい咲いている所にもともとあった花はどうしたんですか?」

「ああ、それなら別の所に移動させてあるわ。……悪かったかしら?」

「いえいえ。今の主は幽香さんですから、好きにアレンジしてください」

 

 幽香は私の言葉に頷くと、ふっと優しい微笑みでこちらを見てくる。

 

「実のところね、私貴女に会ってみたかったのよ」

「どうしてですか?」

「私が初めてここに来た時、心底驚いたのよ。花妖怪である私が見たことのない花がそこかしこに咲いていて、それが何処までも続いている。ここみたいに広く、多種多様な花が咲いている花畑を見たのは初めてだったし、花たちに聞いたら一つ一つを手作業で植えたなんて言うんだもの」

 

 幽香が見たことないというのは、世界を巡った時に手に入れて持ってきた花のことだろう。

 

「頑張りましたからねえ」

「一人でやるような広さじゃないわよ…… 私だってこの広さに手作業でやろうなんて思わないわ」

 

 私の言葉に苦笑する幽香。まあ、幽香の言葉が普通だろう。私だって癒しの能力で心を癒してないとこんな途方もない作業をやり遂げることなんてできない。

 それでも花を植え、育てたのは楽しかった。これは嘘偽りのない気持ちだ。

 

「ふふふっ 貴女が帰って来た時の花のざわめきはすごかったわ。花に愛情を注いでいた証拠よ?」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、貴女が長年かけて育て、作り上げ、世話をした手間と愛情は確かに花に伝わっている。私はそれを感じ取ることができるからこそ、その人に会い、話したかった。私と同じように花を愛でる者としてね」

 

 今目の前にいる幽香は、私に子どもを見つめる母親のような優しい眼差しを向けている。とてつもない殺気をぶつけてきた鬼のような迫力は一切なく、二重人格ではないかと疑ってしまいそうなギャップを感じた。

 

「そうだ! 幽香さん、私に花の育て方教えてください!」

「え? ええ、いいけど。いきなりどうしたの?」

「私、花の育て方がわからなくて、変にやって失敗するのも怖くて、水をやるくらいしかしなかったんです」

「ああ、だからいい育て方を知りたいと」

「はい!」

「…………」

 

 幽香は思わず身を乗り出して答えた私を無言で見つめてくる。でも、その目にはうっとおしいといった感情はなく、どこか愛おしいものを見るような目をしていた。

 

「……朝日のように、純粋に自然を想う心を持つ者は少ないわ」

「そうですか? 私のように花を育てる人はたくさんいると思いますけど……」

「人が花を育てる目的は、飾るためであったり利益のためであったりと様々だわ」

 

 微笑みから一転、幽香が真剣な雰囲気を帯びる。

 

「でも、貴女はただ自然の美しさを、花に輝きを与えたいがために助言を求めた。誰に誇るでもなく、ただ綺麗な花を咲かせたいという一途な想い。……その想いを忘れないで。努力やなによりも、その想いこそが美しい花を咲かせるのに必要不可欠なものよ」

「……はい」

 

 私が頷くと、嬉しそうにふわりと笑う。少女が欲しかったプレゼントをもらったかのようなその笑みに、私も自然と口角が上がった。

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

 その後もしばらく話をし、外が暗くなってきた頃。

 

「あら、もうこんな時間。今日は泊まっていきなさい。ここは朝日の家でもあるんでしょう?」

「はい。お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 私は幽香に気に入られたらしく、花の育て方をたくさん教えてくれた。私は太陽が沈む時間まで話されるとは思わなかったが、花の育成に関する知識を知ることができたし、夢中で話す幽香の花への愛が感じられたので、有意義ではあった。

 

「夕食はどうする? といっても、野菜と果物しかないのだけれど」

 

 この家の裏には、私が世界を巡った時に持ってきた野菜や果物が育てられているスペースがある。幽香もそこから食料を調達していたようだ。

 

 この花畑の周りには私が作った壁があるので、よっぽど強力なものでなければ入ってくることはできない。壁を壊すのには大妖怪である幽香ですら苦労したらしく、わざわざ肉を調達するために壊そうとは思わなかったという。

 それでも、私がいれば話は別だ。私は壁を自由に操作できるからいつでも外へ出ることができる。だが、今は出る必要はない。肉なら私が持っている。

 

「肉ならありますよ。どうぞ!」

 

 手を幽香の前に差し出して、獣の肉を手の上に出現させる。突然現れた肉に幽香は驚いている様子だ。

 

「え…… 今のはどうやったの? 朝日の魔法?」

「魔法じゃありませんよ。私がエネルギーを固めたりして壁を作ったのは言いましたよね?」

「ええ。それは聞いたわ」

「これは、そのエネルギーの応用なんです!」

 

 私は花畑を出るまで、エネルギーは堅めて身を守ったり、体を強化させるような用途しかないと思っていた。しかし、諏訪子に神力の扱い方を聞くにつれて、エネルギーにも他の使い方ができるのではないかと思ったのだ。

 億を超える年月の間、ずっとエネルギーを扱ってきた私にとっては新しい使い方を見つけるのは容易だった。というより、どうして今まで気づけなかったのかと少し落ち込んだ。

 

 私が操るエネルギーは硬化させる、移動させることの他に、物質に染み込ませる浸透、浸透させたものをエネルギーに変換する分解、分解したものを元に戻す収縮など、できることに様々なバリエーションがあった。

 

 私は今まで新しく発見したエネルギーの使い方を練習してきた。浸透はすぐにマスターすることができたが、分解と収縮が難しく、まだ扱いきれていると言える状況ではない。それでも小さいものなら瞬時に分解・収縮ができるようになったので、食料などを分解してエネルギーとして取り込んでいる。

 幽香には、その取り込んでいた食料の一つである肉を収縮して出したのを見せたのだ。

 

 これを完璧に扱うことができるようになれば、相手の妖力や神力を私のエネルギーとして吸収することもできるかもしれない。これに加えて、最近では太陽の神としての光と炎の力も増してきている。私自身も自分の足で信仰を集めに歩き回ったおかげでぐんぐん限界値が上昇しているからだ。

 だが、こんなもので成長を止めるつもりはない。まだまだエネルギーにできることがあるかもしれないし、新たな力を身に付けることができるチャンスなら貪欲に求めていくつもりだ。

 

 魑魅魍魎が跋扈しているこの世界ではどんな危険が潜んでいるかわからない。そのためにも私は今よりもっと強くなりたい。エネルギーの分解と収縮をマスターしたら、炎と光の扱いを完璧にするのが目標だ。

 いつかパチュリーやアリスに会ったら魔法を教えてもらうつもりなので、それまでに習得できるものは全て身に付けていくのだ。

 

「エネルギーを使えば、手も使わずに持ち運べるんです。便利でしょう?」

「もっと他の活用の仕方があると思うけれど…… まあ、いいわ。その肉使わせてもらうわね」

 

 

 

 

 

―――― 幽香side ――――

 

「……昨日は久しぶりに、少し疲れたわ」

 

 この花畑に住んでから随分経つが、来客なんて初めてだった。その人物がこの花畑を作った張本人であると知った時は驚いた。

 

 私の向ける殺気に物怖じせず言い返す胆力。強固な壁を広大な花畑周辺に展開することができるほどの力。花や自然を想う純粋な心。

 大妖怪や神のように強い力を持つ、妖精のような少女。それが私が思う朝日の印象だ。

 

 今、朝日は外で花畑を見て回っている。普段であれば、他人が花畑を歩き回るのなんて許可したりしない。だが、朝日だとなぜか許してしまう。

 

「私、こんな甘かったかしら」

 

 朝日には、不思議と警戒心が湧かない。それを朝日は自身の癒しの能力の影響だと言っていたが、私は違うと自覚している。朝日に対して警戒心が湧かない理由。それは朝日自身が私に対して敵対心や警戒心などを全く抱いていないからだ。

 

 この花畑に来る以前、私は私の領域に入る者は例外なく攻撃していた。弱いくせして私に取り入ろうとするものや私の力を利用しようとするものはみな消してやった。

 気に食わないのは、彼ら彼女らがそろいもそろって私を警戒しているからだ。びくびくしながら私の様子を伺う姿や恐れるような視線は不愉快だ。

 

 弱いからこそ、強い私を恐れる。恐怖に駆られた奴らは何をしでかすかわからない。いつ攻撃してくるかもわからないような、そんな奴らが私の領域にいて苛立たないはずがない。

 強い奴らでさえ、私を恐れる。私の怒りが自らに向かないかどうかを常に伺っている。そういった行為が私の苛立ちを加速させていることに気づきすらしない。

 

 そんな環境に辟易し、当てもないまま歩き始めた私はこの花畑へと辿り着いた。花妖怪としての本能から、知らず知らずのうちに引き寄せられていたのかもしれない。

 

 聞けば朝日は大和の神やら土着神やら鬼やらと、力のある奴らと縁があるらしい。幽香もその縁の一つかもと笑っていたが、あながち間違ってもいないのではないかと思う。

 それに、朝日本人が強い力をもっているのだ。それでも慢心したり、自惚れたりしない朝日の人柄を好いているやつもいるのだろう。

 

 私が見て聞いた限りでは、朝日は自身のもつ力がどれだけ強力なものなのか自覚していないのだろうが。

 

 

 

 朝日が持つエネルギーは脅威だ。朝日が食料を持ち歩くのに使っているという『分解』の力。詳しく聞くと、どれだけ巨大なものでも分解するとができると言っていた。それに生き物は含まれるのかと問えば、朝日は肯定した。

 

 生き物すらも分解できるのなら、大妖怪や神などでも相手にならないほどの力だ。妖力や神力、魔力とは全く違うエネルギー。朝日以外には感知すらできず、知らず知らずのうちに体内にエネルギーを浸透させられたらそれで王手。朝日の判断によって一瞬で消滅させられるのだ。

 

 この力を私に向けられれば、なすすべもなく消されてしまうだろう。私は自身が強いことを自覚している。それでも、朝日の力の前では手も足も出ないであろうことは理解していた。

 

「……朝日が優しい子でよかったわ」

 

 エネルギーだけでも十分強力だが、朝日はさらに力を求めているのだという。この世界ではいつ死んでもおかしくないから、死なないためにも力をつけると言っていたが、今の朝日を殺せるような妖怪がそこら辺にいるような世界だったら人間はすでに存在していないだろう。

 

「ただいま帰りましたー!」

「お帰りなさい。お茶はいる?」

「いただきます!」

 

 にこにこ笑いながら席に着く少女を見て、くすりと笑う。

 

 

 

 ……朝日がいるだけで、今までとは空気が違う。

 

 

 

 こんなに自然と笑えたのは、一体いつ以来だったか。朝日の能力はものだけではなく、雰囲気やその空間までも癒してしまう。

 

「なんで笑ったんですか?」

「なんでもないわ。はい、お茶よ」

「ありがとうございます。 ……んっ……ふう……。幽香さんの淹れるお茶は美味しいですねえ」

「そう? ありがとう」

 

 出会ってまだ二日だけれど、互いによそよそしい感じはない。緩やかに過ぎていく時間が心地よく、ついぼんやりとしてしまう。

 

 こうして、二日目の日も暮れていった。

 

 

 

 

 




話を書く時間がありません。

はやく時間が作れるように頑張ります。
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