生まれ変わって星の中   作:琉球ガラス

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ギリギリ書き上がりました。


程度の能力と自分の今

 目を覚ますと、白い天井が見えた。

 

「……知らない天井だ」

 

 まさかこのセリフを言えるシチュエーションになるとは。

 

「大丈夫かしら?」

 

 驚いて体が少し跳ねてしまった。今の呟きは聞かれただろうか。聞かれていないと信じたい。

 顔だけを動かして左を見ると、特徴的な服の上に白衣を着た銀髪の美女がいた。

 

「八意永琳さん……でしたよね」

 

「あら、ちゃんと聞こえていたのね。いきなり気を失ったから驚いたわよ?」

 

「すみません。その……」

 

「ああ、いいわ。事情は聞かないから。それより今は、ゆっくり休みなさい」

 

 そう言うと、「ご飯を持ってくるわね」と言い残して部屋を出て行ってしまった。時間ができたので、今のうちに現在の状況について考えをまとめなければ……。

 

 八意永琳。彼女がいるということは……ここは『東方project』の、もしくはそれに類似した世界なのだろう。空から降りた時に大きい建造物が目につかなかったのは、前世で生きていた時代、いわゆる現代よりも遥か昔の時代だからだろう。たしか永琳が月に行ったのは神話とかそこら辺の時代のはずだ。

 まあ、転生した場所が別の惑星の時点で何があってもおかしくはないのだし……。時間とか世界とか飛び越えてることは色々あるが、今更気にしたところでどうにもならないだろう。

 

 考えに集中していると、あれ?と気がついたことがある。ここが東方と同じような世界であるならば、私にも『程度の能力』があるのではないか。早速やってみようと、眼を閉じて集中する。私の体の中に、エネルギーとは別の何かを感じ取れるように。

 

 ……見つけた!

 

『ありとあらゆるものを癒す程度の能力』

 

 少し集中するとすぐに感じることができた。これが私の能力だ。感じ取ってわかったのだが、私は今までもこの能力を意識せず使っていたようだ。

 私は永い時を宇宙で過ごしていた。気が遠くなるような永い永い間だ。その間、というより今も、体と心を能力でもって癒しているのだ。よくよく考えてみればわかることだった。宇宙にいた間肉体が全く老いないなどありえない。妖怪でも多少は変化するだろう。

 ましてや、そんな永い間を闇に囲まれていていながら常に平静を保てていたのもおかしいのだ。普通だったら孤独に対する不安や恐怖で発狂していてもおかしくはない。この世界に転生するまで、私はただの女子高生だったのだから。

 

「もしもこの能力がなかったら、私はどうなってたんだろう……」

 

 おそらく、心は壊れてしまっていただろう。一度自覚してしまうと、だんだん怖くなってきた。今のところ宇宙遊泳をする予定はないが、たとえ宇宙に行くことになっても一人では行かないと心に決めた。

 

「持ってきたわよ」

 

 しばらくぼんやりしていたら、永琳が料理の乗ったトレイをベッドテーブルに置いた。いつの間に部屋に入ってきたんだろう。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言って、スプーンを手に取る。これはシチューだろうか。倒れた私のために、食べやすいものをチョイスしてくれたのかもしれない。永琳の気遣いに感謝して、料理を口に運ぶ。

 そういえば、これがこの世界に生まれて初めての食事だ。味わって食べることにしよう。

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

 数百万年ぶりの食事は涙が出そうなほど美味しかった。エネルギーのおかげで飲まず食わずで生きていける体ではあるが、やはり食事は大切だ。美味しいものを食べると心が満たされるような気がする。私の『癒し』の能力では得られない『満足感』を感じられるのだ。

 

 食事を終えた私は、念のためにと一度診察を受けさせられた。結果は問題なし。傷なんて一つも負ってないので当然である。

 精神状態にも問題はない。一度は気絶するほどの衝撃を受けたが、私はすでに一度死んでいるのだ。今では「この世界を存分に楽しんでやろう」という心構えである。

 

 前世へのしがらみはほとんどないが、唯一気になるのが私を気にかけてくれていた祖父母のことだ。優しい二人のことだから、私が若くして死んでしまったことを嘆いて悲しむだろう。住んでいる場所が遠く、たまに会いに来る程度だったので、親よりも親らしい大人くらいの印象だったのだが。こうして気にするということは、私もそれなりにあの二人のことが好きだったんだろう。

 前世での私には、友人と呼べる人はいなかった。部活や生徒会等に所属せず、放課後になったすぐ家に帰ってアニメを観たりゲームをしたりしていた。クラスメイトも挨拶をする程度で、一緒に遊んだりする人はいなかったのだ。これには前世の私の容姿も関係している気がする。

 

 前世の私は目つきが悪かった。言われずとも自覚してしまうほど眼光が鋭く、初対面の人には睨んでるようにも思えただろう。無駄に顔立ちが整っていたせいで、学校では「目を隠せば美人」と陰湿な女子に皮肉られたものだ。他にも、背が160後半と高く、おまけに胸がなかった。上から鋭い目つきで睨まれれば普通の女子は怯えもするだろう。モデル体型と言えば聞こえはいいが、この身長の高さと胸、そして目の三つが前世の私のコンプレックスだった。

 ところが、今の私は真逆の容姿をしている。セミロングの黒髪はそのままに、身長は150程度にまで縮んでいた。宇宙にいた時間が長く、地面に立った時の視点の高さの変化に気づかなかったのだ。胸は膨らんでおり、Dはありそうだ。前世の私はA、大目に見てB程度だったのだが、これは宇宙を移動していた時に気づいていたので感動は薄い。

 

 ……そして、私にとって一番重要な目だが、私は鏡を見た瞬間に愕然とした。なんと眼光の鋭さが完全になくなっていたのである。前世では相手を怯えさせ、威嚇するだけだった笑顔も、今の私の笑みは相手に安らぎを与える天使の微笑みだ。パッチリとした少したれ気味の大きい目は、相手に優しい印象を与えてくれるだろう。この体は、前世でのコンプレックスを全て解消してくれたのだ。

 鏡の前に立った途端に泣き出した私を、永琳はとても心配してくれていた。

 

 ちなみに、今の私はひざ下を半分ほど隠す白いワンピースを着ている。袖は肘まであり、ウエストを紐で調整できるタイプだ。星の中から宇宙に出た時から着ていたもので、白いのに全然汚れがつかないし、傷がついてもエネルギーを流し込むと勝手に修復された。サラサラしてて肌触りもいい。生まれ星からのプレゼントだと思って大切にしている。

 

「ふわああぁ……ぁふ」

 

 そんな私は今、永琳が書類を捌いているのをぼんやりと眺めている。永琳と共にいるというのが街に入る条件だったので、永琳の仕事中に勝手に出歩いてはいけない。なにやら近いうちに実行に移される大規模な計画があり、その処理に追われているらしい。今も書類の山と激しい戦いを繰り広げている。

 ひと段落すれば詳しく説明するとのことだが、今の様子では数日はかかりそうだ。看病などをしてもらった手前、文句が言えるわけもない。計画の方は大体見当がついているが、部外者の私が知っているはずがないので口には出せない。

 

 永琳とは、病院からの移動中にも積極的に話しかけ、互いに名前呼びするくらいには仲良くなっている。今の私には小動物のような愛らしさがあるからな。作戦名「ガンガンいこうぜ」は見事に成功した。一緒に街を見て回る約束もしたし、行く時がいまから楽しみだ。

 

 退屈を持て余していた私は、いつの間にかソファーの上で寝入っていた。

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

 ――――い、――ひ

 

 ……なんだ?だれかのこえがきこえる。

 

 ―――さい、――ひ」

 

 えいりんのこえ?あれ?わたしはなにをしてたんだっけ?

 

「――なさい、あさひ」

 

 ああ、そうだ。わたし、たいくつで眠っちゃったんだ。はやく起きないと、めいわくをかけちゃう。

 

「起きなさい、朝日」

 

「ん、んぅ……ぉはょぅ、えぃりん……」

 

「待たせて悪かったわね。ほら、水よ」

 

「ぁりがとう……んくっ……ふう、スッキリしたぁ。」

 

「眠気は覚めた?できれば、さっき言った計画のことを説明したいのだけれど」

 

 その言葉を聞いて、永琳が仕事をしていた机を見る。すると、そこにはさっぱりと片付いた空間があった。……数日はかかると思ったんだけど、まさか、私が寝ている間に全部終わらせたの?

 

「ふふっ……朝日が寝ているのに気づいたから、少し早めに切り上げちゃった」

 

 そういって、永琳は悪戯が成功した子どものような笑みを浮かべる。大人な雰囲気をもつ永琳の少女のような笑みは、私の顔を赤くさせるには十分過ぎる威力をもっていた。

 

「照れちゃって。顔が真っ赤よ?」

 

「う、うう、うるさいよ!いいから早く説明をしてよ!」

 

「わかったわかった。すぐにするから慌てないで?」

 

 うぐぐっ、完全に手玉に取られている。悔しいが、こういうことで永琳に勝てる気がしないのは何故だろうか。

 永琳は机から何枚かの書類を持ってきて、私に手渡した。私のための、計画の概要を簡単にまとめたものらしい。……これも寝ている間に用意したのかな?

 

「それじゃあ、説明していくわよ。まずは、計画の名前からね。といっても、それを読めばやろうとしてることは大体わかるでしょうけどね」

 

 言われて、一枚目の書類を読む。そこには、私が予想していたものと全く同じ計画名が記されていた。

 

「その計画の名は――――」

 

 

 

 

 

 ――――『月面移住計画』

 

 

 

 

 




永琳と仲良くなる描写はカットしました。そこだけで2話くらい使いそうでしたから。

まだ輝夜とか綿月姉妹とは出会ってません。会わせようかどうか迷ってます。

とりあえず、次話は計画の説明です。他は未定です。

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