チェイスが選んだMk-Ⅱが大量の量産機を相手に大立ち回りを演じます。
あと、この話自体は随分前に書いてたのですが、8割がた書いたところで
消えるという大惨事により心が折れてしまい、再作成へのモチベーション
を高めていたため遅れることとなりました。
難易度を高いものにしてしまった、というユウマの言葉に動じない2人。
特に扱いが慣れてるフミナはミッションが始まったらすぐにポーズして、
やり直せばいいのではないか、と提案した。
ユウマもそのことを思い出し、作業に取り掛かろうとする。
しかしそれを制した男がいた。チェイスだ。
「このままでいい。」
と言って憚らないのである。ガンプラバトル部の3人がどれだけ難しいか
言ってもチェイスは無理に設定を変える必要はない、というのである。
今のチェイスには、ガンプラバトルを自分で体験する、という確固たる
意志があった。そのため、勝とうが負けようが今はどうでもよかったのである。
「まあまあ、とりあえずやらせてみてはいかがかな?」
と、ラルさんが助け舟を出した。そこまで言うならチェイスの好きにさせたい、
という思いだった。また、ラルさんは彼の眼や過去より、操作方法さえ
覚えればエースプレイヤーになれるのではないだろうかという予想も
立てていたのだ。
かくしてミッションがスタートされる。内容は「機動戦士ガンダムOO」より、
タクラマカン砂漠の三国合同演習に、ガンダムマイスターの一員として
武力介入する、というものであった。
このステージでは、本家マイスターもスローネの助けがなければ
そのままやられそうなほどの物量が敵になる。
CPUとしてソレスタルビーイングのガンダムもいるが、内容を反映して
ヴァーチェ&エクシア、キュリオス&デュナメスのどちらかのペアとしか
組んで戦えない。
こちらも実質的には一騎当千のミッションであり、その難易度はフミナが
デモプレイでバトルしたトリントン基地防衛戦よりも遥かに高い。
初心者が自惚れてプレイすればCPUガンダムよりも先にやられてしまうほどだ。
ミッションがスタートしてすぐには敵は襲ってこないため、まずはフミナより
操作方法がレクチャーされる。
歩行、走行、ブーストのふかし方、武器の扱いを簡単に受け、それらを
軽く試すとすぐにミッションが開始された。
「大丈夫でしょうか・・・。」
ユウマが心配そうな声をあげる。しかしラルさんはチェイスを見据えて
こう言った。
「何、チェイスくんはやってくれると信じてる。」
「ええ・・・。本当ですか・・・?」
「ああ、あの眼は、エースパイロットの風格が漂っている・・・!」
チェイスを信じているのはラルさんだけではなかった。
「まあまあユウマ、俺もなぜかは分からないけど、やってくれる気がするんだ。
なんか強そうだしな!」
「セカイまで・・・。」
仕方なくユウマはみんなと一緒に見ることにする。横にいるフミナは
今のところ何も言っていないが、表情としてはやや複雑なものだ。
そんなみんなの色々な思いをよそに、チェイスはMk-Ⅱを進ませる。
協力するCPUはエクシアとヴァーチェだ。
「アニメでは苦しい防戦だったけど、チェイスさんはどんな風に戦ってくれるかな?」
フミナの表情が少しワクワクしたようなものになる。その間にMk-Ⅱはエクシア&ヴァーチェと合流し、
そのまま通り過ぎた。
「アレッ、チェイスさん!あの2機は?通り過ぎちゃいましたけど・・・。」
セカイが心配そうな声を上げる。一人でも厳しいのに、協力者がいなければ
さらに難易度が上がるのは明白だ。しかしチェイスは何一つ表情を変えない。
「危なくなったら戻る。」
とのことだ。見据える視線の先には、ティエレンの大部隊が迫ってきている。
射程距離内に捉えた瞬間、ビームライフルを抜き、輝く閃光を放った。
瞬く間の三連撃により、数機がまとめて爆散する。Mk-Ⅱのビームライフルには
連射機能は無い。逆襲のシャアにおけるアムロのような芸当をやってのけたのだ。
その間に今度はビームの威力を最大にして極太のビームを放つと、それを180度回す。さながら巨大なビームサーベルだ。
「今度はギロチンバースト・・・!?」
ユウマが驚きの声を上げる。ビームの威力を最大限にする機能はあるが、
なぎ払えるほどの時間は限られている。
使うのにもたつけば180度も回すことは不可能だ。戦闘能力はもとより、
こんな大胆な作戦を即決できることにユウマは震えた。
その間にビームライフルのカートリッジを交換し、今度はビームサーベルで
斬りかかる。近距離戦ではその戦いぶりは鬼神とも呼べるべきものだった。
状況としてはほぼ囲まれてしまっているものの、的確に敵機を次々と
両断していく。恐るべきはそのスピードだ。ブーストを効果的に、緩急を
つけて使いこなしつつ手に持ったビームサーベルを切りつける。
コンピューター制御の鈍重なティエレンはそのスピードについていけず、
四肢がバラバラに刻まれていく。状況的にはこちらが囲まれているのだが、
三次元的な機動を活かしつつライフル、サーベルを適宜使い分けて
次々と残骸を増やしていった。
そうして気づけば周りに敵はおらず、かつてティエレンだった残骸の中で
ガンダムMk-Ⅱが静かに佇んでいる。
「すげえーっ!!」
セカイが驚きの声を上げる。うるさい、とユウマがたしなめるがセカイの
興奮は止まらない。
「だってよユウマ!あんなに囲まれて、あっという間に倒しちまうんだぜ!すごいだろ!師匠みたいだ!」
セカイは純粋にチェイスの戦いぶりを喜んでいるが、ユウマは逆の感情であった。
一騎当千は自分には少々難しいが、できる人はそれなりにいる。例えば
敬愛するメイジン・カワグチは一騎当千を軽々と行う。また、
ガンプラバトル開発の第一人者、ヤジマ・ニルスも新しいシステムを開発した
折に一騎当千を行う。
その様子を見せてもらったが、やはりそれは「ガンプラバトル」としての
ものであり、魅せるようなバトルが特徴的だ。
だが、目の前で繰り広げられたバトルは「ガンプラバトル」というよりは、
まさに「一対多の戦い」を行ったように感じられた。
かつてレナート兄弟は「ガンプラバトルは戦争」と言っており、バトルスタイルも
それに見合うような泥臭いものだった。
ブービートラップを仕掛けたり、使用武器を次々と取り替えたりして、
まさに「戦争をする軍隊の部隊」という印象だった。
だが、このチェイスという人のバトルはそんなものではない。初心者のはず
なのだが、スタイルはレナート兄弟の言っていた「戦争」を思い起こさせる。
兄弟と違うのは、受ける印象だ。
容赦なく、ティエレンを撃って切り倒す。確実に仕留めるように。その戦い方は
まるで、軍隊というよりは。
「傭兵か、暗殺者みたいな・・・。」
真顔でフウ、と息をつく紫色の男性にそんな感想を抱かざるを得ない。本当に
ただのガンプラバトルをやったことない一般人なのか?と、ユウマが思った瞬間、
バトルマシンにアラートが鳴り響く。
チェイスが瞬間的にブーストを吹かした直後、Mk-Ⅱがいた地点が大爆発を起こした。見れば地平線に、一列に並んだMSが砲撃を行っている。
チェイスは降り注ぐ砲弾の中をかいくぐりつつ、砲撃MS部隊へと近づいていく。
もちろん、一度のヒットもない。
あっという間にたどり着き、再び攻撃を開始する。頭部が長大なキャノン砲に
なっているティエレン-ティエレン長距離射撃型という-に肉迫した。
そこからあとは先ほどと同じ通り。むしろ先ほどよりも鈍重になっているため
、簡単に倒されていった。
再び静寂が場を支配する。気づけば見学しているガンプラバトル部とラルさんの
周りには、模型部員が山を作ってチェイスの戦いぶりを見学していた。
彼らもまた、その様に感嘆の声を漏らしている。
するとふいにチェイスが左の空に顔を向けた。カメラをズームインさせると、
空に無数の小さな点が群がっている。
これこそ、このステージ最後のバトル相手、ユニオン・AEU連合の空戦MS大部隊だ。
リアルド・フラッグ・オーバーフラッグ・ヘリオン・イナクトが群れを成して
チェイス操るMk-Ⅱを倒さんと飛来していた。
まだ距離があると判断したチェイスは、驚きの行動に出た。まず、残骸と化した
ティエレン長距離射撃型のキャノンの銃身を拾い上げる。
先端にビームサーベルで線状の傷をつけると、そこにこれまた拾ったカーボン
ブレイドを取り付けた。
かつて仮面ライダーとして戦ったときの武器、シンゴウアックスを模したかの
ような、ロングアックスである。ユウマとラルさんが驚愕の声を上げた。
「武器を作った!?」
「洋画でよく見るシチュエーションを見られるとは・・・。」
そしてチェイスは、即席の斧を手に、大きくジャンプした。空戦MS部隊は
すでにチェイスがいた地点の上空近くにまで達している。
ブーストがオーバーヒートする少し前に、そばを飛んでいたリアルドに着地した。
斧を構え直すと再びジャンプする。
足場にしていたリアルドはキック力により中破し、砂漠へと煙を上げて落ちていった。
ジャンプの最中に素早く斧を振るい、フラッグとイナクトを1機ずつぶった斬る。
次はフラッグの上に着地した。
そこに、MS形態となったオーバーフラッグがプラズマソードを抜き放って迫る。
もちろんこれにチェイスが応戦した。
プラズマソードをシールドで受け止めると、すぐにシールド内の小型ミサイルを
打ち込んだ。
機動性のためにラインが細く、装甲の比較的薄いオーバーフラッグはそれだけで
致命的なダメージを負ってしまう。
さらにシールドでボディを殴りつけ、その体を地上へと叩き落とした。そしてまた、フラッグを蹴り落としつつ次の
ターゲットへと飛翔する。そうしてあっという間に空戦MSの数を減らしていった。
「まるで源義経の八艘飛びだ・・・。」
ラルさんのこの言葉がチェイスの今の戦いぶりを物語っている。
それから数分後、最後の1機を切り裂いたMk-Ⅱが空から砂漠へと降り立つ。
さすがに向こうの攻撃により、シールドは
壊れてしまっていたが、本体にはすすや焦げといった汚れはあるものの破損は
見受けられない。
その瞬間、「MISSION COMPLETE!」というメッセージが表示される。
圧倒的なスコアでチェイスが勝利を収めたのだ。本来の主役のCBのガンダムを
差し置いて。
光とともにステージが消え、ただのガンプラとなったMk-Ⅱがマシンの真ん中で
立ち尽くしている。破損レベルは
最低のものに設定していたため、シールドはジョイントから上下に分かれている
だけだ。
「すごいじゃないですかチェイスさん!あの量の敵をこんな短時間で倒す
なんて!」
「・・・ああ。だがこれは、コンピューター制御なのだろう。実際に人と
対戦した場合は分からない。」
「でも、チェイスさんなら行けますって!」
セカイとチェイスが和気藹々と話している間、その様子を見ていたラルさんは
思った。
これが仮面ライダーの力なのか、と。
そしてその横のユウマは別のことを思っていた。
本当にあの人は何者なのだろうか、と。
そんなユウマが彼の正体に気づくのは、かなり後になるのだが。それはまた、
別の話。
ということで、スローネいらずの活躍をしてしまったチェイス。
しかしガンプラバトルの醍醐味は対人戦!ということで、次の話では対人戦を
書いていこうと思います。