問題児たちが異世界から来るそうですよ?-愚者も一緒に来るそうです-   作:歌穏

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第四話

黒ウサギにばれずに抜け出した彼らは、遠くに空の果てを望む大河の水辺で佇んでいた

広がる水を目の前に、面白そうに、けれど嬉しそうな表情で遠くを見るロイルは声を上げた

「世界の果てとはあのように大滝があるものなのですか……相当離れているこの位置で音が聞こえるだなんて、大きいんでしょうねー、ホント」

「オマエ、真面目そうな顔を裏切る性格してるな。ロイルだったか?」

「イールで構いませんよ、逆廻殿。私も一応一端の貴族でしたからね、真面目に民のことを考えたりしていましたとも」

「考えてる奴がすべてを捨てて箱庭に来るか?」

「ははっ、ごもっともですね、痛いところを突かれてしまいました」

愉快そうに十六夜にそういったロイルだったが、返された言葉には困ったように笑った

そんな彼らは、不意に水面に視線をやる

水底に浮かぶは、大きな影

「おでましか?」

「そのようで……お楽しみはお譲りしますよ、私は果てを見に来ただけですからね」

「ヤハハ、そりゃあありがたいな。せいぜい濡れないように避難しててくれよ、イール」

「これ以上は濡れたくありませんからね、お言葉に甘えて」

大きく跳躍して水辺から離れた岩の上に移動し、腰を下ろしたイール

それと時を同じくして、大蛇が姿を表した

『世界の果ての我が地へよう来たな、小僧。そなたが望むは力か、勇気か、知恵か?好きな試練を選ばせてやろう』

「選ばせてやろうとはまた随分と偉そうだな。なら、テメェが俺を試せるか試してやる。来いよ、蛇野郎」

『いい気になるなよ小僧、我へのその行き過ぎた言葉を後悔するが良い!』

「ハ、テメェがな!」

そうして、力の応酬が始まった

 

大蛇がつくりだした水塊や風で巻き上げられた水柱は十六夜めがけてその力を降るそうとする

移動しながらそれらを交わし、そのたびに水塊は水面にあたれば水柱を立て、風で巻き上げられた水柱は木々をなぎ倒す

隙を見て大蛇に拳を、蹴りを、食らわせようと十六夜は動きまわり、それを面白そうに視線で追いかけるロイル

「下手なFoolよりも面白いですねぇ、肥えた貴族の目の前でやったら巻き込んでくれそうなものです」

ちょっと物騒なことを呟いたロイルは、ちらりと森の奥へ視線をやった

森の奥から弾丸のような勢いで水辺に現れたウサギの髪が、先ほど見た青ではなく淡い緋色に変わっているのに気が付き、お?と小さく声をあげた

「このあたりのはず……」

きょろり、と周辺を見回そうとした彼女に話しかけたのは、大蛇を水の中に送り返した十六夜だった

「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」

黒ウサギの横から、彼女にとっては忌々しい問題児の声が聞こえた

彼女がそちらに向くと、十六夜の向こう側には小さく手を振るロイルの姿も見えた

黒ウサギの胸中に湧き上がるのは安堵ではなく、散々振り回された怒髪天を衝くような怒りだった

「もう、一体どこまで来ているんですか、お二人とも!?」

「“世界の果て”まできているんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ」

十六夜の小憎たらしい笑顔も健在で、ウサギの心配は無用の産物だとでも言うように、どこにも傷はない

強いて言う違いならば、落下した時よりもびしょ濡れぐらいだ

「…よっと、黒ウサギの足は相当優秀なようで」

「だな、遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかったぜ」

「む、当然です。黒ウサギは“箱庭の貴族”と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」

十六夜と、その側に移動してきたロイルの言葉にそこまで言い返した黒ウサギは首を傾げた

「(黒ウサギが……半刻以上もの間、追いつけなかった……?)」

“ウサギ”とは箱庭の世界の創始者の眷属である

駆ける姿は疾風より速く、その力は生半可な修羅神仏では手が出せないほどだ

その黒ウサギに気づかれることなく姿を消したこと、追いつけなかったこと、それらを思い返せば彼らは人間とは思えない身体能力をしていた

そんなことに気がついた黒ウサギは、それでも気を取り直して話しかける

「ま、まあ、それはともかく!十六夜さんとロイルさんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」

「水神?――あぁ、()()のことか?」

「まだ途中で水に沈めといただけですから、そろそろ来るんじゃないですか?」

え?と黒ウサギが二人の言葉に硬直する

十六夜が指さしたのは水面にうっすらと浮かぶ白くて長いモノ

黒ウサギがそれが何かを理解する前に、巨体が鎌首を起こした

『まだ……まだ試練は終わっていないぞ、小僧ォォォ!!』

十六夜が指さしたそれは、身の丈が三十尺(9.09m)強はある巨躯の大蛇

ここでそれが何者かを問う必要などなく、明らかにこの一体を仕切っている水神の眷属であった

「蛇神………!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん、ロイルさん!?」

ケラケラと笑う十六夜が事の顛末を話し始める

「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()のさ」

「見て分かる通り、結果はコレなんですけどね」

『貴様ら……付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』

十六夜とロイルの言葉に、蛇神の甲高い方向が響き、牙と瞳を光らせる

それに呼応するように、巻き上がる風が水柱をたちあげて立ち上った

黒ウサギが周囲を確認すれば、戦いの傷跡と見て取れる木々が散乱していた

ねじ切られた木を見れば、その水流の威力はありありとわかる

そんなに水流巻き込まれたが最後、人間の胴体など容赦なく千切れ飛ぶのは、想像に難しくない

「十六夜さん、ロイルさん、下がって!」

黒ウサギは二人をかばうべく前にたとうとするが、十六夜の鋭い視線はそれを阻んだ

「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が()()()、奴が()()()喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」

発起の殺気が籠った声音を黒ウサギに向けた十六夜

黒ウサギも始まってしまったゲームに手出しできないと気づいて歯噛みする

「なぜだかいつの間にか私も対象になってるんですが、身に降り注ぐ火の粉…この場合水滴ですか?それは払っても構わないでしょう?」

ロイルは肩を竦めると、十六夜にそう聞いた

ちらりとロイルを見て、大蛇に視線を戻した十六夜は、仕方ないなと言わんばかりに一つ頷く

十六夜の言葉に、蛇神は息を荒くして応えた

『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様らの勝利を認めてやる』

「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない、()()()()()()()()()()()

求めるまでもなく、勝者は既に決まっている

その傲慢極まりないセリフに、黒ウサギも蛇神も呆れて閉口した

十六夜のセリフに楽しそうに笑ったのはロイルだけだ

『フン――その戯言が、貴様の最期だ!』

蛇神の雄叫びに応えて嵐のように川の水が巻き上がる

竜巻のように渦を巻いた水柱は、蛇神の丈よりもはるかに高く舞い上がり、何百トンもの水を吸い上げる

立ち上がる水柱は計四本、それぞれがいきもののように唸り、蛇のように二人めがけて襲いかかる

この力こそが、時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す、“神格”のギフトを持つものの力だった

「十六夜さん、ロイルさん!」

黒ウサギが二人の名前を叫ぶが、もう遅い

水柱は川辺を抉り、木々をねじ切り、十六夜とロイルの身体を激流に呑み込む

「――ハッ――しゃらくせえ!!」

「煩わしいです」

突如発生した、嵐を超える暴力の渦と、川の増水

十六夜は渦巻く激流の中、ただ腕の一振りで嵐をなぎ払い、ロイルの回りに渦巻いていた水は、一言でその姿を跡形もなく()()()いた

「嘘!?」

『馬鹿な!?』

驚愕する2つの声

それはもはや、人智を遥かに超越した力であった

蛇神は全霊の一撃を弾かれ放心するが、十六夜はそれを見逃さず、獰猛な割とともに着地し、大地を踏み砕くような爆音を鳴らす

「ま、なかなかだったぜ、オマエ」

そう言って、胸元に飛び込んだ十六夜の蹴りは、蛇神の胴体を打ち、蛇神の巨躯が空中高く打ち上げられて川に落下した

衝撃で川が氾濫し、水で森が浸水する

ロイルは黒ウサギは横抱きすると、近くの大樹の枝に跳び、水に濡れるのを回避する

川にに着水し、全身を濡らした十六夜は罰が悪そうに川辺に戻る

「くそ、今日はよく濡れる日だ、イールはちゃっかり避難してるしよ……。クリーニング代ぐらいは出るんだよな黒ウサギ」

冗談めかした十六夜の声は黒ウサギに届かない

ロイルの腕の中で、彼女の頭の中はパニックでもうそれどころではなかった

「(十六夜さん(にんげん)が……神格を倒した!?それもただの腕力で!?そんな、そんなデタラメが――)」

思考にふけっている黒ウサギを抱えたまま大樹から降りたロイルは、地面に黒ウサギを立たせた

それにも気が付かず、黒ウサギは思考の中で思い出す、彼らを召喚するギフトを与えた“主催者”の言葉を

―「彼らは間違いなく――人類最高クラスのギフト保持者よ、黒ウサギ」

黒ウサギは、その言葉をリップサービスか何かだと思っていたのだ

信用できる相手だったが、ジンにそう伝えた黒ウサギ自身も“主催者”の言葉を眉唾に思っていた

「(信じられない……だけど、本当に最高クラスのギフトを保持しているのなら……!私たちのコミュニティ再建も、本当に夢じゃないかもしれない!)」

そんなことを考えていた黒ウサギは、内心の興奮を抑えきれず、鼓動が早くなるのを感じ取っていた

黒ウサギをじっと見ていた十六夜とロイルは、ちらりと視線を合わせ、ロイルは肩をすくめた

「おい、どうした、黒ウサギ。ぼーっとしてると胸とか脚とか揉むぞ?」

「え、きゃあ!」

思考にふけっていた黒ウサギの背後に回り込んだ十六夜は、黒ウサギの腋下から豊満な胸に、ミニスカートとガーターの愛だから脚の内股に絡むように手を伸ばしていた

ロイルは知らないとばかりに黒ウサギと十六夜のやり取りには背を向けている

「な、ば、おば、貴方はお馬鹿です!?二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるつもりですか!?ロイルさんもそっぽ向いてないで止めてください!」

「二百年守った貞操?うわ、超傷つけたい」

「私に逆廻殿を止めるだけの力はありません、申し訳ありませんね、黒ウサギ殿」

「十六夜さん、お馬鹿!?いいえ、お馬鹿!!ロイルさんはあやまってるように聞こえません!」

黒ウサギは十六夜へは疑問形から確定形に言い直して罵り、ロイルへはぷんすかと擬音をつけられそうな調子で怒る

ウサギという種は総じて容姿端麗・天真爛漫・強靭不屈で献身的という何処かの誰かの愛玩趣味を詰め込んだような種族である

故にこれまで彼女を狙ってきた賊の数は星の数ほどいた

が、しかし、身が擦り合うほどの距離まで反応できなかった相手は居なかったし、ましてや腋の下から胸に触れる寸前まで許してしまうようなお馬鹿、もとい変態は居なかった

「ま、今はいいや。後々の楽しみにとっとこう」

「私は中立の立場に居ますから巻き込まないでくださいね、逆廻殿、黒ウサギ殿」

「さ、左様デスか」

ヤハハと笑う期待の新星は黒ウサギの天敵かもしれないと、黒ウサギは一瞬だけ遠い目をした

「強制するつもりはないが、ノリ悪いぜイール、男なら黒ウサギ(これ)は魅力的だろ?」

「ウサギ弄りは良いですが、セクハラはさすがにちょっと遠慮させてください、私の善良な心が痛まないこともないので」

「じゃあ、弄るときは全力で参加しろよ?」

「はい、喜んで」

「そこで喜ばないでくださいませ!というかどうしてそうなるんですか!!」

もしかしたら黒ウサギの敵は十六夜だけではないかもしれないと、二人の会話に突っ込みながら、黒ウサギは自分のモノローグに付け足しを入れるのだった




ご無沙汰しております。約一ヶ月弱でしょうか…
バイトと宿題というか課題に追われ課題など消えてなくなってしまえと思いながら現実逃避のようにゲームをする日々でございます
一応課題は終わらせますがギリギリです
我がPS3様は画面をPCのデスクトップにつないでいるので一度繋ぐとしばらくゲームしかしないため、PCがご無沙汰だったのはそのせいもあるんですけれども…

ロイルの性格は基本面白いことには全力ですが、お坊ちゃまですので節度があります
が、正直他の貴族は腐敗しくさって嫌いだったのでそちらには容赦がありませんし、それに似た箱庭の住人にも容赦が無いと思われます
まあ、自分の世界に居た際のロイルは、兄が居たために民のために領地を治めるのではなく、他の貴族の道楽でお金をもらってそれを領地に還元してましたから、猫を10枚位かぶっていたことでしょう
既に剥がれかけてますが、ええ

お気に入り登録や評価、ありがとうございます
次回の更新もいつだかわかりませんが、気長に待っていただければと思います
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