ガンダムビルドファイターズ ザ☆チェイサー   作:大井忠道

6 / 8
ということでついに戦闘です。
チェイスが選んだMk-Ⅱが大量の量産機を相手に大立ち回りを演じます。

あと、この話自体は随分前に書いてたのですが、8割がた書いたところで
消えるという大惨事により心が折れてしまい、再作成へのモチベーション
を高めていたため遅れることとなりました。


第5話 戦う魔進 その1

難易度を高いものにしてしまった、というユウマの言葉に動じない2人。

特に扱いが慣れてるフミナはミッションが始まったらすぐにポーズして、

やり直せばいいのではないか、と提案した。

ユウマもそのことを思い出し、作業に取り掛かろうとする。

 

しかしそれを制した男がいた。チェイスだ。

 

「このままでいい。」

 

と言って憚らないのである。ガンプラバトル部の3人がどれだけ難しいか

言ってもチェイスは無理に設定を変える必要はない、というのである。

 

今のチェイスには、ガンプラバトルを自分で体験する、という確固たる

意志があった。そのため、勝とうが負けようが今はどうでもよかったのである。

 

「まあまあ、とりあえずやらせてみてはいかがかな?」

 

と、ラルさんが助け舟を出した。そこまで言うならチェイスの好きにさせたい、

という思いだった。また、ラルさんは彼の眼や過去より、操作方法さえ

覚えればエースプレイヤーになれるのではないだろうかという予想も

立てていたのだ。

 

かくしてミッションがスタートされる。内容は「機動戦士ガンダムOO」より、

タクラマカン砂漠の三国合同演習に、ガンダムマイスターの一員として

武力介入する、というものであった。

 

このステージでは、本家マイスターもスローネの助けがなければ

そのままやられそうなほどの物量が敵になる。

CPUとしてソレスタルビーイングのガンダムもいるが、内容を反映して

ヴァーチェ&エクシア、キュリオス&デュナメスのどちらかのペアとしか

組んで戦えない。

 

こちらも実質的には一騎当千のミッションであり、その難易度はフミナが

デモプレイでバトルしたトリントン基地防衛戦よりも遥かに高い。

初心者が自惚れてプレイすればCPUガンダムよりも先にやられてしまうほどだ。

 

ミッションがスタートしてすぐには敵は襲ってこないため、まずはフミナより

操作方法がレクチャーされる。

歩行、走行、ブーストのふかし方、武器の扱いを簡単に受け、それらを

軽く試すとすぐにミッションが開始された。

 

「大丈夫でしょうか・・・。」

 

ユウマが心配そうな声をあげる。しかしラルさんはチェイスを見据えて

こう言った。

 

「何、チェイスくんはやってくれると信じてる。」

 

「ええ・・・。本当ですか・・・?」

 

「ああ、あの眼は、エースパイロットの風格が漂っている・・・!」

 

チェイスを信じているのはラルさんだけではなかった。

 

「まあまあユウマ、俺もなぜかは分からないけど、やってくれる気がするんだ。

 なんか強そうだしな!」

 

「セカイまで・・・。」

 

仕方なくユウマはみんなと一緒に見ることにする。横にいるフミナは

今のところ何も言っていないが、表情としてはやや複雑なものだ。

 

そんなみんなの色々な思いをよそに、チェイスはMk-Ⅱを進ませる。

協力するCPUはエクシアとヴァーチェだ。

 

「アニメでは苦しい防戦だったけど、チェイスさんはどんな風に戦ってくれるかな?」

 

フミナの表情が少しワクワクしたようなものになる。その間にMk-Ⅱはエクシア&ヴァーチェと合流し、

 

そのまま通り過ぎた。

 

「アレッ、チェイスさん!あの2機は?通り過ぎちゃいましたけど・・・。」

 

セカイが心配そうな声を上げる。一人でも厳しいのに、協力者がいなければ

さらに難易度が上がるのは明白だ。しかしチェイスは何一つ表情を変えない。

 

「危なくなったら戻る。」

 

とのことだ。見据える視線の先には、ティエレンの大部隊が迫ってきている。

射程距離内に捉えた瞬間、ビームライフルを抜き、輝く閃光を放った。

 

瞬く間の三連撃により、数機がまとめて爆散する。Mk-Ⅱのビームライフルには

連射機能は無い。逆襲のシャアにおけるアムロのような芸当をやってのけたのだ。

 

その間に今度はビームの威力を最大にして極太のビームを放つと、それを180度回す。さながら巨大なビームサーベルだ。

 

「今度はギロチンバースト・・・!?」

 

ユウマが驚きの声を上げる。ビームの威力を最大限にする機能はあるが、

なぎ払えるほどの時間は限られている。

使うのにもたつけば180度も回すことは不可能だ。戦闘能力はもとより、

こんな大胆な作戦を即決できることにユウマは震えた。

 

その間にビームライフルのカートリッジを交換し、今度はビームサーベルで

斬りかかる。近距離戦ではその戦いぶりは鬼神とも呼べるべきものだった。

 

状況としてはほぼ囲まれてしまっているものの、的確に敵機を次々と

両断していく。恐るべきはそのスピードだ。ブーストを効果的に、緩急を

つけて使いこなしつつ手に持ったビームサーベルを切りつける。

 

コンピューター制御の鈍重なティエレンはそのスピードについていけず、

四肢がバラバラに刻まれていく。状況的にはこちらが囲まれているのだが、

三次元的な機動を活かしつつライフル、サーベルを適宜使い分けて

次々と残骸を増やしていった。

 

そうして気づけば周りに敵はおらず、かつてティエレンだった残骸の中で

ガンダムMk-Ⅱが静かに佇んでいる。

 

「すげえーっ!!」

 

セカイが驚きの声を上げる。うるさい、とユウマがたしなめるがセカイの

興奮は止まらない。

 

「だってよユウマ!あんなに囲まれて、あっという間に倒しちまうんだぜ!すごいだろ!師匠みたいだ!」

 

セカイは純粋にチェイスの戦いぶりを喜んでいるが、ユウマは逆の感情であった。

一騎当千は自分には少々難しいが、できる人はそれなりにいる。例えば

敬愛するメイジン・カワグチは一騎当千を軽々と行う。また、

ガンプラバトル開発の第一人者、ヤジマ・ニルスも新しいシステムを開発した

折に一騎当千を行う。

 

その様子を見せてもらったが、やはりそれは「ガンプラバトル」としての

ものであり、魅せるようなバトルが特徴的だ。

だが、目の前で繰り広げられたバトルは「ガンプラバトル」というよりは、

まさに「一対多の戦い」を行ったように感じられた。

 

かつてレナート兄弟は「ガンプラバトルは戦争」と言っており、バトルスタイルも

それに見合うような泥臭いものだった。

ブービートラップを仕掛けたり、使用武器を次々と取り替えたりして、

まさに「戦争をする軍隊の部隊」という印象だった。

 

だが、このチェイスという人のバトルはそんなものではない。初心者のはず

なのだが、スタイルはレナート兄弟の言っていた「戦争」を思い起こさせる。

兄弟と違うのは、受ける印象だ。

 

容赦なく、ティエレンを撃って切り倒す。確実に仕留めるように。その戦い方は

まるで、軍隊というよりは。

 

「傭兵か、暗殺者みたいな・・・。」

 

真顔でフウ、と息をつく紫色の男性にそんな感想を抱かざるを得ない。本当に

ただのガンプラバトルをやったことない一般人なのか?と、ユウマが思った瞬間、

バトルマシンにアラートが鳴り響く。

 

チェイスが瞬間的にブーストを吹かした直後、Mk-Ⅱがいた地点が大爆発を起こした。見れば地平線に、一列に並んだMSが砲撃を行っている。

 

チェイスは降り注ぐ砲弾の中をかいくぐりつつ、砲撃MS部隊へと近づいていく。

もちろん、一度のヒットもない。

あっという間にたどり着き、再び攻撃を開始する。頭部が長大なキャノン砲に

なっているティエレン-ティエレン長距離射撃型という-に肉迫した。

 

そこからあとは先ほどと同じ通り。むしろ先ほどよりも鈍重になっているため

、簡単に倒されていった。

再び静寂が場を支配する。気づけば見学しているガンプラバトル部とラルさんの

周りには、模型部員が山を作ってチェイスの戦いぶりを見学していた。

彼らもまた、その様に感嘆の声を漏らしている。

 

するとふいにチェイスが左の空に顔を向けた。カメラをズームインさせると、

空に無数の小さな点が群がっている。

これこそ、このステージ最後のバトル相手、ユニオン・AEU連合の空戦MS大部隊だ。

リアルド・フラッグ・オーバーフラッグ・ヘリオン・イナクトが群れを成して

チェイス操るMk-Ⅱを倒さんと飛来していた。

 

まだ距離があると判断したチェイスは、驚きの行動に出た。まず、残骸と化した

ティエレン長距離射撃型のキャノンの銃身を拾い上げる。

先端にビームサーベルで線状の傷をつけると、そこにこれまた拾ったカーボン

ブレイドを取り付けた。

かつて仮面ライダーとして戦ったときの武器、シンゴウアックスを模したかの

ような、ロングアックスである。ユウマとラルさんが驚愕の声を上げた。

 

「武器を作った!?」

 

「洋画でよく見るシチュエーションを見られるとは・・・。」

 

そしてチェイスは、即席の斧を手に、大きくジャンプした。空戦MS部隊は

すでにチェイスがいた地点の上空近くにまで達している。

ブーストがオーバーヒートする少し前に、そばを飛んでいたリアルドに着地した。

斧を構え直すと再びジャンプする。

足場にしていたリアルドはキック力により中破し、砂漠へと煙を上げて落ちていった。

 

ジャンプの最中に素早く斧を振るい、フラッグとイナクトを1機ずつぶった斬る。

次はフラッグの上に着地した。

そこに、MS形態となったオーバーフラッグがプラズマソードを抜き放って迫る。

もちろんこれにチェイスが応戦した。

プラズマソードをシールドで受け止めると、すぐにシールド内の小型ミサイルを

打ち込んだ。

 

機動性のためにラインが細く、装甲の比較的薄いオーバーフラッグはそれだけで

致命的なダメージを負ってしまう。

さらにシールドでボディを殴りつけ、その体を地上へと叩き落とした。そしてまた、フラッグを蹴り落としつつ次の

ターゲットへと飛翔する。そうしてあっという間に空戦MSの数を減らしていった。

 

「まるで源義経の八艘飛びだ・・・。」

 

ラルさんのこの言葉がチェイスの今の戦いぶりを物語っている。

それから数分後、最後の1機を切り裂いたMk-Ⅱが空から砂漠へと降り立つ。

さすがに向こうの攻撃により、シールドは

壊れてしまっていたが、本体にはすすや焦げといった汚れはあるものの破損は

見受けられない。

 

その瞬間、「MISSION COMPLETE!」というメッセージが表示される。

圧倒的なスコアでチェイスが勝利を収めたのだ。本来の主役のCBのガンダムを

差し置いて。

 

光とともにステージが消え、ただのガンプラとなったMk-Ⅱがマシンの真ん中で

立ち尽くしている。破損レベルは

最低のものに設定していたため、シールドはジョイントから上下に分かれている

だけだ。

 

「すごいじゃないですかチェイスさん!あの量の敵をこんな短時間で倒す

なんて!」

 

「・・・ああ。だがこれは、コンピューター制御なのだろう。実際に人と

対戦した場合は分からない。」

 

「でも、チェイスさんなら行けますって!」

 

セカイとチェイスが和気藹々と話している間、その様子を見ていたラルさんは

思った。

これが仮面ライダーの力なのか、と。

 

そしてその横のユウマは別のことを思っていた。

本当にあの人は何者なのだろうか、と。

 

そんなユウマが彼の正体に気づくのは、かなり後になるのだが。それはまた、

別の話。




ということで、スローネいらずの活躍をしてしまったチェイス。
しかしガンプラバトルの醍醐味は対人戦!ということで、次の話では対人戦を
書いていこうと思います。

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