問題児たちが異世界から来るそうですよ?-愚者も一緒に来るそうです- 作:歌穏
遠くに見えるは、世界の果てか
天蓋が敷き詰められた不思議な光景が広がる
周りには同じように落ちる人影が三つ
緩和剤のような薄い膜を通りながら、高所から落ちてきたわりには可愛らしい音を立てて、落ちた
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
水から上がると、服の水を絞りながら、ブラウスとスカート姿のロングヘアーの女性と、紺色の学ラン服の金にも近い茶髪の青年が話し始める
その向こう側で、白い袖の無いコートを着たショートカットの女性は我関せずとでも言うように、己の服の水を絞り、猫と向かい合っている
「ここ……どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
ひとりごとなのか、向かい合う猫に話しかけたのか
ショートカットの女性がつぶやいた言葉に、金茶色の髪の青年が答えた
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」
彼は服の端を絞り終えると、水の滴る髪の毛をかき揚げ、全員に向けてそう問いかけた
手紙とは、あの差出人のない手紙のことを指しているのだろう
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。―――私は
「……
「そう、よろしく春日部さん。次にそこで立っている貴方は?」
その問いかけに、先ほどと同じロングヘアーの女性…久遠飛鳥は高圧的に返し、そのままショートカットの女性に問いかける
口数少なにショートカットの女性…春日部耀は名前を答え、飛鳥はそのまま青い髪を尻尾のようにひとくくりにした男性に話を振った
「ふむ……私はロイル。ロイル・メーティエンと申します、皆様方」
「そう、貴方は外国の人なのね。なら家名は後ろ…と言うことはメーティエン君と呼べばいいかしら?」
「親しい方や家族からは愛称でイール、と呼ばれておりましたので、皆様方もそのように」
「わかったわ、よろしくイール君。じゃあ最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
最後に学ラン姿の、金茶色の髪の青年に飛鳥が問いかけた
「高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ」
心からとわかる表情でケラケラと笑う金茶髪の学ラン服姿の青年…逆廻十六夜がそう返すと、飛鳥は傲慢そうに顔を背けた
耀は我関せずと猫と共にいる
そんな三人を見ながら、ロイルはどうやら彼らはとても個性的なようだ、と感想を抱いた
といっても、ロイルも彼らを見ながらそう状況を分析しているあたり、他人から見れば個性的な部類に入るだろうが
そして、そんな少年少女らを物陰から伺う影一つ
「(うわぁ……なんだか問題児ばっかりみたいですねぇ……)」
召喚した側が言うのは何であるが、彼らが協力してくれるという印象は正直客観的に見て全くもって微塵も想像できない
その影は、隠逸にため息を付いた
「……で、呼びだれたのはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状態だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間がいるもんじゃねえのか?」
苛立たしげに十六夜はそう言った
「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」
「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「突拍子もないことが起きた時こそ落ち着いてモノを考えるべきではありますがね。現状、箱庭とやらにギフトというものを使って何かさせるために誰かが私達を呼んだ、ということしかわからないわけですから呼んだ人物がここに来るのが相応の対応なのでしょう」
同意をした飛鳥、そしてその二人に突っ込んだ耀
そんな彼らに、当たり障りの無い答えを返しながら、ちらりと草陰に視線をやる
その視線の行き先に気がついたのか、どこか少し楽しむような感情が混じりながらも、わざとらしくため息をついて十六夜が茂みに向けて声をかけた
「―――仕方がねえな。そこに隠れてるやつにでも話を聞くか?」
全員の視線が茂み――伺う影の居る場所に集まる
「なんだ、貴方も気ついていたの?」
「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいていたんだろ?そっちの男は、さっき話してる時にアレに出るタイミングを与えてたみたいだからな」
「与えても生かしてもらえないのでは意味がありませんけれどね」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「……へえ?猫抱えたそっちのお前、面白いな」
軽薄そうな笑顔を浮かべるも、目の笑っていない十六夜。三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気のこもった冷ややかな視線を茂みに向ける
向けていないのは、面白そうに笑うロイルだけだ
影、ことウサギ耳の彼女は、怯みながらもその姿を表した
「や、やだなぁ、皆様方。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここはひとつ、穏便にお話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「孤独で死ぬなどという脆弱さには興味がありますが、その部分に免じてという文句では同意しかねますね」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
降参と言うように両手を上にあげた黒ウサギは、しかしながらその目は冷静に四人を値踏みしていた
「(肝っ玉は及第点。この状況でNOといえる勝気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)」
おどけた表情とは裏腹な冷静な思考を巡らせる黒ウサギ…に近づくのは猫を抱えたままの耀
むぎゅ、という擬音が似合いそうなくらい、根本からウサギの耳を鷲掴むと
「えいっ」
「フギャ!」
力いっぱい、引っ張った
引っ張られた黒ウサギはたまったものではなく、悲鳴を上げる
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる技」
「自由にも程があります!」
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
「……。じゃあ私も」
しれっと一言で済ませた耀に文句をいう黒ウサギに待っていたのは、労りでもなんでもなく、残る十六夜、飛鳥によるさらなる攻撃だった
「ちょ、ちょっと待っ―――!!」
むぎゅっと両名から左右に力いっぱいウサ耳を引かれた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げた
余談ではあるが、その悲鳴は近隣に木霊する程の大きさで、それを受けたロイルは耳を塞ぐだけで助けようとはしないのだった
どうやって原作を壊さない程度にオリ主を入れようか迷ってます
難しいですが、頑張りたいです…