オラトリア7.1   作:諸々

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5.歓楽街突入

治療院についてベルの治療をお願いする。

治療を待っている間にレフィーヤが駆け込んでくる。

「アイズさん、どうしたんですか?」

「レフィーヤ、どうして?」

「治療院に居る連絡員が『アイズさんが来た』って教えてくれたんです。」

その時アミットがベルを連れて入ってきた。

「少しうるさいですね、ここには他の患者も居るんですから。」

アイズとレフィーヤは口を押えた。

「ベルの容体は?」とアイズ。

「足を骨折していましたが、幸い綺麗に折られていたのですぐ直ります。明日には元通りでしょう。」

アイズはほっとし、ベルは恐縮した。

「ですがベルさん、危なかったですよ。これだけ綺麗に折ると言う事は相手は相当手練れです。

もし頭を狙われたら貴男は到底生きてはいられなかったでしょう。」

アイズはその言葉にわずかに体を震わせた。

「アイズさん、これからどうするんですか?」とベル。

「また行くよ、アイツが居たなら尚の事。」

「アイズさん、僕も…」

「ベルはもう良いよ。」

「でも…」

「そうですよ、だいたい何であなたが一緒に居るんですか?怪我をして足手まといに成ったくせに。」とレフィーヤ。

ベルは何も言えなかった。

アイズは違うと言いたかったが、あえてこう言った。

「ベルは十分やってくれたよ、それにベルは別にやる事が有る筈だよ。優先順位を間違えないで。」

「なになにレフィーヤが来たの?」とテイオナが入ってきた。

「私にはティオナもいる。だから大丈夫だよ。」

「ええ私もいますからまったく問題ありません。」とレフィーヤ。

「あ、アルゴノウト君だ。なんだかわからないけど大丈夫だよ。」

「ティオナさんお静かに、その元気であれば明日には退院ですね。」とアミット。

ベルはうなだれて出て行こうとする。

「ベル、クエスト頑張って。」とアイズ。

「なーんだもう帰っちゃうんだ、アルゴノウト君、またね。」とティオナ。

 

次の日アイズに言われてレフィーヤ達は変装セットを買いに行った。

当初レフィーヤは女同士で怪しまれないかと気になった。

だがティオナの胸を見て店員は気にする様子もなく売ってくれた。

その為、今度はティオナが気付いて騒ぎ出さないか気が気でなくなった。

 

夕方アイズの案内で裏門に着いた。

装備は、アイズがティオネからの投げナイフ(午前中練習した)、ティオナは素手(借金で首が回らない)

レフィーヤは予備のワンド(森のティアドロップは目立つから歓楽街に持ち込めない)となった。

ティオナとレフィーヤは門を観察している。

「あのダンジョンの門と少し違うね。」とティオナ。

「でも鍵穴もないし、どうやって開けるんでしょう。」とレフィーヤ。

「この門は合言葉で開くんだよ。」自信満々にアイズが言った。

「でその合言葉は何ですか?」とレフィーヤ。

「ティオナ」とアイズ。

「何?」

「英雄譚の登場人物の名前。」

「???」

「ベルが言ってた。合言葉は英雄譚の登場人物の名前だって。」

「いっぱいいるからそれだけじゅあ判らないよ。」

「でもベルは直ぐに分かったよ。」

「何、アルゴノウト君はすぐ判ったの?なら負けられないね。」

 

一時間後。

「これも違う。でも負けないんだからー。」とティオナ。

 

2時間後。

「アイズさん、合言葉は直接聞かなかったんですか?」とレフィーヤ。

「ベルが合言葉をしゃべった時、ちょうど魔法の確認中だった。

それに英雄譚の人物がこんなに多いとは思わなかった、せいぜい10人程度かと。」

「…そうですか、実際には数千人、同じ人物でも種族や部族なんかで微妙に違うなんてざらですよ。

今からでも彼に聞いてくればどうですか?」

「ベルは今日はクエストに行ってる。こんなことになるとは思ってないから場所は聞いてない。

もしかしたらオラリオの外に出ているかも。」

「もう7時はとっくに過ぎましたよ、今日は諦めますか?」

いまだに開店に伴うであろう喧騒に包まれている様だが、そろそろ通常の警備体制になってもおかしくない頃だ。

アイズは少し考えてから言った。「ティオナ、そろそろ…」

だがその前にティオナの忍耐が切れた。

「ああ、もうめんどくさい。こんな邪魔な門はこうだ。」門を破壊して中に入ってしまう。

あわてて二人も後に続く。レベル6のアイズは難なく潜り抜けるが、いまだレベル3のレフィーヤはそうはいかない。

瓦礫に紛れて何かがレフィーヤめがけて降りかかってくる。

それに気づいたティオナが右手でレフィーヤを抱き留め、左手で落ちてきたものを叩き落とした。

門の前で無事合流しレフィーヤはアイズに抱きついた。

その時突然地面が割れた。

 

その少し前、オッタルの所にアレンが報告に来た。

「兎は予想通り捕まってやがる。ただ逃げ出してどこにいるかまでは判らねえ。動きが有ればそこに居るはずだ。」

オッタルは鷹揚に頷く。アレンはさらに言った。

「裏門は任せてもらう。」オッタルはかすかに首を傾げた。

「どうやら厄介なトラップが仕掛けられているらしいが詳細は不明だ。

万が一のことのあるから俺が様子を探ってくる。

詳細が解ったら合流する。後詰に何人か連れて行く。」と言って数人を引き連れてアレンは去った。

オッタルが命令を下す。

「あそこを包囲しろ、ただしまだ気づかれるなよ。」

 

アレンは裏門でアイズ達を見つけ舌打ちをする。

「あの人形女ども、こんな所で何してやがる。」と小さく言いつつ観察した。

どうやら門の所で中に入ろうとしているようだ。

「ちょうどいい、あいつらをカナリアにする。」

「彼女らが罠にかからなかったらどうするんですか?」

「心配いらねえ、あの様子ならもうすぐあのバカがしびれを切らして突入する。」

そしてアレンの言った通りになった。

 

落とし穴!!!

着地したばかりのティオナ、レフィーヤに抱きつかれたアイズ、共になすすべなく落ちていく。

「トラップモンスターー」レフィーヤが声を上げると同時に怪音波が放たれる。

間髪入れずにうなる打撃音。

「ティオナ!」アイズさんが叫んでいる。

思わず目をやるとティオナさんが上半身を壁にもたれかけて倒れている。

そして下半身はへそのあたりまで溶解液に浸かっている。

「レフィーヤ!」よそ見していた私をアイズさんは助けてくれた。

だが怪音波を浴びて気を失いかけた。改めてトラップモンスターを見る。

前回とは少し違っている。蝕腕は4本、冠状の器官は10枚の大きな花弁の様で微妙に湾曲している。

「レフィーヤ、このモンスターは音波を収束させている。絶対正面に立たないで。」

アイズさんは投げナイフをうまく使い、敵をひきつけている。

だけど花弁が輝くたび一時停止させられている。

急いでティオナさんの所に向かう。左腕を酷くやられている。

だがレフィーヤはそれ以外の変色を見逃さなかった。

これはあの18階層で散々見た症状だ。それと同時にこのトラップのカラクリに気が付いた。

門を無理やり壊せば、ポイズン・ウェルミスが降ってくる。

これで仕留められなくてもこのトラップが待ち受けている。

このモンスターを目ざめさせたのもポイズン・ウェルミスの毒(の香?)だろう。

現状では如何する事も出来ない。気絶しているからポーションも飲ませられない。

アイズさんへの攻撃の余波が迫ってきている。

「ごめんなさい」一言謝ってその場を離れる。モンスターを倒せばみんな助かると思いながら。

倒す方法を必死に考える。今回は音波攻撃が厄介だ。

当てられたら詠唱不能はもちろん、数秒で失神させられる。

 

考えが纏まらない、通用する攻撃手段が魔法しかない。音波攻撃が有るからまともな詠唱は不可だ。

私が囮に、いや駄目だ。私は瞬殺されるしアイズさんには決定打が無い。

時間だけが過ぎる。一か八か平行詠唱をするしか無いと思い始めた時アイズから声がかかる。

「レフィーヤはこのモンスターを倒した事あるんだよね?」

「あ、はい。」とアイズさんを見る。投げナイフのストックが尽きかけている。

何本かは花弁に刺さり怪音波を防いでいるようだが。

「…テンペスト」

「アイズさん魔法を使っちゃダメです。」

「他に方法が無い。」

アイズさんのねらいは判る、デコイアタックだ。しかたなくすぐさま詠唱を開始する。

アイズさんの魔法は治療院での話で『ほとんど使えない』だった。だけど今はきちんと発動している様だ。

だがその威力は若干精彩を欠いているように見える。

全マインドをつぎ込んで魔法を完成させる。{アルクス・レイ}

前回と同様大閃光が直上へと驀進する。

モンスターは2本の蝕腕で受け止めようとしてくる。

レフィーヤはこれで倒せる、と思った。

だが今回は蝕腕に受け止められる。何故と思ったが、前回を詳細に思い出し致命的なミスに気が付いた。

前回は森のティアードロップを使っていたが、今回は予備のワンド、魔法の出力は当然小さい。

そして相手のモンスターは蝕腕の数からして強化種だ、受け止められても仕方が無い事になる。

おまけに前回は圧倒したが倒してはいない、とどめを刺したのはベルの謎の白い光だ。

アイズさんを見ると2本の蝕腕に巻きつかれている。魔法の風で対抗しているが振りほどけない様だ。

ただしモンスターは閃光でうまく見えない様で、音波攻撃はしてこない。

レフィーヤは焦って出力を上げようとするが上手くいかない、この状態でどちらかの魔法が切れれば負けてしまう。

 

「裏門の罠が起動しました。」

「今の時間裏門に行く奴はいないはずだが?」

「もしかしたら兎が引っ掛かったのかもしれません?」

「全員に通達。裏門の罠が作動した。近づかないように。」

「了解、『裏門の罠が作動した。近づかないように。兎が捕まったかもしれん。』」

……

「兎が捕まったって。」

「捕まったんなら通常警備に戻るぞ。」

伝言ゲーム状態になり警備体制が混乱する。

警備体制のわずかな齟齬、これがベルがあの人数差で大立ち回りを演じられた原因の一つになる。

 

「あれでは我々も近づけません。」

だがアレンはモンスターに付いている黒いリボンを見ていた。

「心配ない、あれは外には出てこれない。お前らはここで待ち構えてりゃあ良い。

後は任せた、逃げてくる奴は殺さず捕まえろ。」と言ってアレンは戻った。

その時一匹が門から転がり出る。その途端に黒いリボンが火を噴いてモンスターは燃え尽きた。

 

 

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