「この計画はその名の通り、月面に移り住む計画よ」
永琳は私にもわかりやすく説明をしてくれる。永琳の説明を聞きながら書類を読む。私には、東方projectについての知識がある。永琳のことや、この計画についても。しかし、もしかしたら私の知識と差異があるかもしれない。真剣に聞いてるのがわかったのか、永琳の説明にも熱が入ってきた。説明の中に少しづつ専門用語的なのが混じってくる。
1時間ほどで永琳の説明は終了した。専門用語のことは抜きで、自分にわかる範囲で計画のことをまとめてみた。
・・・
『月面移住計画』
これは数十年前から計画されているもので、その名の通り今住んでいる地を捨てて月に移り住むという大掛かりな計画だ。
ここ地上では、数十年前から妖怪の活発化が続き、穢れによる寿命が発生している。そして、十数年前から穢れがより濃くなってきた事により、これ以上地上に住むのは危険だろうという事で発案されたらしい。
現在、この街の科学者を総動員して進められているのは、月までの足となるロケットの製作だ。勿論その中には永琳もいる。
・・・
「どう?あってるかな?」
「大丈夫よ。この計画は、すでに最終段階に入ってる。あと2年、早ければ来年にでも実行に移されるわ」
「結構早いなあ……。でも、なんか問題もあるんでしょ?」
「ええ、問題というほどでもないんだけどね。最近、妖怪による街の被害が極端に減少しているの。私は、街を襲うために力を蓄えていると考えてるわ」
「私が襲われなかったのもそのおかげかな?」
「ここら辺の妖怪は私たちの襲撃を恐れて、拠点の場所をよく変えているわ。もしかしたら、朝日が歩いてきた道が拠点から遠かったのかも」
私は運が良かったのか……。いきなり襲われてたら、防御もできずに殺されてたかもしれない。エネルギーは堅くして盾にすることもできるけど、あくまでも操るのは私なのだ。
エネルギーの操作自体は、宇宙で常に行っていたので、反射で展開できるくらい自信がある。しかし、私に認知できない速度で攻撃されてしまったらどうしようもない。今の時代、街の外を歩くときは常に警戒態勢でいるくらいが丁度いいらしい。
「今でも、小物の妖怪はちょくちょく現れるわ。でも、強い妖怪の姿を見なくなったの。」
「計画が進むにつれて、街の警戒も高めたんでしょ?それで様子を見ようとしてるとか?」
「そうかもしれないわ。でも、妖怪の中には賢いやつもいるわ。」
永琳が言うには、一部の賢い妖怪が街の警戒を高めるような何かしらの計画が進んでいることに気づき、実行の際の隙を狙ってくるかもしれないとのこと。
この街では、戦う人とそれ以外の人とで分かれているらしい。月に移住するのは街の住民全員なので、その際の誘導や警備にも人員を使う。人数には限りがあるので、外の警備も多少薄くなってしまうらしい。
永琳は以前からそのことについて頭を悩ませていたようだ。
「もしもその時に襲ってくるようなことがあったら、私がこの街を守るよ」
「守るって言ったって・・・そんなことができるの?」
「少し準備が必要だけど、私の力は応用が利くからね。非常事態のときの時間稼ぎは任せてよ」
永琳には、私がもつ力のことを話してある。と言っても、ちゃんと話したのは『ありとあらゆるものを癒す程度の能力』のことだけで、エネルギーについては生まれつき持つ不思議な力と言ってある。実際、嘘ではない。
ちなみに、永琳の能力は『あらゆる薬を作る程度の能力』だ。戦闘には使えないが、十分チートな能力である。
「この街はかなり広いけど、街一つを丸ごと守るなんてことできるの?」
「今やれって言われたら無理だけど、そのための準備だよ」
「んー……まあ、そうなんだけどね……」
かなり迷っているようだ。永琳は頭がいい分、一人で大体の物事を解決できる。そのため、自分でどうにかできないかと考え込んでしまうんだろう。こんな時は、一度休むのが一番だ!
「永琳、今日はもう遅いから寝ちゃおう。難しいことを考えすぎても仕方がないよ」
「でも、街一つを朝日一人に任せるというのは……」
「別に今すぐ決めなきゃいけないことでもないし、考えるのは明日でもできるでしょ。今日はもう寝て、頭をスッキリさせてからまた考えるといいよ」
「……そうね。それじゃあ、今日はもう寝るとしましょうか」
私と永琳は執務室を出て、寝室のある場所へ向かう。私は外から来たばかりだというのに、一人用の寝室が与えられたらしい。永琳の寝室の隣の部屋だ。
「お休み、永琳」
「ええ、お休みなさい」
私に与えられた寝室に入ると、すぐにベッドに横になる。意外と疲れていたのか、すぐに眠ることができた。
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次の日、私と永琳は街の外に出ていた。ここで何をしているのかと言うと、私がどうやって街を守るのかを永琳に教えているのだ。
「これがあなたの盾なのね……。確かに堅いわ。……でも、これを街を囲むように出せるの?」
「うん。そのための準備として、街の外をぐるりと回りたいんだよ」
私の考えは、まず、街の周りのエネルギーに触れて私と繋げる。そして、周辺のエネルギーが枯渇しないように、少しずつ街の周辺に集める。妖怪の襲撃があれば、私の操作で街の外に壁を作るというもの。襲撃がなければ、そのまま霧散させればいいだけだ。
「壁として出せるのはどの程度の堅さなの?」
「さっき出した盾と同じくらいにもできるし、強い妖怪の襲撃も想定するのなら、それよりもさらに堅くすることもできるよ」
「維持はどのくらい?」
「一日くらいなら余裕だね」
もし攻撃で破られそうになっても、その時は私自身がエネルギーを供給してやればいい。
「……凄いわね。防御に関して、朝日の右に出る者はいないんじゃないかしら」
「私自身が消耗するわけじゃないからね。あくまでも大地から力を借りて維持するだけだから」
「それでも十分凄いわよ。……朝日、貴女に、非常事態の時の防御を任せていいかしら?」
「もちろんだよ。でも、他の人はよそ者の私が守りますなんて言って、納得するかな?」
これが一番の不安材料だ。まだ街に来て日が浅い私に、街の防御なんて重要なことを任せてくれるとは思えない。すると、永琳がとんでもないことを言い出した。
「そんなの、言わないで秘密にしておけばいいじゃない」
「な、なに言ってるの?永琳……」
「だから、言わないでやればいいのよ。私なら誤魔化しはどうにでもなるわ。秘密裏に開発した防御システムとか、どうにでも言えばいいのよ」
「……永琳って、変なところで大胆だね」
「ふふっ、誉め言葉として受け取っておくわ。……それじゃあ、回りましょうか。馬は使う?」
「そうだね。乗り方はわからないから、永琳の後ろに乗ってもいいかな?」
「ええ。それじゃあ、行きましょうか」
その日、私と永琳は一頭の馬と一緒に街の外を一日かけて回った。
……次の日、腰を痛めた私は能力で自分を癒すことになった。初心者が一日中馬に乗っているのはまずかったようだ。
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……それから、一年が経った。
私は今も永琳のそばにいることが多い。行動制限はとっくに解かれているのだが、なんとなく居心地がいいのだ。
この一年、たくさんの事があった。永琳と一緒に街を探索したり、仕事を手伝ったり。
たくさんの人と話したが、残念ながら輝夜に会うことはできなかった。しかし、永琳の弟子であるという綿月姉妹には会うことができた。永琳の世話になっていると言うと、すぐに打ち解けることができた。二人には、時々戦闘の訓練をつけてもらっている。姉の
……でも、もうすぐそんな生活も終わりを告げる。
月面移住計画の実行日が迫ってきている。それに加えて、妖怪の出現も増えているらしい。
結局、私の防御壁のことは永琳以外には知らされていない。使うことがなければそれが一番いいけど、そうはならないと私の直感が告げている。おそらく、妖怪は来るんだろう。……でも、私のやることは変わらない。
私は、永琳たちが月へ飛び立つまで街を守るだけだ。
永琳たちの話は多分次回までです。
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