問題児たちが異世界から来るそうですよ?-愚者も一緒に来るそうです- 作:歌穏
気を取り直して、とばかりに黒ウサギは川に沈んだ巨体を指さす
「と、ところで十六夜さん、その蛇神様はどうされます?というか、生きてます?」
「命まで取ってねえよ」
「あれ、そうなんですか」
「イール、オマエ俺のことをなんだと思ってるんだ。…戦うのは楽しかったけど、殺すのは別段面白くもないしな。まあ、“世界の果て”にある滝を拝んだら箱庭に戻るさ」
「用法用量を守って正しく手綱を握らないと暴走する危険人物ってところですかね。……もともと、“世界の果て”にある滝を拝むことが目的ですからね、私も目的を達したら戻りますよ」
十六夜の返答を横で聞いていたロイル、思わずと言った様につぶやいた
十六夜は少しだけ不服そうに言い返してから、そのまま続きを黒ウサギに言う
目線だけでどうするのかと問いかけてきた黒ウサギに、ロイルはくすくすとからかうように十六夜への返答に続けて答えた
二人の言葉に、そうですか、と呟いた黒ウサギは、なら、と言葉を続ける
「ギフトだけでも頂いておきましょう。ゲームの内容はどうあれ、十六夜さん…と、イールさんは勝者です。蛇神様も文句はないでしょうから」
「あん?」
「私は正確に言うなれば勝者ではない気がしますがね。内容はどうあれ、というのは意味がわかりかねますが…ゲームに勝てば新たなギフトをも手に入れる事ができる、という最初の貴方の説明の通り、ということですか」
黒ウサギの言葉に、十六夜は怪訝な顔で彼女を見つめ、ロイルはふむ、と考える仕草をしつつ十六夜と同じように彼女を見る
そんな二人の表情と言葉に、黒ウサギは思い出したように補足を話し始めた
「神仏とギフトゲームを競い合うときは基本的に3つの中から選ぶんですよ。最もポピュラーなのが“力”と“知恵”と“勇気”ですね。力比べのゲームをする際は相応の相手が用意されるものなんですけど……十六夜さんたちはご本人を倒されましたから。きっと凄いものをいただけると思いますよー。これで黒ウサギたちのコミュニティも今より力をつけることができます♪」
そう言ってから黒ウサギはウキウキと足取り軽く、大蛇に近寄る
だが、その前に立ちふさがったのは不機嫌な顔をした十六夜だった
無言で黒ウサギを見つめる十六夜に、黒ウサギはたじろぐ
「な、なんですか、十六夜さん。怖い顔をされていますが、黒ウサギは何か気に触るようなことをしてしまいましたか?」
「……別にィ。オマエの言うことは正しいぜ、黒ウサギ。勝者が敗者から得るのはギフトゲームとしては間違い無くまっとうなんだろうよ。だからこそ、そこに不服はねえ」
そこまで言って、十六夜は一度言葉を切る
しかし、ふっと十六夜の軽薄な声と、表情は完全に消え、それに応じて黒ウサギの表情は硬くなる
「けどな、黒ウサギ。……オマエ、なにか決定的なことをずっと隠しているよな?」
一息の沈黙を経てから、黒ウサギはわけがわからないとばかりに口を開く
「何のことです?箱庭の話しならお答えすると約束しましたし、ゲームのことも「違うな」」
答えの途中で、十六夜は言葉を遮る
動揺を表に出さないよう努める黒ウサギは、ちらりとロイルの様子を伺う
口元は弧を描き、表情こそ薄く笑みを浮かべている状態ではあるが、その目は黒ウサギの出方を待つようにただ
「俺が聞いているのはオマエ達の事――いや、核心的な聞き方をするぜ。黒ウサギたちは
つ、と嫌な汗が黒ウサギの頬を伝う
表情こそ、動揺の色は浮かべていないが、彼女の内心は大きく動揺していた
なぜなら、十六夜の問いかけは、意図的に黒ウサギが隠していたことそのものだったからだ
「それは……それは、いったとおりです。十六夜さんたちにオモシロオカシク過ごしてもらおうと
「あぁ、そうだな。俺も初めは純粋な好意か、もしくは与り知らない誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。なんたって俺は大絶賛“暇”の大安売りをいていたわけだし、他の三人も異論が上がらなかったってことは、箱庭に来るだけの理由があったんだろうよ。だからオマエの事情なんて特に気にかからなかったんだが――なんだかな。俺には、黒ウサギが必死に見える。オマエはどうだ、イール」
「ま、概ね逆廻殿と同様とさせていただきましょう」
「考えるのが面倒くさいのかよ、都合のいい所だけ同意しやがって」
「嫌ですね、概ね一緒ですよ、本当に。ただ……まあ、彼女と私は似ているようで異なるかもしれないと思ったくらいで、ね。庇護するべきものが多いと、自分が頑張らねばならぬと無理をしがちですからね、黒ウサギを従える誰かが、黒ウサギを楽にするために呼んだのではないかと思ったんですけれども……」
彼らの会話を聞きながら、黒ウサギは動揺を隠せずに居た
瞳は揺らぎ、虚を衝かれたように二人を見る
「さて、答え合わせと行きましょうか、逆廻殿」
「そうだな。これは俺の勘だが、黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくはわけあって衰退しているチームか何かじゃねえのか?だから俺達は組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今の行動や、俺がコミュニティに入るのを拒否した時に本気で怒ったことも合点が行く―――どうだ?百点満点だろ?」
「黒ウサギは、そのコミュニティの一番強い人物、あるいはそれに準ずる位置に居ますよね。容姿で同意を得られる可能性が高い利点がありますが、もし私達が即戦力となりうる力を使って反抗しようとしても、自分で自分を守れるように案内役となった、とは考えられないでしょうかね」
もし他の…例えばそう、敵対する所に行きたいとでも言ったら、最初から殺されてしまったかもしれませんねぇ、怖い怖い、と笑うロイル
十六夜の言葉に、黒ウサギは内心で痛烈に舌打ちした
未だコミュニティに入ると確言がとれていない現時点で、
黒ウサギたちが苦労の末に呼び出した挑戦力、手放すようなことは絶対に避けたかった
なおも十六夜は話す
「んで、この事実を隠していたってことは、だ。俺達にはまだ他のコミュニティを選ぶ権利があると判断できるんだが、そのへんどうよ?」
「………」
「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ。この状況で黙りこんでても状況は悪化するだけだぞ。それとも他のコミュニティにいってもいいのか?」
「や、だ、だめです!いえ、待ってください!」
「だから待ってるだろ。ほら、いいから包み隠さず話せ」
十六夜は近くにあった手頃な岩に腰掛け、話を聞く体制を作る
ロイルもそれに倣って十六夜の側にあった別の岩に腰を下ろした
「往生際が悪いですよ、黒ウサギ。貴方が渋れば大魚は逃げますが、渋らなければ可能性はゼロではないのですからね」
「人事のようにいってるがな、オマエは案外面白いから嫌でも着いて来てもらうぜ、イール」
「おや、ナンパされてしまいましたね」
「ちょ、ちょ、ちょーっとまってください十六夜さん!たとえ、たとえです、もしもの話です!十六夜さんが私たちに協力してくれないとしても、そこにイールさんを連れて行く権利など無いはずですよ!」
「固いこと言うなよ黒ウサギ」
「固いとか固くないとかそういう問題ではありませんっ!」
本物の毛皮を持つ動物ならば毛を逆立てんとばかりにきしゃー!っと十六夜に物申した黒ウサギは、ハッと我に帰ってわざとらしくコホン、と咳払いをした
「は、話を戻しますよ?」
「おう、やっと話す気になったか?まあ、話さないなら話さないで、俺はさっさと他のコミュニティに行くだけだ、イールと一緒にな」
「…話せば、協力していただけますか?」
「ああ、
ケラケラと笑いながらも、変わらず目だけが笑っていない十六夜に、黒ウサギは気がつく
彼が、ただ黒ウサギの話を聞き、を受け入れるのではなく、
「……わかりました。それではこの黒ウサギもお腹をくくって、精々オモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせていただこうじゃないですか」
観念したように、黒ウサギは説明を始めた
「まず、私達のコミュニティには名乗るべき“名”がありません。よって呼ばれるときは名前の無いその他大勢、“ノーネーム”という蔑称で称されます」
「へぇ……その他大勢扱いかよ。それで?」
「次に、私達にはコミュニティの誇りである旗印もありません。この旗印というのは、コミュニティのテリトリーを示す大事な役割もになっています」
「なるほど、身分証明が無いってことですかねぇ…。それで?」
「“名”と“旗印”に続いてトドメに、中核を成す仲間達は一人も残っていません。もっとぶっちゃけてしまえば、ゲームに参加出来るだけのギフトを持っているのは123人中、黒ウサギとジン坊ちゃんだけで、あとは十歳以下の子どもばかりなのですヨ!」
「そりゃもう崖っぷちだな!」
「見事という他ありませんね」
「ホントですねー♪」
十六夜とロイルの冷静な言葉にうふふと笑うウサギは、ガクリと膝をついてうなだれる
言葉に出して自分がダメージを受ける、そんな状態だと見て取れた
「で?」
「はい?」
「どうしてそうなったのか、理由があるでしょう?子どもばかりのコミュニティなんて、考えれば余程の理由が…それこそ託児所を行なっているとか、そんな理由がない限りは出来ないでしょう」
黒ウサギはロイルの言葉に、沈鬱そうにえぇ、と小さく肯定した
「彼らの親も、全て奪われたのです。箱庭を襲う最大の天災――“魔王”によって」
だいぶ間があきました
最近とってもあつくなりましたが、熱中症などに気をつけて皆様お過ごしください
テストだいやだー!と言いながら夏を迎えましたが、世間様はお盆休みまであと1ヶ月くらいありますね
しかし…もう少し涼しくならないものでしょうか…暑さ寒さも彼岸までと言いますが、お盆が過ぎても暑いですよね、残暑厳しいです