右を見ると、白。
左を見ると、白。
上を見ても、白。
下を見ても、白。
私は今、全身真っ白に包まれていた。
――――――
――――
――
私が洞窟に入った時、まず目にしたのは兎の大群だった。
どれもこれも真っ白な毛をしていて、まるでそこだけ雪が積もっているかのようだ。
白い小動物の楽園を立ったまま眺めていると、足をつんつんとつつかれた。下を見ると、私をここまで連れてきた兎(だと思う)が、何かを私に伝えようと体の全てを使ってジェスチャーをしている。しかし、流石に兎とジェスチャーで意思疎通はできない。
なので、一番手っ取り早い手段を取ることにした。
「ちょっと、ごめんね」
言うと同時に、エネルギーを兎に同調させる。これは、私の持つエネルギーを相手の色に染めさせて、その力や考えをコピーするという、とてつもない反則技の一つ、読心だ。
私のエネルギーはありとあらゆる力に変換できる。その応用で生き物にもできるようにしただけ。言うのは簡単だけど、結構すごいことだ。
人や妖怪に限らず、この世にいるありとあらゆる生き物は『色』を持っている。これは赤や青といった風に視認できるわけではなく、ただそうだと感じ取れるだけだ。この『色』はその生き物の「存在」そのものだと、私は考えている。この「存在」を感じ取れるのはエネルギーによる何かしらの恩恵だと思っているが、真相は定かではない。
私がもつ純粋で透明なエネルギーを、相手の「存在」の色に染め上げる。染まったエネルギーを私が取り込むことで、相手の持つ力、思考、経験や技術、時には記憶でさえも私のものとすることができる。紫のエネルギーを取り込めば私もスキマを使えるようになるし、幽香のエネルギーを取り込めば私も花の意思がわかったりするのだ。
一応言うと、このことは誰にも話していないし、使ってもいない。紫や幽香にもだ。心が読めるとしれたら、嫌われはしないでも警戒はされるかもしれない。誰にだって隠し事はあるものだから。
だから、相手の思考を読むのだって滅多にしない。普段は動物にすら使ったりしないのだ。頻繁に相手の思考を読んでいると、それが癖になってしまうかもしれないから。今のように兎に使うのはあくまでも例外である。対象が極悪人などである場合はやぶさかでないけども。
――――――
――――
――
さて、兎はどうやら、私に餌を期待しているようである。ここにいる兎たちに食料を分け与えてほしいと。少し考えたけど、別に私に不利益はない。野菜は癒して回った村の人たちにお礼として渡された品で、ただお土産として持っていきたかっただけ。調達だけなら花畑にある私特性の畑でもできるのだ。
というわけで、私は色々な野菜を分解カットしながら兎たちに提供した。兎の大群全てに餌が行きわたるころには、私の取り込んでいた野菜は底をつきかけていた。元々幽香との二人暮らしなので、そこまで大量に持っているわけでもなかったのだ。
兎たちの腹が膨れた後は遊びタイムだ。といっても、遊ぶのは兎だけで私は洞窟にいたのだけれど。食事が終わるや否や、みんな外に飛び出ていったのだ。これで満足したのだろうと、夜通し歩いて眠くなった私は洞窟で寝ることにした。眠気や疲労も癒せば寝なくていいのだけれど、私が寝るのが好きなのでできるだけ眠くなったら寝るようにしている。固めた白いエネルギーに弾力性をもたせると、それだけで真っ白な即席布団の完成だ。
そうして眠り、しばらくして目覚めたら、冒頭の状況だった。
――――――
――――
――
「あったかい……」
体の周りだけではなく、お腹や胸の上にも兎が乗っている。柔らかいし温かいしでとても快適だ。
この兎たちは私の癒しに惹かれたのだろう。普段は抑えているけど、寝るときは自然と体の周りに癒しのオーラを纏ってしまうのだ。これのおかげで諏訪子にはよく抱き枕にされていた。
「今は、夜か……」
洞窟の中は暗い。ここはそれほど深いわけではないので、太陽が出ていれば自然と中も明るくなるから昼夜がすぐわかる。兎たちに餌をあげた時はまだ朝と言える時間だったから、結構長いこと眠っていたらしい。
兎たちを起こさないように体の上からゆっくり降ろす。上半身を起こして周りを見ると、どうやら私を中心にして集まっているようだ。
キョロキョロと周りの兎を見渡していると、兎の山の中から飛び出ている、一際大きいうさ耳が目に入った。
(明らかに他の兎とは違う…… でも、他の兎はぐっすり眠ってる。もしかして、兎の親玉?)
そろそろと山に近づき、少しずつ兎をどかしていく。
山を完全に崩すと、中から黒髪の幼女が出てきた。
(…………)
とりあえず、起こさないように癒しのオーラを増加する。そろりと体を持ち上げ、苦しくないように抱きしめる。子どもを抱く感覚に酔いしれていると、逆に子どもの方が腕に力を入れてきた。
(ああ、気持ちいいなあ……)
キュッと抱きしめ返し、そのまま目を閉じる。
(私が母親になったら、こんなこともしたのかな……)
そんなことを考えながら、私は再び目を閉じた。
一度熟睡してしまったので、既に眠気はない。なので、腕の中のうさ耳ちゃんの体温を感じながら夜が明けるのを待つことにした。
頭をなでたり、背中をなでたり、頬に触れたり、抱きしめたり。文字にすると変態的な感じがしないでもないが、小さい子とのスキンシップであれば問題はないはずだ。
……いや、初めて見た子を抱きしめるのはおかしいか。諏訪子とか萃香とか紫とか、結構スキンシップが多い人たちと過ごしてきたから私の感覚も麻痺してきたのかもしれない。紫は頭を撫でてきたりだとかが多いけど、諏訪子と萃香は普通に抱き着いてきたりするし。
しかし、まあ、この子はうさ耳がついてることからして妖怪だし。常識とかあてはまらないし。だから大丈夫だ。うん、大丈夫。
自分に向かって言い訳をした私は再びうさ耳ちゃんの頭を撫でまわす。ふわふわした髪の毛を手櫛で梳いていると、腕の中でもぞもぞと動き出した。
周りを見てみると少し明るい。どうやら、太陽が昇っていることにも気づかずに撫でまわしていたらしい。うさ耳ちゃんは安眠できて、私は幸福な時間を過ごすことができた。
まさにWin-Winの関係。どちらにも得のある有意義な時間でした。
というわけで、ついにうさ耳ちゃんとの初(?)対面だ。寝ぼけ眼で私の顔を見つめているうさ耳ちゃんに視線を合わせる。
「おはよう。よく眠れた?」
「…………」
まだうさ耳ちゃんは眠気から覚めないようなので、頭を撫で繰り回す。今までに様々な動物と接してきた私には、どこをどうすれば気持ちがいいかなど、エネルギーや能力を使わなくても一目でわかる。癒しの力を使わずとも、小さい妖怪一人を満たすことなど造作もないのだ。
未だに微睡の中、目を細めて私に身を預けているうさ耳ちゃん。しかし、周りの兎もだんだん目を覚まし始めているので、そろそろ起こしてあげた方がいいだろう。
「……それっ」
「…んっ」
わき腹に手を置くと、微かな反応。そのまま軽くお腹周りを指先でいじってみる。
「……んうっ…………んあっ…うぅ……」
ひくひくと動く体。くすぐったいけど、まだ寝ていたいのだろう。というか、私が周りに漂わせている癒しのオーラを解除すればすぐ起きそうなのだが。……面白いからこのままにしとこう。
普段は紫にいじられたり、幽香にからかわれたり、紫に悪戯されたり、幽香に抱き枕にされたり、紫に抱き枕にされたりなど、いじられることが多い私。しかし、今は違う。いたいけなうさ耳の少女をどうするもこうするも私次第なのだ。そう思うと少し楽しくなってくる。紫や幽香が私に対して抱いているのも同じような感情なのだろう。
というわけで、いじり再会である。今の体制は、上半身を起こして座る私に体を預けているうさ耳ちゃん。私のお腹にうさ耳ちゃんの背中がくっついている状態だ。くすぐりをするのには最適な体制である。
わき腹からお腹へ、指先でこするようにいじっていく。
「……ぁっ、うぁっ……ぁ……」
指先でさわさわとこする感覚がぞわぞわ来ているのだろう。うさ耳ちゃんもビクビクしているが、まだ目は覚まさない。そのまましばらくいじっていると、だんだんうさ耳ちゃんの顔が赤くなってきた。少しくすぐり過ぎたのかもしれない。
名残惜しいが、本格的に日が昇り、もう他の兎もみんな起きている。とどめに脇へ手をやり、思い切りくすぐってやる。
「……っ……ふうっ、んんっ……ぁは、ふ、は、ひはっ」
「……それっ」
「ふ、ふふっ、ふあっ、あ、あははははははははは!」
私の上で足をばたつかせて笑ううさ耳ちゃん。目に涙を浮かべ、必死に私の手を止めようとしている。眠気は完全に覚めたようだ。ミッションコンプリートである。
「……ふ、ふふっ……」
くすぐりはやめたが、まだピクピクしている。少しやりすぎたっぽい。顔も体も火照っているのか少し赤い。
「っあ、あんた……何、するのさ……」
赤くなった頬に、少し涙目で見上げてくるうさ耳ちゃん。見た目にそぐわない喋り方だけど、私に背中を預けている状態で言われても可愛いだけだ。
そんな顔に軽い嗜虐心を抱いてしまう。ああ、今なら紫の「可愛いものはいじめたくなるものよ」という言葉も理解できる。
「ちょ、ちょっと…… ん、何とかいいなよ……」
おっと、つい黙り込んでしまった。しかし、私の手は無意識のうちにうさ耳ちゃんの頭を撫でていた。というか、私の腕の中に居ながら暴れもしない。まんざらでもないのかな?
まあ、このままじゃ何も進まないので名前だけでも名乗ろうか。
「私の名前は、河森朝日だよ。朝日って呼んでね」
「いや、私が聞きたいのはどうして抱かれているのかなんだけど」
もっともな疑問である。
「寝ているのが可愛かったから」
「……そういうのいいから」
「そう? でも、気持ちよかったでしょ?」
「うぐ……」
「私もうさ耳ちゃんのこと撫でられてよかったし、ね?」
「いや、今も撫でてるし……」
腕が止まらないから仕方がない。この子の黒髪はふわふわしていて、触り心地がとてもいいのだ。
「……初めまして。昨日は兎たちに食べ物くれて、ありがとね」
「あれ、何で知ってるの?」
「周りの子に聞いただけだよ。あんたに悪意がないのもわかった。……それでも、あれでも警戒心は高い子たちなんだ。食料もらったからって、一緒に寝るほど簡単に懐くような子じゃないんだけどねえ」
「でも、君も一緒に寝てたよね?」
「警戒心は高い子だって言ったでしょ? 悪意に敏感なあの子たちが一緒に寝るほど信頼してるようなら、私もそれを信じるさ」
「この子たち、ただの兎にしか見えないんだけどなあ」
「いくらか特別な子がいてね。この山に腹を空かせた獣が入ってきたら、すぐに察知できるくらい鋭い子もいるんだよ。でも、その子も寝ているあんたのそばにいた」
流石、妖怪がいる世界だ。ただの兎だと思っていたけど、生き延びるための技をもっているらしい。
「私だって長く生きてるから、悪意やら殺気やらには敏感さ。向けられたら寝てても飛び起きるくらいにはね。でも、あんたには不思議と警戒心が湧かないんだよね」
なるほど。癒しのオーラは、初対面の相手の警戒をも解してくれる。あまり暴れず撫でられていたのもそのおかげか。
「私は癒しの力をもっているんだ。傷や病気、心も癒せる力だよ。それで君の警戒心を癒して、解いてしまったんだね」
「へえ、そんな能力を…… 妙にあんたのそばが落ち着くのも、その能力の影響かい?」
「多分、そうだね。野生の本能というか……、動物には効果抜群だよ」
「へえ…… まあ、わかる気がするよ……」
そう言ったきり、目を閉じて私に身を預けるうさ耳ちゃん。うさ耳うさ耳いってるけど、この子の名前はもうわかっている。というか、原作にもいた子だ。
ここで会うのは意外だったけど、こんなところで一体何をしてるんだろう。
「ほれほれ、ここがいいのか~」
「あぁ~気持ちいいねぇ…… 極楽だよぉ~……」
ふにゃふにゃした笑顔で悦楽に浸るてゐ。……イメージと違うな。私はてっきり、長年生きたが故の知恵と経験を活かすトリックスターみたいな感じを想像してたけど……。
……まあ、これはこれで可愛いのでよし。
「聞きそびれてたんだけど、君の名前はなんていうの?」
「ぅぁ~……ん?名前? ああ、私の名前は因幡てゐっていうんだ。てゐでいいよ。私も朝日って呼ぶからさ」
「そう。よろしくね、てゐ」
私は小さいものが好きだ。動物とかはもちろんだが、特に子どもが好きなのだ。しかし、前世での私は見た目が怖かったので迂闊に小さい子には近づけなかった。もし涙目にでもなられたら私のマインドがクラッシュされてしまうだろうから。
だが、今の私は違うのだ。私は腕のなかのてゐを撫でながら考えた。
(レミリアとかフランとかは、どんな感じなんだろう……)
前世ではできなかったことをしたい。子どもを抱きしめたい。撫でたい。世話をしたい。そんなことを考えていた私は、一つの案を思いついた。
(実際に会いに行けばいいんじゃん!)
名案である。この世界に存在し、いずれ幻想郷に来るであろう吸血鬼姉妹。いつか会うのなら、その日が数百年ほど早まったっていいだろう。
まあ、まだ二人は生まれてないのだけれど。二人が生まれた頃にヨーロッパへ行ってみよう。そして、あわよくば二人の頭を撫で、私のテクニックで快楽堕ちさせてやるのだ。
「うん、そうしよう」
「え? 急にどうしたの?」
「独り言だよー」
快楽堕ちは流石に冗談だけど。私の癒しの力があればフランの狂気もキレイキレイできるかもしれない。そのうえで幻想郷に招待すればいい。
――――遠い未来で生まれる吸血鬼姉妹の運命が、勝手に決まった。
――――――
――――
――
撫でて揉んで擦って愛でて。てゐの体を余すことなくいじりまわして満足した私は、涎を垂らしながらヒクヒクと震えるてゐを兎たちに任せて洞窟を出た。
「日差しが眩しい…… 今日もいい天気だなあ」
幽香にもっていく予定だった食料は全部兎に食べられてしまった。そこら辺の岩を幽香のフィギュアにでもしていこうかな。少し頬を赤くしながらも受け取ってくれるだろう。
てゐはまだ復活しないようなので、外にいた兎たちと戯れる。どの兎も毛がもふもふしていて、外で暮らしているはずなのに汚れがない。これも特別な兎ならではなんだろうか。
そのまま兎と遊ぶこと数十分。ようやくてゐが洞窟から出てきた。まだ膝が震えてるけど。
「ようやく出てきたね。この寝坊助さんめ」
「う、うるさい…… 本当に極楽に逝くかと思ったよ……」
「気持ちよかったでしょ?」
「ああ、しばらくは私を撫でないでよ。これ以上されたら朝日から離れられなくなっちゃいそうだからね」
おお……。私のテクニックはついに中毒になってしまうほどに上達したのか。
「なにその顔」
「いやあ、私の技も上手くなったもんだと思ってね」
「……普通の動物とかにやるんじゃないわよ? 本当に逝ってしまうからね。冗談じゃなく」
てゐの心配は無用だ。私が今までどれほどの数の動物や人の子を撫でてきたと思っている。加減の調節は完璧だ。
「……いや、私の時は?」
「てゐって抱き心地よくて、つい本気でやっちゃった。でも、やりすぎないようにはしてたんだよ?」
「あれでかい……? 末恐ろしいね」
「もうやりすぎることはないから大丈夫。てゐの体は隅から隅まで覚えたからね」
「その言い方はやめて!?」
それはさておき。
「てゐはこんな所で何をしてるのさ」
「なんだい急に…… まあ、旅の途中って感じかね」
「あんなにたくさんの兎と一緒に?」
「ああ。仲間集めの旅っていうか、一人旅の途中に勝手に集まったんだよね」
親分、ついていきます!って感じかな? 私にはわからないが、同族の兎にはてゐの秘められた力的な何かが分かるのかもしれない。
「あんなにたくさんの兎連れて…… てゐの家はどこにあるの?」
「んん? 家っていうか……住処は少し遠いね」
「そうなの?」
「ここから遠く西へ行った所に大きな竹林があるんだけどね。そこに住んでるのさ」
てゐは原作では竹林(にある永遠亭)にいたけど、この世界でも竹林に住んでいるらしい。
てゐと永琳たちは一体どのくらいの時代に出会ったのかは、私は知らない。もしかすると、この世界では両者は出会わないということもあるかもしれない。
「誰も寄り付かないくらい大きくて深い竹林だったんだけどね。だいぶ前にいきなり住み着いた奴がいるのさ。別に独占したいってわけじゃないんだけど、本当にいきなりだったから、あの時は大分驚いたねえ」
前言撤回。既にフラグは建っていた。
「なんか結界みたいなのもあったけどね。するっと抜けて挨拶してやったよ。その時の驚いた顔は、見せられるなら見せたいほどに傑作だったね!」
フラグどころか既に対面済みでした。というか、さらっと言ってるけど永琳の結界ってめちゃくちゃ複雑なはずなんだけど。それをするっと抜けたとは流石は神代の兎。ゲラゲラ笑って話してはいるが、あなどれぬ。
「その人ってさ、銀髪、もしくは黒髪じゃなかった?」
「……知り合い?」
「うん。知り合いっていうか、その場所に住むようにおすすめしたの私だから」
「なんだ、そうなの? まあ、別にいいけどさ。私にも得はあったし」
「そう? なら良かった」
てゐの言う得というのは、多分兎たちに知恵を与えることだろう。その条件に竹林に人を近づけないようにする……みたいなやつだったと思う。
「さて、そろそろ行こうかな」
「出発かい?」
「うん。そろそろ同居人の顔も見たいしね」
「そうか。機会があったらまた会おうかい。私たちには時間はあってないようなものだからね」
「近いうちに、また会えるよ」
本当に、近いうちにね。
「それじゃ、ばいばい」
「ああ。またいつか」
――――――
――――
――
「幽香ー! ただいまー!」
「おかえりなさい」
私の声に笑顔で答えてくれる幽香。かわいい。
「紫はきた?」
「いいえ、来てないわ。……多分、来るとしたらここじゃなくて、あなたの所に直接来るわよ」
「そっかー……」
「今ごろ後始末かなにかで忙しいんじゃないかしら? そう考えるといい気味ね」
「相変わらずだなあ」
私が苦笑して、幽香がそれを見てクスクス笑う。いつものことだ。
「それじゃあ、今日は久しぶりに私が料理するよ!」
「あらあら、それは楽しみだわ」
台所に向かって、今日は何にしようかと思案する。紫が来たら、また三人で食事をする。ここ一か月は料理なんてほとんどしてなかったので、その時のために勘を取り戻さなければならない。
――――うんうん唸る私の背中を、幽香が微笑まし気に見ていることに気づくことはなかった。
今度も更新に大分間が空くと思います。本当にすみません。