もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。 作:孤独なバカ
甘い香りが、香ばしい匂いがしてくるので自然にお腹が減ってくる。
今俺は町主催の祭りの中でただフラフラしていた。
……暇だ。
楽は屋台の手伝いだし、集はナンパしてるらしいし千棘は後の待ち合わせ時間まで一時間あるし。
何しようかな?
適当にフラフラしてると
ゴツンと誰かにぶつかる
「キャ」
「あっ!すいません。」
とその人をみたら
「……何してるんだ?千棘。」
「えっ?夕貴?」
アイスクリームを食べている千棘だった。
「いや、俺は見回りと言う名の家の仕事をサボってるんだけど。」
「なにしてんのよ。あんた。」
「だって面倒だし。てか千棘は何してるんだよ約束の時間より。」
「し、仕方ないじゃない。お祭りって私初めてなんだから。」
「楽しみで早めに来たと。」
千棘らしいな。
「……それと、後あんたと早く会いたかったから。」
「……なんかお前どんどん素直になってるな。」
可愛すぎて真面目に顔熱いんだけど
「悪い?」
「全然。ちょっと待って。」
俺は小野寺にメールを送りつける。
「よし、完了。」
「誰に送ったの?」
「小野寺に楽に千棘とデートしてくるから先抜けるって伝えといてくれって送っといた。もちろん楽がいる場所とかも一緒に送りつけて。」
「……なんで?」
「まぁ。応援かな。」
どこからか大声が聞こえたが気にしないでおこう。
「そういや。千棘は浴衣着てないんだな?」
俺が言うと少し首をかしげる。
「ねぇ、夕貴。浴衣ってやっぱりいいものなの?」
「そんなん知らないけど……でも風情があるとは思うな。あとは日本ってあぁいう服多いからな。夏だなぁ〜とは思うけど…俺はそこまで気にしたことはないなぁ。」
「そうなんだ?」
「あぁ、ただあのクロードの性格だから無理やりでも着せてくると思ったんだけど…あいつ少し千棘愛強すぎだし。」
「……そうね。」
ゲンナリしている千棘に苦笑してしまう
「ほらこんなとこで立ち話するのもあれだし行こうぜ。千棘。」
「そうね。そういえばお祭りって何するものなの?」
「色々あるぞ。まぁ基本は屋台めぐりかな?あと時々意味不明なコンサートとかをみる。それと、ここだったら恋むすびのお守りが有名だな。」
「……なにそれ?」
「どうやら、とても有名らしく縁結びで凄い効果を発揮するらしいぞ。なんか楽も買いに行くとか…」
確かその為に午前中働いてるとか。
「それは夕貴は買いにいかないの?」
「……俺は必要ないもんなぁ。縁結びより普通に安全祈願とか買いに行きたい。」
縁結びはもう千棘がいるしいらないんだよなぁ。
「……そっか。」
「どうした?」
「ううん。何でもない行こう。」
「お、おい。」
すると手を引っ張られる。なんだよ
なんであんなに嬉しそうに笑うんだよ。
「夕貴。これ食べたい。」
「ん?」
「たこやきっていうの?」
「あぁ。別にいいけど俺の奢りなのか。別にいいけどさ。」
財布を取り出そうとすると、
「ううん。私に出させてもらえないかな?」
「……えっ?」
「いつものお礼ってことで。私いつも出してもらってるし。」
「……なら、奢られようかな。」
俺は苦笑してしまう。正直払ってもいいけどここは素直に好意を受け取ろう。
「オジサン2つ」
「あいよ。って桐崎のお嬢ちゃんじゃないですか!!」
うげ。ここウチの組の店かよ。
「……えっと今ゆう坊っちゃんなら多分見回りに。」
俺は少し離れる。
悪い千棘と思いながらただ買うのを見守る。
……いつから家の奴と話さなくなったんだっただろう。
やっぱりあの事件は大きいよな。
「夕貴。」
「ん?」
「離れるんだったら先に言ってよ。」
「……悪い。」
「……あんたって本当に家と仲悪いわね。」
「なんか言われたのか?」
千棘が首を横に振る。
「見てたらわかるわよ。あんたあのもやしより家の確執が深いじゃない。」
「……まぁ、俺は本能的に嫌ってるからなぁ。正直あまり家でも引きこもってるし。親父と楽ぐらいかな。あの事件前も俺結構家に反抗的だったし。楽は何度か拐われてるしな。」
「……あんたも色々あるのね。」
「そりゃ、家があんなんだからな。色々あるさ。」
俺はため息をつく。話を変えようとしたとき
「ところでさ、買ったのはいいんだけど……これって美味しいの?」
「……お前知らないもの買うなよ。」
「だって美味しそうだったもん。」
「……まぁ美味しいけどさ。熱いから気をつけろよ。それ結構火傷しやすいんだよ。」
「そうなの?」
「てかそういえばアメリカってタコ食べないんだっけ?美味しいのになぁ。歯応えがあって。」
「……好きなの?」
「食べ物の中だったらタコが一番好きかな?案外刺身とかなににでも合うし。寿司とかいったら絶対食べる。」
コリコリした食感が本当に美味しいんだよなぁ。基本的洋食派だけどもタコだけは別格だと思う。
「たこ焼きは千棘に合うかわからんけどな。一個もらうぞ。」
「あっ!ちょっと。」
俺は爪楊枝を取り出し一つ口の中に入れる。するとソースと青のり、マヨネーズのバランスのいい味わいと外はカリっと中はどろっとした味わい。やっぱりうまいわ。タコの食感も消えてないし。
「……うまいな。久しぶりに食べたけど。」
「あんた。本当に美味しそうに食べるわね。」
すると爪楊枝で同じように食べるけど…食べた瞬間こいつもものすごくいい笑顔になっているのはわかってるんだろうか?
「美味しい。」
「だろ?」
すると気に入ったのか本当に幸せそうに食べていく。
……こいつ本当に美味しいもの食べる時生き生きするよな。すると食べていくのを見ていると二箱しっかり全部食べ終わっていた。
「あ〜美味しかった!!」
「本当に美味しそうに食うよな。ほら水。」
「ありがとう。って。」
顔を真っ赤にさせる。気づいたのだろう。多分俺に買ってきた分まで食べてしまったことに。
「千棘本当に食べる時は我を忘れるよな。」
「うぅ。」
「とりあえず色々回ろうぜ。せっかくだから色々遊びたいし。それにもう慣れたしな。」
「ちょっと慣れたって何よ。」
「前に俺のラーメンまできっちり完食したのは誰だったか?」
「……ごめん。」
「もう知ってるって。別に隠さないでいいだろ。別にいいじゃねーか。……そういうとこも好きだから。」
「……あんた言ってて恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいに決まってるだろ。ほら行くぞ。」
と今度は俺が手を引く。本当に千棘といるとらしくなくなる。
なんでこんなに恥ずかしいことになってるんだろう。
「そういえば千棘。鶫は?あいつのことだし付いてくるんじゃないかと思ってたけど。」
「えっと、何か用事があるんだって。」
「……なら少しゆっくりできるかもな。」
「なによ。鶫がいたらゆっくりできないの?」
「あいつもかなりの過保護で一回八時過ぎたときあっただろ?その時に散々無茶振りを言われた。」
「……なんかごめん。」
「監視のいないところで一度ちゃんとデート行きたいよなぁ。何度もデートスポットをあのメガネと鶫に押し付けられるんだよ。……なんかあの二人俺にも過保護になってきてないか?」
「…そう?」
「そう思うぞ。なんで俺が警護されないといけないんだよ。自分の身くらいは守れるしな。伊達にヤクザの息子やってねぇよ。」
「あんたも大概じゃない。」
だよなぁ。
「でも、仕方ないんだよ。俺らはそういう家庭に生まれてきたんだし。それにそれでもいいことはやっぱりあるし。」
「へぇ〜あるの?」
「あるだろ。そりゃ。楽と兄弟になれなかったかもしれないし、それにみんなと会えていなかったのかもしれないだろ。それになにより。」
俺は千棘をみて
「お前と会えたしな。」
「……あのね。」
「……悪いけど俺も恥ずかしいから何も言わないで。でも本音だから。」
「あんた本当に質悪いわ。」
すると手を強く握りしめ
「本当にずるいわよ。あんた。」
「まぁ、一番自爆してるのは俺だけどな。」
クソ恥ずかしいぞ。でも嘘はつきたくないから無理やりでも恥ずかしいことをいうしかない。
「でも、嬉しい。」
「……おう。」
「じゃあ次あれやりたい。」
まぁ。しばらくはこんなもんか。
これからは仲違いすることも意見が合わないこともあるだろう
でもこれだけは言える
俺は千棘を愛してます