問題児たちが異世界から来るそうですよ?-愚者も一緒に来るそうです- 作:歌穏
着いて来てください、と四人に背を向けて歩き出した黒ウサギに、少し距離を開けてついていく
が、何を思ったのか、途中でふらりと十六夜がそれた
「逆廻殿、どこに?」
「ちょっと世界の果てまでな。止めるだなんて無粋な真似はしてくれるなよ?」
「……ふむ、では私も行きましょう、あの果てには私も興味があるので」
「興味無さそうに構えてるくせに、意外だな、アンタ。そっち二人共、黒ウサギには言うなよ?面白く無いからな」
そう言い残してから、黒ウサギの向かう方向とは別の方向に身体を向けた十六夜は、ロイルとともに森の中へ消えた
残された二人は、ちらりと視線をあわせたが、結局少し前を行く黒ウサギに言うのが面倒で何も言わずに歩き続けていた
「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れて来ましたよー!」
黒ウサギを先頭にしばらく歩いて、門前に立った少年が見えた所で、大きな声で黒ウサギが少年に叫ぶ
その声に、俯いていた少年が顔をあげ、少年の目の前で止まった彼女らに声をかけた
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はいな、こちらの四名様が――」
くるり、と振り返って後ろを見てから、かちんと固まる黒ウサギ
そこで黒ウサギは、二人ほど足らないことに気がついたのだ
「……え、あれ?もう二人いませんでしたっけ?こう、ちょっと目付きが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方と、長い青髪を一括りにしている、なんだか柔和そうな表情のわりにSっぽい性格してる殿方が」
「ああ、十六夜君とロイル君のこと?十六夜君なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出していったわ、ロイル君は“興味があるので一緒に行って来ます”って十六夜くんに付いていったわね。あっちの方に」
飛鳥があっち、と言ったと同時に指さした方角は、落ちてくる際に見えた断崖絶壁のある方向だった
外門前の街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて二人に問いただす
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギには教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
問いただした黒ウサギに、自分たちは悪くないですとばかりにしれっと二人が返事をする
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょうお二人さん!」
「答えたセリフは実際に言われてるけど…」
「面倒だったかと言われれば、そうだって答えるわね」
「うんうん」
二人の言葉に、がっくりと前のめりに倒れる黒ウサギ
彼女は思った、新たな人材に胸を踊らせていた数時間前の自分が妬ましい
まさかこんな問題児ばかり掴まされるなんて嫌がらせにも程がある、と
そんな黒ウサギとは対照的に、門前にいた少年――ジンは蒼白になって叫んだ
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
ジンの言葉に聞き返した彼女らに、彼は頷いた
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものが居ます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません!」
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?……斬新?」
「冗談を言っている場合ではありません!」
必死に事の重大さを訴えたジンだが、二人は叱られても肩をすくめるだけだ
黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった
「はあ……ジン坊ちゃん、申し訳ありませんが、お二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「分かった。黒ウサギはどうする?」
「問題児達を捕まえに参ります。事のついでに――“箱庭の貴族”と歌われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
悲しみから立ち直った黒ウサギは、怒りのオーラを全身から噴出させて、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めていく
外門めがけて空中高く飛び上がった黒ウサギは、外門の脇にあった彫像を次々に駆け上がった
「一刻ほどで戻ります!みなさんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能くださいませ!」
外門の柱に水平に張り付いた黒ウサギは、三人に向けて叫ぶと、その淡い緋色の髪を戦慄かせ、踏みしめた門柱に亀裂を入れる
全力で超訳した黒ウサギはまるで弾丸のように飛び去り、あっという間に三人の視界から消えていった
「……。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
彼女が巻き起こした風から髪の毛をかばう用に抑えていた飛鳥がそう呟く
「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」
「そう」
つぶやきに答えたジンに、飛鳥は空返事をする
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、お言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がして下さるのかしら?」
心配そうにしているジンに向き直った飛鳥が、そう行動を促した
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩者ですがよろしくお願いします。お二人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
少し慌てたように始めるも、その後は礼儀正しくジンが自己紹介する
飛鳥と耀はそれに倣って一礼した
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね、軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
そう言いながら飛鳥はジンの手をとると、 胸を躍らせるような笑顔で箱庭の外門をくぐった
やっとこさ一巻の第二章に入りました
オリ主の性格まとめ作っとかないと性格迷子になりそうです…
プロフィール一覧でも作るべきですかね…