ガンダムビルドファイターズ ザ☆チェイサー   作:大井忠道

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マナー違反のアルヴァトーレと戦うチェイスの前に現れた謎のガンプラ!

それを扱う人物の正体が明らかに!

さらにチェイスがついにガンプラを買ってもらう!?果たして何を買ってもらうのか!

あまりにもあんまりなサブタイの7話、始まります!


第7話 買う魔進

「鬼、だと。」

 

チェイスはあっけに取られていた。突如現れ、自分を救ってくれた謎のガンプラ。その間にも謎のガンプラはアルヴァトーレへ立ち向かっていった。

その戦いぶりは凄まじいものがある。持っている剣と思しき武器で向こうのハサミと激しいつばぜり合いを演じているのだ。

これにはさすがのチェイスも舌を巻くしかない。そんな時、チェイスに通信が入った。謎のガンプラの持ち主からだ。

 

「よぉ、素組みのZZのパイロット。ぼさっとしてないでお前も手伝ってくれ。」

 

「あぁ、すまない。」

 

画面の向こうのバリトンボイスで我に返ったチェイスはすぐにアルヴァトーレへ向かう。今度はバリア、GNフィールドの発生を

させないために何もせずに向かった。

 

「ドージ!太っちょが来てるよ!」

 

「分かってるって!」

 

ドージがコマンドボタンを押すと、今度は上面からもハサミが持ち上がり、ZZに襲いかかる。この改造アルヴァトーレ、否、彼らはこれをカニバトーレと呼んでいるのだが、原典のものの上面にさらに1対のハサミを装備しているのだ。

襲いかかったハサミは今度は上半身を挟み込む。

 

「今度こそ終わりだよ、太っちょ!」

 

ヒメとドージが勝利を確信した瞬間であった。

 

「よそ見をっ、するなぁ!!」

 

謎のガンプラが剣をその土手っ腹に突き刺した。さらにそれだけではなく、蹴りを剣に入れ、さらに深く突き刺す。

その手応えに謎のガンプラファイターはニヤリと笑みを浮かべ、チェイスに指示を飛ばした。

 

「ビームを撃ち込め!」

 

「しかし、バリアが!」

 

「いいから撃てぇ!」

 

無理やり上半身を前に倒し、キャノンを向ける。その先にあるのは、カニバトーレの心臓部であるGNドライヴ。

そこに慎重に狙いを定め、一気に発射した。ドライヴが大爆発を起こす。さらにもう続けて二、三発。ビームは真っ直ぐに、的確に

GNドライヴを破壊していった。

 

ヒメとドージが慌てたのか、ハサミの力が緩まる。またもZZは脱出に成功した。大爆発とともにカニバトーレが崩壊していく。

そこに謎のガンプラが近づいた。下半身と腕後ろのドッズキャノンからクランシェ・カスタムの改造機と分かるがその改造が特徴的である。

 

全身深緑のメタリックをし、胸にはエネルギーラインなのか、銅色が線状に光っていた。顔全体を覆う無機質なバイザーにもその銅色が隈取の如く輝いている。

手には刀身が真っ赤に塗られた剣が握られていた。その謎のガンプラから通信が入る。

 

「よくやったじゃねえか。こういうことはコイツじゃできなかったからな。助かった。」

 

「礼を言うのはこちらの方だ。助けがなければやられていた。」

 

「ああ、いいってことよ。それよりも・・・。」

 

その時、アラートが鳴り響き、ビームが二人の間を走る。すんでのところで二人はそれを避けた。

カニバトーレが起こした大爆発、の煙からMSが躍り出る。赤いアルヴァアロン、否、カニバアロンだ。

 

「おのれおのれおのれぇっ!!」

 

「よくもカニバトーレをっ!」

 

二丁のGNビームライフルを乱射しながらこちらに向かってくる。それをZZも改造クランシェもヒョイヒョイと避ける。

逆にカニバアロンとすれ違う刹那にZZはビームサーベルで、改造クランシェは剣でGNビームライフルをぶった切った。

乱心したヒメとドージは機体を反転させ、GNビームサーベルを抜き放ち、またも突貫する。

改造クランシェファイターがチェイスに再び指示を出した。

 

「俺がアイツを倒す。お前、手伝ってくれるか?」

 

「了解した。何をすればいい。」

 

「アイツを抑えてくれ。」

 

そう言われるやいなや、ZZは襲いかかるビームサーベルの斬撃を腕のシールドウイングで防ぐ。寸分の隙も与えずに巨大な脚でカニバアロンの胴体を思いっきり蹴り上げた。そして言われた通りにあっという間に相手の背後に周り、その力を以て腕を押さえつけ、チェイスが叫ぶ。

 

「今だ!やれ!」

 

改造クランシェが剣を胴体部に突き刺す。すると左手首に装着されていたかなり小さい盾のようなものを剣の刀身に取り付けた。

刀身が左右へ翼のように変形展開する。

 

「ZZ!離れろ!音撃斬、雷電激震!!」

 

そして剣の柄に張られていた弦を弾く。驚くべきことに、エレキギターの音が出たのだ。

そしてその音は単純だが何度も、何度も長く続く。その光景にチェイスは今日一番の驚きを得た。

時間にして30秒経ったか。カニバアロンが一瞬膨らむと、オレンジの光を撒き散らし、爆散した。それと同時にバトルが終わる。

バトルロワイヤルモードは激戦の最中にラルさんが設定を変え、カニバトーレが敗北すると終了するように設定していたのだ。

 

光の粒子がマシンから消える。あとには参加者のバラバラになったガンプラ、ボロボロになったカニバアロン、そして誇らしく立つ謎のガンプラとZZが残されていた。

すぐにチェイスはヒメとドージのところへ走る。それを見た二人はこれはまずいと逃げようとするが。

 

「逃げられねえぞ。」

 

出口にコートを着て、サングラスをかけたワイルドな男性が立ちふさがっていた。

 

「MSだけのバトルロワイヤルに巨大MAで来るとは、いい度胸してんじゃねぇか。」

 

声からして謎のガンプラの持ち主だろう。チェイスも二人の後ろを塞ぎ、追い討ちをかける。

 

「ルールを守らない者に、ガンプラバトルをする資格は無い。」

 

声が低すぎる圧の強い男二人に挟まれたヒメとドージは、立ちすくむことしかできなかった。

 

 

 

 

その後、ガンプラバトル公式審査員と呼ばれる人が偶然通りかかったことにより、二人をそちらに預けることになった。といっても、別に警察のように何かしら罰を与えられることがないため口頭注意などで済まされるらしいが。

 

ともかく今日はバトルが一旦お開きになる。ダメージ設定は低いため、参加していた人たちのガンプラは壊れているものが少ない。

チェイスも自分が使っていたZZを拾い上げた。それと同時にワイルドなファイターが話しかけてくる。

 

「悪かったな、囮に使うようなマネをして。」

 

「俺はそんなことは気にしていない。だからお前も気にするな。」

 

「フッ、そうか。しかしいい動きだったな。」

 

ファイターが自分のガンプラを拾い上げる。よく見るとそれは、クランシェカスタムを改造したものであった。

 

「特にあのカニバアロンの背後に回り込む時のマニューバ、なかなかできるモンじゃないぞ。初心者じゃないな。始めてどれぐらいだ?」

 

「これが2回目だ。対人戦は初めてだ。」

 

「・・・冗談だろう。」

 

「いや、その青年の言ってることは本当だよ。ザンキくん。」

 

ラルさんがワイルドなファイター、ザンキに話しかけた。

 

「ラルさん、それは本当か?」

 

「あぁ、彼は紛れも無い超初心者だよ。ファイター歴は赤ん坊といってもいい。」

 

「赤ん坊じゃないだろ。どう見たって結構な中堅の動きだ。」

 

これも仮面ライダーと呼ばれる戦士の戦闘能力が反映されているのか。一瞬頭の中でラルさんは思う。

 

「稀にいるだろう、ザンキくん。初心者ながらもすごい能力を発揮するのが。」

 

そう言われてザンキはラルさんの横のセカイを見ると、「あぁ・・・。」と少々納得したような声を漏らした。

 

「しかしザンキくんがいてくれて助かったよ。だがここには最初からいなかったな?」

 

「買い出しに出てたんだ。そしたらなんか店が騒がしいから、偶然持ってたコイツでな。」

 

改造クランシェカスタムを見せる。

 

「ううむ、相も変わらず出来がいいな。そのクランシェは。」

 

「いいだろ、クランシェ・斬カスタム。元のクランシェカスタム要素はドッズキャノンと下半身くらいにしかならなくなったが。」

 

チェイスはクランシェ・斬カスタムを見る。無機質なラインに有機的な要素を落とし込んだそれは、不思議と溶け込んでいるように思えた。こういう物を、自分でも作れるのだろうか。

ザンキがガンプラを懐から出したタッパーのようなケースに入れる。

 

「しかしまぁ、よくやったぜ。名前はなんていうんだ?ZZ使い。」

 

「チェイスだ。俺だけのガンプラを探している途中で、これは一時的に使ったに過ぎない。」

 

「ほぉーう、なるほどな。俺はザイツハラ・ザオウマル。名前が長いからな、プレイヤーネームは『ザンキ』ってんだ。ラルさんとは結構な付き合いだからな。これからもしばしば会うだろう。ま、よろしく。」

 

そう言われ、チェイスはザンキとがっちり握手を交わした。じゃ、とザンキが三人に別れを告げて帰る。

 

「どうするね、チェイスくん?何かガンプラを買うかね?特別だ、私が出そう。」

 

ラルさんがチェイスに声をかけた。そう、突発的にガンプラバトルをしてしまったが今日の本来の目的はチェイスのガンプラを購入しに来たのである。店内に戻り、リンコにZZとGPベースを返すと、チェイスは言った。

 

「ならば、速度が自慢の物が欲しい。サイズは今日使ったものと一緒だ。」

 

ふうむ、とラルさんが考え、棚へと向かう。その後、何箱かをチェイスの前に持ってきた。

 

「とりあえず、私が考える速度自慢のガンプラだ。全部買ってもいいのだぞ?」

 

「それは大丈夫だ。ここから選ぶ。」

 

というわけで、閉店ギリギリまでラルさんの解説を聞きながら慎重に選ぶという作業が続いた。

やっとのことで選び、帰り道を急ぐ。

 

「ありがとう、ラルさん。塗料も買ってもらうとは。」

 

「何、このぐらいならお安い御用さ。しかし、黒と紫、銀とはなかなかに面白い組み合わせだな。」

 

ああ、と返すチェイス。彼なりのこだわりだ。

 

「しかしセカイくんも済まなかったね。長々と居座らせて。」

 

「いえいえ、これはチェイスさんのためでもありますし、それにラルさんの話も興味深かったです!」

 

屈託のない笑顔でセカイが答える。ちなみにセカイも自分のガンプラを磨き上げるための部品や道具などを買ってもらった。

その後、途中でラルさんと分かれる。今度はチェイスとセカイ、二人の会話が繰り広げられた。

内容としてはやはりセカイから見た今日のチェイスの戦いぶりである。

 

「やっぱりチェイスさんはすごいですよね。ザンキさんの指示にも上手く対応して。それに、あの図体にもかかわらず機敏な動作!見たことないですよ!」

 

「ガンプラは機体各部にたくさんのスラスターがある。それらを効果的に使えばセカイにも使えるはずだ。・・・部活で優勝しているならばできるのではないのか?」

 

「いやぁ、俺のガンプラとチェイスさんが使ったガンプラと、やっぱり違いますし、それに俺のは、一点突破!な感じなので!」

 

なるほど、セカイの戦い方は自身に近い者だとハートのようなものか。少し違うかもしれないが、チェイスは心の中でそう思った。

 

「そういえばさっき、姉ちゃんから連絡がありまして。是非とも事務所の社長さんが、一緒に来て欲しいらしいですよ。」

 

「モデルの件か。分かった。そうだ、セカイ。俺と一緒にこれを作るか。」

 

「嬉しいんですが、ちょっと宿題があるので・・・。でも、休憩中に見てもいいですよね?」

 

なるほど、確かにセカイは学生だ。いくらガンプラファイターといえども、本分は勉強が大事。一抹の寂しさを覚えるがこれも仕方が

ない。

 

「分かった。いいだろう。」

 

「やった!ありがとうございます!あ、あと、勉強でわからないところがあれば、教えてもらってもいいですか?」

 

「あぁ。だが、なるべく自分の力で解いた方がいい。」

 

「それはもちろん!」

 

わいのわいの騒ぐ二人。夕闇がそんな二人を優しく包んでいた。

 

 

 

 

ミライ、チェイス、セカイの三人で夕食を食べ終え、後片付けが済むといよいよガンプラを作る作業に入る。チェイスは箱を開け、中身を確認した。袋に包まれたいくつものランナー、説明書に不備がないことを確認する。

 

そしてランナーを出すと、それらに色をラッカーで吹き付けていく。塗料が乾くのを待つ間にチェイスはミライから明日のことについて話を聞いていた。

 

「ウチの社長さんも、写真を見た瞬間に『イイ!』って言ってて。早速明日、事務所の方に出向いて話がしたいって言ってたんです。一緒に来てもらえませんか?」

 

もちろんそのような頼みを断るチェイスではない。首が縦に振るわれた。

 

「ありがとうございます!チェイスさん、モデル映えする顔だなーって思って、もしかしたらいっぱい仕事来るんじゃないかなって思いまして。勝手なことをして申し訳ありません。」

 

「大丈夫だ。こういうことは、俺のためにもなる。色々体験したほうが、俺は、いいと思っている。」

 

「ふふっ。かなり真面目ですね。チェイスさんって。」

 

「よく言われた。」

 

湯船に水が流れ込む音が遠く小さく聞こえる。セカイも真面目に宿題をしているようだ。

 

「これから、改めてよろしくお願いしますね。やっぱり、賑やかな方がいいですから。ウチは。」

 

「あぁ。」

 

賑やか、というにはやや程遠い簡潔すぎる返事が飛ぶ。だがミライには、なぜだかその返事すらも安心できる、ような気がした。

 

「もうそろそろお風呂が沸く頃だと思いますが、チェイスさんは最後でいいですか?」

 

「しばらくガンプラ作りに励む。最後でいい。」

 

「分かりました。では、お先に入りますね。」

 

二人は分かれる。チェイスはそのまま塗料の乾いたランナーに手をつけ、ガンプラを作り始める。パチリ、パチリとニッパーの刃が

入る小気味良い音がリズムよく鳴った。

 

その後両手両脚を作ったところで風呂に入り、ミライの許可を取ってついでに風呂の掃除も行う。その長い間、縁側に置かれた空き箱の中に放置されていたガンプラは、工業製品かと見紛うほどのものであった。

 

 

 

 

チェイスが風呂に入っている頃、少し休憩を取ったセカイが作りかけのガンプラの箱を見る。

 

「ユウマが使ってたものとおんなじ名前してるガンプラかぁ。」

 

箱には燦然と「RX-78 GP01Fb ガンダム試作1号機 フルバーニアン」の文字が躍っていた。




というわけで、まずは自分の中で見てくれ中身共に男らしい、ザンキさんを出してみました。もしかしたら同じ役者であるガルルのテイストも混ざっちゃってるかもしれませんが・・・。

チェイスとミライが喋ってる間、恐らくなぜかラルさんはケツの痒みが止まらなかったんじゃないかと思います(笑)

そしてついに自分だけの初めてのガンプラはGP-01、フルバーニアン!もちろん、ここから様々な改造を施していく予定です!完全体になってからのバトルデビューは先ですが・・・。

オリジナルガンプラ解説
<カニバトーレ>
ヒメとドージが操るアルヴァトーレの改造ガンプラ。
機体上面にさらにハサミ一対が追加され、赤くなった以外は、意外と手堅い改造が施されている。
名前は「アルヴァトーレ」+「カニ」+「カニバリズム」を合わせたもの。まるで人を喰うが如くガンプラを倒していくことから命名された。
だが別にガンプラを喰うようなことはしてない。

<クランシェ・斬カスタム>
ザンキが使うクランシェ・カスタムを改造したガンプラ。
主に上半身に特殊な模様が施されているが、プラフスキー粒子を効率よくエネルギーに変換できるための流動ラインになっている。
武器はドッズライフルの代わりに装備する剣、烈雷。小型シールド「雷轟」を刀身にセットすればギター形態に変形。敵に突き刺し、それを「弾く」ことでエネルギーを内部に流し、そこから爆発させる「音撃斬・雷電撃震」という必殺技が使える。

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