オラトリア7.1   作:諸々

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4.歓楽街探索

早朝ゴブニューへ剣を整備に出す(リヴェリアの命令)事になる。今回は2日ほどで済むそうだ。

魔法はまだ回復していないようだ、そよ風が吹くぐらいにしかならない。まるで魔法が寝ているようだ。

葬儀が終わり、泣けない事でさらに悲しみが増す事になった。

悲しんでいる団員に歓楽街の事を聞くことはさすがに憚られた。

一刻も早くイシュタルファミリアを調査しなければとの思いを強くして、先ずは変装セットを買いに行く。

だが男性向けとカップル用しかなく、仕方が無くカップル用を購入する。

店員おすすめのかつらは、男用が黒のリーゼント、女用がピンクのふわもこだった。

(変装なので全く違う雰囲気の物が良いと店員に言われた。)

 

商会でクエストを正式に受けたベルは疲労困憊していた。

大半はリリに任せたが、確認する項目が多く頭がオーバーヒートしたらしい。

その後は男女に分かれて準備する事に。ベルはヴェルフと一緒に買い出しに町へ向かった。

ヴェルフはベルを気遣わしげに見ていた。歓楽街から帰ってから息つく暇もなかったろうと思っていた。

クエストに必要そうなものを物色するため町を散策していると、前の洋服屋から特長のある金髪の女性が出てくるのが見えた。

「おいベル、ありゃ剣姫じゃねえか?」

「ほんとだ、アイズさんですね。こんなところで何を。」ベルは気になって仕方が無い様子だ。

ヴェルフは思った。『そういやーこいつは戦争遊戯で世話になったんだっけか。』

「ベル、行ってこい。戦争遊戯で世話になったんだろう、買い物は俺がやっとく。明日朝までに帰りゃいいぜ。」

「えっ」

「良いから行って来い、後の事は任せとけ。」

ベルはアイズの後を追いかけた。人ごみの中でもありなかなか追いつけない。

アイズは大きめのバッグを抱えているのでかろうじて見失わずに済んでいる。

その内に路地裏に入って行くのが見えた。あわてて後に続くも見失ってしまう。

辺りをくまなく探していると、同じように周囲を見回しているアイズさんを見つけ声をかける。

 

アイズは昨日見つけた歓楽街探索ポイントへ向かう。ただ昨日は屋根伝いだった為少し迷う。

少し考え込んでいるといきなり声を掛けられ驚いてしまう。

路地裏で人はいないと思い込んで上ばかり気にしていた為だろうか。

相手はベルだ。あわてて小脇に抱えて屋根に飛び乗る。

屋根に上がったことで場所はすぐに見つかる。

建物の配置はほぼ分かった、後は侵入方法と内部の警備の情報だ。ここから庭を見て推測するしかない。

だがここからでは見える所は限られている、もっと近くに行く必要がある。

だれか詳しい人が居れば良いんだけれど。

 

声をかけた途端、ベルは小脇に抱えられ屋根の上へ。そこは歓楽街が見渡せる場所だった。

アイズさんは真剣な目で歓楽街を観察している。する事もないのでつられて歓楽街を見る。

歓楽街を上から眺めているとなんとなく春姫が居た館を探す、特徴ある建物なのですぐに見つかる。

俯瞰で見れることからまるで地図の様だ。ダンジョンで鍛えられている所為も有り瞬く間に覚えてしまう。

この時ベルは気付かないが、この知識が後の大立ち回りに非常に役に立つことになる。

先日ビクビクしながら逃げ出した経路を目で追っていると、アイズが聞いてきた。

 

騒がれると面倒なので思わず連れて来てしまったが、特に用事が有るわけでもない。

気にせずに歓楽街を観察していると、ベルは懐かしそうに見ている。

視線を追ってみると明らかに内部が解っている動きだ。

ここでレフィーヤの言葉が思い出される。『ベルは歓楽街に詳しい。』(いろいろ省略されている?)

「ベルは歓楽街を知っているの?」と思わず訊ねた。

「…ええ、まあそうですね。」と答えた。

「じゃあこれを着て。」と言って3点セットを渡す。

着替えたベルを、ティオナ達の忠告(着替えた時はまず褒めるべし)に従い褒めたが、何故かベルは涙目だった。

昨日、目をつけておいたバーレト・バビリに隣接していて比較的背の高いイシュタル以外の宿に向かう。

うろつきまわるには少し早い時間だ。まずは近くから観察した方が良いと判断したためだ。

宿に入るとベルが中座することに。店員に言って最上階の部屋に入る。

そこは屋根裏部屋であまり使用されていないらしい。

窓(?)際に寄って隣を観察する。草を編んだ敷物に大きめの布団が一組敷いてある。

その内ベルが入ってきたが、辺りを見わたして部屋の隅で小さくなっている。

 

ベルは熱心に見ていた関係上、知らないとは答えられなかった。

明らかに小さい方のマントを渡され(女用?)、今の髪形とかけ離れたかつら姿を褒められて、泣きたい気分になった。

着替えさせられて訳も判らず歓楽街の中へ。ようやく建物の中へ入ると安心したのかトイレに行きたくなった。

トイレの場所を聞くと外にあるとのこと。あわてて駆け込んで用を足す。

ほっとすると隣からこんな声が聞こえてきた。

「ふう、助かった。でもなんでこんなところにトイレが有るんだい?」

「なんでも隣の宿が壁際に作りたいって言ってきた時、じゃあ許可するからこっちにも作れて言ったらしいぜ。」

「なるほど、なんにせよ助かった。娼館の客用は使えないからな。」

「感謝してるんなら、少し聞きたい事が有るんだが?」

「何だい?答えられることなら答えてやるぜ。」

「開門の合言葉なんだ。昨日いきなり外回りに回されたんだよ。今週は必要無いと思っていたから覚えていないんだ。」

「馬鹿。こんな所でしゃべれる事かよ。事情は同情するが。」

「なあ、何とかならないか?せめてヒントだけでも。」

「…仕方が無いな、今週はあのへっぽこ狐関連だ。」

「なるほどあれ絡みかい、春姫の事だね。…もう少しヒントお願い。」

「しょうがねえなー、じゃあ大ヒントだ。奴の好きな東洋の英雄の名前だ。」

「…あああの小さい奴か。」

「そうだ。もう良いだろう、そろそろ警備に戻るぞ。」

春姫の話題だからか頭に残った。館に戻って案内されて屋根裏部屋へ行く。

中に入って1つの布団と2つの枕にギョッとするがアイズさんは、無理やりあけたであろう穴から外を見ている。

自身の欲目もあるが、一幅の絵の様で見とれてしまう。

その内女の店員(確か女中と言うんだった)が現れた。

布団の中に居ないことにあからさまに不信感を現す、わざとらしく布団の汚れを指摘して引っ込む。

 

ベルが入ってきて暫くすると、女性店員が来て布団を変えると言ってきた。

気にせず隣を見ているとベルがあわてて言ってきた。

「アイズさん不味いですよ。明らかに不審者扱いですよ。」

「何故?」

「布団に一緒に入っていないからです。ここは寝る所です。」とあわててベルが言った。

2つの枕を見て納得するアイズ。

その内、布団を抱えたデカい男の店員を連れて戻ってきた。

お詫びのしるしに飲み物を持ってきたと言った。

ベルが対応に当る。何かを渡すと店員は上機嫌になりベルに挨拶している。

ホントに歓楽街に詳しいんだとあらためて思った。手持無沙汰になったアイズは飲み物に目をつける。

匂いから果汁の様だ、何となくベルに負けた気がして一気にあおる。

とたんに体か熱くなり頭がボーっとしてくる。かろうじて前に言われた『一緒に布団に入らないと』を思い出す。

店員との会話が途切れたのを見計らい、ベルを布団に引っ張り込む。

理性を保っていたのはそこまでで、意識を手放す、代わりに心の中の幼いアイズが目を覚ます。

前から気になっていた白兎ついに捕まえた。優しく頬ずりし、ぎゅっと抱きしめる。そのまま幸せな気分で眠りに入る。

 

さっきの女中さんが大きな男を連れて入ってきた。明らかに不審者扱いだ。

春姫さんとの夜を思い出して対処する。こういった場合は、大目にお金(チップ)を渡して「これでよろしく」と言うだった。

春姫さんに聞いた通りに愛想がよくなり会話が弾む。

春姫さんの話だとそろそろ退出する頃合いで、会話が途切れる。

するといきなりすごい力で布団に引っ張り込まれる。それを見た女中さんは満面の笑みを浮かべ退出する。

酒臭いと思ったとたん頬に柔らかい感触、何をされたか悟って顔を赤くする。

その直後凄まじい力で抱きしめられる。まさにベアーハック、アッいう間もなく意識を刈り取られる。

 

幸せな気持ちでアイズは目を覚ます。ベルの顔がそばにある。オラリオ外壁でのことを思い出しホッコリする。

クノッソスの件以来初めてゆっくり眠り、不思議な充実感が有る。

そうしているとやがてベルが目を覚ます。微睡から醒めあわてた様に布団から飛び出す。

少し名残惜しさを感じたがそのまま話をする。ベルは視線を合わせるのを避けるように外へ向く。

懐かしそうに外を眺めるベルに思わず聞いた。

「ベルはホントにここに詳しいね、どうしてそんなに詳しいの?」

「ここに知り合いがいるんです。何とか助け出してあげたいんですが。その為明日クエストを受けているんです。」

「そう…。」布団の中から返事をする。

「そう言えばアイズさんは、何でこんなことをしてるんですか?」

「あそこにどうしても知りたい事が有る。それでこっそり入る方法を探していた。」

「こっそりもぐりこむですか。塀を乗り越えるとたちまち見つかってしまいますし…」

ベルは考え込むと、突然閃く。あそこから抜け出した道を逆にたどれば良い。

「アイズさん、何とかなるかも知れません。」

「???」

「ダイダロス通りにつながる裏口が有るんです。」

「!!!」

早速向かう。ぎりぎりでまだ開店で忙しい時間の筈だ。

屋根の上から眺めた所為で、ほぼ迷いなく裏道にたどり着く。

「こっちに行くとダイダロス通りに抜けます。」そう言ってベルは裏口の方へ慎重に歩いて行く。

アイズは道を覚えながら一緒に進む。やがて裏門にたどり着く。

だが門は固く閉ざされている。

べルは気付いていなかったが、内側からはそのまま開く(じつは黒の首輪の力)が外からは当然開かない。

ベルは門をいろいろ調べている。

アイズは先達に任せるのが最適とばかり後ろに控えている。

手持無沙汰になったアイズは、さっきの充実感について考えることにした。

今朝より風を感じる、今なら魔法がうまくいく気がした。

今朝はそよが是程度しか出せなかった。これから敵地へ潜入する事になる。

魔法が使えるかどうかは探索大きくかかわる。

捕まるわけにはいかないのはもちろんだが、証拠も残すことは出来ない。

幸いベルはもう少し掛かりそうだ、それならと突入前に確認する事にした。

{目覚めよテンペスト}発動とほぼ同時のタイミングで、ベルが何かを叫んでいた。

想像以上の風が渦巻く中、門が開いて、風が道を見つけて中に入り込んで行く。

ベルが振り返り苦笑しながら中に入っていく。

魔法が発動したことに呆気に捕られたアイズは、その動きに付いて行けない。

あわててベルに続こうとした時、門から何かが飛び出てくる。

ベルだ。とっさに受け止める。だが足が有りえない方向に曲がっている。

「コノ風アリアダナ、大人シク一緒ニ来テモラオウ。」紫の外套のクリーチャーが現れた。

アリアと呼ばれたことで己の失敗を悟る。クノッソスでは仲間を呼び寄せたが、今度は敵を呼び寄せてしまった。

優しくベルを降ろし、クリーチャーと対峙する。本来なら圧倒する事が可能な筈だが今は無理だ。

剣は無く、魔法はどうなっているか分からない。おまけに動けないベルが居る。

敵は動けないベルを上手に使いアイズを追い詰めていく。

「大人シク一緒ニ来イ、ソウスレバソノ小僧ニハ手ヲ出サナイ。」

その言葉にアイズは焦る。決め手がないままじり貧になる。

その時ベルがアイズに囁く。アイズはベルを背負って戦う。

ベルを利用できなくなり勝負は拮抗しだす。だがベルの顔色は悪い、レベル6の動きに振り回されている。

激突、そして互いの距離が開く。その時アイズはベルを放り投げた。

ナイフを握り敵へ驀進する。だが相手は冷静に避ける、ただし後で捕まえる為最小限だ。

{ファイヤボルト}爆炎で軌道が変わリ肩口に突き刺さる。

もつれ合ったため仮面にひびが入っている。

「何の爆発だ!」とバーレド・バビリ内が騒がしくなる。

「次ハ必ズ。」と言って紫の外套は走り去った。

アイズは追いかけようとしたが、動けないベルを見て断念する。

ベルをやさしく抱えるとダイダロス通りを抜けて治療院へ走り出した。

 

アイズさんを案内して裏門に着いた。

出るときは意識していなかったが当然鍵がかかっている。

門を調べても鍵穴は無い、開錠する何らかの装置もに当らない。

せっかく連れていたんだがこれでは意味がない。

そこでふとさっきのトイレの話を思い出す。確か門の合言葉と言っていた。

あの時の言葉をすべて思い出して、合言葉を閃く。

「一千童…」途中から風が吹いて声を押し流す。幸い門の方に流されたためか合言葉は受理され門が開いて行く。

後ろを振り返るとアイズさんが驚いた顔をしている。

東洋の英雄だから馴染みが無いんだろうと苦笑する。

そのため敵地に入ると言う事を忘れてしまう。何の警戒もなく門をくぐる。

入ったところで吹き飛ばされた。情けない事にアイズさんに受け止められる。

あわてて立ち上がろうとするが激痛で足が折られていることに気が付く。

アイズさんは僕を庇って戦っている。庇っているせいかとても戦いにくそうだ。

だんだん追い詰められていく、僕が油断したせいだ、何か方法を考えないと。

敵は僕を人質にしてアイズさんを連れて行こうとしている。

なら僕を囮として使えないか?アイズさんに相談する。

先ずアイズさんにしがみつく。レベル6の力で隙を見て敵へ放り投げてもらう。

予想通り捕まえようとする。ファイヤボルトで軌道を変えナイフを持って体当たり。

何とか撃退したが結局アイズさんの望んだ調査は出来ないことに。

「すいません、結局調べられませんでしたね。」

「ううん、それよりすごいよ、裏口が見事開いたね。」

「あの門は合言葉で開くんですよ。あれは英雄譚の登場人物で、ティオナさんなら知ってると思いますよ。」

「そう…」

そこでようやくダイダロス通りを抜け治療院に着いた。

 

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