GGO-魔剣士と女神.side story- 作:ソル@社畜やってます
わりと本気で仕事のことばっか考えてたから全っ然話作れて無いし…俺ってば、すっかり社畜だなぁ(遠い目)
グロッケンの端に存在するほとんど目立つことのないNPCが経営する小さなバー。
その目立ちにくさと店の小ささからは想像もできないようなレベルの高い料理とドリンクに、一部のプレイヤーはその店を密会等に使用している。
日本版GGOでは唯一と言っても過言ではない近距離戦闘特化のプレイヤーであるリクはアジトでシノンとイチャイチャしていたところを、その店来るように急遽呼び出しを喰らってやむなく、嫌々、渋々、仕方なく現状使用できる最強の武装を二つ持って向かっていた。
リク自身も隠す気は毛頭ないらしく、イチャイチャタイムを邪魔されたことから溢れでるイライラによって形成された表情は、道中のプレイヤーがほぼ全員率先して道を譲ったり、或いは近づく前に離れたりしている。身長は低めなものの、黒に赤のメッシュが入った髪と真紅の瞳。GGOに似合わない白色のドクロのレリーフが入った巨大な実体剣。黒いマントと赤いマフラーという出で立ちは、どれをとっても威圧感がタップリとある。
十数分後、店にたどり着いたリクは未だおさまらないイライラでドアを乱暴にも鉄板入りのブーツで力強く蹴り開け、呼び出した張本人たちを発見すると大きな足音を立てながら店内を進んで行き、テーブルの上にドカッと組んだ足を乗せ椅子に腰かけてると睨みつけながら言った。
「一体何の用だ?ゼクシード、ダイン、銀狼、ベヒーモス、闇風」
自身らよりも明らかに年下であろうはずのリクの睨みを利かせながらの言葉に、呼び出した張本人である銀狼は内心で盛大にビビリながら言葉を返した。
「いやー急にごめんねリクっち。ちょっと頼みたいことがあってさ」
「ふーん…で、なんだ?」
「お前なら当然知ってるだろうけど、次のイベント関連でな」
「ああ、プールか」
GGOの公式ホームページで発表された次のイベントは、誰一人として想像だにしていなかったプール開きイベントである。鉛と硝煙が辺り一面に立ち込め、安全圏である街から一歩外に出れば常に危険に晒されるような世界のGGOにおいては非常に珍しい対戦要素が微塵も無い、ただひたすらにのんびり遊ぶだけのプール開きイベントには流石のベテランプレイヤーらも驚きを隠せなかった。
「で、プール開きがどうしたんだよ」
「頼みというのは他でもない…」
リクの向かいに座っているゼクシード、銀狼、ダイン、ベヒーモスの四人は躊躇することなく頭を下げながら声を揃えて言った。
「「「「シノンの水着が見たいからプールイベントに連れてきてください!」」」」
その言葉が終わった瞬間にリクの左手にビームマグナムが、右手には計15基のビームサーベルが展開されたムラマサブラスターが握られた。
「そうかそうか、なるほど貴様らここで死にたいらしいな」
満面の笑みで威圧感をたっぷり含めながら軽々と言い放つその姿に呼び出したメンバーだけでなく、同じタイミングで店内にいた他のプレイヤーらも圧倒的な恐怖を抱いた。唯一この中でリクに慣れている闇風は、リクをなだめるように声をかけた。
「やめろ、リク。せめて話くらいは聞いてやれ」
「…チッ」
「まったく、なぜお前は氷の狙撃手のことになるとそうなんだ…」
やむなく、嫌々、仕方なくと言いたげに武器自体は手に持ったまま下ろして、リクはひとまず話だけは聞いてやると言いたげに眼前の四人を再び睨んだ。
さながら蛇に睨まれた蛙のごとし、内心に隠しきれないビビリっぷりを表情に出しながら四人は必死に弁明を始める。
「別に変な意味があるわけじゃなくてだな!ただ暑苦しい野郎だけのメンツでプールとか華もないし楽しくもなんともないだろ?!」
「でもGGOやってる女性プレイヤーって他のVRMMOと違って貴重な存在だからどうにか人脈使って頼むくらいしか方法が無いんだよ!」
「実は銃士X(マケスティアイクス)にも声かけたんだが…断られてしまってな」
「だから頼む!少しの時間だけでもいいからシノンをプールに連れてきてくれ!」
ゴツン、と痛そうな音を立ててテーブルに額をつけて頭を下げる四人はそのままの姿勢でいたが、それから数分経っても物音一つしないことに違和感を感じて頭を上げると、反対側に座っていたはずのリクが忽然と姿を消していた。
「ちょ!あいつどこ行った!?」
「あいつならとっくに出て行ったぞ」
「なんだって!?」
「音しなかっただろ!」
「あいつのプレイスキルの高さを舐めないほうがいいぞ。建物があるフィールドで開幕30秒で暗殺とか日常茶飯事だからな」
「例のワイヤーで高速空間移動か…って、これ絶対シノン来ないじゃないかああ!」
「シノっちの水着見たかったのにいいい!」
「(欲望にまみれてるな、こいつら…)」
-リクとシノンのアジト-
「ただいm」
「やあ、おかえり少年」
アジトに帰ってきたリクはいつもと変わらずシノンに出迎えられると思っていたところ、部屋にいたのは白い長髪を結わえて戦闘時とは真逆のかなりだらりとした格好の、シノンと同じ数少ない女性プレイヤーの一人である銃士Xがカクテルグラスを片手にベッドの縁に座っていた。
「…なんでいるんですか銃士さん?」
「暇だったからお邪魔してシノンと色々話していたところさ」
「暇だったなら仕方ないですね。で、シノンは?」
「ちょっと追加の酒を買いに行ってもらっているよ。何か飲むかい?」
「じゃあカルーアミルクください」
「本当に少年は甘いものが好きだね」
「…というか、その少年って呼び方止めてくれません?」
「うっかり学生で私より年下なのをバラした方が悪いだろう?ほら、カルーアミルクだ」
「むぅ…とりあえずいただきます」
カクテルに詳しく無いような人からすれば、パッと見はただのカフェオレかコーヒー牛乳にしか見えないそれをリクは少しだけ顔をしかめながら飲む。あくまでもVRMMOでの飲酒は現実の肉体に影響が無いため、未成年であるリクやシノンもGGOでは普通に飲んでいる。
グラスの中の液体を一気に飲み干したリクは、いい年したサラリーマンが居酒屋でジョッキのビールを一気飲みした時のような仕草をとる。
「あ″~カクテルうめぇ~」
「相変わらず未成年の言葉とは思えないね」
「こんな美味いものを未成年でも飲めるように設定したVRMMO界が悪いわけであって、俺は何も悪く無いです」
「そうだな。かく言う私も手軽に色々な酒の味が楽しめるのは嬉しく思うよ」
その後も互いに酒を飲み交わしながら会話を続けていると、入り口のドアが開き複数の瓶が入った袋を片腕に抱えたシノンが入ってきた。
「リク、呼び出されたのにもう帰ってたの?」
「ああ。あまりにもくだらない話だったんでさっさと切り上げてきた」
「そういえば私もまだ詳しい話を聞いていなかったな。聞かせてくれるかい、少年?」
「そんなに聞くほどじゃないですけど…まあ、あいつらが俺を呼び出した理由っていうのが…」
酒入りグラスを片手にあまりにもくだらない理由で呼ばれたことをリクが全て話し終えると、聞いていたシノンは大いに呆れ銃士Xは苦笑いの表情を浮かべた。
「はぁ…あいつら最っ低ね」
「いやはやまったく。かばう余地すら見当たらないほどに清々しく、そして本当に最低だね。まさか私だけじゃ飽き足らずにシノンにまで手を伸ばすとは」
「街中じゃなかったら核弾頭でもぶっ放してやりたいところでしたよ」
「リク、核弾頭なんか持ってたの?」
「いや、言葉の綾だよ。さすがに俺も核弾頭なんかは持ってない」
何杯目なのかもわからなくなるほどに酒を飲み続けながら話を続けていると、何かを思いついたかのように銃士Xが唐突に深く腰かけていたソファから体を起こした。
「そうだ。せっかくのイベントを無視するのもなんだから私たちだけで行かないか?」
「行くって、プールにですか?私はリクが行くなら…」
「俺は構わないですけど、銃士さんはいいんですか?主に俺がいても」
「なあに。少年はシノンに、シノンは少年にお互いゾッコンだから心配いらないだろう」
「俺達のことよくわかってるじゃないですか」
「それじゃあ日程はまた私から連絡するよ。あの最低なメンツとは重ならないようにしないといけないからね」
そう言うと銃士は部屋を後にして…というわけはなく、再びソファに深く座り込むとリク、シノンと共に最後の一滴が無くなるまで約2時間も飲み交わした。
~数日後、イベント専用屋内プール~
「(GGOなのにこの景色…違和感がすごいな)」
黒地にワンポイントでドクロのマークが入ったトランクスタイプの水着を着て大型の水鉄砲を持ったリクは、シノンと銃士Xより一足先に屋内プールへと足を踏み入れ、そして大いに驚いた。所詮は屋内プールだろうと考えていたが、現実にあるような大して飾り気の無い屋内プールとは違ってGGOのイベント用屋内プールは南国をイメージしたヤシの木のオブジェクトに加えて広大なドーム内には長大な流れるプール、高さが選べる飛び込み台、高い波が起こるアトラクションプール、幾重にも枝分かれしているウォータースライダー、周囲に緑が豊富で温泉やジャグジーがあるリラクゼーションスペースまで完備されているという無駄に力が入った内容になっていた。更には、あまりに広すぎるせいで所々には迷わないようにと案内板まで設置されている。
「やあ少年、待たせたね」
背後から声が聞こえてリクが振り返ると、水着に着替えたシノンと銃士Xがそれぞれ巨大なイルカの浮き輪とスナイパーライフル型の水鉄砲を持っていた。
「ど、どうかしら。似合う?」
少し恥ずかしそうにそう言うシノンは、リクのGGOアバターのメインカラーと同じ赤と黒のビキニを着用している。
「うん、似合ってる。可愛いよシノン」
満面の笑みでリクにダイレクトに言われたシノンは照れながらも、それはそれはとても嬉しそうな笑みを口元に浮かべた。もしこれがALOだったならばおそらく尻尾が
ピンと立っていたことであろう。
「さ、それじゃあ各自楽しむとしようか」
銃士Xの言葉で各自はバラけて行動をすることになった。シノンと銃士Xは流れるプールへ、リクはウォータースライダーへと向かった。浮き輪に捕まりながらのんびりと過ごすシノンと銃士Xとは対照的に、リクは久しぶりにウォータースライダーを体験をしたことで何かに火がついたらしく、波の起こるプールで波乗りをしたり、全ての高高さの飛び込み台を体験したりと人一倍楽しみ始めた。
それからしばらくして、一通り楽しんで落ち着いたリクは流れるプールでプカプカ浮かびながら、ただ流れに身を任せてゆったりとした時間を過ごしていた。すると、同じく流れるプールにいたシノンが巨大なイルカの浮き輪に掴まりながらリクに近づいた。
「楽しそうね、リク」
「うん。リアルでこんなプール行こうとしたら時間も手間もかかるし、VRMMOで体験できるのは嬉しいな」
「ジャグジーの方も良かったわよ。銃士さんってばすっかり入り浸ってるんだから」
「あの人そんな疲れてるのか?」
「まあ…色々あるみたいよ?一緒に入った時、愚痴凄かったから」
「…別行動してて正解だったかもな」
「ふふ、そうね」
話をしながらシノンは自然とリクの腕に器用に絡みついて、一緒に流され始める。リクも今ではすっかり慣れた様子で、腕に伝わる感触にも特に慌てたり焦るといったことなく平然としている。
「ねえ、リク」
「ん、なんだシノン?」
「いつかはリアルでも皆とこういうところに行きたいわね」
「そうだな。でも、俺はシノンと二人でも行ってみたいかな」
「!?…もう、そういうところはキリトそっくりなんだから…」
「どうかしたか?」
「いいえ、なんでもないわ。いつかは私達だけで色々なところに行ってみるのもいいわね」
互いに微笑み合うと、再びゆったりとした時間を過ごし始めた。
しかし、この時二人は知る由も無かった。互いの身起こる事件がすぐそこまで迫っていたことに…
本編の話なんですけどね、キャリバー編どうしようかなって思ってるんですよ。
あ、書くのは確定としてリクについてです。強化しようと思ってるんですけど、タイトル通りの紅い騎士にしようか、闇堕ちギリッギリの破壊神にしようか…
作業用BGMに勇者王誕生全ver入れたせいで俺の中の勇者魂が物凄い勢いで燃えてるんですよ。
ついでに魔王化…シノンさんに譲ろうかと思案中w