「ははははは、これが天の雄牛の力か。」イシュタルが吼え踵を返す。
「もう良いのかい。」とタナトス。
「こちらもそれほど暇じゃないんでね。ただあの様子じゃあ、こちらにとばっちりが来るかもしれないね。
こっちの警備に手を貸してくれないかい。なあに2~3日で良いんだ。」
「あれの所為でだいぶ派手に壊れたからこちらの人手は出せそうに無いね。」タナトスは仮面の方を向き言った。
「お願いできないかな。君は今回何もしていないんだから。」
「…分カッタ。タダシソチラノ命令ハ受ケナイ、コチラデ勝手ニヤラセテモラウ。」
「それで構わないよ。勝手に入ってくるやつをやってくれりゃあ良いさ。」
イシュタルと仮面は出て行った。
「ここからが見ものかな。」とタナトスが言った。
フィルヴィスは、レフィーヤと共に氷結した扉をを出てきた。
ついにロキファミリアにも被害が出た。フィルヴィスの目から見ても助からない者たちがいる。
『団長!!!!』と言う怒号が飛び交う中、レフィーヤは立ち止まって振り返り、祈るように扉を見ている。
「レフィーヤ、団長に付いて行け。」
「でも」
「彼は狙われているのを忘れるな。」
「だったらフィルヴィスさんが付いて行ってあげてください。私はここでアイズさん達を待ちます。」
「団長は治療院に行った。それにまだ負傷者は増えるだろう。準幹部のお前が交渉した方がスムーズに進むんじゃないか。
ついでにマインドを回復してもらえ。中には私が行く、どんな状況か確認したら直ぐ治療院に行くから。」
「分かりました、治療院で待っています。アイズさん達の事よろしくお願いしますね。」
2人はお互い走り出した。フィルヴィスは扉を抜けリヴェリアの所まで来た。
簡単にあいさつし走り出そうとした時、リヴェリアに呼び止められた。
「フィルヴィス・シャリア、少し良いだろうか?」
「はい、何でしょうか?」
「ここでお前が見たものを教えてくれないか?フィンがああなった以上、私が代わりを務めなければならんのでな。」
フィルヴィスは己の見たものを語りだした。リヴェリアは、ほぼ黙ってそれを聞く。
ただ赤髪の女がレフィーヤを見逃した事を話した時、「やはりアイズが狙いか。」と言っただけだった。
アイズの風を感じ、ロキファミリアと再合流した所まで話が進んだところでガレス達が帰ってきた。
護衛についてきたアイズを見て、リヴェリアがかすかに首を傾げるのをフィルヴィスは見た。
不思議の思いアイズに近づくと違和感がある。風をまったく感じないのだ。以前に会ったときはたしかに感じたのだが。
「ガレス、ベートはどうした。」
「残りの者を探している。鼻を使ってな。」
「ガレス、お前は大丈夫なのか。」
「わしは丈夫じゃからのう。ただアマゾネスどもは治療院に行く必要が有るじゃろう。ハイポーションは有るか?」
「ベート達が持って行った分はどうした?」
「一本ずつは飲んだが後は、クノッソスに残った者たちのためにそのまま持たせた。」
リヴェリアは近くの団員にポーションセットを持ってくるように命じた。
すぐにポーションセットとガレスの予備の斧を持ってきて言った。
「リヴェリア様、オラリオ中探しましたがハイマジックポーションは後3本しかありませんでした。」
「仕方が無い、あれはほとんど受注生産品だからな。」その3本以外をガレスに渡した。
ガレスは一本を飲み、もう一本をティオネに振りかけた
「アイズ、ティオネを治療院へ運べ。ティオナはお前が運べ。」リヴェリアは近くにいた団員達に命じた。
アイズは少しぎこちなくティオネを担ぎ、出口へ駆けて行った。
「どれ、わしももう一仕事してこようかのう。」と言ってガレスは来た道を引き返す。
リヴェリアは少し考えていたが、やがてフィルヴィスに言った。
「フィルヴィス・シャリア、お前に頼みが有る。アイズをしばらくここに近づけさせないでくれ。」
「ですが彼女は、私の命令を聞いてくれるでしょうか?」
「私の名前を出せ。そうすれば少しは言う事を聞くだろう。」
「そんな恐れ多い事は…」
「お前もすでに知っているだろうが、アイズは狙われている。敵がアイズを捕まえてどうしようとしてるかまでは不明だが、
我々にとってロクでも無い事なのは明らかだろう。それにお前も気づいたみたいだがアイズの調子は万全とは言い難い。
敵地での戦闘は避けるべきだ。それに我々は今撤退中だ、一刻一秒が惜しい。ここでのさらなる戦闘は極力避けたい。」
フィルヴィスは、暗い表情で頷いた。アイズを説得する自信が無い為だ。
「お前は先ほど私の名前を使う事を躊躇したな。だが考えてほしい、何が重要なのかを。
真に必要ならあらゆる物を使え。すべての手を尽くせ。そうすれば何とかなるものだ。」
フィルヴィスは、相変わらず暗いままだ。
「フィルヴィス・シャリア、我々は天上の神では無い、出来ることは限られているのだ。
自身で手を尽くし、それでも駄目ならそれはお前の手に負えない事なんだ。
その場合は諦めるしかない。いやむしろそれは諦めて、リカバリーする事を考えろ。
それが諦めざるを得なかったモノに対しても必要なことなんだ。」
フィルヴィスは、決意を込めた目をして一礼した。
「御忠告ありがとう御座います。」と言って走り出そうとする。
「最後に付け加えさせてくれ。レフィーヤから過去の事の概要は聞いている。
お前の過去の出来事も、今のお前には手に負えない、如何する事も出来ない事ではないのか。」
「重ね重ね、ありがとう御座います。」フィルヴィスは出口へ向けて走りだした。
治療院に着くとレフィーヤが出迎えてくれた。
レフィーヤは、おなかを抑え若干気分が悪そうだった。
アイズとアミットを交えへ話し合いをする。
「レフィーヤ、気分が悪そうだが大丈夫か?」とフィルヴィス。
「マジックポーションの飲み過ぎです。」あきれたようにアミットが言った。
「大丈夫、マインドは3割ぐらい回復しました。…うぇっぷ。」とレフィーヤ。
「…フィンさんは一命を取り留めました。ティオネさんは重体、ティオナさんは重傷です。
アイズさんは軽傷ですね。ですが何人かは残念ながら間に合いませんでした。」とアミット。
「待ってくれ、アイズ・ヴァレンシュタイン、あなたから風を感じない。何か問題が有るんじゃないのか?」とフィルヴィス。
「それはこちらでも確認していますが原因は不明です。経過を観察するしか有りませんね。」とアミット。
「アイズさんホントに大丈夫なんですか?もしかして風の魔法を使い過ぎたからでしょうか。」とレフィーヤ。
「魔法はしばらく使わない方が良いでしょう。後は握力の低下も気になりますね。」とアミット。
「だけどすぐに戻って皆を手伝わないと。」とアイズ。
「あなたも狙われている、体調が万全でないなら行くべきではない。」とフィルヴィス。
「でも狙われているのならここでも同じ、私はみんなを助けたい。」とアイズ。
「あそこは敵地だ、どんな仕掛けが有るか分からない。あそこで戦闘になったら撤退作業が困難になる。
これはリヴェリア様も同じ意見だ。」
「そうですよアイズさん、ここに居ましょうよ。」とレフィーヤ。
「でも…」
「何か探索系のスキルでも持っているのか?無いのなら役に立つとは思わないぞ。握力が低下しているなら尚更だ。」とフィルヴィス。
「でも…」
フィルヴィスは考える、リヴェリア様、クノッソスでの体験、不意にあの下品な女言葉が浮かぶ。
「ロキ」他の皆は怪訝な表情になる。
「神ロキの警護はどうなっている。」
「クノッソスにはもう居ませんでしたから、館に籠っていると思いますけど。」とレフィーヤ。
「あの下品な女の言葉を思い出せ。フィンが何をしたと言った。神を送還しステータスを封印されたと…」
「「あっ」」
「神ロキならフィンさんと一緒にこちらに来ておられますよ。」
「話は聞かせてもろぅたで、アイズたんはウチを密着警護な。」妙な極めポーズで突船現れるロキ。
それを見てアイズとレフィーヤはげんなりする。
その後、言い争いになり、リヴェリアが来るまで続いた。